古物営業法

法律第百八号(昭二四・五・二八)

 (定義)

第一条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品を含む。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入をしたものをいう。

2 この法律において「古物商」とは、古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換することを営業とする者で第二条第一項の規定による許可を受けたものをいう。

3 この法律において「市場」とは、古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。

4 この法律において「市場主」とは、市場を経営する者で第三条の規定による許可を受けたものをいう。

 (古物商の許可)

第二条 古物商になろうとする者は、総理庁令(以下「命令」という。)の定めるところにより、営業所ごとに、その取り扱おうとする古物の種類を定めて、営業所(営業所のないときは、住所又は居所をいう。以下同じ。)の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

2 前項の場合において、古物商になろうとする者は、自ら管理しないで、営業所を設けるときは、その営業所の管理者を定めなければならない。

 (市場主の許可)

第三条 市場主になろうとする者は、命令の定めるところにより、市場の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

 (許可の基準)

第四条 公安委員会は、第二条第一項又は前条の規定による許可を受けようとする者が左の各号の一に該当する場合においては、許可をしてはならない。

一 禁こ以上の刑に処せられその執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、三年を経過していない者

二 許可の申請前三年以内に、第六条の規定に違反して罰金の刑に処せられた者又は他の法令の規定に違反して二度以上罰金の刑に処せられ改しゆんの情の認められない者

三 住居の定まらぬ者

四 営業について成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁冶産者。但し、その者が古物商又は市場主の相続人であつて、その法定代理人が前各号の一又は第五号に該当しない場合を除くものとする。

五 第二十四条第一項の規定により許可を取り消され、取消の日から三年を経過していない者

六 同居の親族のうちに前号に該当する者又は営業の停止を受けている者のある者

七 第一号から第五号までの一に該当する管理者を置く者

八 法人である場合においては、その業務を行う役員のうちに第一号から第五号までの一に該当する者があるもの

2 公安委員会は、許可をしない場合においては、理由を附した書面をもつて、申請者にその旨を通知しなければならない。

 (営業内容の変更)

第五条 古物商又は市場主は、同一公安委員会の管轄区域内において営業所若しくは市場を移転し、又は取り扱う古物の種類を変更しようとする場合においては、命令の定めるところにより、管轄公安委員会の許可を受けなければならない。営業所の管理者を新たに設け、変更し、又は廃止しようとするときも同様とする。

2 古物商又は市場主は、廃業したとき若しくは長期休業をしようとするとき又は第二条第一項若しくは第三条の規定による許可の申請書の記載事項につき変更を生じたときは、命令の定めるところにより、管轄公安委員会に届け出なければならない。

3 古物商又は市場主が死亡した時は、同居の親族、法定代理人又は管理者は、前項の規定に準じて死亡の届出をしなければならない。

 (無許可営業の禁止)

第六条 古物商又は市場主でない者は、古物を売買し、交換し、若しくは委託を受けて売買し、交換することを営業とし、又は市場を設けてはならない。

 (他人名義の営業の禁止)

第七条 古物商又は市場主は、自己の名義をもつて、他人に古物商又は市場主の営業をさせてはならない。

 (行商及び露店の許可)

第八条 古物商が、行商をしようとし、又は露店を出そうとするときは、命令の定めるところにより、営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

2 古物商は、その従業者に、行商をさせ、又は露店を出させることができる。前項の規定は、この場合に準用する。

 (せり売の許可)

第九条 古物商は、市場以外においてせり売をしようとするときは、命令の定めるところにより、日時及び場所を定めて、その場所を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

 (許可証)

第十条 公安委員会は、第二条第一項、第三条、第八条第一項若しくは第二項又は前条の規定による許可をするときは、許可証を交付しなければならない。

2 前項の許可証は、命令の定めるところにより、三年ごとに当該公安委員会による更新を受けなければ、その効力を失う。

3 許可証の様式及びその書換、再交付等について必要な事項は、命令で定める。

4 第一項の規定により許可証を交付された者は、当該許可証を他人に貸与し、又は譲り渡してはならない。

5 第一項の規定により許可証を交付された者は、当該許可証を亡失し、又は盗み取られたときは、命令の定めるところにより、直ちに管轄公安委員会にその旨を届け出なければならない。

 (許可証の返納)

第十一条 前条の規定により許可証の交付を受けた者は、左の各号の一に該当するに至つた場合においては、命令の定めるところにより、十日以内に当該許可証を管轄公安委員会に返納しなければならない。

一 許可証の有効期間が満了したとき。

二 廃業したとき、又は行商、露店若しくはせり売をやめたとき。

三 第八条第二項の従業者が行商又は露店に従事しなくなつたとき。

四 許可証の再交付を受けた者が亡失し、又は盗み取られた許可証を回復するに至つたとき。

五 許可を取り消されたとき。

2 古物商又は市場主が死亡した場合において第五条第三項の規定により死亡の届出をする同居の親族、法定代理人又は管理者は、前項の規定により、許可証を返納しなければならない。

 (許可証の携帯)

第十二条 古物商は、行商をし、露店を出し、又はせり売をするときは、当該許可証を携帯していなければならない。第八条第二項の従業者が行商をし、又は露店を出すときも同様とする。

 (許可の表示)

第十三条 第二条第一項、第三条又は第八条第一項若しくは第二項の許可を受けた者は、それぞれ営業所、市場又は露店の見易い場所に、命令の定めるところにより、許可を受けたことを証する表示をしなければならない。

 (手数料)

第十四条 都道府県公安委員会から第十条の規定により許可証の交付を受け、又は許可証の更新若しくは再交付を受けようとする者は、命令の定めるところにより、それぞれ、許可手数料、更新手数料又は再交付手数料を国庫に納めなければならない。

2 前項の手数料の額は、千円以下の範囲内において、命令で定める。

3 市町村又は都が、市町村公安委員会又は特別区公安委員会の行う第十条の規定による許可証に関する事務について、手数料を徴収する場合においては、その額は、千円をこえることができない。

 (営業の制限)

第十五条 古物商は、その営業所又は取引の相手方の住所若しくは居所以外の場所において、買い受け、若しくは交換するため、又は売却若しくは交換の委託を受けるため、古物商以外の者から古物を受け取つてはならない。

2 市場においては、古物商間でなければ古物を売買し、交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けてはならない。

 (確認及び申告)

第十六条 古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、命令の定める方法により、その相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認しなければならない。不正品の疑がある場合においては、直ちに警察官又は警察吏員にその旨を申告しなければならない。

 (帳簿)

第十七条 古物商は、命令の定めるところにより、帳簿を備え、売買若しくは交換のため、又は売却若しくは交換の委託により、古物を受け取り、又は譲り渡したときは、その都度、その帳簿に左に掲げる事項を記載しなければならない。

一 取引の年月日

二 古物の品目及び数量

三 古物の特徴

四 相手方(命令で定める古物の売却の相手方を除く。)の住所、氏名、職業、年齢及び特徴

五 第十六条の規定により行つた確認の方法

第十八条 市場主は、命令の定めるところにより、帳簿を備え、その市場において売買され、又は交換される古物につき、取引の都度、前条第一号から第三号までに規定する事項並びに取引の当事者の住所及び氏名を記載しなければならない。

第十九条 古物商又は市場主は、前二条の帳簿を廃棄しようとするときは、営業所の所在地の所轄警察署長の承認を受けなければならない。

2 古物商又は市場主は、前条の帳簿をき損し、亡失し、又は盗み取られたときは、直ちに前項の警察署長に届け出なければならない。

 (品触)

第二十条 警察長又は警察署長は、必要があると認めるときは、古物商又は市場主に対して、ぞう物の品触を発することができる。

2 古物商又は市場主は、前項の品触を受けたときは、その品触書に到達の日附を記載し、その日から六月間これを保存しなければならない。

3 古物商は、品触を受けた日にその古物を所持していたとき、又は前項の期間内に品触に相当する古物を受け取つたときは、その旨を直ちに警察官又は警察吏員に届け出なければならない。

4 市場主は、第二項に規定する期間内に、品触に相当する古物が取引のため市場に出たときは、その旨を直ちに警察官又は警察吏員に届け出なければならない。

 (盗品及び遺失物の回復)

第二十一条 古物商が買い受け、又は交換した古物のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。但し、盗難又は遺失のときから一年を経過した後においては、この限りでない。

 (差止)

第二十二条 古物商が買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けた古物について、盗品又は遺失物であると疑うに足りる理由がある場合においては、警察署長は、当該古物商に対し三十日以内の期間を定めて、その古物の保管を命ずることができる。

 (立入及び調査)

第二十三条 警察官又は警察吏員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、古物商の営業所、古物の保管場所、市場又は第九条のせり売の場所に立ち入り、古物及び帳簿を検査し、関係者に質問することができる。

2 前項の場合においては、警察官又は警察吏員は、その身分を証明する証票を携帯し、関係者に、これを呈示しなければならない。

3 警察署長は、必要があると認めるときは、古物商又は市場主から盗品又は遺失物に関し、必要な報告を求めることができる。

 (行政処分)

第二十四条 公安委員会は、左の各号の一に該当する場合において必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、古物商若しくは市場主の許可を取り消し、又は期間を定めて古物商若しくは市場主の営業の停止を命ずることができる。

一 古物商又は市場主が他の法令に違反して、禁こ以上の刑に処せられたとき又は罰金の刑に処せられてから三年以内に再び罰金の刑に処せられたとき。

二 古物商又は市場主が第四条第一項第三号若しくは第七号に該当したとき、又は古物商若しくは市場主が法人である場合において、その業務を行う役員のうちに第四条第一項第一号若しくは第三号から第五号までの一に該当した者若しくは許可の取消若しくは営業の停止をしようとするとき以前三年以内に第六条の規定に違反して罰金の刑に処せられ若しくは他の法令に違反して二度以上罰金の刑に処せられた者があるに至つたとき。

三 古物商又は市場主の法定代理人が、第四条第一項第一号、第三号若しくは第五号に該当し若しくは該当するに至つたとき又は他の法令の規定に違反して罰金の刑に処せられてから三年以内に再び罰金の刑に処せられたとき。

四 古物商、市場主、それらの代理人、使用人その他の従業者がこの法律又はこの法律に基く命令に違反したとき。

五 古物商又は市場主が正当の理由がなくてその許可証の更新を受けないとき。

2 二以上の営業所を有する古物商が、一の営業所につき、古物商の許可を取り消され、又は古物商の営業を停止された場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その古物商の許可を取り消し、又は営業を停止することができる。この場合において、前者の所在地が当該公安委員会の管轄に属すると否とを問わない。

3 公安委員会は、第八条第一項、第二項若しくは第九条の規定による許可を受けた者若しくはその従業者がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反した場合又は第八条第一項、第二項若しくは第九条の許可を受けた者が正当の理由がなくて許可証の更新を受けない場合においては、当該許可を取り消し、又は期間を定めて行商、露店、若しくはせり売の停止を命ずることができる。

 (聴聞)

第二十五条 公安委員会は、前条の規定による処分をしようとする場合においては、あらかじめ当該営業者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。

2 前項の場合において、公安委員会は、処分をしようとする事由並びに聴聞の期日及び場所を、期日の一週間前までに、当該営業者に通告し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。

3 聴聞の場合においては、当該営業者は、自己のために釈明をし、且つ、証拠を提出することができる。

 (訴の提起)

第二十六条 この法律の規定による公安委員会又は警察署長の処分を受けた者は、行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)により訴を提起することができる。

 (罰則)

第二十七条 第六条若しくは第七条の規定に違反し、又は第二十四条第一項若しくは第二項の規定による処分に違反した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第二十八条 第八条第一項若しくは第二項、第九条、若しくは第十五条第一項の規定に違反し、又は第二十四条第三項の規定による処分に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

第二十九条 第五条第一項、第十条第四項、第十五条第二項、第十六条前段、第十七条から第十九条まで若しくは第二十条第二項から第四項までの規定に違反し、又は第二十二条の規定による処分に違反した者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

第三十条 左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

一 第五条第二項若しくは第三項、第十条第五項、第十一条から第十三条までの規定に違反した者

二 第二十三条第一項の規定による警察官又は警察吏員の立入又は帳簿書類の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

三 第二十三条第三項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第三十一条 第二十七条から第二十九条までの罪を犯した者には、情状により、各本条の懲役及び罰金を併科することができる。

第三十二条 過失により第二十条第三項又は第四項の規定に違反した者は、拘留又は科料に処する。

第三十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第二十七条から第三十条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

附 則

1 この法律は、昭和二十四年七月一日から施行する。

2 古物商取締法(明治二十八年法律第十三号)及び古物商取締法細則(明治二十八年内務省令第八号)は、廃止する。

3 この法律施行前にした古物商取締法に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

4 この法律施行の際、古物商取締法又は古物商取締法細則の規定により、許可、認可若しくは鑑札を受け、又は営業の禁止若しくは停止を受けている者は、それぞれ、この法律の相当規定による許可を受け、又は許可の取消若しくは営業の停止を受けた者とみなす。但し、許可を受けた者とみなされた者は、この法律の施行後三月以内に第十条第一項の規定による許可証の交付を受けなければならない。

5 第四条第一項第二号の適用については、古物商取締法第二条又は古物商取締法細則第九条第一項の規定に違反した者は、第六条の規定に違反した者とみなす。

6 この法律施行の際、現に古物商取締法細則第十一条の規定による届出をしてせり売を行つている者で、引き続きせり売を行おうとする者は、この法律施行後三十日の間は第九条の規定による許可を受けた者とみなす。

(内閣総理大臣・法務総裁署名)

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