採石法
法律第二百九十一号(昭二五・一二・二〇)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 採石権(第四条―第三十一条)
第三章 採石業(第三十二条―第三十四条)
第四章 土地の使用(第三十五条―第三十七条)
第五章 異議の申立及び裁定の申請(第三十八条・第三十九条)
第六章 補則(第四十条―第四十二条)
第七章 罰則(第四十三条―第四十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、採石権の制度を創設し、岩石の採取の事業の健全な発達を図ることによつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「岩石」とは、花こう岩、せん緑岩、はんれい岩、かんらん岩、はん岩、ひん岩、輝緑岩、粗面岩、安山岩、玄武岩、れき岩、砂岩、けつ岩、粘板岩、凝灰岩、片麻岩、じや紋岩、結晶片岩、ベントナイト、酸性白土、けいそう土、陶石、雲母及びひる石をいう。
(行為の効力)
第三条 この法律の規定によつてした処分、手続その他の行為は、採石権者、岩石の採取の事業(以下「採石業」という。)を行う者(以下「採石業者」という。)又は土地の所有者その他土地に関して権利を有する者の承継人に対しても、その効力を有する。
第二章 採石権
(内容及び性質)
第四条 採石権者は、設定行為をもつて定めるところに従い、他人の土地において岩石を採取する権利を有する。
2 採石権は、その内容が地上権又は永小作権による土地の利用を妨げないものに限り、これらの権利の目的となつている土地にも、設定することができる。但し、地上権者又は永小作権者の承諾を得なければならない。
3 採石権は、物権とし、地上権に関する規定を準用する。
(存続期間)
第五条 採石権の存続期間は、設定行為をもつて定めることを要する。
2 前項の存続期間は、二十年以内とする。若し二十年より長い期間をもつて採石権を設定したときは、その存続期間は、二十年に短縮する。
第六条 前条の期間は、更新することができる。但し、更新の時から二十年をこえることができない。
(採石料の増減)
第七条 採石料が岩石の価格の変動又は土地に対する租税その他の公課の増減によつて著しく不相当となつたときは、当事者は、将来に向つてその増減を請求することができる。
(土地の返還)
第八条 採石権者は、採石権が消滅したときは、その土地を原状に回復し、又は原状に回復しないことによつて生ずる損失を補償して、土地を返還しなければならない。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百八条第二項(有益費の償還)の規定は、前項の場合に準用する。
(協議)
第九条 採石権の設定を受けようとする者又は採石権を譲り受けようとする者は、採石権の設定又は譲受について、省令で定める手続に従い、通商産業局長の許可を受けて、土地の所有者及び土地に関して第三者に対抗することができる権利を有する者(以下「権利者」という。)又は採石権者に対し協議することができる。
2 採石権の消滅後一年以内は、採石権者であつた者は、その採石権が設定されていた土地について前項の許可を申請することができない。
(許可の基準)
第十条 通商産業局長は、左に掲げる場合においては、前条第一項の許可をしてはならない。
一 その土地が鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖、沼、池、橋、堤防、ダム、かんがい排水施設、公園、墓地、学校、病院、図書館若しくはその他の公共の用に供する施設の敷地若しくは用地又は建物の敷地であるとき。
二 他にその土地において採石業を行つている者があるとき。
2 通商産業局長は、前条第一項の許可をする場合においてその土地が保安林であるときは、あらかじめ関係都道府県知事に協議しなければならない。
(許可の通知)
第十一条 通商産業局長は、第九条第一項の許可をしたときは、直ちにその旨を土地の所有者及び権利者その他土地に関して権利を有する者又は採石権者に通知しなければならない。
(決定の申請)
第十二条 採石権の設定を受けようとする者又は採石権を譲り受けようとする者は、第九条第一項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、省令で定める手続に従い、通商産業局長の決定を申請することができる。
(申請書の副本の交付等)
第十三条 通商産業局長は、前条の規定による決定の申請を受理したときは、その申請書の副本を土地の所有者及び権利者又は採石権者に交付し、且つ、申請の要旨を土地に関して権利を有する者で権利者以外の者に通知しなければならない。
2 通商産業局長は、前項の規定により申請書の副本を交付したときは、直ちに次条第一項又は第二項の規定による処分の制限の登記を嘱託しなければならない。
(処分の制限)
第十四条 土地の所有者は、前条第一項の規定による申請書の副本の交付を受けた後は、第十二条の規定による申請を拒否する旨の決定があるまで、第二十六条第一項の規定により第十二条若しくは次条第一項の決定若しくは第三十九条第一項の裁定がその効力を失うまで、又は第十二条若しくは次条第一項の決定に基く採石権の設定若しくは土地の所有権の移転の登記の申請があるまでは、通商産業局長の許可を受けなければ、その土地に新たな権利を設定することができない。
2 採石権者は、前条第一項の規定による申請書の副本の交付を受けた後は、第十二条の規定による申請を拒否する旨の決定があるまで、第二十六条第一項の規定により第十二条の決定がその効力を失うまで、又は同条の決定に基く採石権の移転の登記の申請があるまでは、通商産業局長の許可を受けなければ、採石権を変更し、又は消滅させることができない。
3 第十二条の規定による決定の申請をした者は、前条第一項の規定による申請書の副本の交付があつた後において事業を廃止し、又は変更したときは、その事業の廃止又は変更によつて土地の所有者又は採石権者が受けた損失を補償しなければならない。
(買取)
第十五条 土地の所有者は、採石権が設定されることによつてその土地を従来用いていた目的に供することができなくなるときは、通商産業局長に対し、採石権を設定すべき旨を定める決定をする場合においては、これに代えてその土地を買い取るべき旨を定める決定をすべきことを申請することができる。土地の一部を買い取ることによつて残地を従来用いていた目的に供することができなくなる場合において、その残地についても、同様とする。
2 権利者は、権利が変更されることによつて変更後の権利を従来用いていた目的に供することができなくなるときは、通商産業局長に対し、決定において権利を変更すべき旨を定める場合においては、これとともにその変更後の権利を買い取るべき旨を定めるべきことを申請することができる。
3 通商産業局長は、前二項の規定による申請があつたときは、この旨を採石権の設定を受けようとする者に通知しなければならない。
(決定の基準)
第十六条 通商産業局長は、左に掲げる場合においては、採石権を設定し、又は権利者の権利を変更し、若しくは消滅させるべき旨を定める決定をしてはならない。
一 第十条第一項各号に掲げる場合
二 その土地における岩石の採取が保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反するとき。
三 その土地における岩石の採取が経済的に価値がないとき。
四 その土地における岩石の採取が他人の採石業を妨害するとき。
2 通商産業局長は、採石権を設定すべき旨を定める決定をしようとする場合において、前条第一項の規定による申請があり、且つ、その土地を従来用いていた目的に供することができなくなると認めるときは、その土地を買い取るべき旨を定める決定をしなければならない。
3 通商産業局長は、決定において権利者の権利を変更すべき旨を定めようとする場合において、前条第二項の規定による申請があり、且つ、変更後の権利を従来用いていた目的に供することができなくなると認めるときは、決定においてその変更後の権利を買い取るべき旨を定めなければならない。
4 通商産業局長は、左に掲げる場合でなければ、採石権を譲り渡すベき旨を定める決定をしてはならない。
一 採石権者が天災その他避けることができない事由がないのに引き続き二年以上採石業を休止しているとき。
二 採石権者が現に採石業を行つておらず、且つ、六箇月以内に採石業に着手する見込がないとき。
(聴聞)
第十七条 通商産業局長は、第十二条又は第十五条第一項の決定をしようとするときは、あらかじめ採石権の設定を受けようとする者又は採石権を譲り受けようとする者並びに土地の所有者及び権利者その他土地に関して権利を有する者又は採石権者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
3 聴聞に際しては、当事者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(土地調整委員会の承認)
第十八条 通商産業局長は、第十二条又は第十五条第一項の決定をしようとするときは、あらかじめ土地調整委員会の承認を得なければならない。
(決定事項)
第十九条 通商産業局長は、左に掲げる事項を定めて、採石権を設定し、又は権利者の権利を変更し、若しくは消滅させるべき旨を定める決定をしなければならない。
一 採石権を設定すべき土地の区域
二 採石権の設定の時期
三 採石権の存続期間
四 採石料並びにその支払の時期及び方法
五 変更し、又は消滅させるべき権利者の権利及び変更すべき権利者の権利については、その範囲
六 変更後の権利を買い取るべき旨を定めるときは、その買い取るべき変更後の権利、買取の時期、対価並びにその支払の時期及び方法
七 土地の所有者及び権利者その他土地に関して権利を有する者に支払うべき補償金並びにその支払の時期及び方法
2 通商産業局長は、左に掲げる事項を定めて、土地を買い取るべき旨を定める決定をしなければならない。
一 買い取るべき土地の区域
二 土地の買取の時期
三 対価及び権利者その他土地に関して権利を有する者に支払うべき補償金並びにその支払の時期及び方法
四 前項第五号及び第六号に掲げる事項
3 通商産業局長は、左に掲げる事項を定めて、採石権を譲り渡すべき旨を定める決定をしなければならない。
一 譲り渡すべき採石権の目的となつている土地の所在地及びその範囲
二 採石権の譲渡の時期
三 対価並びにその支払の時期及び方法
(決定の方式)
第二十条 第十二条又は第十五条第一項の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
2 通商産業局長は、第十二条又は第十五条第一項の決定をしたときは、決定書の謄本を採石権の設定を受けようとする者又は採石権を譲り受けようとする者並びに土地の所有者及び権利者その他土地に関して権利を有する者又は採石権者に交付しなければならない。
(決定の効果)
第二十一条 第十二条又は第十五条第一項の決定があつたときは、決定の定めるところに従い、採石権の設定を受けようとする者と土地の所有者及び権利者その他土地に関して権利を有する者との間に採石権の設定、土地の買取又は権利者の権利の変更、消滅若しくは買取について、採石を譲り受けようとする者と採石権者との間に採石権の譲受について、それぞれ協議がととのつたものとみなす。
(許可の失効)
第二十二条 第九条第一項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわない場合において、同項の許可の後六箇月以内に第十二条の規定による決定の申請がなかつたときは、許可は、その効力を失う。
(補償金)
第二十三条 第十九条第一項第七号又は第二項第三号の補償金の額は、左に掲げる損失又は費用に相当するものでなければならない。
一 採石権が設定されることによつて土地の所有者が通常受けるべき損失(採石料として支払われる分を除く。)
二 権利者の権利が変更され、又は消滅させられることによつて権利者が通常受けるべき損失
三 採石権が設定され、又は土地が買い取られることによつて権利者その他土地に関して権利を有する者が通常受けるべき損失
四 採石権が設定され、土地が買い取られ、又は権利者の権利が変更されることによつて残地又は変更後の権利の価格が減少し、その他残地又は変更後の権利に関して生ずべき損失
五 採石権が設定され、土地が買い取られ、又は権利者の権利が変更されることによつて必要となる通路、みぞ、さくその他の工作物の新築、改築、増築又は修繕の費用
(担保の提供)
第二十四条 第十二条の決定に基き採石権の設定を受けた者が定期に、又は分割して採石料を支払うべきときは、土地の所有者は、採石権者となつた者に対し、採石料について相当の担保を提供すべきことを請求することができる。この場合においては、採石権者となつた者は、正当な事由がなければ、その承諾を拒むことができない。
2 土地の所有者は、前項の承諾を得ることができないときは、通商産業局長の決定を申請することができる。
3 前項の決定があつたときは、採石権者となつた者の承諾があつたものとみなす。
4 第十三条第一項、第十七条及び第二十条の規定は、第二項の決定に準用する。
(供託)
第二十五条 第十二条又は第十五条第一項の決定において権利者の権利を変更し、又は消滅させるべき旨を定めた場合において、その権利について先取特権、質権又は抵当権が存するときは、補償金を支払うべき者は、その補償金を供託しなければならない。但し、先取特権者、質権者又は抵当権者の承諾を得たときは、この限りでない。
2 前項の場合においては、先取特権者、質権者又は抵当権者は、供託金に対しても、その権利を行うことができる。
(決定等の失効)
第二十六条 採石権の設定を受けようとする者又は採石権を譲り受けようとする者が支払の時期までに採石料(採石料を定期に、又は分割して支払うべきときは、その最初に支払うべき分)、補償金又は対価の支払をしないときは、第九条第一項の許可及び同項の規定による協議、第十二条若しくは第十五条第一項の決定又は第三十九条第一項の裁定は、その効力を失う。
2 前項の規定は、土地の所有者若しくは権利者その他土地に関して権利を有する者又は採石権者が損害賠償の請求をすることを妨げるものではない。
(処分の制限の登記のまつ消)
第二十七条 通商産業局長は、第十二条の規定による申請を拒否する旨の決定をしたとき、前条第一項の規定により第十二条若しくは第十五条第一項の決定若しくは第三十九条第一項の裁定がその効力を失つた場合において、土地の所有者若しくは採石権者の申請があつたとき、又は第十九条第一項第二号の採石権の設定の時期、同条第二項第二号の土地の買取の時期若しくは同条第三項第二号の採石権の譲渡の時期が到来したときは、第十三条第二項の処分の制限の登記のまつ消を嘱託しなければならない。
(存続期間の更新の決定)
第二十八条 採石権者は、土地の所有者と採石権の存続期間の更新に関して協議することができず、又は協議がととのわないときは、省令で定める手続に従い、存続期間の満了前三箇月以上六箇月以内に、通商産業局長の決定を申請することができる。
第二十九条 通商産業局長は、左に掲げる場合においては、採石権の存続期間を更新すべき旨を定める決定をしてはならない。
一 採石権者が採石料を支払うべき場合において、その支払を怠つているとき。
二 採石権者が引き続き二年以上採石業を休止したとき。
三 第十六条第一項各号に掲げる場合
2 通商産業局長は、採石権の存続期間を更新すべき旨を定める決定においては、更新後の存続期間を定めなければならない。
(準用)
第三十条 第十三条第一項、第十五条第一項及び第三項、第十六条第二項、第十七条、第十八条、第十九条第二項、第二十条、第二十一条、第二十四条並びに第二十六条の規定は、第二十八条の決定に準用する。
(決定に基く登記)
第三十一条 第十二条の決定による採石権の設定若しくは移転、第十五条第一項の決定による土地の所有権の移転、第十二条若しくは第十五条第一項の決定による土地に関する所有権以外の権利の移転又は第二十八条の決定による採石権の存続期間の更新の登記は、登記権利者だけで申請することができる。
2 第十二条又は第十五条第一項の決定において、土地に関する所有権以外の権利を変更し、又は消滅させるべき旨を定めたときは、当該権利の変更の登記又は当該権利に関する登記のまつ消は、採石権の設定を受けた者又は土地を買い取つた者からも、申請することができる。
3 前二項の規定による申請書には、補償金又は対価(採石権の設定の登記については、補償金及び最初に支払うべき採石料)の受取証又は供託受領証を添附しなければならない。但し、採石権の存続期間の更新の登記の申請書については、この限りでない。
4 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第百三条第二項及び第百三条ノ二(土地の収用の場合の登記)の規定は、第一項及び第二項の登記に準用する。
5 不動産登記法第五十六条第一項及び第百四十六条第一項(利害関係人の承諾書等)の規定は、第二項の登記については、適用しない。
第三章 採石業
(届出)
第三十二条 採石業者は、採石業に着手したときは、遅滞なく、その採取場の位置及び着手の年月日を通商産業局長に届け出なければならない。
2 採石業者は、採石業を休止し、開始し、又は廃止したときは、その旨を通商産業局長に届け出なければならない。
(公益の保護)
第三十三条 通商産業局長は、岩石の採取のための土地の掘さく又は廃石のたい積により公共の用に供する施設を破壊し、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反すると認めるときは、採石業者に対し、その防止のため必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
2 通商産業局長は、前項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ当該採石業者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
3 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当該採石業者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
4 聴聞に際しては、採石業者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(鉱業権者との協議)
第三十四条 採石業を行う土地の区域と鉱区とが重複するときは、採石業者又は鉱業権者(租鉱区については、租鉱権者。以下同じ。)は、事業の実施について、鉱業権者又は採石業者に対し協議することができる。
2 採石業者又は鉱業権者は、前項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、通商産業局長の決定を申請することができる。
3 通商産業局長は、前項の規定による決定の申請があつたときは、その申請書の副本を鉱業権者又は採石業者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
4 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
5 聴聞に際しては、当事者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
6 通商産業局長は、第二項の決定をしたときは、決定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
7 第二項の決定があつたときは、決定の定めるところに従い、当事者の間に協議がととのつたものとみなす。
第四章 土地の使用
(使用の目的)
第三十五条 採石業者は、岩石の採取を行う土地又はその附近において他人の土地を左に掲げる目的のため利用することが必要且つ適当であつて、他の土地をもつて代えることが著しく困難なときは、これを使用することができる。但し、第二号に掲げる目的のため利用する場合においては、その土地が鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖、沼、池、橋、堤防、ダム、かんがい排水施設、公園、墓地、学校、病院、図書館若しくはその他の公共の用に供する施設の敷地若しくは用地、建物の敷地、農地又は保安林でないときに限る。
一 鉄道、軌道、索道、道路その他岩石の運搬用の施設の開設
二 廃石の捨場の設置
(許可及び公告)
第三十六条 採石業者は、前条の規定により他人の土地を使用しようとするときは、省令で定める手続に従い、通商産業局長に申請して、その許可を受けなければならない。
2 通商産業局長は、前項の規定による許可の申請があつたときは、関係都道府県知事に協議するとともに、採石業者並びに土地の所有者及び土地に関して権利を有する者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
3 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
4 聴聞に際しては、当事者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
5 通商産業局長は、第一項の許可をしたときは、左に掲げる事項を公告しなければならない。
一 土地を使用しようとする者の氏名又は名称及び住所
二 使用の目的
三 使用しようとする土地の所在地及び区域
(土地収用法の適用)
第三十七条 第三十五条の規定による土地の使用に関しては、この法律に別段の定がある場合を除く外、土地収用法(明治三十三年法律第二十九号)の規定を適用する。
2 第三十五条の規定による土地の使用については、前条第一項又は第五項の規定による許可又は公告があつたときは、土地収用法第十二条又は第十四条の規定による事業の認定又は公告があつたものとみなす。
第五章 異議の申立及び裁定の申請
(異議の申立)
第三十八条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による通商産業局長の処分に不服のある者は、通商産業大臣に対して異議の申立をすることができる。但し、次条の規定により土地調整委員会の裁定を申請することができる事項については、この限りでない。
2 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第七章(異議の申立)の規定は、前項の規定による異議の申立に準用する。
(裁定の申請)
第三十九条 第十二条の決定(採石権の譲受に係るものを除く。)、第十五条第一項(第三十条において準用する場合を含む。)の決定、第二十八条の決定、第三十六条第一項の許可若しくはその拒否又は第三十七条第一項の規定により適用される土地収用法の規定による土地の使用に関する裁決若しくは決定に不服のある者は、土地調整委員会の裁定を申請することができる。
2 前項の規定により土地調整委員会の裁定を申請することができる事項については、土地収用法第八十一条第一項の規定による訴願を提起することができない。
第六章 補則
(手数料)
第四十条 左の表の上欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に掲げる金額の範囲内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
納付しなければならない者 |
金額 |
一 第九条第一項の規定による許可の申請をする者 |
一件につき 三千円 |
二 第十二条の規定による決定の申請をする者 |
一件につき 三千円 |
三 第二十八条の規定による決定の申請をする者 |
一件につき 三千円 |
四 第三十四条第二項の規定による決定の申請をする者 |
一件につき 千円 |
五 第三十六条第一項の規定による土地の使用の許可の申請をする者 |
一件につき 三千円 |
(公示)
第四十一条 通商産業局長は、この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分をしたときは、省令で定める手続に従い、その要旨を公示しなければならない。
(報告及び検査)
第四十二条 通商産業大臣及び通商産業局長は、この法律の施行に必要な限度において、採石業者からその業務の状況に関する報告を徴し、又はその職員にその採取場若しくは事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 罰則
第四十三条 第三十三条第一項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第四十四条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第四十二条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第四十二条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
2 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第六号中「又ハ賃借権」を「、賃借権又ハ採石権」に改める。
3 不動産登記法の一部を次のように改正する。
第一条に左の一号を加える。
九 採石権
第百二十七条ノ二を第百二十七条ノ三とし、第百二十七条ノ二として次の一条を加える。
第百二十七条ノ二 採石権ノ設定又ハ移転ノ登記ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ採石権設定ノ範囲及ビ其存続期間ヲ記載シ若シ登記原因ニ採石権ノ内容、採石料及ビ其支払ノ時期ノ定アルトキハ之ヲ記載スルコトヲ要ス
(内閣総理大臣・法務総裁・通商産業大臣署名)