国家公務員のための国設宿舎に関する法律

法律第百十七号(昭二四・五・三〇)

 (目的)

第一条 国家公務員に貸与すべき宿舎については、この法律の定めるところによる。

2 この法律の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号、今後同法が改正せられたときは、その改正せられた規定を含む。以下同じ。)のいかなる条項をも廃止し、若しくは修正し、又はこれに代わるものではなく、又、この法律に規定する事項は、同法第二十八条に規定する人事院の勧告事項に含まれるものである。

 (定義)

第二条 この法律において「宿舎」とは、国がその事務、事業の円滑な運営に資する目的をもつて、国家公務員及び主としてその収入により生計を維持する者を居住させるため設置する宿舎をいう。

 (宿舎審議会)

第三条 この法律の完全な実施を確保し、その目的を達成するため、内閣総理大臣の所轄の下に、宿舎審議会(以下審議会という。)を置く。

2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、左に掲げる事項を調査審議するものとする。

一 宿舎の設置に関する計画

二 宿舎の維持及び管理に関する基準

三 第十二条の規定による無料宿舎を貸与する者の範囲

四 第十三条の規定による有料宿舎の一坪当りの使用料の基準

五 第十五条の規定による居住者の選定の基準

3 有料宿舎は、完全な合理的使用料を徴収して貸与するものであり、国家公務員の報酬の一部として貸与するものではないので、使用料の基準は、主として、同一の大きさ、場所及び条件の民間宿舎に対する法定又は公定の標準家賃、法定又は公定の標準家賃がない場合においては、同一又は類似の地において比較することのできる民間宿舎に対する家賃を考慮して定めるものとする。

4 審議会は、宿舎に関する重要事項について、関係機関に随時意見を述べることができる。

第四条 審議会の委員は、左に掲げる者をもつて充てる。

一 内閣官房次長

二 衆議院事務次長

三 参議院事務次長

四 最高裁判所事務総長

五 大蔵次官

六 建設次官

七 経済安定本部副長官

八 人事院事務次長

2 前項第一号及び第七号の委員は、内閣総理大臣が命ずる。

第五条 審議会に会長を置く。会長は、内閣官房次長をもつて充てる。

2 会長は、会務を総理する。

3 会長に事故があるときは、内閣総理大臣の指名する者が、その職務を代理する。

第六条 審議会は、会長が招集し、その議事は、会長を除く出席委員の過半数で決する。可否同数であるときは、会長の決するところによる。

2 審議会は、委員五人以上の出席がなければ議事を開き議決をすることができない。

第七条 第三条第二項に掲げる事項は、政令で定め、その政令は、審議会の決定に基かなければならない。

 (宿舎の管理)

第八条 大蔵大臣は、前条の規定による政令の定めるところに従い、宿舎の設置、維持及び管理に関する総合調整の事務をつかさどるものとする。

2 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、法務総裁、各省大臣、最高裁判所長官、会計検査院長及び人事院総裁(以下各省各庁の長という。)は、大蔵大臣の定めるところに従い、宿舎の設置、維持及び管理を行うものとする。

 (種類)

第九条 宿舎は、公邸、無料宿舎及び有料宿舎の三種とし、無料宿舎及び有料宿舎には、共同宿舎を含むものとする。

 (公邸)

第十条 公邸は、左に掲げる国家公務員のために設置し、無料で貸与する。

一 衆議院議長及び衆議院副議長

二 参議院議長及び参議院副議長

三 内閣総理大臣及び国務大臣

四 最高裁判所裁判官

五 会計検査院長

六 人事院総裁

七 衆議院事務総長及び参議院事務総長

八 宮内府長官及び侍従長

九 検事総長

十 国家公安委員会委員長

十一 内閣官房長官

第十一条 公邸には、いす、テーブル等公邸に必要とする備品を備え付け、無料で貸与する。

 (無料宿舎)

第十二条 無料宿舎は、左に掲げる国家公務員のうち政令で定める者のために設置し、無料で貸与する。

一 本来の職務に伴つて、通常の勤務時間外において、生命若しくは財産を保護するための非常勤務、鉄道若しくは通信施設に関連する非常勤務又はこれらと類似の性質を有する勤務に従事しなければならない者

二 研究又は実験施設に勤務する者であつて継続的に行うことを必要とする研究又は実験に直接従事するもの

三 へき地にある官署又は特に隔離された官署に勤務する者

四 官署の管理責任者であつて、その職務を遂行するために官署の構内に居住しなければならないもの

2 無料宿舎は、国家公務員の職務に対する給与の一部として貸与されるものとする。

 (有料宿舎)

第十三条 有料宿舎は、左に掲げる場合において、公邸又は無料宿舎の貸与を受ける者以外の国家公務員のために予算の範囲内で設置し、有料で貸与することができる。

一 国家公務員の職務に関連して国の事務、事業の運営に必要と認められる場合。

二 国家公務員の在勤地における住宅不足により国の事務、事業の運営に支障を来たす虞があると認められる場合。

 (有料宿舎の使用料)

第十四条 有料宿舎の使用料は、月額とし、政令で定める一坪当りの使用料の基準に基いて、各宿舎につき各省各庁の長が決定する。

2 新たに宿舎の貸与を受け、又はこれを明け渡した場合におけるその月分の使用料は、日割により計算した額とする。

3 有料宿舎の貸与を受けた者に報酬を支給する機関は、毎月報酬を支給する際その者の報酬から使用料に相当する金額を控除して、その金額をその者に代りその使用料として国に払い込まなければならない。

 (有料宿舎の居住者の選定)

第十五条 有料宿舎を貸与する者の選定に当つては、各省各庁の長は、政令で定めるところに従い、国の事務、事業の運営の必要に基き公平に行わなければならない。

 (宿舎居住者の保管義務)

第十六条 宿舎の居住者は、必要な注意を払い、宿舎を正常な状態において維持しなければならない。

 (宿舎の修繕費等)

第十七条 公邸の修繕に要する費用及び公邸の使用につき必要とする電気、水道、ガス等に要する費用は、国が負担する。

2 天災、時の経過その他居住者の責に帰することのできない事由に因り無料宿舎又は有料宿舎がき損又は汚損した場合においては、その修繕に要する費用は、国が負担する。

 (費用の負担区分)

第十八条 宿舎の設置、維持及び管理に要する費用並びに宿舎の使用料は、それぞれ宿舎の貸与を受けた者の報酬を支弁する会計の所属とする。

2 国有鉄道事業、通信事業その他事業を企業的に運営する特別会計の負担において設置する宿舎の設置、維持及び管理に要する費用の財源については、一般会計から繰入をしてはならない。

 (宿舎の明渡)

第十九条 宿舎の貸与を受けた者が左の各号の一に該当した場合においては、居住者は、速かにその宿舎を明け渡さなければならない。但し、公邸及び無料宿舎にあつては、六十日、有料宿舎にあつては、六月をこえてはならない。

一 国家公務員でなくなつたとき。

二 死亡したとき。

三 転勤又は転職によりその宿舎に居住する資格を失い、又はその必要がなくなつたとき。

四 国の事務、事業の運営の必要に基き先順位者が生じたとき。

 (施行に関する細目)

第二十条 この法律の施行に関し必要な細目は、大蔵大臣が定める。

附 則

1 この法律は、公布の日後二月を経過した日から施行する。

2 この法律施行の際現に国家公務員のために設置されている宿舎は、左の各号の区分に応じ、それぞれこの法律により設置された宿舎となるものとする。

一 第十条各号に掲げる国家公務員のために設置せられている宿舎にあつては、公邸

二 第十二条第一項各号に掲げる国家公務員のうち政令で定める者のために設置せられている宿舎にあつては、無料宿舎

三 その他の宿舎にあつては、有料宿舎

3 宿舎審議会は、第三条第二項に掲げる事項につき調査審議の結果を国会に報告しなければならない。

4 宿舎審議会が第三条第二項に掲げる事項につき調査審議を完了するまでは、国家公務員に貸与すべき宿舎に関しては、この法律の規定にかかわらず、なお従前の例による。

5 左に掲げる勅令等は、廃止する。

官舎貸渡規則(明治九年太政官達第五十三号)

巡査給与令(明治三十九年勅令第二百五十九号)

官設鉄道の職員に宿舎料を支給するの件(明治三十九年勅令第二百九十四号)

監獄看守手当等給与令(大正十一年勅令第四百三十八号)

矯正院補導手当等給与令(大正十一年勅令第四百九十一号)

副看守長の俸給及び給与に関する件(昭和十年勅令第八百六十八号)

(内閣総理・外務・大蔵大臣・法務総裁・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・逓信・労働・建設大臣署名)

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