小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律
法律第六十号(昭二八・七・一五)
(目的)
第一条 この法律は、最近における取引の実情に即応し、一円以下の臨時補助貨幣並びに一円未満の貨幣、小額紙幣及び日本銀行券を整理するとともに、一円未満の通貨の発行を停止することとし、これに伴い、現金支払の場合における支払金の端数計算の基準を定めて取引の円滑化に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「小額補助貨幣」とは、左の各号に掲げるものをいう。
一 貨幣法(明治三十年法律第十六号)の規定により政府が発行した貨幣のうち額面価格が五十銭以下のもの
二 貨幣法第十七条の規定により通用を認められた貨幣
三 臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)の規定により政府が発行した臨時補助貨幣のうち額面価格が一円以下のもの
2 この法律において「小額紙幣」とは、臨時通貨法の規定により政府が発行した五十銭の小額紙幣で昭和二十八年十二月三十一日において現に通用するものをいう。
3 この法律において「小額日本銀行券」とは、日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)第二十九条第一項の規定により日本銀行が発行した十銭及び五銭の日本銀行券をいう。
4 この法律において「小額通貨」とは、小額補助貨幣、小額紙幣及び小額日本銀行券をいう。
(小額通貨の通用禁止及び引換)
第三条 小額通貨は、昭和二十八年十二月三十一日限り、その通用を禁止する。
2 小額通貨は、昭和二十九年一月四日以後次条から第六条までの規定により引き換えるものとする。
(小額通貨の引換の請求)
第四条 小額通貨を所持する者は、昭和二十九年一月四日から昭和二十九年六月三十日までに、その所持する小額通貨を小額通貨以外の通貨と引き換えることを請求することができる。但し、小額通貨の合計額に五十銭未満の端数がある場合におけるその端数額に相当する小額通貨及び小額通貨の合計額が五十銭未満である場合におけるその小額通貨については、この限りでない。
2 左の各号に掲げる場合における前項の規定による引換の期間は、同項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる期間とする。
一 外国その他政令で定める地域から引き揚げ、昭和二十九年六月一日以後本邦(当該政令で定める地域を除く。)に到着した者の所持する小額通貨を引き換える場合については、到着の日から一月以内
二 その他やむを得ない事由がある場合であつて政令で定める場合については、政令で定める期間
3 通用を禁止したる貨幣紙幣の引換に関する件(明治二十三年法律第十三号)は、第一項の規定による小額補助貨幣及び小額紙幣の引換を請求する場合には、適用しない。
(引換事務の取扱機関)
第五条 小額通貨の引換に関する事務は、大蔵省令で定めるところにより、日本銀行が行う。
2 郵政官署は、政令で定めるところにより、日本銀行に代り、前項の事務の一部を取り扱うものとする。
(引換金額の特例)
第六条 第四条第一項の規定による小額通貨の引換の請求があつた場合において、引換を請求する小額通貨の合計額に五十銭以上一円未満の端数があるときはその端数額を、その合計額が五十銭以上一円未満であるときはその合計額を、引換を請求する者一人につき一回に限り、一円と引き換えるものとする。
(日本銀行に対する引換差額の交付)
第七条 政府は、第四条から前条までの規定により小額通貨が小額通貨以外の通貨と引き換えられた場合において、当該小額通貨以外の通貨の額面価格の合計額がその引き換えられた小額通貨の額面価格の合計額を超過するときは、その超過額に相当する金額を、予算の定めるところにより、日本銀行に交付するものとする。
(報告)
第八条 日本銀行は、大蔵省令で定める手続により、第四条から第六条までの規定による小額通貨の引換に関する報告書を大蔵大臣に提出しなければならない。
(小額通貨の未回収残高の処理)
第九条 政府は、昭和二十九年六月三十日における小額紙幣の発行高から、同日において日本銀行代理店及び郵政官署が保有する小額紙幣の額面価格の合計額及び大蔵大臣が定める金額を差し引いた金額を、大蔵省令で定める手続により、小額紙幣発行高から除去し、その除去した発行高に相当する金額を即日歳入に受け入れるものとする。
2 日本銀行は、昭和二十九年六月三十日における小額日本銀行券の発行高を、同年七月一日における日本銀行券発行高から除去するものとする。
3 日本銀行は、特別の勘定を設け、前項の規定により除去した発行高に相当する金額を区分整理しなければならない。
4 日本銀行は、第二項の規定により除去した発行高に相当する金額から政令で定める金額を差し引いた金額に相当する金額を、政令で定めるところにより、政府に納付しなければならない。
5 前項に定めるものの外、第二項の規定により除去した発行高に相当する日本銀行の財産の処理に関し必要な事項は、政令で定める。
(一円未満の通貨の発行停止)
第十条 政府は、当分の間、一円未満の額面価格を有する貨幣(臨時補助貨幣を含む。)及び紙幣を発行しないものとする。
2 日本銀行は、当分の間、一円未満の額面価格を有する日本銀行券を発行することができない。
(債務の支払金の端数計算)
第十一条 債務の弁済を現金の支払により行う場合において、その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては、その支払うべき金額の合計額)に五十銭未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし、その支払うべき金額に五十銭以上一円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭以上一円未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を一円として計算するものとする。但し、特約がある場合には、この限りでない。
2 前項の規定は、国及び公社等(国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)に規定する国及び公社等をいう。以下同じ。)が収納し、又は支払う場合においては、適用しない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。但し、第十条、第十一条及び次項から附則第十項までの規定は、昭和二十九年一月一日から施行する。
2 左に掲げる法律は、廃止する。
一 小額紙幣整理法(昭和二十三年法律第四十二号)
二 補助貨幣損傷等取締法臨時特例(昭和二十七年法律第百三十二号)
3 旧小額紙幣整理法第一条に規定する小額紙幣のうち、同法第二条但書に規定する外国その他大蔵大臣の指定する地域から引き揚げ、昭和二十八年十二月一日以後本邦に到着した者の所持するものは、第三条第二項及び第四条から第八条までの規定の適用については、第二条第二項に規定する小額紙幣とみなす。
4 附則第二項の規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
5 昭和二十一年九月三十日以前に効力が発生した簡易生命保険契約の保険料については、簡易生命保険法の一部を改正する法律(昭和二十七年法律第百四十五号)附則第三項の規定により保険料の取立を停止したものを除いて、当該保険料の一年分を前納する払込方法によることを約したものとみなす。但し、左に掲げるものについては、この限りでない。
一 簡易生命保険約款の定めるところによりその払込について団体の取扱を受ける保険料
二 昭和二十一年十月一日以後に効力が発生した簡易生命保険契約の保険料と併合して払い込む保険料
6 前項各号に掲げる保険料が払い込まれる場合において、その払込金額(当該保険料と併合して払い込まれる保険料を含む。)の合計額に五十銭未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、その端数金額を一円として計算する。
7 国庫出納金等端数計算法の一部を次のように改正する。
第一条中「法令による公団、」及び「商船管理委員会、閉鎖機関整理委員会、」を削り、「国及び公団等」を「国及び公社等」に改める。
第二条から第四条まで中「国及び公団等」を「国及び公社等」に改める。
第五条第一項中「百円未満であるときは、」の下に「政令をもつて指定する国税又は地方税の場合を除く外、」を加える。
第六条の次に次の一条を加える。
(益金等の端数計算の特例)
第六条の二 法令の規定により納付をする益金又は欠損補てん金に対する第二条第一項の規定の適用については、同項中「五十銭未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、」とあるのは、「一円未満の端数があるときは、益金についてはその端数金額を切り捨て、欠損補てん金については」とする。
第七条第一項各号列記以外の部分中「第二項及び第三項の規定に該当する場合を除き、」を削り、同項第一号から第五号までを削り、同項第六号中「、第十条及び附則第二項」を「及び第十条」に改め、同号を同項第一号とし、同項第七号を同項第二号とし、同項第八号を削り、同項第九号を同項第三号とし、同条第二項及び第三項を削る。
附則第三項を削る。
8 国庫出納金等端数計算法の一部を改正する法律(昭和二十七年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。
附則第一項の項番号及び附則第二項を削る。
9 郵便貯金法(昭和二十二年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第三十六条第一項但書を削る。
10 政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)の一部を次のように改正する。
第八条第二項中「遅延利息の額について特に定めない限り、その額」を「遅延利息の額」に改める。
(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設大臣署名)