国立劇場法

法律第八十八号(昭四一・六・二七)

目次

第一章 総則(第一条―第六条)

第二章 役員及び職員(第七条―第十六条)

第三章 評議員会(第十七条・第十八条)

第四章 業務(第十九条―第二十一条)

第五章 財務及び会計(第二十二条―第三十二条)

第六章 監督(第三十三条・第三十四条)

第七章 雑則(第三十五条―第三十七条)

第八章 罰則(第三十八条・第三十九条)

附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 国立劇場は、主としてわが国古来の伝統的な芸能(第十九条第一項において「伝統芸能」という。)の公開、伝承者の養成、調査研究等を行ない、その保存及び振興を図り、もつて文化の向上に寄与することを目的とする。

 (法人格)

第二条 国立劇場は、法人とする。

 (事務所)

第三条 国立劇場は、事務所を東京都に置く。

 (資本金)

第四条 政府は、別表に掲げる不動産及び政令で定めるその他の財産を出資するものとする。

2 前項の規定による政府の出資があつたときは、同項の財産の価格の合計額に相当する金額をもつて国立劇場の資本金とする。

3 政府は、必要があると認めるときは、国立劇場に追加して出資することができる。

4 国立劇場は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増加するものとする。

5 政府は、第三項の規定により国立劇場に出資するときは、金銭以外の財産を出資の目的とすることができる。

6 政府が出資の目的とする金銭以外の財産の価格は、出資の日現在における時価を基準として評価委員が評価した価格とする。

7 評価委員その他前項に規定する評価に関し必要な事項は、政令で定める。


 (登記)

第五条 国立劇場は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。


 (民法の準用)

第六条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、国立劇場について準用する。

   第二章 役員及び職員


 (役員)

第七条 国立劇場に、役員として、会長一人、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置く。


 (役員の職務及び権限)

第八条 会長は、国立劇場を代表し、その業務を総理する。

2 理事長は、国立劇場を代表し、会長の定めるところにより、会長を補佐して国立劇場の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。

3 理事は、会長の定めるところにより、会長及び理事長を補佐して国立劇場の業務を掌理し、会長及び理事長にともに事故があるときはその職務を代理し、会長及び理事長がともに欠員のときはその職務を行なう。

4 監事は、国立劇場の業務を監査する。

5 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、会長又は文部大臣に意見を提出することができる。

 (役員の任命)

第九条 役員は、文部大臣が任命する。

 (役員の任期)

第十条 役員の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 役員は、再任されることができる。

 (役員の欠格条項)

第十一条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。

 (役員の解任)

第十二条 文部大臣は、役員が前条の規定に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。

2 文部大臣は、役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。

 一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

 二 職務上の義務違反があるとき。

 (役員の兼職禁止)

第十三条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、文部大臣の承認を受けたときは、この限りでない。

 (代表権の制限)

第十四条 国立劇場と会長又は理事長との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が国立劇場を代表する。

 (職員の任命)

第十五条 国立劇場の職員は、会長が任命する。

 (役員及び職員の公務員たる性質)

第十六条 国立劇場の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 評議員会

 (評議員会)

第十七条 国立劇場に、評議員会を置く。

2 評議員会は、二十人以内の評議員で組織する。

3 評議員会は、会長の諮問に応じ、国立劇場の業務の運営に関する重要事項を審議する。

 (評議員)

第十八条 評議員は、国立劇場の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、文部大臣が任命する。

2 第十条及び第十二条第二項の規定は、評議員について準用する。

   第四章 業務

 (業務)

第十九条 国立劇場は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。

 一 劇場施設(伝統芸能の公開のための施設をいう。)を設置し、伝統芸能の公開を行なうこと。

 二 その設置する施設において伝統芸能の伝承者を養成すること。

 三 伝統芸能に関して調査研究を行ない、並びに資料を収集し、及び利用に供すること。

 四 第一号の劇場施設を伝統芸能の保存又は振興を目的とする事業の利用に供すること。

 五 前各号の業務に附帯する業務

2 国立劇場は、前項の業務を行なうほか、前項第一号の劇場施設を一般の利用に供することができる。

 (業務方法書)

第二十条 国立劇場は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、文部大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、文部省令で定める。

 (専門委員)

第二十一条 国立劇場に、第十九条第一項の業務に関する専門の事項について調査審議させるため、専門委員を置くことができる。

   第五章 財務及び会計

 (事業年度)

第二十二条 国立劇場の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

 (事業計画等の認可)

第二十三条 国立劇場は、毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、文部大臣の認可を受けなければならない。これに重要な変更を加えようとするときも、同様とする。

 (決算)

第二十四条 国立劇場は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。

 (財務諸表)

第二十五条 国立劇場は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(次項において「財務諸表」という。)を作成し、これに予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、監事の意見をつけて、決算完結後一月以内に文部大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 国立劇場は、前項の規定による文部大臣の承認を受けた財務諸表を事務所に備えておかなければならない。

 (利益及び損失の処理)

第二十六条 国立劇場は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 国立劇場は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。

 (借入金)

第二十七条 国立劇場は、文部大臣の認可を受けて、長期借入金又は短期借入金をすることができる。

2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、文部大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。

 (償還計画)

第二十八条 国立劇場は、毎事業年度、長期借入金の償還計画をたてて、文部大臣の認可を受けなければならない。

 (余裕金の運用)

第二十九条 国立劇場は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債その他文部大臣の指定する有価証券の取得

 二 銀行への預金又は郵便貯金

 三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託

 (財産の処分等の制限)

第三十条 国立劇場は、文部省令で定める重要な財産を譲り受け、譲渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、文部大臣の認可を受けなければならない。

 (給与及び退職手当の支給の基準)

第三十一条 国立劇場は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、文部大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (文部省令への委任)

第三十二条 この法律に規定するもののほか、国立劇場の財務及び会計に関し必要な事項は、文部省令で定める。

   第六章 監督

 (監督)

第三十三条 国立劇場は、文部大臣が監督する。

2 文部大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、国立劇場に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

3 文部大臣は、国立劇場の健全な運営が図られるよう配意しなければならない。

 (報告及び検査)

第三十四条 文部大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、国立劇場に対してその業務に関し報告をさせ、又はその職員に国立劇場の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第七章 雑則

 (解散)

第三十五条 国立劇場の解散については、別に法律で定める。

 (文化財保護委員会の権限)

第三十六条 この法律に規定する文部大臣の権限のうち政令で定めるものは、文化財保護委員会に行なわせるものとする。

 (大蔵大臣との協議)

第三十七条 文部大臣及び文化財保護委員会は、この法律に基づき次の権限を行なう場合には、あらかじめ、大蔵大臣に協議しなければならない。この場合において、文化財保護委員会がその権限を行なうときは、文部大臣を通じてその協議をするものとする。

 一 第二十条第一項、第二十三条、第二十七条第一項若しくは第二項ただし書、第二十八条又は第三十条の規定による認可

 二 第二十五条第一項又は第三十一条の規定による承認

 三 第二十条第二項、第三十条又は第三十二条の文部省令の制定

 四 第二十九条第一号の規定による指定

   第八章 罰則


 (罰則)

第三十八条 第三十四条第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした国立劇場の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。

第三十九条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした国立劇場の役員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律により認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第五条第一項の政令の規定に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第十九条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。

 四 第二十九条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十三条第二項に規定する命令に違反したとき。


   附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。


 (国立劇場の設立)

第二条 文部大臣は、国立劇場の会長、理事長、理事又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された会長、理事長、理事又は監事となるべき者は、国立劇場の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、理事長、理事又は監事に任命されたものとする。

第三条 文部大臣は、設立委員を命じて、国立劇場の設立に関する事務を処理させる。

2 設立委員は、国立劇場の設立の準備を完了したときは、その事務を前条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。

第四条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

第五条 国立劇場は、設立の登記をすることによつて成立する。


 (経過規定)

第六条 国立劇場の最初の事業年度は、第二十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和四十二年三月三十一日に終わるものとする。

第七条 国立劇場の最初の事業年度の事業計画、予算及び資金計画については、第二十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「国立劇場の成立後遅滞なく」とする。


 (登録税法の一部改正)

第八条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「オリンピック記念青少年総合センター」の下に「、国立劇場」を、「オリンピック記念青少年総合センター法」の下に「、国立劇場法」を加え、同条第二十八号ノ二の次に次の一号を加える。

  二十八ノ三 国立劇場ガ国立劇場法第十九条第一項第一号乃至第四号ノ業務ノ用ニ供スル建物又ハ土地ノ権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ノ登記


 (印紙税法の一部改正)

第九条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ二ノ二中「又ハオリンピック記念青少年総合センター」を「、オリンピック記念青少年総合センター又ハ国立劇場」に改める。


 (地方税法の一部改正)

第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第三号中「オリンピック記念青少年総合センター」の下に「、国立劇場」を加える。

  第七十三条の四第一項第十一号中「及び国立教育会館」を「、国立教育会館及び国立劇場」に改める。

  第三百四十八条第二項第十八号中「及び国立教育会館」を「、国立教育会館及び国立劇場」に改める。


 (入場税法の一部改正)

第十一条 入場税法(昭和二十九年法律第九十六号)の一部を次のように改正する。

  第九条中「文化財のみを公開する場所」の下に「、国立劇場が国立劇場法(昭和四十一年法律第八十八号)第一条に規定する伝統芸能のみを公開する場所」を加える。


 (所得税法の一部改正)

第十二条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第一号の表国立競技場の項の次に次のように加える。

国立劇場

国立劇場法(昭和四十一年法律第八十八号)


 (法人税法の一部改正)

第十三条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第一号の表国立競技場の項の次に次のように加える。

国立劇場

国立劇場法(昭和四十一年法律第八十八号)

別表

 一 土地

  東京都千代田区隼町十三番の一 所在

   宅地 三万四十七・八三平方メートル

 二 建物

  東京都千代田区隼町十三番の一 所在

   鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下二階付き三階建 一むね

    総床面積 二万六千九百八十八・七七平方メートル

(法務・大蔵・文部・自治・内閣総理大臣署名) 

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