小笠原諸島復興特別措置法
法律第七十九号(昭四四・一二・八)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 復興計画及び復興事業の実施(第三条―第十条)
第三章 小笠原諸島復興審議会(第十一条・第十二条)
第四章 雑則(第十三条―第二十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、小笠原諸島の復帰に伴い、小笠原諸島の特殊事情にかんがみ、総合的な復興計画を策定し、及びこれに基づく事業を実施する等特別な措置を講ずることにより、帰島を希望する旧島民の帰島の促進及び小笠原諸島の急速な復興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「小笠原諸島」とは、孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島をいう。
2 この法律において「旧島民」とは、昭和十九年三月三十一日に小笠原諸島に住所を有していた者で、昭和四十三年六月二十五日に小笠原諸島以外の本邦の地域に住所を有していたものをいう。
第二章 復興計画及び復興事業の実施
(復興計画)
第三条 小笠原諸島の総合的な復興計画(以下「復興計画」という。)は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 土地(公有水面を含む。以下同じ。)の利用に関する事項
二 道路、港湾等の産業基盤施設の整備に関する事項
三 農用地の造成、農林水産業に係る共同利用施設の整備その他農林水産業に係る生産の基盤の整備に関する事項
四 住宅及び生活環境施設の整備、教育施設の整備その他市街地又は集落の整備及び開発に関する事項
五 地域の特性に即した産業の振興及び自然、文化財等の保護に関する事項
六 防災及び国土保全に係る施設の整備に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、帰島を希望する旧島民の帰島の促進及び小笠原諸島の復興に関し必要な事項
2 復興計画は、昭和四十四年度を初年度として五箇年を目途として達成されるような内容のものでなければならない。
(復興計画の決定及び変更)
第四条 東京都知事は、復興計画の案を作成し、自治大臣に提出するものとする。
2 自治大臣は、前項の復興計画の案に基づき、小笠原諸島復興審議会の審議を経て、復興計画を決定する。
3 自治大臣は、復興計画を決定したときは、これを東京都知事に通知するとともに、復興計画において定める土地の利用に関する事項を公示するものとする。
4 前三項の規定は、復興計画を変更する場合について準用する。
(復興実施計画の作成及び変更)
第五条 東京都知事は、毎年度、その年度開始前までに、復興計画を実施するために必要な当該年度の事業についての計画(以下「復興実施計画」という。)を作成し、自治大臣の認可を受けなければならない。
2 自治大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ小笠原諸島復興審議会の意見をきかなければならない。
3 前二項の規定は、復興実施計画を変更する場合について準用する。
(特別の助成)
第六条 国は、道路、港湾等の産業基盤施設、教育施設、保健衛生及び社会福祉施設の整備事業その他の復興計画に基づく事業で政令で定めるものに要する経費については、当該経費に関する法令の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、予算の範囲内で、関係地方公共団体その他の者に対して、当該法令に定める国庫の負担割合又は補助割合をこえて、その全部又は一部を負担し、又は補助することができる。
2 小笠原諸島における災害復旧事業については、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和二十六年法律第九十七号)第三条の規定により地方公共団体に対して国がその費用の一部を負担する場合における当該災害復旧事業費に対する国の負担率は、同法第四条の規定によつて算定した率が五分の四に満たない場合においては、同法同条の規定にかかわらず、五分の四とし、公立学校施設災害復旧費国庫負担法(昭和二十八年法律第二百四十七号)第三条の規定により国がその経費の一部を負担する場合における当該公立学校の施設の災害復旧に要する経費に対する国の負担率は、同法同条の規定にかかわらず、五分の四とする。
第七条 国は、旧島民が帰島して農林水産業を営むために必要な事業、地域の特性に即した産業の振興に関し必要な事業その他の復興計画に基づく事業で自治大臣が主務大臣と協議して指定するものに要する経費については、関係地方公共団体その他の者に対して、予算の範囲内で、その全部又は一部を補助することができる。
(経理の分別)
第八条 前二条に規定する事業に要する経費に関する経理については、当該地方公共団体は、これを他の経理と分別しなければならない。
(土地改良法の特例)
第九条 小笠原諸島において行なわれる土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業に対する同法の規定の適用については、当分の間、政令で特別の定めをすることができる。
(農用地開発のための交換分合)
第十条 都は、復興計画に基づく効率的な農用地の開発のため必要があるときは、開発して農用地とすべき土地及びその周辺の土地(政令で定めるものを除く。)につき交換分合計画を定め、当該土地に関する権利の交換分合を行なうことができる。
2 前項の規定による交換分合により、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律(昭和四十三年法律第八十三号)第十三条第七項に規定する特別賃借権に代わるものとして設定された賃借権は、同法の規定の適用については、同項の特別賃借権とみなす。
3 土地改良法第百条の二から第百八条まで、第百十三条、第百十三条の三から第百十五条まで、第百二十三条その他同法の交換分合に関する規定は、第一項の交換分合に関して準用する。
4 第一項の交換分合に関しては、前項において準用する土地改良法の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。
第三章 小笠原諸島復興審議会
(小笠原諸島復興審議会)
第十一条 小笠原諸島復興審議会(次項及び次条において「審議会」という。)は、自治大臣の諮問に応じて旧島民の帰島及び小笠原諸島の復興に関し重要な事項を調査審議する機関とする。
2 審議会は、前項に規定する事項に関し、自治大臣に意見を述べることができる。
第十二条 審議会は、委員二十人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者並びに関係地方公共団体の長及び議会の議長のうちから、自治大臣が任命する。
3 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
5 審議会に会長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
6 会長は、会務を総理する。会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
7 特別の事項について調査審議するため必要があるときは、審議会に、特別委員を置くことができる。
8 特別委員は、当該事項に関し専門的知識を有する者のうちから、自治大臣が任命する。
9 特別委員は、当該事項の調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
10 委員及び特別委員は、非常勤とする。
11 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 雑則
(国有財産の譲与等)
第十三条 国は、関係地方公共団体が復興計画に基づく事業で公共の用に供する施設に関するものを実施するため必要があるときは、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)、国有財産特別措置法(昭和二十七年法律第二百十九号)、国有林野法(昭和二十六年法律第二百四十六号)その他の法令の規定による場合を除くほか、政令で定めるところにより、国有財産を関係地方公共団体に対して、無償又は時価より低い価格で譲渡し、又は貸し付けることができる。
(資金についての配慮)
第十四条 国及び地方公共団体は、帰島した旧島民の生活の再建のため必要な事業等に要する資金について適切な配慮をするものとする。
(帰島に伴う譲渡所得等の課税の特例)
第十五条 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第三十八条第一項及び第二項の規定は、国の行政機関が作成した旧島民の帰島に関する計画(以下「帰島計画」という。)に基づき、永住の目的をもつて小笠原諸島の地域へ移住する者として政令で定めるもの(以下「帰島者」という。)がその移住する日の属する年においてその有する資産で小笠原諸島の地域以外の本邦の地域にあるものを譲渡した場合について準用する。
2 租税特別措置法第三十八条第三項の規定は、帰島者が、その有する資産で小笠原諸島の地域以外の本邦の地域にあるものを譲渡し、その譲渡の日の属する年の翌年で同日から一年以内に小笠原諸島の地域へ移住する見込みであり、かつ、大蔵省令で定めるところにより税務署長の承認を受けた場合について準用する。
3 租税特別措置法第三十八条第四項の規定は前二項の規定を適用する場合について、同条第五項から第七項までの規定は前項の規定の適用を受けた者について準用する。
(帰島に伴う不動産取得税の課税の特例)
第十六条 帰島者が小笠原諸島の地域へ移住する前に有していた不動産で小笠原諸島の地域以外の本邦の地域にあるものを譲渡し、その譲渡した日から二年以内に小笠原諸島の地域において不動産を取得したときは、当該不動産の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、当該譲渡した不動産の固定資産課税台帳に登録された価格(当該譲渡した不動産の価格が固定資産課税台帳に登録されていないときは、政令で定めるところにより、東京都知事が地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて決定した価格)に達するまでの金額を価格(同法第七十三条の二十一に規定する価格をいう。次項において同じ。)から控除するものとする。
2 小笠原諸島の地域に家屋を有していた旧島民で当該家屋を残して離島(小笠原諸島の地域からその他の本邦の地域へ移住することをいう。以下この項において同じ。)をしたもの又はその一般承継人が、小笠原諸島の地域への移住に伴い小笠原諸島の地域において当該家屋と同種の家屋を取得した場合において、その取得した家屋がその者に係る離島前の家屋に代わるものと東京都知事が認めるものであるときは、当該家屋の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、前項の規定によるほか、その者に係る離島前の家屋の価額として政令で定める額に達するまでの金額を価格から控除するものとする。
(土地の利用についての配慮)
第十七条 国及び地方公共団体は、小笠原諸島の地域のうち土地の利用について復興計画の定めのある区域において、土地をその用に供する必要のある事業を実施するときは、当該土地の利用方法が復興計画において定める土地の利用に適合することとなるように当該事業を実施しなければならない。
2 国及び地方公共団体以外の者で、前項に規定する区域において土地をその用に供する必要のある事業を実施しようとするものは、当該事業の実施により復興計画において定める土地の利用がそこなわれないように配慮しなければならない。
(指揮監督)
第十八条 自治大臣は、復興計画に基づく事業の実施について、総合調整を行なうとともに、これらの事業を実施する関係地方公共団体の長その他の機関又はその他の者を指揮監督する。
2 東京都知事は、復興計画に基づく事業の実施について、これらの事業を実施する村の長その他の機関又はその他の者を指揮監督するものとする。この場合において、公立の教育施設の整備事業及び文化財の保護事業の実施に関する指揮監督については、東京都知事は、あらかじめ都の教育委員会と協議しなければならない。
3 前二項の規定は、当該事業の実施について主務大臣又は都の教育委員会の関係法令の規定による指揮監督の権限を妨げるものではない。
(権限の委任)
第十九条 自治大臣は、前条第一項の規定に基づく総合調整及び指揮監督の権限の一部を小笠原総合事務所の長に委任することができる。
(関係行政機関の長との協議)
第二十条 自治大臣は、第四条第二項の規定により復興計画を決定し、若しくは同条第四項の規定によりこれを変更し、又は第五条第一項の規定により復興実施計画を認可し、若しくは同条第三項の規定によりこの変更を認可しようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
(復興計画に基づく事業の予算の見積り等の事務の所管)
第二十一条 復興計画に基づく事業の予算に関する見積り及び予算の執行に関する国の事務は、自治省において掌理する。
(離島振興法の適用除外)
第二十二条 離島振興法(昭和二十八年法律第七十二号)は、小笠原諸島の地域については適用しない。
(政令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、昭和四十九年三月三十一日限り、その効力を失う。ただし、復興計画に基づく事業に係る国の負担金又は補助金のうち昭和四十九年度以降に繰り越されるものについては、第六条の規定は、この法律の失効後も、なおその効力を有する。
(昭和四十四年度に係る復興実施計画の作成の期限)
3 第五条の規定による昭和四十四年度に係る復興実施計画は、同条第一項の規定にかかわらず、第四条第二項の規定による復興計画の決定の日から一箇月以内に、作成し、自治大臣の認可を受けなければならない。
(復興実施計画作成前における事業の実施)
4 前項の規定により復興実施計画が認可されるまでの間に、昭和四十四年度の予算に係る国の負担金又は補助金に係る事業で小笠原諸島の復興のため緊急に実施する必要のあるものとして自治大臣が関係行政機関の長と協議して決定したものについては、当該事業を復興計画に基づく事業とみなして、この法律の規定を適用する。
(帰島計画作成前に移住した者に対する課税の特例)
5 昭和四十四年一月一日から帰島計画が作成されるまでの間に永住の目的をもつて小笠原諸島の地域へ移住した者で政令で定めるものについては、その者を帰島者とみなして第十五条の規定を適用する。
(この法律の失効後の譲渡所得等の課税の特例)
6 帰島者に係る昭和四十九年分以前の年分の所得税については、この法律の失効後も、なお従前の例による。
(この法律の失効後の不動産取得税の課税の特例)
7 帰島者が、この法律の失効の日前二年以内に、その小笠原諸島の地域へ移住する前に有していた不動産で小笠原諸島の地域以外の本邦の地域にあるものを譲渡した場合において、同日後小笠原諸島の地域において不動産を取得したときは、当該不動産の取得については、第十六条第一項の規定は、この法律の失効後も、なおその効力を有する。
(自治省設置法の一部改正)
8 自治省設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十四号の八の次に次の一号を加える。
十四の九 小笠原諸島復興特別措置法(昭和四十四年法律第七十九号)の施行に関する事務を行なうこと。
第十条第一項第五号の五の次に次の一号を加える。
五の六 小笠原諸島復興特別措置法の施行に関すること。
第二十三条の四の次に次の一条を加える。
(小笠原諸島復興審議会)
第二十三条の五 自治省に、小笠原諸島復興審議会を置く。
2 小笠原諸島復興審議会の所掌事務、組織、委員の任命その他の事項については、小笠原諸島復興特別措置法の定めるところによる。
(法務・大蔵・文部・厚生・農林・運輸・建設・自治・内閣総理大臣署名)