輸出入植物検疫法
法第第八十六号(昭二三・七・五)
第一章 総則
(病菌又は害虫)
第一条 この法律において「病菌」とは、真菌、細菌その他の有害植物及びバイラスであつて植物を害するものをいい、「害虫」とは、昆虫、だに等の節足動物、線虫その他の虫類であつて植物を害するものをいう。
(輸出又は輸入)
第二条 本州、北海道、四国、九州及びこれらの附属の島(命令で定める地域を除く。)とこれらの地域以外との間に行われる取引その他による物の移動は、この法律の適用については、これを輸出又は輸入とする。
第二章 輸入植物の検疫
(輸入の制限)
第三条 命令で定める植物(以下指定植物という。)は、輸出国の官憲により発行され、且つ、その検査の結果病菌又は害虫が附着していないことを確め又は信ずる旨を記載した検査証明書のあるものでなければ、これを輸入してはならない。但し、植物検疫につき官設の機関を有しない国から輸入する場合は、この限りでない。
(輸入の禁止)
第四条 病菌又は害虫の侵入防止のため、左の各号の一に該当する物(以下禁止品という。)は、これを輸入することができない。但し、試験研究の用に供するため農林大臣の許可を得て輸入する場合は、この限りでない。
一 命令で定める地域から発送し、又はこれを経由した植物で命令で定めるもの
二 病菌又は害虫
三 土じよう又は土じようの附着する植物
(輸入場所の制限)
第五条 第三条又は前条但書の規定に従つて指定植物又は禁止品を輸入しようとする者は、第六条第三項の海港及び飛行場以外の場所で、これを輸入してはならない。
(輸入検査)
第六条 第三条又は第四条但書の規定に従つて指定植物又は禁止品を輸入した者は、遅滞なく、その物及びその容器包装に就いて、植物検疫官の検査を受けなければならない。但し、輸入前において植物検疫官の検査を受けた場合は、この限りでない。
2 前項の検査を受ける場合には、第三条の検査証明書又は第四条但書の規定による農林大臣の許可を証する書面を提示しなければならない。
3 第一項の検査は、命令で定める海港、飛行場その他の場所で、これを行う。
第七条 植物検疫官は、前条の検査をする場合において、病菌又は害虫の附着している虞があると認めるときは、前条に掲げる物以外の輸入品についても検査をすることができる。
(郵便物としての輸入)
第八条 第六条第一項の規定により検査を受けなければならない物を郵便物として輸入する場合は、これを小形包装物、商品見本又は小包郵便物以外の郵便物として輸入してはならない。
2 前項の規定に違反して輸入された郵便物の配達を受けた者は、その郵便物を添え、遅滞なく、その旨を動植物検疫所に届け出なければならない。
第九条 通関手続をなすべき郵便局は、指定植物又は禁止品を包容し、又は包容している疑のある小形包装物、商品見本又は小包郵便物の送付を受けたときは、遅滞なく、その旨を動植物検疫所に通知しなければならない。
2 前項の場合には、植物検疫官は、郵便局員の立会の上、同項の小形包装物、商品見本又は小包郵便物の検査を行う。
3 前項の検査をする場合には、植物検疫官は、受取人に対して、第三条の検査証明書又は第四条但書の規定による農林大臣の許可を証する書面の提示を求めることができる。
(立入検査)
第十条 植物検疫官は、指定植物、禁止品その他病菌若しくは害虫の附着している虞のある輸入品を積載し、蔵置し、若しくは所持し、又は積載し、蔵置し、若しくは所持している疑があると認めるときは、その船車、航空機、倉庫その他の場所に立ち入つて、積載し、若しくは蔵置している物を検査し、又は関係者に対し質問し、若しくは関係者の所持する物を検査することができる。
(検査に基く処分)
第十一条 植物検疫官は、本章の規定に基く検査の結果、病菌又は害虫が附着していると認めた植物その他の物を消毒し、廃棄し、その収受を禁止し、その他必要な処分をすることができる。
2 植物検疫官は、前項の規定により収受を禁止し、その他必要な処分をした場合において、検査を受けた物の所有者、管理者又は受取人が病菌又は害虫のひろがる虞のないように処置したときは、その収受禁止その他の処分を取り消すことができる。
(違法輸入植物等の収受禁止)
第十二条 第三条、第四条又は第五条の規定に違反して輸入された物又は第六条第一項の規定による検査を受けない物は、これを収受してはならない。
(検査の方法等)
第十三条 検査の方法、検査の結果行う処分の基準、その他検査に関し必要な事項は、農林大臣がこれを定める。
第三章 輪出植物の検疫
(輸出検査)
第十四条 輸入国政府がその輸入につき輸出国の検査証明を必要としている植物を輸出(輸出のための政府への売渡を含む。以下同じ。)しようとする者は、その植物及びその容器包装について、植物検疫官の検査を受けなければならない。
2 植物検疫官は、病菌又は害虫の取締上必要と認めるときは、前項の検査を受けた物について再検査をすることができる。
3 第六条第三項の規定は、第一項の検査につき、これを準用する。
(栽培地検査)
第十五条 前条第一項の植物のうち農林大臣の指定するものについては、あらかじめその栽培地で植物検疫官の検査を受けて合格したものでなければ、前条の検査を受けることができない。
2 植物検疫官は、前項の検査のため必要があるときは、その栽培地の周囲の土地に立ち入ることができる。
3 植物検疫官は、第一項の検査の結果、栽培者又は栽培を委託した者に対し、病菌又は害虫の取締上必要と認める事項を指示することができる。
(検査に基く処分)
第十六条 植物検疫官は、第十四条の規定による検査の結果、病菌若しくは害虫が附着していると認めた植物その他の物又は病菌若しくは害虫の取締上容器包装に使用することを不適当と認めた物を消毒し、その輸出を禁出し、その他必要な処分をすることができる。
(検査の方法等)
第十七条 第十三条の規定は、第十四条及び第十五条の規定による検査につき、これを準用する。
第四章 雑則
(証票の携帯)
第十八条 植物検疫官は、この法律による職務を執行する場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ関係者の要求があつたときは、これを示さなければならない。
(輸出入植物検疫審議会)
第十九条 農林大臣の諮問に応じて左に掲げる事項を調査審議させるため、農林省に輸出入植物検疫審議会(以下審議会という。)を置く。
一 第四条第一号の地域及び植物の範囲
二 第十三条(第十七条で準用する場合を含む。)の検査の方法及び検査の結果行う処分の基準
三 その他この法律の施行に関する重要事項
2 審議会は、前項各号に掲げる事項について、農林大臣に建議することができる。
3 審議会は、農林大臣の監督に属し、委員十人以内でこれを組織する。
4 審議会の委員は、関係行政庁の官吏若しくは吏員又は学識経験のある者のうちから、農林大臣がこれを命ずる。
5 審議会に委員の互選による委員長を置く。
6 審議会の委員は、予算に定める金額の範囲内において、手当及び旅費を受けるものとする。但し、官吏又は吏員である委員に対しては、手当は支給しない。
7 前六項に定めるものの外、審議会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
(服制)
第二十条 植物検疫官の服制は、農林大臣が、これを定める。
第五章 罰則
第二十一条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条又は第五条の規定に違反した者
二 第四条但書の規定による許可の条件に違反した者
第二十二条 左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
一 第六条第一項又は第十四条第一項の規定に違反した者
二 第六条第一項又は第十四条第一項の規定による検査を受けるに際して不正行為をした者
三 第十二条の規定に違反した者
第二十三条 左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一 第七条、第十条又は第十四条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第八条第二項の規定に違反した者
三 第十条の規定による質問に対し答弁をせず、又は虚偽の陳述をした者
四 第十一条第一項又は第十六条の規定による禁止その他の処分に違反した者
五 第十五条第二項の規定による立入を拒み、又は妨げた者
第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二十一条、第二十二条又は第二十三条第二号若しくは第四号の違反行為をしたときは、行為者を罰するの外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
第二十五条 この法律施行の期日は、その公布の日から三箇月をこえない期間内において、政令でこれを定める。但し、第十九条の規定は、公布の日から、これを施行する。
第二十六条 指定植物は、その法律施行後六箇月間は、第三条の規定にかかわらず、同条の検査証明書がなくても、これを輸入することができる。
第二十七条 輸出入植物取締法(大正三年法律第十一号)は、これを廃止する。但し、同法廃止前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(農林・内閣総理大臣署名)