電気通信事業特別会計法

法律第百十号(昭二四・五・二八)

目次

第一章 総則(第一条―第六条)

第二章 資本及び資産(第七条―第十五条)

第三章 資金(第十六条―第二十条)

第四章 予算(第二十一条―第二十九条)

第五章 収入及び支出(第三十条―第三十三条)

第六章 決算(第三十四条―第三十八条)

第七章 雑則(第三十九条―第四十条)

附則

第一章 総則

 (設置)

第一条 電気通信事業を企業的に経営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と分つて経理する。

 (電気通信事業の範囲)

第二条 この法律において「電気通信事業」とは、有線又は無線による電信、電話、模写電信、写真電信その他電気的方法による送信又は受信によつて、意思及び事実を伝え、又は受ける一切の手段を提供する事業及びその附帯業務をいう。

 (管理)

第三条 この会計は、電気通信大臣が、法令の定めるところに従い、管理する。

 (計理の区分)

第四条 この会計においては、電気通信事業の資産及び資本の増減異動並びに利益又は欠損を明らかにするため、貸借対照表勘定及び損益勘定を設けて計理するものとする。

2 貸借対照表勘定は、資産勘定及び資本勘定に、損益勘定は、収益勘定及び損失勘定に区分する。

3 前二項に規定する勘定の外、計算の過程を明らかにするため、中間勘定として建設勘定、工作勘定その他必要な勘定を設けることができる。

 (計理の方法)

第五条 この会計の計理は、現金の収納又は支払の事実にかかわらず、財産の増減及び異動の事実に基いて行う。

2 前項の財産の増減及び異動の事実がいずれの会計年度に発生したものとして計理するかについての基準は、政令で定める。

 (原価計算)

第六条 この会計においては、電気通信大臣の定めるところにより、電気通信事業に関し必要な原価計算を行うものとする。

第二章 資本及び資産

 (資本及びその整理区分)

第七条 この会計においては、この会計に所属する資産の価額に相当する金額をもつて資本とする。

2 前項に規定する資本は、自己資本、減価償却引当金及び借入資本の三種に分ち、自己資本は、固有資本、他の会計からの繰入資本及び積立金に、借入資本は、公債、借入金及びその他の負債に区分する。

3 固有資本は、通信事業特別会計からこの会計に引き継いだ固有資本の額に相当する金額とする。

4 他の会計からの繰入資本は、他の会計からこの会計の固定資産の増加に要する経費の財源に充てるため繰り入れた額に相当する金額とする。

5 積立金は、第三十五条第一項の規定による積立金の金額とする。

6 減価償却引当金は、この会計に属する資産の減価償却額の累積額(第十一条第二項の規定により繰り戻した金額があるときは、その金額を控除した額)に相当する金額とする。

7 借入資本は、この会計の負担に属する公債、借入金、一時借入金、融通証券、未払金、前受金、保管金その他これらに準ずる負債の額に相当する金額とする。

 (資産及びその整理区分)

第八条 この会計の資産は、固定資産、作業資産及び流動資産に区分する。

2 固定資産は、土地、建物、工作物、船舶、電信電話線路、電信電話機械、無線電信電話設備及び未完成工事並びに電気通信大臣の指定する機械、器具及び特許権その他これに準ずる権利とする。

3 作業資産は、貯蔵品及び未成品とする。

4 流動資産は、現金、預金、未収金、前払金その他これらに準ずるものとする。

 (固定資産の価額)

第九条 固定資産の価額は、その取得のために要した電気通信大臣の定める直接費及び間接費の合計額による。但し、無償で取得した固定資産の価額は、見積価額による。

 (減価償却及び補充取替)

第十条 固定資産のうち、電気通信大臣の定める償却資産については、その定めるところにより、毎会計年度、減価償却を行い、電気通信大臣の定める取替資産については、その定めるところにより、補充取替を行うものとする。

2 前項の規定による減価償却の基準については、電気通信大臣が大蔵大臣に協議して定める。

 (固定資産の価額の改定及び削除)

第十一条 固定資産が滅失したとき、又はこれを譲渡し、撤去し、若しくは廃棄したときは、電気通信大臣の定めるところにより、その滅失、譲渡、撤去又は廃棄の割合に応じて、その価額を改定し、又は削除しなければならない。

2 前項の規定により価額を改定し、又は削除する資産が償却資産であるときは、電気通信大臣の定めるところにより、当該資産に対する減価償却済額を減価償却引当金から繰り戻すものとする。

 (作業資産の価額)

第十二条 作業資産の価額は、購入価額又は製作若しくは生産に要した費額による。

2 前項の規定により価額を定め難い場合又は特殊の事由に因り前項の規定により価額を定めることが不適当である場合には、見積価額による。

 (作業資産の価額等の振替)

第十三条 作業資産を事業の用に供したときは、その価額を作業資産から削除し、これを使用する事業の経費の支出として計理するものとする。

2 作業資産の取扱に要する諸費は、電気通信大臣の定めるところにより、前項の経費の支出額に割り掛けるものとする。

3 第十五条の規定により資産外物品を修理したときは、その修理に要した費用は、電気通信大臣の定めるところにより、当該物品を使用する事業の経費の支出として計理するものとする。

 (作業資産の価額の改定及び削除)

第十四条 作業資産がき損し、変質し、若しくは滅失したとき、又は規格の変更によりこれに適合しなくなつたときは、そのき損、変質若しくは滅失の割合又は規格に適合しなくなつた割合に応じて、その価額を改定し、又は削除しなければならない。

 (作業資産の保有等)

第十五条 この会計においては、予算の定めるところにより、この会計に属する現金をもつて、事業上必要な作業資産を保有し、又は資産外物品を修理することができる。

第三章 資金

 (公債及び借入金)

第十六条 この会計において事業設備費及び貯蔵品保有量の増加に要する経費の財源に充てるため必要があるときは、この会計の負担において、公債を発行し、又は借入金をすることができる。

2 この会計において業務の運営に要する経費の財源に不足があるときは、この会計の負担において、借入金をすることができる。

3 前二項の規定による公債及び借入金の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。

 (一時借入金及び融通証券)

第十七条 この会計において支払上現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をし、又は融通証券を発行することができる。

2 前項の規定による一時借入金及び融通証券の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。

3 第一項の規定による一時借入金及び融通証券は、当該年度内に償還しなければならない。但し、歳入減少のため償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、一時借入金又は融通証券の借換をすることができる。

4 前項但書の規定により借換をした一時借入金又は融通証券は、その借換をしたときから一年内に償還しなければならない。

 (国債整理基金特別会計への繰入)

第十八条 この会計の負担に属する公債、借入金、一時借入金、融通証券の償還金及び利子並びに発行及び償還に関する諸費の支出に必要な金額は、年度内に償還する一時借入金及び融通証券の償還金を除いて、毎会計年度、国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、第十六条第二項の規定による借入金の借入又は前条第三項但書の規定による一時借入金若しくは融通証券の借換を必要とする場合には、公債及び借入金の償還金に限り、これを繰り入れないことができる。

 (公債、借入金等の借入、償還等の事務)

第十九条 この会計の負担に属する公債、借入金、一時借入金及び融通証券の起債、借入、償還等に関する事務は、大蔵大臣が行う。

 (余裕金の運用)

第二十条 この会計に余裕金があるときは、大蔵省預金部に預け入れることができる。

第四章 予算

 (歳入歳出予定計算書等の作製及び送付)

第二十一条 電気通信大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書及び国庫債務負担行為要求書を作製し、大蔵大臣に送付しなければならない。

2 前項の歳入歳出予定計算書及び国庫債務負担行為要求書には、左の書類を添附しなければならない。

一 事業計画書

二 前前年度の損益計算書、貸借対照表及び財産目録

三 前年度及び当該年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表

四 国庫債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについては、その全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書

五 第十七条の規定による一時借入金に関する調書

 (歳入歳出予算の区分)

第二十二条 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、款及び項に区分する。

 (予算の作成及び提出)

第二十三条 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならない。

2 前項の予算には、第二十一条第二項に規定する書類を添附しなければならない。

 (歳入歳出予算の配賦)

第二十四条 この会計において執行する歳入歳出予算の配賦については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第三十一条第二項の規定にかかわらず、歳出予算の節の区分を要しない。

 (経費の流用)

第二十五条 電気通信大臣は、この会計の事業計画書に計上された経費の金額のうちで政令で定めるものについては、大蔵大臣の承認を経なければ、流用することができない。

2 前項の規定により流用した経費の金額については、事業計画実績書において、これを明らかにするとともに、その理由を記載しなければならない。

 (予備費の使用)

第二十六条 この会計においては、予備費のうち業務の運営に要する経費に充てるものについては、財政法第三十五条第二項及び第三項の規定にかかわらず、同法第三十四条第一項の規定に基いて大蔵大臣の承認を経た支出負担行為計画の金額の範囲内において、電気通信大臣がその使用を決定することができる。

2 電気通信大臣は、前項の規定により予備費の使用を決定したときは、その理由、金額及び積算の基礎を明らかにした調書を作製し、大蔵大臣及び会計検査院に送付しなければならない。

3 第一項の規定により予備費の使用を決定したときは、当該経費については、財政法第三十一条第一項の規定による予算の配賦があつたものとみなす。

 (支払計画の作製)

第二十七条 この会計の支払計画は、左の二種に分けて作製する。

一 小切手を振り出し、又は国庫金振替書を発するもの。

二 第三十二条の規定により出納官吏をして支払わせるもの。

2 前項第二号に規定する支払計画は、日本銀行に通知することを要しない。

 (歳出予算の繰越)

第二十八条 この会計においては、電気通信大臣は、財政法第二十五条の規定により繰越について国会の承認を経た経費の金額の繰越については、同法第四十三条第一項の規定にかかわらず、同法第三十四条第一項の規定に基いて大蔵大臣の承認を経た支出負担行為計画の金額の範囲内において、翌年度に繰り越して使用することができる。

2 電気通信大臣は、前項の規定により繰越をしたときは、その歳出科目、金額及び事由を大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。

3 第一項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、財政法第三十一条第一項の規定による予算の配賦があつたものとみなす。

 (公債及び借入金の借入余力の繰越)

第二十九条 この会計においては、公債の発行又は借入金の借入について国会の議決を経た金額のうち、当該年度において発行又は借入をしなかつた金額があるときは、当該金額を限度として、歳出予算の繰越額及び前年度から持ち越した未払金の金額の範囲内で、翌年度において、公債を発行し、又は借入金をすることができる。

第五章 収入及び支出

 (分任支出官の設置)

第三十条 電気通信大臣は、必要があると認めるときは、支出官の事務を分掌させるため、分任支出官を置くことができる。

2 電気通信大臣は、前項の規定により分任支出官を置いたときは、大蔵大臣及び会計検査院に通知しなければならない。

 (支払元)

第三十一条 この会計における毎会計年度の歳出金及び前年度から持ち越した未払金の支払額は、前年度からの現金の持越額のうち歳出の財源に充てることができる金額及び当該年度の歳入の収納済額の合計額を超過してはならない。

 (支払命令)

第三十二条 この会計の支出官は、歳出金を支出するため、小切手を振り出し、又は国庫金振替書を発する外、電気通信大臣の指定する出納官吏に対し、政令の定めるところにより、支払命令を発することができる。

2 支出官は、第二十七条第一項第二号に規定する支払計画の範囲内で、第三十条第一項に規定する分任支出官に金額の限度を示して、前項に規定する出納官吏に対し、政令の定めるところにより、歳出金の支払命令を発せしめることができる。

 (現金支払)

第三十三条 前条第一項に規定する出納官吏は、同条の規定による支払命令を受けた場合には、政令の定めるところにより、その保管に係る現金をもつて、この会計の歳出金を支払うことができる。

2 前項の規定により毎月支払われた金額が、その月初における出納官吏の保管に係る歳入金額及びその月中に出納官吏の受け入れた歳入金額の合計額を超過したときは、電気通信大臣は、政令の定めるところにより、翌翌月末までに、その超過額に相当する金額を出納官吏に交付しなければならない。

第六章 決算

 (財務諸表の作製)

第三十四条 電気通信大臣は、毎会計年度、損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産価額増減表及び資本増減表を作製しなければならない。

 (利益及び欠損の処理)

第三十五条 この会計においては、毎会計年度における決算上利益を生じたときは、これを積立金に組み入れ、欠損を生じたときは、積立金を減額して整理するものとする。

2 前項の場合において、決算上生じた欠損額が積立金の額を超過するときは、その超過額は、欠損の繰越として整理することができる。

 (歳入歳出決定計算書の作製及び送付)

第三十六条 電気通信大臣は、毎会計年度、歳入歳出決定計算書を作製し、大蔵大臣に送付しなければならない。

2 前項の歳入歳出決定計算書には、左の書類を添附しなければならない。

一 事業計画実績書

二 当該年度の損益計算書、貸借対照表、財産目録、資産価額増減表及び資本増減表

三 債務に関する計算書

 (歳入歳出決算の形式)

第三十七条 この会計の歳入歳出決算は、歳入歳出予算と同一の区分により作成し、且つ、左の事項を明らかにしなければならない。

一 歳入

(一) 歳入予算額

(二) 徴収決定済額(徴収決定のない歳入については、収納後に徴収済として整理した額)

(三) 不納欠損額

二 歳出

(一) 歳出予算額

(二) 前年度繰越額

(三) 予備費使用額

(四) 流用等増減額

(五) 支出決定済歳出額

(六) 翌年度繰越額

(七) 不用額

 (歳入歳出決算の作成及び提出)

第三十八条 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、国会に提出しなければならない。

2 前項の歳入歳出決算には、第三十六条第二項に規定する書類を添附しなければならない。

第七章 雑則

 (郵政事業特別会計への繰入)

第三十九条 この会計は、電気通信省設置法(昭和二十三年法律第二百四十五号)第六条第一項の規定による郵政省への委託業務の取扱に要する経費、この会計の歳入金の受入に要する経費及び電気通信大臣と郵政大臣との協定により、電気通信省が共用し、又は利用する郵政省の施設の設備、維持及び運営に要する経費に充てるため必要な金額を、予算の定めるところにより、郵政事業特別会計に繰り入れることができる。

 (実施規定)

第四十条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。

附 則

この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。

(大蔵・逓信・内閣総理大臣署名)

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