円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法
法律第二号(昭五三・二・一四)
(目的)
第一条 この法律は、最近における本邦通貨の外国為替相場の高騰により事業活動に支障を生じている中小企業者に対し、経営の安定を図るための措置等を講じ、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
四 企業組合
五 協業組合
六 事業協同組合又は協同組合連合会、商工組合又は商工組合連合会その他の特別の法律により設立された組合又はその連合会であつて、政令で定めるもの
(認定)
第三条 中小企業者は、次の各号の一に該当することについてその住所地を管轄する都道府県知事の認定を受けることができる。
一 その業種に属する事業の事業活動が全国的に輸出取引に密接な関連を有すると認められる業種であつて、円相場の高騰(本邦通貨の外国為替相場が昭和五十二年六月以降における急速かつ大幅な上昇を経て高い水準で推移していることをいう。以下同じ。)により、当該事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、又は減少する見通しがあるため、当該事業を行う相当数の中小企業者の事業活動に支障を生じていると認められる業種として通商産業大臣及び当該事業を所管する大臣(以下「主務大臣」と総称する。)が指定するものに属する事業を行い、かつ、主務省令で定める基準に該当する中小企業者であること。
二 前号の規定により主務大臣が指定する業種以外の業種であつて次の要件に該当する業種として主務大臣が地域を限つて指定するものに属する事業を行い、かつ、主務省令で定める基準に該当する中小企業者であること。
イ その業種に属する事業の事業活動の一部が特定の地域に集中して行われており、かつ、その地域内における当該事業の事業活動が輸出取引に密接な関連を有すると認められること。
ロ 円相場の高騰により、その地域内においてその業種に属する事業を行う事業者の事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、又は減少する見通しがあるため、その地域内において当該事業を行う相当数の中小企業者の事業活動に支障を生じていると認められること。
三 前二号の規定により主務大臣が指定する業種以外の業種に属する事業を行う中小企業者であつて、円相場の高騰により、その事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、若しくは減少する見通しがあり、又はその事業につきこれらに準ずる事態として政令で定める事態が生じたため、その事業活動に支障を生じていると認められ、かつ、主務省令で定める基準に該当するものであること。
2 主務大臣は、前項第二号の規定による指定をしようとするときは、当該地域を管轄する都道府県知事の意見を聴かなければならない。
(資金の貸付けの利率)
第四条 国民金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫及び商工組合中央金庫は、前条第一項の認定を受けた中小企業者(以下「認定中小企業者」という。)がその経営の安定を図るのに必要な資金又は第二条第六号に掲げる者(認定中小企業者であるもの又はその構成員の三分の二以上が認定中小企業者であるものに限る。以下「認定組合等」という。)がその構成員たる認定中小企業者に対してその経営の安定を図るのに必要な資金を貸し付けるために必要な資金を認定中小企業者又は認定組合等に対して政令で定める日までに貸し付ける場合には、年六・五パーセント以内で政令で定める利率により貸し付けるものとする。
2 国民金融公庫、中小企業金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫は、認定中小企業者が中小企業事業転換対策臨時措置法(昭和五十一年法律第八十四号)第三条第一項の認定を受けた計画に従つて事業の転換を行う場合において、事業の転換のために必要な施設の設置に必要な資金を認定中小企業者に対して政令で定める日までに貸し付けるときは、年六・五パーセント以内で政令で定める利率により貸し付けるものとする。
3 円相場の高騰により事業活動に支障を生じていると認められる中小企業者が昭和五十二年十月一日から第一項の政令で定める日までの間に同項に規定する機関から同項に規定する資金の貸付けを受け、又は円相場の高騰により事業活動に支障を生じていると認められる中小企業者であつて前項に規定する計画に従つて事業の転換を行うものが昭和五十三年一月十七日から同項の政令で定める日までの間に同項に規定する機関から同項に規定する資金の貸付けを受けた場合において、その中小企業者が前条第一項の認定を受けたときは、その貸付けを第一項又は前項の規定による貸付けとみなして、その貸付けの日から第一項又は前項の政令で定める利率を適用するものとする。
(中小企業近代化資金等助成法による貸付金の償還期間の延長)
第五条 都道府県は、中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)第三条第一項に規定する貸付けに係る貸付金であつて、この法律の施行の日前にその貸付けを受けた中小企業者が第三条第一項の認定を受けた場合における当該中小企業者に対するもの(同法第三条第一項第二号の貸与機関から同日前にその事業の用に供する設備の譲渡し又は貸付けを受けた中小企業者が第三条第一項の認定を受けた場合における当該設備の譲渡し又は貸付けに充てるため貸与機関に貸し付けたものを含む。)については、同法第五条の規定にかかわらず、その償還期間を三年を超えない範囲内において延長することができる。
(中小企業信用保険法による円相場高騰関連保証の特例)
第六条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条第一項に規定する普通保険(以下「普通保険」という。)、同法第三条の二第一項に規定する無担保保険(以下「無担保保険」という。)又は同法第三条の三第一項に規定する特別小口保険(以下「特別小口保険」という。)の保険関係であつて、円相場高騰関連保証(同法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であつて、認定中小企業者がその経営の安定を図るのに必要な資金又は認定組合等がその構成員たる認定中小企業者に対してその経営の安定を図るのに必要な資金を貸し付けるために必要な資金に係るもので政令で定める日までに受けたものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての同法第三条第一項、第三条の二第一項及び第三項並びに第三条の三第一項及び第二項の規定の適用については、同法第三条第一項中「保険価額の合計額が」とあるのは「円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法第六条第一項に規定する円相場高騰関連保証(以下「円相場高騰関連保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ」と、同法第三条の二第一項中「保険価額の合計額が」とあるのは「円相場高騰関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ」と、同条第三項中「当該保証をした」とあるのは「円相場高騰関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした」と、「当該債務者」とあるのは「円相場高騰関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者」と、同法第三条の三第一項中「保険価額の合計額が」とあるのは「円相場高騰関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ」と、同条第二項中「当該保証をした」とあるのは「円相場高騰関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした」と、「当該債務者」とあるのは「円相場高騰関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者」とする。
2 普通保険の保険関係であつて、円相場高騰関連保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び同法第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険及び公害防止保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。
3 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であつて、円相場高騰関連保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。
4 円相場の高騰により事業活動に支障を生じていると認められる中小企業者が昭和五十三年一月十七日から第一項の政令で定める日までの間に、その経営の安定を図るのに必要な資金につき中小企業信用保険法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証を受けた場合において、その中小企業者が第三条第一項の認定を受けたときは、その債務の保証を円相場高騰関連保証とみなして、前三項の規定を適用する。
(課税の特例)
第七条 認定中小企業者について純損失又は欠損金を生じた場合は、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、所得税又は法人税の還付について特別の措置を講ずる。
2 前項に規定する所得税又は法人税の還付についての特別の措置の適用を受ける認定中小企業者については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)で定めるところにより、道府県民税、事業税及び市町村民税に係る純損失又は欠損金の繰越しについて特別の措置を講ずる。
(雇用の安定等)
第八条 国は、円相場の高騰により事業活動の縮小等を余儀なくされた中小企業者の雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 国及び都道府県は、円相場の高騰により事業活動の縮小等を余儀なくされた中小企業者に雇用されていた労働者について、職業訓練の実施、就職のあつせんその他その者の職業及び生活の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(円相場の高騰の影響の大きい地域についての配慮)
第九条 国及び都道府県は、中小企業に関する施策の実施に際しては、円相場の高騰によりその地域内における相当数の中小企業者の事業活動に支障を生じているため経済活動が衰退している地域における中小企業の経営の安定に特に配慮するものとする。
(事務の委任)
第十条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、市町村長又は特別区の長に委任することができる。
(主務省令)
第十一条 この法律における主務省令は、主務大臣の発する命令とする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、昭和五十五年三月三十一日限り、その効力を失う。ただし、その時までに成立している第六条の規定による保険関係については、なお従前の例による。
(中小企業庁設置法の一部改正)
3 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第七号の五の次に次の一号を加える。
七の六 円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法(昭和五十三年法律第二号)の施行に関すること。
第四条第三項中「及び第七号の五」を「、第七号の五及び第七号の六」に改める。
(内閣総理・大蔵・厚生・農林・通商産業・運輸・建設大臣署名)