飲食営業臨時規整法
法律第五十二号(昭二四・五・七)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、主要食糧等のやみ取引を防止し、その有効な活用を促進するため、飲食営業の合理的な規整を行うことを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「飲食営業」とは、設備を設け、客に飲食物を提供して飲食させる営業をいう。
(飲食営業の許可)
第三条 飲食営業を営もうとする者は、左に掲げる営業の種類ごとに、主務大臣の定める手続により、都道府県知事の許可を受けなければならない。
一 外食券食堂(外食券と引換に、食事を提供する営業をいう。)
二 めん類外食券食堂(外食券と引換にうどん、そば、冷麦、中華そばその他のめん類を提供する営業をいう。)
三 旅館(一泊又は半泊定の宿泊料を取つて、客を宿泊させ、外食券と引換に、宿泊に伴う食事を提供する営業をいう。)
四 軽飲食店(食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)第二条の規定による主要食糧及びこれを調理加工したもの(以下「指定主食」という。)以外の料理又は酒類その他の飲物を提供する料亭、待合、カフエー、キヤバレーその他の営業をいう。)
五 喫茶店(酒類以外の飲物、果物又は指定主食を原材料としない菓子類を提供する営業をいう。)
2 都道府県知事は、左の各号の法律の規定により許可を受けなければならないものとされている営業については、それらの法律の規定による許可を受けた者以外の者には、前項の規定による許可をしてはならない。
一 食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第二十一条
二 風俗営業取締法(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条
三 旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条
3 都道府県知事は、同一の場所にあつては第一項の飲食営業の二種類以上を許可してはならない。但し、特別の事情のある場合は、この限りでない。
4 都道府県知事は、第一項の規定による許可をしようとするときは、営業の設備及び場所、来客予想数等を調査し、食糧の合理的消費に妨げがあると認めるときは、その許可をしてはならない。
(営業の標示)
第四条 前条の規定により営業の許可を受けた者は、都道府県知事の交付する許可証をその営業設備内に備え、且つ、店頭その他見易い場所に、主務大臣の定める様式の標識を掲げなければならない。
(委託加工の禁止)
第五条 飲食営業を営む者は、消費者の委託を受けて、その持参する飲食物の調理加工をしてはならない。
(指定主食に関する制限)
第六条 旅館、外食券食堂又はめん類外食券食堂を営む者が、その営業上提供する場合を除き、飲食営業を営む者は、指定主食を提供してはならない。
第七条 旅館、外食券食堂又はめん類外食券食堂を営む者は、外食券と引換でなければ、食事を提供してはならない。
(料理提供に関する制限)
第八条 軽飲食店を営む者は、主務大臣の定める副食券と引換でなければ、料理を提供してはならない。
(統制額の遵守)
第九条 飲食営業を営む者は、その堤供する飲食物の価格につき、物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)の規定に基いて定められた統制額を遵守しなければならない。
(報告の義務)
第十条 飲食営業を営む者は、主務大臣の定めるところにより、第七条又は第八条の規定に従つて引き換えた外食券又は副食券の数につき、市区町村長又は主務大臣の定める者の確認を受け、これを都道府県知事に報告しなければならない。
(営業の停止又は営業許可の取消)
第十一条 都道府県知事は、飲食営業を営む者が、この法律若しくはこの法律に基く命令若しくは処分に違反し、虚偽の申請若しくは報告をし、又は原料の入手その他につき不正の事実があつた場合において著しく第一条の目的に反すると認めたときは、その営業を停止し、又はその営業の許可を取り消すことができる。
2 前条の外食券又は副食券の数が、主務大臣の定める期間内に、主務大臣の定める数に達しなかつたときは、都道府県知事は、やむを得ない事由があると認めた場合を除き、その飲食営業を営む者の営業を停止し、又はその営業の許可を取り消さなければならない。
3 都道府県知事は、前二項の処分をしようとするときは、当該営業者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
4 都道府県知事は、第一項又は第二項の処分の原因と認められる違反行為並びに聴聞の期日及び場所を、期日の一週間前までに当該営業者に通告し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
(罰則)
第十二条 第三条第一項の規定による許可を受けないで飲食営業を営んだ者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第十三条 第五条から第八条までの規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。
第十四条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の都道府県知事の許可を受けるに当り、虚偽の申請をした者
二 第四条の規定に違反した者
三 第十条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第十五条 第十二条の違反行為を行つた者に対しては、情状により懲役及び罰金を併科することができる。
第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第十二条から第十四条までの違反行為を行つた場合には、その行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和二十五年五月一日又は経済安定本部廃止の日のいずれか早い時にその効力を失う。但し、その時までにした行為に対する罰則の適用については、その時以後もなおその効力を有する。
3 昭和二十四年四月三十日現在において、飲食営業緊急措置令(昭和二十二年政令第百十八号)により飲食店営業につき、営業の許可を受けていた者は、この法律施行の日から二箇月間は、その営業の種類については、この法律により営業の許可を受けたものとみなす。
4 飲食営業緊急措置令は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、同令はなおその効力を有する。
5 経済調査庁法(昭和二十三年法律第二百六号)の一部を次のように改正する。
別表第一中「飲食営業緊急措置令」を「飲食営業臨時規整法」に改める。
(内閣総理・厚生・農林大臣署名)