児童福祉法の一部を改正する法律
法律第二十六号(昭二九・三・三一)
児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第二十一条の三を次のように改める。
第二十一条の三 都道府県知事は、身体に障害のある児童に対し、生活の能力を得るために必要な医療(以下「育成医療」という。)の給付を行い、又はこれに代えて育成医療に要する費用を支給することができる。
前項の規定による費用の支給は、育成医療の給付が困難であると認められる場合に限り、これを行うことができる。
育成医療の給付は、左のとおりとする。
一 診療
二 薬剤又は治療材料の支給
三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四 病院又は診療所への収容
五 看護
六 移送
育成医療の給付は、厚生大臣が身体障害者福祉法第十九条の二第一項の規定により指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託してこれを行うものとする。
指定医療機関は、厚生大臣の定めるところにより、懇切丁寧に育成医療を担当しなければならない。
第二十一条の三の次に次の七条を加える。
第二十一条の四 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。
前項に規定する診療方針及び診療報酬によることができないとき、及びこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生大臣が定めるところによる。
第二十一条の五 都道府県知事は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、且つ、指定医療機関が前条の規定によつて請求することができる診療報酬の額を決定することができる。
指定医療機関は、都道府県知事が行う前項の決定に従わなければならない。
都道府県知事は、第一項の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の額を決定するに当つては、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会の意見を聞かなければならない。
都道府県は、指定医療機関に対する診療報酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
第二十一条の六 厚生大臣又は都道府県知事は、指定医療機関の診療報酬の請求が適正であるか否かを調査するため必要があると認めるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして、指定医療機関について、その管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく、前項の報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生大臣又は都道府県知事は、当該指定医療機関に対する都道府県の診療報酬の支払を一時差し止めさせ、又は差し止めることができる。
第二十一条の七 第二十一条の三第一項の規定により支給する費用の額は、第二十一条の四の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額のうち、本人及びその扶養義務者(民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者をいう。以下同じ。)が負担することができないと認められる額とする。
第二十一条の八 都道府県知事は、身体障害者手帳の交付を受けた児童に対し、盲人安全つえ、補聴器、義し、装具、車いすその他厚生大臣が定める補装具を交付し、若しくは修理し、又はこれに代えて補装具の購入若しくは修理に要する費用を支給することができる。
前項の規定による費用の支給は、補装具の交付又は修理が困難であると認められる場合に限り、これを行うことができる。
第一項に規定する補装具の交付又は修理は、補装具の製作若しくは修理を業とする者(以下「業者」という。)に委託してこれを行い、又は都道府県知事が自らこれを行うものとする。
第二十一条の九 前条第三項の規定により補装具の交付又は修理の委託を受けた業者が都道府県に対して請求することができる報酬の額の基準は、厚生大臣がこれを定める。
第二十一条の十 第二十一条の八第一項の規定により支給する費用の額は、前条の規定により業者が請求することができる報酬の例により算定した額のうち、本人及びその扶養義務者が負担することができないと認められる額とする。
第三十三条の五中「民法(明治二十九年法律第八十九号)」を「民法」に改める。
第五十条第五号の二中「第二十一条の三」の下に「及び第二十一条の八」を加える。
第五十六条第一項中「第五十条第五号の二(第二十一条の三第二項に規定する費用を除く。)及び第六号から第七号までに規定する費用」を「第五十条第五号の二から第七号までに規定する費用(第五十条第五号の二に規定する費用については、業者に委託しないで補装具の交付又は修理が行われた場合における当該措置に要する費用に限る。)」に、同条第三項中「第一項」を「第一項又は前項」に、同条第四項中「第一項」を「第一項又は第五項」に改め、同条中第二項の次に次の三項を加える。
育成医療の給付を行い、又は業者に委託して補装具の交付若しくは修理を行う場合においては、都道府県知事は、本人又はその扶養義務者に対し、当該都道府県が支弁すべき当該措置に要する費用の額から、児童福祉司、社会福祉主事又は児童委員の意見を聞き、本人及びその扶養義務者が負担することができないと認める額を控除した額を、指定医療機関又は業者に支払うべき旨を命じなければならない。
本人又はその扶養義務者が前項の規定により支払うべき旨を命ぜられた額の全部又は一部を指定医療機関又は業者に支払つたときは、当該指定医療機関又は業者の都道府県に対する当該費用に係る請求権は、その限度において消滅するものとする。
第三項に規定する措置が行われた場合において、本人又はその扶養義務者が、同項の規定により支払うべき旨を命ぜられた額の全部又は一部を支払わなかつたため、都道府県においてその費用を支弁したときは、都道府県知事は、本人又はその扶養義務者からその支払わなかつた額を徴収しなければならない。
第五十七条の次に次の一条を加える。
第五十七条の二 租税その他の公課は、この法律により支給を受けた金品を標準として、これを課することができない。
この法律による支給金品は、既に支給を受けたものであるとないとにかかわらず、これを差し押えることができない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
2 社会保険診療報酬支払基金法の一部を次のように改正する。
第十三条第二項中「生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十三条第三項」の下に「、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十一条の五第三項」を、「生活保護法第五十三条第四項」の下に「、児童福祉法第二十一条の五第四項」を加える。
(厚生省設置法の一部改正)
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第五十六号を次のように改める。
五十六 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の定めるところにより、育成医療に関する必要な診療方針及び診療報酬を定め、並びに児童福祉施設の設備及び運営、里親の行う養育並びに保護受託者の行う保護につき、最低基準を定めること。
(地方税法の一部改正)
4 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第九十条第一項中「若しくは戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)」を「、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)若しくは児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)」に、「若しくは更生医療の給付」を「、更生医療の給付若しくは育成医療の給付」に改める。
第九十三条第一項中「若しくは戦傷病者戦没者遺族等援護法」を「、戦傷病者戦没者遺族等援護法若しくは児童福祉法」に、「若しくは更生医療の給付」を「、更生医療の給付若しくは育成医療の給付」に改める。
(内閣総理・大蔵・厚生大臣署名)