日本国有鉄道法施行法

法律第百五号(昭二四・五・二五)

 (監理委員会の委員及び総裁の任命の事前措置)

第一条 内閣は、日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)施行前に、同法第十二条の例により、日本国有鉄道の監理委員会の委員となるべき者を指名することができる。

2 内閣は、日本国有鉄道法施行前に、同法第二十条第一項及び第二項並びに同法第二十一条の例により、前項の規定による委員となるべき者の推薦に基き、日本国有鉄道の総裁となるべき者を指名することができる。

3 前二項において日本国有鉄道法第十二条又は同法第二十一条の例による場合において、同法第十二条第三項第五号中「日本国有鉄道」とあるのは「国有鉄道、国有鉄道に関連する国営船舶及び国営自動車並びにこれらの附帯事業に関して運輸省」と読み替えるものとする。

4 日本国有鉄道法第十七条の規定は、第一項の規定による委員となるべき者に準用する。

5 第一項又は第二項の規定により指名された委員となるべき者及び総裁となるべき者は、日本国有鉄道法施行の時において、同法の規定によりそれぞれ日本国有鉄道の最初の監理委員会の委員又は総裁に任命されたものとする。

 (職員の引継)

第二条 日本国有鉄道法施行の際、現に運輸省職員(運輸部内の官吏、官吏の待遇を受ける者、雇員及び見習雇員をいう。以下同じ。)であつて、運輸省鉄道総局等主として国有鉄道、国有鉄道に関連する国営船舶及び国営自動車並びにこれらの附帯事業に関する事務を所掌する部局その他の機関であつて運輸大臣の定めるものに勤務するものは、運輸大臣の指名する者を除き、同法施行の際運輸省職員としての身分を失い、日本国有鉄道に引き継がれるものとする。

2 日本国有鉄道法施行の際、現に運輸省職員であつて、大臣官房等国有鉄道、国有鉄道に関連する国営船舶及び国営自動車並びにこれらの附帯事業に関する事務を所掌する部局その他の機関(前項の規定により運輸大臣の定めるものを除く。)に勤務するものは、運輸大臣の指名する者に限り、同法施行の際運輸省職員としての身分を失い、日本国有鉄道に引き継がれるものとする。

3 前二項の規定により、運輸省職員が、日本国有鉄道に引き継がれる場合においては、その者に対する退官退職手当は、支給しない。

4 前項に規定する者が政府の職員として勤務した期間は、退職金の計算については、日本国有鉄道に勤務した期間とみなす。

 (地方公共団体の議会の議員たる者の暫定措置)

第三条 前条第一項又は第二項の規定により日本国有鉄道の職員となつた者であつて、日本国有鉄道法施行の際現に地方公共団体の議会の議員であるものは、その任期中は引き続きその議員であることができる。

 (権利義務の承継)

第四条 国有鉄道、国有鉄道に関連する国営船舶及び国営自動車並びにこれらの附帯事業に関し、日本国有鉄道法施行の際現に国が有する権利義務は、別に定めるものを除く外、その時において日本国有鉄道が承継する。

 (訴訟の受継)

第五条 前条に規定する事業に関し、国を当事者とする訴訟であつて、日本国有鉄道法施行の際現に係属しているものは、その時において日本国有鉄道が受け継ぐ。同条に規定する事業に関し、これを所管する行政庁を当事者とする訴訟で前段と同様なものは、日本国有鉄道の総裁が受け継ぐ。

 (共済組合に関する暫定措置)

第六条 日本国有鉄道法施行の際、現に国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)第二条第二項第八号の規定による共済組合の組合員であつて、第二条第一項又は第二項の規定により日本国有鉄道に引き継がれないものは、日本国有鉄道法施行後当分の間、引き続き日本国有鉄道法第五十七条第二項の規定により日本国有鉄道に設けられる共済組合(以下「国鉄共済組合」という。)の組合員とする。

2 国庫は、前項に規定する者に係る国家公務員共済組合法第六十九条第一項各号及び同法第九十二条に掲げる費用を負担するものとし、政府は、これを国鉄共済組合に払い込まなければならない。

 (不動産に関する登記の手続)

第七条 日本国有鉄道が第四条の規定により不動産に関する権利を承継した場合において、その権利につきすべき登記の嘱託書には、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第三十一条第一項の規定にかかわらず、登記義務者の承諾書を添付することを要しない。

2 日本国有鉄道の総裁が不動産に関する権利につき登記を嘱託する場合において、その役員又は職員を代理人と定め、その旨を官報で公告したときは、当該代理人は、不動産登記法第三十五条第一項第五号に掲げる書面を提出することを要しない。

 (日本国有鉄道が引き継ぐ財産の範囲)

第八条 日本国有鉄道法施行の日において日本国有鉄道が政府から引き継ぐ財産は、昭和二十四年五月三十一日における国有鉄道事業特別会計の資産並びに公債及び借入金以外の負債とする。

 (公債及び借入金の処理)

第九条 昭和二十四年五月三十一日において国有鉄道事業特別会計が負担する公債及び借入金は、日本国有鉄道法施行の日において、一般会計に帰属せしめる。

2 日本国有鉄道は、日本国有鉄道法施行の日において、前項に規定する公債及び借入金の金額に相当する額の債務を政府に対し負うものとする。

3 前項に規定する債務については、日本国有鉄道は、政府に対しその債務を表示する証書を交付するものとする。

4 第二項の規定により日本国有鉄道が政府に対し負う債務の償還期限、利率及び利子支払期日は、第一項の規定により一般会計に帰属した公債及び借入金の償還期限、利率及び利子支払期日によるものとする。

5 政府は、第一項の規定により一般会計に帰属した公債及び借入金の借換をした場合においては、その償還期限、利率及び利子支払期日並びに公債についてはその発行価格に基き、第二項の規定により日本国有鉄道が政府に対し負う債務の償還期限、利率及び利子支払期日を変更することができる。

 (国庫余裕金の貸付)

第十条 政府は、日本国有鉄道において支払上現金に不足があるときは、日本国有鉄道法第四十五条の規定による貸付として国庫余裕金を一時貸し付けることができる。

 (資本金の額)

第十一条 日本国有鉄道法第五条に規定する資本金は、昭和二十四年五月三十一日における国有鉄道事業特別会計の資産の価額(調整勘定に計上する額を含む。)から負債の金額を控除した額に相当する金額とする。

 (国有鉄道事業特別会計の残務の処理)

第十二条 国有鉄道事業特別会計における昭和二十三年度及び昭和二十四年度の予備費の使用、決算、財産及び出納その他会計に関する事務は、日本国有鉄道法施行の日以後は、従前の例により日本国有鉄道が行う。

 (庁舎の無償貸付)

第十三条 日本国有鉄道は、日本国有鉄道法施行の際現に政府が使用している庁舎を政府に無償で貸し付けることができる。

 (他の法令の改廃等)

第十四条 鉄道敷設法(大正十一年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。

第一条中「帝国」を「本邦」に、「政府」を「日本国有鉄道」に改める。

第二条、第四条及び第五条を削り、第三条を第二条とする。

第十五条 国有鉄道運賃法(昭和二十三年法律第百十二号)の一部を次のように改正する。

第一条第一項中「国有鉄道(国有鉄道に関連する国営船舶を含む。)」を「日本国有鉄道の鉄道及び連絡船」に改める。

第五条、第七条第三項、第八条及び第九条中「運輸大臣」を、第八条中「国有鉄道」をそれぞれ「日本国有鉄道」に改める。

第九条の次に次の一条を加える。

第九条の二 第五条、第七条第三項及び第九条の規定により日本国有鉄道が左の各号に掲げる運賃及び料金を定める場合においては、運輸大臣の認可を受けなければならない。

一 定期旅客運賃

二 小口扱貨物運賃

三 手小荷物運賃

四 旅客運賃及び貨物運賃の最低運賃

五 寝台料金

第十六条 日本通運株式会社法(昭和十二年法律第四十六号)の一部を次のように改正する。

第四条第一項中「政府」を「日本国有鉄道」に、同条第三項中「第一項」を「前項」に改め、同条第二項を削る。

第九条を次のように改める。

第九条 削除

第九条ノ二を削る。

第十七条 帝都高速度交通営団法(昭和十六年法律第五十一号)の一部を次のように改正する。

第五条第一項中「政府」を「日本国有鉄道」に改め、同条第二項を削る。

第六条中「政府」を「日本国有鉄道」に改める。

第二十四条中「帝国鉄道会計」を「日本国有鉄道」に改め、同条後段を削る。

第二十六条及び第二十七条を次のように改める。

第二十六条 削除

第二十七条 削除

第三十四条第二項を削る。

第十八条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

第五条第六号ノ五の次に次の一号を加える。

六ノ五ノ二 日本国有鉄道ヨリ発スル証書、帳簿

第十九条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

第十九条第二号を次のように改める。

二 日本国有鉄道自己ノ為ニスル登記又ハ登録

第二十条 通行税法(昭和十五年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。

附則中「国有鉄道(国有鉄道ニ関連スル国営船舶ヲ含ム以下同ジ)」を「日本国有鉄道ノ鉄道及連絡船」に、「運輸大臣」を「日本国有鉄道」に、「国有鉄道ノ乗客」を「日本国有鉄道ノ鉄道及連絡船ノ乗客」に改める。

第二十一条 国家公務員共済組合法の一部を次のように改正する。

第二条第二項第八号を次のように改める。

八 削除

第二十二条 大蔵省預金部特別会計、国有鉄道事業特別会計、通信事業特別会計並びに簡易生命保険及び郵便年金特別会計の保険勘定及び年金勘定の昭和二十二年度における歳入不足補填のための一般会計からする繰入金に関する法律(昭和二十二年法律第百七十号)、政府職員の俸給等の支給に関する措置等に伴う大蔵省預金部外三特別会計に対する一般会計の繰入金に関する法律(昭和二十三年法律第十三号)及び大蔵省預金部特別会計外二特別会計の昭和二十三年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律(昭和二十三年法律第十八号)の一部をそれぞれ次のように改正する。

第二項中「、国有鉄道事業特別会計」を削る。

第二十三条 左に掲げる法令は、廃止する。

国有鉄道事業特別会計法(昭和二十二年法律第四十号)

地方鉄道及軌道に於ける納付金等に関する法律(昭和二十年法律第十九号)

鉄道会議官制(昭和五年勅令第百二十九号)

鉄道輸送協議会官制(昭和十七年勅令第五百十二号)

鉄道教習所官制(昭和十四年勅令第六百十七号)

地方鉄道軌道納付金委員会官制(昭和二十年勅令第二百九十号)

鉄道大臣に於て委託に依り陸運に関する機械器具等の製作、修理又は調達を為すの件(昭和十七年勅令第三百六十九号)

附 則

1 この法律は、日本国有鉄道法施行の日から施行する。但し、第一条の規定は、公布の日から、第二十二条の規定は、昭和二十四年五月三十一日から施行する。

2 国有鉄道事業特別会計法は、第二十三条の規定にかかわらず、日本国有鉄道法第三十六条第一項の規定においてその例による限度において、なおその効力を有する。

3 日本国有鉄道が政令で定める期間内になす物品の運送に関する取引には、取引高税を課さない。

4 日本国有鉄道は、昭和二十四年度においては、第九条第二項の規定により日本国有鉄道が政府に対し負う債務の利子及びその債務の取扱に要する経費を国債整理基金特別会計に納付することができる。

(大蔵・運輸・内閣総理大臣署名)

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