しよう脳専売法

法律第百十三号(昭二四・五・二八)

粗製樟脳、樟脳油専売法(明治三十六年法律第五号)の全部を改正する。

目次

第一章 総則(第一条―第三条)

第二章 製造(第四条―第十三条)

第三章 輸入(第十四条)

第四章 販売(第十五条―第十七条)

第五章 雑則(第十八条―第二十条)

第六章 罰則(第二十一条―第二十八条)

附則

第一章 総則

 (定義)

第一条 この法律において「しよう脳」とは、二・オギゾカンファン(2―Oxo―Camphane)の含有量が百分の五十以上の固形物をいう。

2 この法律において「粗製しよう脳」とは、くす属に属する植物又はテレビン油に蒸りゆうその他の操作を加えて製造したしよう脳をいう。

3 この法律において「再製しよう脳」とは、しよう脳原油から製造したしよう脳をいう。

4 この法律において「精製しよう脳」とは、再製しよう脳又は粗製しよう脳に昇華その他の操作を加えて精製したしよう脳をいう。

5 この法律おいて「しよう脳油」とは、しよう脳原油及びこれに蒸りゆうその他の操作を加えて分別した油状物をいう。

6 この法律において「しよう脳原油」とは、左に掲げる油状物であつて、二・オギゾカンファンの含有量が百分の五以上の物をいう。

一 くす属に属する植物に蒸りゆうその他の操作を加えて採取した油状物

二 前号に掲げる物を百分の五十以上含有する油状物

7 この法律において「しよう脳精油」とは、しよう脳原油に蒸りゆうその他の操作を加えて分別した油状物をいう。

 (専売権)

第二条 粗製しよう脳及びしよう脳原油の一手買取、輸入及び一手販売の権能は、国に専属する。

 (専売権の実施)

第三条 前条の規定により国に専属する権能及びこれに伴う必要な事項は、この法律及び日本専売公社法(昭和二十三年法律第二百五十五号)の定めるところにより、日本専売公社(以下「公社」という。)に行わせる。

第二章 製造

 (製造)

第四条 公社又は公社から第七条第一項又は第二項の割当を受けた者は、粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造することができる。

2 粗製しよう脳又はしよう脳原油は、前項に規定する者でなければ製造してはならない。

 (収納)

第五条 公社は、第七条第一項又は第二項の割当を受けて粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造する者(以下「製造者」という。)の製造したすべての粗製しよう脳又はしよう脳原油を収納する。

2 前項の収納の価格は、公社が定めて、あらかじめ公告する。

 (製造予定数量)

第六条 公社は、毎年四月一日から翌年三月三十一日までの一年度内の粗製しよう脳及びしよう脳原油の製造予定数量を定める。

 (製造数量の割当)

第七条 粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造しようとする者は、製造場ごとに公社の定める手続により、毎年公社に申請して粗製しよう脳又はしよう脳原油の翌年度の製造予定数量の割当を受けなければならない。

2 公社は、前条の製造予定数量の確保上必要があるときは、その年度内において、申請に基き前項の割当数量を増加し、又は新たな割当をすることができる。

3 製造者は、前二項の規定により割当を受けた数量をこえて粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造してはならない。

4 粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造しようとする者は、自ら製造場を管理する場合を除き、製造場ごとに管理人を定めて、第一項又は第二項の申請の際公社に届け出なければならない。製造者が新たに管理人を置き、又は管理人を変更しようとする場合は、その都度公社に届け出なければならない。

5 第一項又は第二項の割当は、申請数量の範囲内において製造能力等を基準として決定する。この場合においては、改正前の粗製樟脳、樟脳油専売法(以下「旧法」という。)に基き粗製しよう脳及びしよう脳原油の製造の許可をした事実を根拠としたものであり、又は当該事実によつて影響を受けたものであつてはならない。

 (割当の制限及び取消)

第八条 公社は、申請者又は製造場管理人が左の各号の一に該当する場合においては、前条第一項又は第二項の割当をしないことができる。

一 この法律に基いて処罰(第二十八条において準用する国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)に基いてされる通告の処分を含む。以下同じ。)され、その処罰の日から二年を経ない場合。

二 木材の製造、加工、販売等の業務に従事し、くすのきを粗製しよう脳又はしよう脳原油の製造以外の用途に供する虞がある場合。

三 しよう脳若しくはしよう脳油の販売若しくは輸出の業務又はしよう脳若しくはしよう脳油を原料としてプラスチック、医薬品、香料等の製造の業務を営んでいる場合。

2 公社は、製造者が前項各号の一に該当するに至つた場合においては、前条第一項又は第二項の割当を取り消すことができる。

3 公社は、製造場管理人が第一項各号の一に該当するに至つた場合においては、製造者に対し、当該管理人の変更を命ずることができる。この場合において、当該命令に従わなかつたときは、前項の規定を準用する。

4 法人が申請者又は製造者である場合においては、第一項及び第二項の規定の適用については、法人の代表者もまた申請者又は製造者とみなす。

5 未成年者又は禁治産者が申請者、製造者又は製造場管理人である場合においては、第一項から第三項までの規定の適用については、その法定代理人もまた申請者、製造者又は製造場管理人とみなす。但し、営業に関し成年者と同一の能力を有する未成年者の場合においては、この限りでない。

6 公社は、第二項(第三項後段において準用する場合を含む。)の規定により割当の取消をし、又は第三項前段の規定により製造場管理人の変更を命じようとするときは、当該取消又は変更を要するかどうかを決定するため、利害関係人に対し聴聞会を開かなければならない。

7 前項の聴聞会は、製造者又はその代理人に対し文書により前項に規定する処分をしようとする旨を通知した日から十五日を経過した後に開かなければならない。

8 製造者、製造場管理人、これらの代理人その他利害関係人及び必要な証人は、第六項の聴聞会に出席し、意見又は事実を述べることができる。

 (製造の引継及び廃止)

第九条 製造者が死亡した場合において、引き続いて粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造しようとする相続人は、死亡の日から二月以内にその旨を公社に届け出なければならない。

2 製造者は、その製造場における製造を廃止しようとするときは、公社に届け出なければならない。

 (指示)

第十条 公社は、製造者に対し原料の採取及び使用の方法、製造の方法並びに貯蔵の場所及び方法について、あらかじめ公社の定めた標準に従うように指示することができる。

 (納付)

第十一条 製造者は、その製造した粗製しよう脳又はしよう脳原油を、公社の定める方法により調理した後、すべて公社に納付しなければならない。

2 前項の納付の期限、期日及び場所は、公社が定める。

3 製造者は、納付する粗製しよう脳又はしよう脳原油に他物を混和してはならない。

4 公社は、製造者の納付する粗製しよう脳又はしよう脳原油の品質が粗悪な場合は、更に必要な処理をした上納付するように指示することができる。

 (鑑定及び再鑑定)

第十二条 公社は、製造者の納付した粗製しよう脳又はしよう脳原油の品質を鑑定し、その品質に相当する収納代金を支払う。

2 製造者は、前項の鑑定に不服があるときは、公社に対して再鑑定を求めることができる。

3 前項の再鑑定の申立は、収納代金の請求前にしなければならない。

4 再鑑定の申立があつたときは、公社は、二人以上の鑑定人を選定し、再鑑定を行わせて、その品質を決定する。この場合において、鑑定人は、少くともその半数を公社の職員でない者から選定しなければならない。

5 再鑑定による粗製しよう脳又はしよう脳原油の品質が第一項の鑑定による品質より上位の品質とならないときは、再鑑定に要した費用は、その申立人の負担とする。

6 公社は、第二項の規定による再鑑定の申立があつた場合においては、その決定があるまで収納代金を支払わないことができる。

 (廃業後の処置)

第十三条 製造者がその製造を廃止し、又は第八条第二項(同条第三項後段において準用する場合を含む。)の規定により割当を取り消された場合において、粗製しよう脳又はしよう脳原油が現存するときは、その現存する物については、その者をなお製造者とみなす。

第三章 輸入

 (輸入)

第十四条 粗製しよう脳又はしよう脳原油は、公社又は公社の委託を受けた者でなければ輸入してはならない。

2 粗製しよう脳又はしよう脳原油以外のしよう脳又はしよう脳油は、公社の許可を受けなければ輸入してはならない。

3 前二項の規定は、旅行者が自己の用に供するため携帯するしよう脳又はしよう脳油であつて大蔵省令で定める物については、適用しない。

第四章 販売

 (売渡価格)

第十五条 公社は、大蔵大臣の認可を受け、粗製しよう脳及びしよう脳原油の公社の売渡価格を定める。

2 前項の規定は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第三条の規定の適用を妨げるものではない。

 (保管料)

第十六条 公社から粗製しよう脳又はしよう脳原油を買い受けた者が公社と協議して定めた引取期限までにこれを引き取らないときは、公社は、その者から相当の保管料を徴収することができる。但し、自己の責に帰することができない事由に因り引取をすることのできない日数に対しては、この限りでない。

 (代金の延納)

第十七条 公社は、公社から粗製しよう脳又はしよう脳原油を買い受ける者に対し、その代金を一時に支払うことが困難であると認めるときは、確実な担保を徴し、その代金の延納を許可することができる。

2 公社は、特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、担保提供額が買受代金の三分の一を下らない範囲内において、担保の提供を免除することができる。

3 第一項の場合において、その代金を支払期日までに支払わないときは、公社は、大蔵省令の定めるところにより、遅延利息を徴収することができる。

4 公社は、第一項の規定により延納を許可した者について、延納継続の必要がないと認めたとき又は延納の継続を著しく不適当と認めたときは、延納の許可を取り消すことができる。

第五章 雑則

 (所有等の制限)

第十八条 何人も、この法律の規定により認められた場合を除く外、公社の売り渡した粗製しよう脳若しくはしよう脳原油、公社の売り渡したこれらの物から製造した精製しよう脳、再製しよう脳若しくはしよう脳精油又はこれらの物を加工した物以外のしよう脳又はしよう脳油を所有し、所持し、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。但し、正当の事由により、所有し、又は所持する場合は、この限りでない。

2 この法律により没収する場合を除く外、公社は、前項に該当する物件を、公社の定めるところにより納付させることができる。この場合においては、他物を混和したしよう脳又はしよう脳油を除く外、第十二条第一項の規定を準用する。

 (立入検査)

第十九条 公社は、その職員をして、製造者又は公社からしよう脳若しくはしよう脳油の輸入の委託若しくは許可を受けた者の製造場、事務所、営業所、事業場又は倉庫に立ち入り、しよう脳、しよう脳油、器具、機械、帳簿又は書類を検査させることができる。

2 当該職員は、前項の規定による立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

 (強制徴収)

第二十条 第十二条第五項の規定により公社に納付すべき金額は、国税滞納処分の例により徴収することができる。但し、先取特権の順位は、国税に次ぐものとする。

第六章 罰則

 (罰則)

第二十一条 第四条第二項又は第十八条第一項の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二十二条 第十四条第一項又は第二項の規定に違反し、しよう脳又はしよう脳油を輸入した者は、三十万円以下の罰金に処する。但し、輸入したしよう脳又はしよう脳油の価額の十倍が三十万円をこえるときは、罰金は、当該価額の十倍以下とする。

2 前項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者又は同項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者は、同項の例による。

3 第一項の価額は、そのしよう脳又はしよう脳油の生産地又は仕入地における原価に、荷造費、運送費、保険料その他輸入地に到着するまでの諸費及び輸入税に相当する金額を加えたものとする。

第二十三条 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。

一 第七条第三項又は第十一条第三項の規定に違反した者

二 正当の事由がなくて公社の定めた納付期限までにその定めた納付の場所に粗製しよう脳又はしよう脳原油を納付しなかつた製造者

第二十四条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。

一 第七条第四項又は第九条第一項若しくは第二項に規定する届出をせず、又は虚偽の届出をした者

二 第十条の規定による公社の指示に違反した者

三 第十九条の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第二十五条 第二十一条、第二十二条第一項若しくは第二項又は第二十三条第一号の犯罪に係るしよう脳又はしよう脳油(これらに他物を混和した物を含む。)は、没収する。

2 前項の物件を他に譲り渡し、若しくは消費したとき又は他にその物件の所有者があつて没収することのできないときは、その価額を追徴する。

第二十六条 法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が法人又は人の業務又は財産に関して第二十一条から第二十四条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。

第二十七条 第二十一条から第二十四条まで(第二十四条第三号を除く。)の罪を犯した者には、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及び第六十六条の規定は、適用しない。

第二十八条 国税犯則取締法の規定は、この法律の違反事件に準用する。この場合においては、この法律の違反事件は、間接国税の犯則事件とする。

2 前項の場合において、国税犯則取締法に規定する財務局長、税務署長又は収税官吏の職務は、たばこ専売法(昭和二十四年法律第百十一号)第七十九条第二項又は第三項に規定する公社の役員又は職員並びに司法警察職員及び国家公務員が行う。

3 たばこ専売法第七十九条第五項及び第七項から第十項までの規定は、第一項の場合に準用する。

附 則

1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。

2 旧法第二条に基く指定、旧法第三条に基いて公示された補償金若しくは旧法第十三条に基く定価又は旧法に基く省令による代金延納の許可は、それぞれこの法律に基いて公社が定めた期限、場所若しくは価格又は公社がした延納の許可とみなす。

3 旧法若しくはこれに基く命令に基き、又は旧法若しくはこれに基く命令に基く政府の処分に因り、この法律施行の日以後において政府に納付すべき、又は政府から受領すべき代金、しよう脳、しよう脳油その他の物は、それぞれ公社に納付し、又は公社から受領するものとする。この法律施行前に政府に納付すべきであつた、又は政府から受領すべきであつた物についても、同様とする。

4 旧法に基いて処罰された者は、この法律に基いて処罰された者とみなす。

5 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

6 旧法の違反事件については、第二十八条の例による。

7 旧法第二十三条において準用する国税犯則取締法に基いてした処分は、この法律に基いて権限を有する公社の役員又は職員がしたものとみなす。

8 旧法第六条第一項又は旧法第七条第二項の規定により許可を受け、この法律施行の際現に粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造する者であつてこの法律施行後その製造を継続しようとするものは、その製造場ごとに、昭和二十四年四月一日以後製造した数量を含み同日から翌年三月三十一日までの分につき製造予定数量の割当を受けるため、この法律施行後一月以内に公社に申請しなければならない。

9 第七条第四項前段及び第五項並びに第八条第一項、第四項及び第五項の規定は、前項の割当に準用する。

10 第八項の規定により割当を受けた者は、第七条第一項の規定による割当を受けた者とみなす。

11 旧法第六条第一項又は旧法第七条第二項の規定により許可を受け、この法律施行の際現に粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造する者は、第四条の規定にかかわらず、この法律施行後一月を経過した日(第八項の規定により申請した者については、同項の規定による割当のあつた日又は第九項において準用する第八条第一項の規定により割当をしない旨の通知のあつた日)までは、粗製しよう脳又はしよう脳原油を製造することができる。

12 前項の規定の適用を受ける者が前項の期間内に製造した粗製しよう脳又はしよう脳原油は、この法律の規定に基いて製造者が製造したものとみなす。

13 この法律施行の際公社の所有する粗製しよう脳以外のしよう脳は、この法律の通用については、粗製しよう脳とみなす。

14 この法律施行前に政府の売り渡したしよう脳及びしよう脳油並びにこの法律施行の際公社の所有し、この法律施行後売り渡したしよう脳精油は、第十八条の規定の適用については、公社の売り渡した粗製しよう脳又はしよう脳原油とみなす。

15 第十五条第二項の財政法第三条には、財政法第三条の特例に関する法律(昭和二十三年法律第二十七号)が効力を有する間は、同法を含むものとする。

(大蔵・内閣総理大臣署名)

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