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建築物における衛生的環境の確保に関する法律

法律第二十号(昭四五・四・一四)

 (目的)

第一条 この法律は、多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項を定めることにより、その建築物における衛生的な環境の確保を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定建築物」とは、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校、共同住宅等の用に供される相当程度の規模を有する建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に掲げる建築物をいう。以下同じ。)で、多数の者が使用し、又は利用し、かつ、その維持管理について環境衛生上特に配慮が必要なものとして政令で定めるものをいう。

2 前項の政令においては、建築物の用途、延べ面積等により特定建築物を定めるものとする。

 (保健所の業務)

第三条 保健所は、この法律の施行に関し、次の業務を行なうものとする。

 一 多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理について、環境衛生上の正しい知識の普及を図ること。

 二 多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理について、環境衛生上の相談に応じ、及び環境衛生上必要な指導を行なうこと。

 (建築物環境衛生管理基準)

第四条 特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有するものは、政令で定める基準(以下「建築物環境衛生管理基準」という。)に従つて当該特定建築物の維持管理をしなければならない。

2 建築物環境衛生管理基準は、空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ、こん虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定めるものとする。

3 特定建築物以外の建築物で多数の者が使用し、又は利用するものの所有者、占有者その他の者で当該建築物の維持管理について権原を有するものは、建築物環境衛生管理基準に従つて当該建築物の維持管理をするように努めなければならない。

 (特定建築物についての届出)

第五条 特定建築物の所有者(所有者以外に当該特定建築物の全部の管理について権原を有する者があるときは、当該権原を有する者)(以下「特定建築物所有者等」という。)は、当該特定建築物が使用されるに至つたときは、その日から一箇月以内に、厚生省令の定めるところにより、当該特定建築物の所在場所、用途、延べ面積及び構造設備の概要、建築物環境衛生管理技術者の氏名その他厚生省令で定める事項を都道府県知事(保健所を設置する市にあつては、市長。以下同じ。)に届け出なければならない。

2 前項の規定は、現に使用されている建築物が、第二条第一項の政令を改正する政令の施行に伴い、又は用途の変更、増築による延べ面積の増加等により、新たに特定建築物に該当することとなつた場合について準用する。この場合において、前項中「当該特定建築物が使用されるに至つたとき」とあるのは、「建築物が特定建築物に該当することとなつたとき」と読み替えるものとする。

3 特定建築物所有者等は、前二項の規定による届出事項に変更があつたとき、又は当該特定建築物が用途の変更等により特定建築物に該当しないこととなつたときは、その日から一箇月以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 都道府県知事は、特定建築物のうち政令で定めるものについて前三項の規定による届出を受けたときは、その旨を都道府県労働基準局長に通知するものとする。

 (建築物環境衛生管理技術者の選任)

第六条 特定建築物所有者等は、当該特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督をさせるため、厚生省令の定めるところにより、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。

2 建築物環境衛生管理技術者は、当該特定建築物の維持管理が建築物環境衛生管理基準に従つて行なわれるようにするため必要があると認めるときは、当該特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有するものに対し、意見を述べることができる。この場合においては、当該権原を有する者は、その意見を尊重しなければならない。

 (建築物環境衛生管理技術者免状)

第七条 建築物環境衛生管理技術者免状は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、厚生大臣が交付する。

 一 厚生省令で定める学歴及び実務の経験を有する者又は厚生省令の定めるところによりこれと同等以上の知識及び技能を有すると認められる者で、厚生省令の定めるところにより、厚生大臣が指定した講習会の課程を修了したもの

 二 建築物環境衛生管理技術者試験に合格した者

2 厚生大臣は、次の各号のいずれかに該当する者に対しては、建築物環境衛生管理技術者免状の交付を行なわないことができる。

 一 第三項の規定により建築物環境衛生管理技術者免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者

 二 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して罰金の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しないもの

3 厚生大臣は、建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けている者が、この法律又はこの法律に基づく処分に違反したときは、その建築物環境衛生管理技術者免状の返納を命ずることができる。

4 都道府県知事は、建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けている者について、前項の処分が行なわれる必要があると認めるときは、その旨を厚生大臣に申し出なければならない。

5 建築物環境衛生管理技術者免状の交付又は再交付の手数料は政令で、建築物環境衛生管理技術者免状の交付、再交付その他建築物環境衛生管理技術者免状に関する手続的事項は厚生省令で定める。


 (建築物環境衛生管理技術者試験)

第八条 建築物環境衛生管理技術者試験は、建築物の維持管理に関する環境衛生上必要な知識について行なう。

2 建築物環境衛生管理技術者試験は、厚生大臣が行なう。

3 建築物環境衛生管理技術者試験は、二年以上厚生省令で定める実務に従事した者でなければ、受けることができない。

4 建築物環境衛生管理技術者試験の受験手数料は政令で、建築物環境衛生管理技術者試験の科目、受験手続その他建築物環境衛生管理技術者試験に関し必要な事項は厚生省令で定める。

 (建築物環境衛生管理技術者試験委員)

第九条 厚生省に、建築物環境衛生管理技術者試験に関する事務をつかさどらせるため、建築物環境衛生管理技術者試験委員を置く。

2 建築物環境衛生管理技術者試験委員は、厚生大臣が、その職員又は学識経験のある者のうちから任命する。

3 前二項に定めるもののほか、建築物環境衛生管理技術者試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。

 (帳簿書類の備付け)

第十条 特定建築物所有者等は、厚生省令の定めるところにより、当該特定建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項を記載した帳簿書類を備えておかなければならない。

 (報告、検査等)

第十一条 都道府県知事は、厚生省令で定める場合において、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、特定建築物所有者等に対し、必要な報告をさせ、又はその職員に、特定建築物に立ち入り、その設備、帳簿書類その他の物件若しくはその維持管理の状況を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。ただし、住居に立ち入る場合においては、その居住者の承諾を得なければならない。

2 前項の規定により立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (改善命令等)

第十二条 都道府県知事は、厚生省令で定める場合において、特定建築物の維持管理が建築物環境衛生管理基準に従つて行なわれておらず、かつ、当該特定建築物内における人の健康をそこない、又はそこなうおそれのある事態その他環境衛生上著しく不適当な事態が存すると認めるときは、当該特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有するものに対し、当該維持管理の方法の改善その他の必要な措置をとるべきことを命じ、又は当該事態がなくなるまでの間、当該特定建築物の一部の使用若しくは関係設備の使用を停止し、若しくは制限することができる。

 (国又は地方公共団体の用に供する特定建築物に関する特例)

第十三条 第十一条の規定は、特定建築物が国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供するものである場合については、適用しない。

2 都道府県知事は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供する特定建築物について、当該国若しくは地方公共団体の機関の長又はその委任を受けた者に対し、必要な説明又は資料の提出を求めることができる。

3 前条の規定は、特定建築物が国又は地方公共団体の公用又は公共の用に供するものである場合については、適用しない。ただし、都道府県知事は、当該特定建築物について、同条に規定する事態が存すると認めるときは、当該国若しくは地方公共団体の機関の長又はその委任を受けた者に対し、その旨を通知するとともに、当該維持管理の方法の改善その他の必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

 (再審査請求)

第十四条 保健所を設置する市の市長が行なう第十一条第一項又は第十二条の規定による処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができる。

 (罰則)

第十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第六条第一項の規定に違反した者

 二 第十二条の規定による命令又は処分に違反した者

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、一万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項から第三項までの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十条の規定に違反して帳簿書類を備えず、又はこれに記載をせず、若しくは虚偽の記載をした者

 三 第十一条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、同項の規定による職員の立入りを拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して、正当な理由がないのに答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。

第十八条 正当な理由がないのに、第七条第三項の規定による命令に違反して建築物環境衛生管理技術者免状を返納しなかつた者は、一万円以下の過料に処する。


   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六箇月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

2 この法律の施行の際現に使用されている建築物で特定建築物に該当するものについては、第五条第一項中「当該特定建築物が使用されるに至つたときは、その日から一箇月以内に」とあるのは、「この法律の施行の日から一箇月以内に」とする。

3 この法律の施行の日から起算して二年間は、特定建築物所有者等は、第六条第一項の規定にかかわらず、建築物環境衛生管理技術者を選任しないことができる。

 (厚生省設置法の一部改正)

4 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条第三十五号の次に次の一号を加える。

  三十五の二 建築物環境衛生管理技術者試験を行ない、並びに建築物環境衛生管理技術者免状を交付し、及びその返納を命ずること。

  第九条の二第一項第四号を次のように改める。

  四 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四十五年法律第二十号)の施行その他建築物衛生の改善及び向上に関すること。

 (建築基準法の一部改正)

5 建築基準法の一部を次のように改正する。

  第九十三条第四項中「屎尿浄化槽」の下に「又は建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四十五年法律第二十号)第二条第一項に規定する特定建築物に該当する建築物」を加える。

(法務・厚生・労働・建設・内閣総理大臣署名) 

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