貿易特別会計法
法律第四十一号(昭二四・四・三〇)
(設置)
第一条 貿易及びこれに準ずる取引(外国への送金及び外国からの送金並びにこれらに準ずるものを含む。)に関する政府の経理を明確にするため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理する。
(管理)
第二条 この会計は、商工大臣が、法令の定めるところに従い、管理する。
(勘定)
第三条 この会計は、事業費勘定、経費勘定及び清算勘定に区分する。
(事業費勘定の歳入及び歳出)
第四条 事業費勘定においては、輸入物資(援助物資及び輸入物資に準ずる物資を含む。)の売払代金、輸入物資(輸入物資に準ずる物資を含む。)の買入者に売り払う外貨請求権の売払代金、一般会計からの繰入金、輸出物資(輸出物資に準ずる物資を含む。以下同じ。)の国内売払に因る売払代金、貿易以外の原因に基く外国への送金等に因る収入金、貿易公団に対する貸付金の償還金、外国貿易特別円資金特別会計からの繰入金、貿易公団法(昭和二十二年法律第五十八号)第二十条第五項の規定による納付金、経費勘定及び清算勘定からの剰余金繰入金並びに附属雑収入をもつてその歳入とし、輸出物資の買入代金、輸出物資の売払者から買い取る外貨請求権の買取代金、輸入物資(援助物資及び輸入物資に準ずる物資を含む。以下同じ。)に関する諸掛、輸入物資の加工賃(諸掛を含む。)、貿易以外の原因に基く外国からの送金等に因る支出金、貿易公団に対する貸付金、貿易公団に対する交付金及び清算勘定への繰入金の財源に充てるための経費勘定への繰入金、米国対日援助見返資金特別会計への繰入金、附則第六項及び第七項の規定による借入金の償還金並びに附属諸費をもつてその歳出とする。
2 前項に規定する一般会計からの繰入金は、予算の定めるところにより、価格調整補給金又は事業費の財源として繰り入れるものとする。
(経費勘定の歳入及び歳出)
第五条 経費勘定においては、前条第一項の規定による事業費勘定からの繰入金、貿易公団に対する貸付金の利子及び附属雑収入をもつてその歳入とし、事務取扱費、事務取扱手数料、貿易公団に対する業務取扱費交付金、貿易公団に対する清算経費交付金の財源に充てるための清算勘定への繰入金、附則第六項及び第七項の規定による借入金の利子、第十三条第二項の規定による一時借入金又は融通証券の利子、事業費勘定への剰余金繰入金並びに附属諸費をもつてその歳出とする。
(清算勘定の歳入及び歳出)
第六条 清算勘定においては、前条の規定による経費勘定からの繰入金、貿易公団の清算に伴う収入金並びに貿易公団から承継した現金及び現金以外の資産の処分に因る収入金をもつてその歳入とし、貿易公団に対する清算に関する交付金、貿易公団から承継した債務に基く支出金及び事業費勘定への剰余金繰入金をもつてその歳出とする。
(歳入歳出予定計算書の作製及び送付)
第七条 商工大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書を作製し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
(歳入歳出予算の区分)
第八条 この会計の歳入歳出予算は、事業費、経費及び清算の三勘定に分け、各勘定のうちにおいて、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、款及び項に区分する。
(予算の作成及び提出)
第九条 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならない。
2 前項の予算には、歳入歳出予定計算書を添附しなければならない。
(剰余金等の繰入)
第十条 事業費勘定において、毎会計年度における決算上剰余金を生じたときは、これをその翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
2 経費勘定において、毎会計年度における歳入の収納済額から、当該勘定の第五条に規定する歳出のうち、事務取扱費、事務取扱手数料、業務取扱費交付金、清算勘定への繰入金、借入金の利子、一時借入金又は融通証券の利子及び附属諸費の歳出の支出済額並びにこれらの歳出の支出未済額の合計額を控除して剰余があるときは、これを事業費勘定の歳入に繰り入れ、支出未済額に相当する金額は、これを経費勘定のその翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
3 清算勘定において、毎会計年度における歳入の収納済額から、当該勘定の第六条に規定する歳出のうち、貿易公団に対する清算に関する交付金及び貿易公団から承継した債務に基く支出金の歳出の支出済額を控除して剰余があるときは、これを事業費勘定の歳入に繰り入れるものとする。
4 前二項の規定により剰余金を事業費勘定の歳入に繰り入れる場合において、繰入に関する経費勘定又は清算勘定の歳出予算額が当該繰入額に対して不足するときは、その不足額は、その翌年度において繰り入れるものとする。この場合においては、当該不足額に相当する金額は、翌年度における事業費勘定への繰入金の財源として経費勘定又は清算勘定のその翌年度の歳入に繰り入れる。
(歳入歳出決定計算書の作製及び送付)
第十一条 商工大臣は、毎会計年度、歳入歳出予定計算書と同一の区分により、この会計の歳入歳出決定計算書を作製し、大蔵大臣に送付しなければならない。
(歳入歳出決算の作成及び提出)
第十二条 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、国会に提出しなければならない。
2 前項の歳入歳出決算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出決定計算書
二 債務に関する計算書
(余裕金の預入及び繰替使用並びに一時借入金及び融通証券)
第十三条 各勘定において支払上現金に余裕があるときは、大蔵省預金部に預け入れることができる。
2 事業費勘定において支払上現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をし、又は融通証券を発行することができる。但し、その限度額は、最高二百億円をこえてはならない。
3 前項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内に償還しなければならない。
4 この会計の各勘定の間においては、相互に、各勘定の支払上の余裕金を繰替使用することができる。
5 前項の規定による繰替金は、当該年度内に償還しなければならない。
(一時借入金、融通証券等の借入、償還等の事務)
第十四条 前条第二項の規定による一時借入金及び融通証券並びに附則第六項及び第七項の規定による借入金の借入、償還等に関する事務は、大蔵大臣が行う。
(国債整理基金特別会計への繰入)
第十五条 この会計の負担に属する借入金の償還金及び利子、一時借入金及び融通証券の利子並びに融通証券の発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、毎会計年度、国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。
(外貨請求権の買取及び売払事務)
第十六条 政府は、外貨請求権の買取及び売払に関する事務を日本銀行に取り扱わせることができる。
2 前項の場合において、政府は、外貨請求権の買取に必要な資金を日本銀行に交付することができる。
3 会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第三十六条の規定は、前項の規定により交付を受けた資金の収支に関して適用する。
(公団貸付金)
第十七条 政府は、貿易公団に対し、同公団の運営資金をこの会計の事業費勘定から貸し付けることができる。
2 前項の規定による貸付で当該年度内に償還するものは、この会計の事業費勘定の支払上の現金の運用として一時貸し付けることができる。
(支出未済の繰越)
第十八条 この会計において支払義務の生じた歳出金で、当該年度の出納の完結までに支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、翌年度に繰り越して使用することができる。
2 前項の規定による繰越については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十三条の規定は、適用しない。
3 商工大臣は、第一項の規定による繰越をしたときは、大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
4 第一項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、財政法第三十一条第一項の規定による予算の配賦があつたものとみなす。
(実施規定)
第十九条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、この会計の昭和二十四年度の予算成立の日から施行し、附則第二項及び附則第十四項から第十八項までの規定を除き、昭和二十四年度から適用する。
2 貿易資金特別会計法(昭和二十二年法律第百七十九号)は、廃止する。但し貿易資金特別会計の昭和二十三年度分の収入支出並びに昭和二十二年度、同二十三年度及び同二十四年度の決算に関しては、なお、その効力を有する。
3 貿易資金持別会計の昭和二十四年度の暫定予算は、この会計の昭和二十四年度の予算が成立したときは、失効するものとし、当該暫定予算に基く支出又はこれに基く債務の負担は、この会計の経費勘定の昭和二十四年度の予算に基いてしたものとみなし、当該暫定予算の有効期間中に収納した歳入金は、この会計の歳入金とみなす。
4 昭和二十四年四月一日から貿易資金特別会計法廃止の日までに、同法第四条第一項の規定に基いてした運用に係る貿易資金の受入額及び払出額(貿易資金以外の国庫金をもつて払い出した金額の昭和二十三年度末における現在額は、払出額とみなす。)は、この会計の昭和二十四年度の予算が成立したときは、当該受入額は、この会計の事業費勘定の昭和二十四年度の歳入金の額とみなし、当該払出額は、当該勘定の同年度の予算に基いてした歳出金の額とみなす。
5 昭和二十四年四月一日から貿易資金特別会計法廃止の日までに、同法第三条第二項の規定により貿易資金補足のため借り入れた借入金は、第十三条第二項の規定によりこの会計の負担において借り入れた一時借入金とみなす。但し、当該一時借入金の額は、同項但書の一時借入金又は融通証券の最高額の計算には、算入しないものとする。
6 前項に規定するものの外、貿易資金特別会計法廃止の際、貿易資金特別会計の負担に属する借入金は、この会計の負担とし、当該借入金の償還は、事業費勘定の所属とし、当該借入金の利子は、経費勘定の所属とする。
7 前項の規定によりこの会計の負担となつた借入金については、必要により、この会計の負担で借換をすることができる。
8 附則第六項に規定するものの外、貿易資金特別会計法廃止の際、貿易資金に属する資産(現金を除く。)及び負債は、この会計に帰属させ、事業費勘定に所属させる。
9 貿易資金持別会計の昭和二十三年度分の収入支出に関する事務(旧貿易資金持別会計法第十三条第一項の規定による損益計算上の過剰の貿易資金への組入の事務を含む。以下同じ。)の完結の際、貿易資金に属する現金は、この会計に帰属させ、事業費勘定に所属させる。
10 貿易資金特別会計の昭和二十三年度分の収入支出に関する事務の完結の際、同会計に属する資産及び負債(前項に規定するものを除く。)は、この会計に帰属させ、経費勘定に所属させる。
11 附則第九項の規定により事業費勘定に所属させた現金は、政令の定めるところにより、当該勘定の歳入又は支払元受高に組み入れ、前項の規定により経費勘定に所属させた現金は、当該勘定の歳入に組み入れるものとする。
12 政府は、政令の定めるところにより、昭和二十一年度から同二十三年度までの期間中における貿易資金の受払に関する計算書を作製し、貿易資金特別会計の昭和二十三年度の決算とともに、国会に提出しなければならない。
13 清算中の食糧貿易公団及び原材料貿易公団については、公団等の予算及び決算の暫定措置に関する法律(昭和二十四年法律第二十七号)は、適用しない。
14 不正保有物資等特別措置特別会計法(昭和二十三年法律第三十六号)の一部を次のように改正する。
第十四条を次のように改める。
第十四条 貿易特別会計法(昭和二十四年法律第四十一号)第七条、第八条及び第十一条の規定は、この会計の予算及び決算について、これを準用する。この場合において、第八条中「事業費、経費及び清算の三勘定に分け、各勘定のうちにおいて、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、」とあるのは「歳入の性質及び歳出の目的に従つて、」と読み替えるものとする。
15 外国貿易特別円資金特別会計法(昭和二十三年法律第二百十三号)の一部を次のように改正する。第五条中「貿易資金」を「貿易特別会計の事業費勘定」に改める。
第十条を次のように改める。
第十条 貿易特別会計法(昭和二十四年法律第四十一号)第七条、第八条及び第十一条の規定は、この会計の予算及び決算について、これを準用する。この場合において、第七条及び第十一条中「商工大臣」とあるのは「法務総裁」と、第八条中「事業費、経費及び清算の三勘定に分け、各勘定のうちにおいて、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、」とあるのは「歳入の性質及び歳出の目的に従つて、」と読み替えるものとする。
16 金、外国通貨及び外貨表示証書の買上に関する政令(昭和二十四年政令第五十二号)の一部を次のように改正する。
第六条を次のように改める。
第六条 第一条及び第五条の規定による買上は、貿易特別会計の事業費勘定の負担において行う。
17 貿易公団法の一部を次のように改正する。
第四条第三項中「貿易資金」を「貿易特別会計」に改める。
18 貿易公団法の一部を改正する法律(昭和二十四年法律第十九号)の一部を次のように改正する。
附則第四項中「貿易資金特別会計」を「貿易特別会計」に改める。
(大蔵・商工・内閣総理大臣署名)
(参照)
右貿易特別会計の昭和二十四年度の予算は、昭和二十四年四月二十日成立した。(内閣官房)