鉱業法
法律第二百八十九号(昭二五・一二・二〇)
目次
第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 鉱業権(第十一条―第七十条)
第三章 租鉱権(第七十一条―第八十七条)
第四章 勧告及び協議(第八十八条―第百条)
第五章 土地の使用及び収用(第百一条―第百八条)
第六章 鉱害の賠償
第一節 賠償義務(第百九条―第百十六条)
第二節 担保の供託(第百十七条―第百二十一条)
第三節 和解の仲介及び調停(第百二十二条―第百六十四条)
第四節 地方鉱害賠償基準協議会(第百六十五条―第百七十条)
第七章 異議の申立(第百七十一条―第百八十条)
第八章 補則(第百八十一条―第百九十条)
第九章 罰則(第百九十一条―第百九十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、鉱物資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本的制度を定めることを目的とする。
(国の権能)
第二条 国は、まだ掘採されない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦与する権能を有する。
(適用鉱物)
第三条 この条以下において「鉱物」とは、金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛鉱、すず鉱、アンチモニー鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ鉱、ニツケル鉱、コバルト鉱、りん鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスフアルト、可燃性天然ガス、硫黄、石こう、重晶石、明ばん石、ほたる石、石綿、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土(ゼーゲルコーン番号三十一以上の耐火度を有するものに限る。以下同じ。)及び砂鉱(砂金、砂鉄、砂すずその他ちゆう積鉱床をなす金属鉱をいう。以下同じ。)をいう。
2 前項の鉱物の廃鉱又は鉱さいであつて、土地と附合しているものは、鉱物とみなす。
(鉱業)
第四条 この法律において「鉱業」とは、鉱物の試掘、採掘及びこれに附属する選鉱、製錬その他の事業をいう。
(鉱業権)
第五条 この法律において「鉱業権」とは、登録を受けた一定の土地の区域(以下「鉱区」という。)において、登録を受けた鉱物及びこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し、及び取得する権利をいう。
(租鉱権)
第六条 この法律において「租鉱権」とは、設定行為に基き、他人の鉱区において、鉱業権の目的となつている鉱物を掘採し、及び取得する権利をいう。
(鉱物の掘採及び取得)
第七条 まだ掘採されない鉱物は、鉱業権によるのでなければ、採掘してはならない。但し、左の各号に掲げる場合は、この限りでない。
一 可燃性天然ガスを営利を目的としないで、単に一家の自用に供するとき。
二 鉱業権の目的となつていない石灰石、ドロマイト又は耐火粘土を営利を目的としないで、単に一家の自用に供するとき。
(分離鉱物の帰属)
第八条 鉱区において、鉱業権又は租鉱権によらないで土地から分離された第五条の鉱物は、前条第一号に掲げる場合を除き、その鉱業権者又は租鉱権者の所有とする。
2 鉱区外において、土地から分離された鉱物は、無主の動産とする。
(権利義務の承継)
第九条 この法律に規定する鉱業権者又は租鉱権者の権利義務は、鉱業権又は租鉱権とともに移転する。
(行為の効力の承継)
第十条 この法律の規定によつてした手続その他の行為は、鉱業権の設定を受けようとする者、租鉱権者となろうとする者、鉱業出願人(鉱業権の設定の出願をした者をいう。以下同じ。)、鉱業権者、租鉱権者、土地の所有者又は関係人の承継人に対しても、その効力を有する。
第二章 鉱業権
(種類)
第十一条 鉱業権は、試掘権及び採掘権とする。
(性質)
第十二条 鉱業権は、物権とみなし、この法律に別段の定がある場合を除く外、不動産に関する規定を準用する。
第十三条 鉱業権は、相続その他の一般承継、譲渡、滞納処分及び強制執行の目的となる外、権利の目的となることができない。但し、採掘権は、抵当権及び租鉱権の目的となることができる。
(鉱区及びその面積)
第十四条 鉱区の境界は、直線で定め、地表の境界線の直下を限とする。
2 鉱区の面積は、石炭、石油、アスフアルト及び可燃性天然ガスについては十五ヘクタール、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石及び耐火粘土については一ヘクタール、その他の鉱物については三ヘクタールを下ることができない。但し、砂鉱については、この限りでない。
3 鉱区の面積は、三百五十ヘクタールをこえることができない。但し、鉱物の合理的開発上やむを得ないときは、この限りでない。
(鉱区に関する制限)
第十五条 土地調整委員会において、鉱物を掘採することが一般公益又は農業、林業若しくはその他の産業と対比して適当でないと認め、鉱物を指定して鉱業権の設定を禁止した地域(以下「鉱区禁止地域」という。)は、その鉱物については、鉱区とすることができない。
第十六条 同一の地域においては、二以上の鉱業権を設定することができない。但し、異種の鉱床中に存する鉱物を目的とする場合及び第四十六条の場合は、この限りでない。
2 前項但書の場合においては、鉱業権者は、互にその権利を制限される。
(鉱業権者の資格)
第十七条 日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。但し、条約に別段の定があるときは、この限りでない。
(試掘権の存続期間及びその延長)
第十八条 試掘権の存続期間は、登録の日から二年とする。
2 前項の期間は、その満了に際し、試掘権者の申請により、二回(石油を目的とする試掘権については三回)に限り延長することができる。
3 前項の規定により延長する期間は、一回ごとに二年とする。
4 第二項の申請は、省令で定める手続に従い、存続期間の満了前三箇月以上六箇月以内にしなければならない。
第十九条 通商産業局長は、前条第二項の申請があつた場合において、試掘権者が誠実に探鉱をした事実が明らかであり、且つ、鉱床の状態を確認するため更に探鉱を継続する必要があると認めるときでなければ、延長の許可をしてはならない。
第二十条 第十八条第二項の申請があつたときは、試掘権の存続期間の満了の後でも、その申請が拒否されるまで、又は延長の登録があるまでは、その試掘権は、存続するものとみなす。
(設定の出願)
第二十一条 鉱業権の設定を受けようとする者は、通商産業局長に出願して、その許可を受けなければならない。
2 前項の規定による出願をしようとする者は、省令で定める手続に従い、引受時刻証明の取扱とした第一種郵便物により、左に掲げる事項を記載した願書に区域図を添えて、通商産業局長に提出しなければならない。
一 出願の区域の所在地
二 出願の区域の面積
三 目的とする鉱物の名称
四 氏名又は名称及び住所
3 同一の地域において二種以上の鉱物を掘採しようとするときは、各種の鉱物ごとに第一項の規定による出願をしなければならない。但し、同種の鉱床中に存する二種以上の鉱物を掘採しようとするときは、この限りでない。
(鉱床説明書)
第二十二条 採掘権の設定を受けようとする者は、前条第一項の規定による出願と同時に、出願の区域について目的とする鉱物の鉱床の位置、走向、傾斜、厚さその他鉱床の状態を記述した鉱床説明書を提出しなければならない。
2 前項の鉱床説明書には、同項の事項の外、予想される鉱害の範囲及び態様について記述しなければならない。
(共同鉱業出願人)
第二十三条 二人以上共同して鉱業権の設定の出願をした者(以下「共同鉱業出願人」という。)は、省令で定める手続に従い、そのうちの一人を代表者と定め、これを通商産業局長に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出がないときは、通商産業局長は、代表者を指定する。
3 前二項の代表者の変更は、通商産業局長に届け出なければ、その効力を生じない。
4 代表者は、国に対して共同鉱業出願人を代表する。
5 共同鉱業出願人は、組合契約をしたものとみなす。
(都道府県知事との協議)
第二十四条 通商産業局長は、鉱業権の設定の出願があつたときは、関係都道府県知事(国の所有する土地については、当該行政機関)に協議しなければならない。
(土地の所有者の意見書)
第二十五条 石灰石、ドロマイト、耐火粘土、砂鉱等地表に近い部分に存する鉱物について採掘権の設定の出願があり、その鉱物の掘採により土地の利用を妨害すると認めるときは、通商産業局長は、採掘権の設定の出願をした土地の区域(以下「採掘出願地」という。)に係る土地(国の所有するものを除く。)の所有者に出願があつた旨を通知し、相当の期限を附して意見書を提出する機会を与えなければならない。
2 通商産業局長は、前項の出願をした者に対し、相当の期限を附して採掘出願地に係る土地の所有者の氏名又は名称及び住所を記載した書面の提出を命ずることができる。
(設備設計書)
第二十六条 通商産業局長は、鉱害を防止する方法を調査するため必要があると認めるときは、鉱業出願人に対し、相当の期限を附して事業の設備に関する設計書の提出を命ずることができる。
(優先権)
第二十七条 鉱業権の設定の出願をした土地の区域(以下「鉱業出願地」という。)が重複するときは、その重複する部分については、願書の発送の日時が先である者が鉱業権の設定について優先権を有する。
2 試掘権の設定の出願をした土地の区域(以下「試掘出願地」という。)と採掘出願地とが重複する場合において、願書の発送の日時が同一であるときは、その重複する部分については、採掘権の設定の出願をした者(以下「採掘出願人」という。)が優先権を有する。
3 試掘出願地が重複し、又は採掘出願地が重複する場合において、願書の発送の日時が同一であるときは、通商産業局長は、公正な方法でくじを行い、優先権者を定める。
(採掘出願の日時)
第二十八条 試掘権の設定の出願をした者(以下「試掘出願人」という。)がその試掘出願地と重複してその目的となつている鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的として採掘権の設定の出願をしたときは、その重複する部分については、試掘権の設定の出願をしなかつたものとみなし、試掘権の設定の願書の発送の日時に採掘権の設定の出願をしたものとみなす。但し、前条第二項の場合においては、この限りでない。
2 前項本文の規定は、採掘出願人がその採掘出願地と重複してその目的となつている鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的として試掘権の設定の出願をした場合に準用する。但し、試掘権者がその鉱区と重複して採掘権の設定の出願をし、その試掘権の消滅後更に試掘権の設定の出願をしたときは、この限りでない。
3 前二項の規定は、第三十七条第一項、第三十八条第一項又は第三十九条第一項の規定による命令を受けた場合における期限経過後の出願には、適用しない。
(不許可)
第二十九条 通商産業局長は、試掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区と重複するときは、その重複する部分については、その出願を許可してはならない。
第三十条 通商産業局長は、採掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の他人の鉱区又は自己の採掘鉱区と重複するときは、その重複する部分については、その出願を許可してはならない。
第三十一条 通商産業局長は、採掘出願地が願書の発送の時においてその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の自己の試掘鉱区と重複する場合において、その重複する部分がなお試掘を要すると認めるときは、その部分については、その出願を許可してはならない。
第三十二条 通商産業局長は、試掘権がその存続期間の満了前に消滅し、又は試掘鉱区の減少があつた場合において、その消滅又は試掘鉱区の減少の日から六十日以内(試掘権の残存すべき期間又は残存する期間が六十日に満たないときは、その期間内)に、その試掘権の目的となつていた鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物を目的とする試掘権の設定の出願があつたときは、その消滅した試掘権の鉱区に該当する部分又は試掘鉱区の減少した部分に該当する部分については、その出願を許可してはならない。
第三十三条 通商産業局長は、第十五条の規定による禁止が解除された場合において、その解除の日から三十日以内に禁止を解除された鉱物を目的とする鉱業権の設定の出願があつたときは、その禁止が解除された地域に該当する部分については、その出願を許可してはならない。
第三十四条 通商産業局長は、鉱業出願地がその目的となつている鉱物と異種の鉱床中に存する鉱物の他人の鉱区と重複し、又はその目的となつている鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の他人の鉱区と隣接する場合において、当該鉱業出願地における鉱物の掘採が他人の鉱業の実施を著しく妨害すると認めるときは、その部分については、その出願を許可してはならない。
第三十五条 通商産業局長は、鉱業出願地における鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるとき、又は保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、若しくは農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反すると認めるときは、その部分については、その出願を許可してはならない。
(鉱業出願地の増減)
第三十六条 鉱業出願人は、鉱業出願地の増減の出願をすることができる。
2 第二十一条、第二十二条及び第二十四条から前条までの規定は、前項の出願に準用する。
(採掘出願地の増減命令)
第三十七条 通商産業局長は、採掘出願地の位置形状が鉱床の位置形状と相違し、採掘出願地の位置形状を変更しなければその鉱床の完全な開発ができないと認めるときは、採掘出願地の位置形状が鉱床の位置形状に合致するように、採掘出願地の増減の出願を命ずることができる。
2 前項の規定による命令に基いてその命令書の到達の日から三十日以内にした採掘出願地の増減の出願は、採掘権の設定の願書の発送の日時にしたものとみなす。但し、既に他人の鉱区となつている部分又は他人の鉱業権の設定の出願が許可されている部分については、この限りでない。
3 通商産業局長は、採掘出願人が第一項の規定による命令書の到達の日から三十日以内に採掘出願地の増減の出願をしないときは、採掘権の設定の出願を許可してはならない。
(転願命令)
第三十八条 通商産業局長は、試掘出願地における鉱物の存在が明らかであり、その鉱量、品位等にかんがみ、試掘出願地が採掘権の設定に適すると認めるときは、採掘権の設定の出願を命ずることができる。
2 通商産業局長は、試掘出願人が前項の規定による命令書の到達の日から三十日以内に採掘権の設定の出願をしないときは、試掘権の設定の出願を許可してはならない。
第三十九条 通商産業局長は、採掘出願地における鉱物の存在が明らかでなく、あらかじめ試掘を要すると認めるときは、試掘権の設定の出願を命ずることができる。
2 通商産業局長は、採掘出願人が前項の規定による命令書の到達の日から三十日以内に試掘権の設定の出願をしないときは、採掘権の設定の出願を許可してはならない。
(命令の手続)
第四十条 通商産業局長は、第三十七条第一項、第三十八条第一項又は前条第一項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ当該鉱業出願人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当該鉱業出願人に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
3 聴聞に際しては、鉱業出願人及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(鉱業出願人の名義の変更)
第四十一条 鉱業出願人の名義は、変更することができる。
第四十二条 鉱業出願人の名義の変更は、相続その他の一般承継又は死亡による共同鉱業出願人の脱退の場合を除き、省令で定める手続に従い、通商産業局長に届け出なければ、その効力を生じない。
2 相続その他の一般承継又は死亡による共同鉱業出願人の脱退により鉱業出願人の名義の変更があつたときは、省令で定める手続に従い、遅滞なく、その旨を通商産業局長に届け出なければならない。
(許可の失効)
第四十三条 鉱業出願人が鉱業権の設定の出願の許可の通知を受けた日から三十日以内に、省令で定める手続に従い、登録税を納付しないときは、許可は、その効力を失う。
(共同鉱業権者)
第四十四条 鉱業権を共有する者(以下「共同鉱業権者」という。)は、省令で定める手続に従い、そのうちの一人を代表者と定め、これを通商産業局長に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出がないときは、通商産業局長は、代表者を指定する。
3 前二項の代表者の変更は、通商産業局長に届け出なければ、その効力を生じない。
4 代表者は、国に対して共同鉱業権者を代表する。
5 共同鉱業権者は、組合契約をしたものとみなす。
(鉱区の増減)
第四十五条 鉱業権者は、鉱区の増減の出願をすることができる。
2 採掘権者は、抵当権が設定されている採掘権については、あらかじめ抵当権者の承認を得なければ、鉱区の減少の出願をすることができない。
3 第二十一条、第二十二条、第二十四条から第三十五条まで及び第四十三条の規定は、第一項の出願に準用する。
(掘進増区)
第四十六条 採掘鉱区がその目的とする鉱物と同種の鉱床中に存する鉱物の他人の鉱区と隣接する場合において、鉱床の位置形状により隣接鉱区に掘進しなければその鉱床の完全な開発ができないときは、その隣接鉱区の鉱業権者及び抵当権者の承諾を得て、鉱床を定めて、鉱区の増加の出願をすることができる。この場合において、鉱業権者及び抵当権者は、正当な事由がなければ、その承諾を拒むことができない。
2 前項の出願については、前条第三項の規定にかかわらず、第二十二条第二項及び第二十四条から第三十五条までの規定は、準用しない。
第四十七条 採掘権者は、前条第一項の承諾を得ることができないときは、通商産業局長の決定を申請することができる。
2 通商産業局長は、前項の規定による決定の申請を受理したときは、その申請書の副本を隣接鉱区の鉱業権者及び抵当権者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
3 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
4 聴聞に際しては、当事者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
5 通商産業局長は、第一項の決定をしたときは、決定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
6 前項の決定があつたときは、隣接鉱区の鉱業権者及び抵当権者の承諾があつたものとみなす。
(鉱区の増減命令)
第四十八条 通商産業局長は、採掘鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違し、その鉱区の位置形状を変更しなければその鉱床の完全な開発ができないと認めるときは、その鉱区の位置形状が鉱床の位置形状に合致するように、鉱区の増減の出願を命ずることができる。
2 第三十七条第二項及び第四十条の規定は、前項の場合に準用する。
(採掘出願命令)
第四十九条 通商産業局長は、試掘鉱区における鉱物の存在が明らかであり、その鉱量、品位等にかんがみ、試掘鉱区が採掘権の設定に適すると認めるときは、採掘権の設定の出願を命ずることができる。
2 第四十条の規定は、前項の規定による命令に準用する。
(鉱区の分割及び合併)
第五十条 採掘権者は、鉱区の分割又は同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区の合併の出願をすることができる。
2 採掘権者は、鉱区を分割してこれを同種の鉱床中に存する鉱物の他の鉱区に合併し、又は同種の鉱床中に存する鉱物の二以上の鉱区の各一部を分割しこれを合併して一の鉱区とする出願をすることができる。
3 第二十一条及び第四十三条の規定は、前二項の出願に準用する。
第五十一条 採掘権者は、抵当権が設定されている採掘権については、あらかじめ抵当権者の承諾及び抵当権の順位に関する協定を経なければ、前条第一項又は第二項の出願をすることができない。
(取消等の処分)
第五十二条 通商産業局長は、錯誤により、鉱業権の設定又は鉱区の増減若しくは分割若しくは合併の出願を許可したときは、その錯誤を訂正するため、鉱業権の取消又は変更の処分をしなければならない。
第五十三条 通商産業局長は、鉱物の掘採が保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反するようになつたと認めるときは、鉱区のその部分について減少の処分をし、又は鉱業権を取り消さなければならない。
第五十四条 通商産業局長は、鉱物の掘採が他人の鉱業を著しく妨害するに至つた場合において、他にその妨害を排除する方法がないと認めるときは、鉱区のその部分について減少の処分をし、又は鉱業権を取り消すことができる。
第五十五条 通商産業局長は、鉱業権者が左の各号の一に該当するときは、鉱業権を取り消すことができる。
一 第六十二条第一項若しくは第二項の規定に違反して事業に着手しないとき、又は同条第三項の規定に違反して引き続き一年以上休業したとき。
二 施業案によらないで鉱業を行つたとき。
三 鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二十三条第一項の場合において、同項の特別掘採計画によらないで鉱物を掘採したとき。
四 第四十八条第一項又は第四十九条第一項の規定による命令に従わないとき。
五 第百二十条の規定による命令に従わないとき。
六 鉱山保安法第二十二条第二項又は第二十四条の規定による命令に従わないとき。
第五十六条 第四十条の規定は、第五十三条、第五十四条又は前条第一号から第三号まで若しくは第五号の規定による鉱区の減少の処分又は鉱業権の取消に準用する。
(採掘権の取消と抵当権)
第五十七条 通商産業局長は、採掘権の取消による消滅の登録をしたときは、直ちにその旨を抵当権者に通知しなければならない。
2 抵当権者は、前項の規定による通知の到達の日から三十日以内に、採掘権の競売の申立をすることができる。但し、第五十二条から第五十四条までの規定による採掘権の取消の場合は、この限りでない。
3 採掘権は、前項の期間内又は競売の手続が完結する日までは、競売の目的の範囲内で、なお存続するものとみなす。
4 競落を許す決定が確定したときは、採掘権の取消は、その効力を生じなかつたものとみなす。
5 競売による売得金は、競売の費用及び抵当権者に対する債務の弁済に充て、その残余は、国庫に帰属する。
(採掘権の放棄と抵当権)
第五十八条 前条の規定は、通商産業局長が採掘権の放棄による消滅の登録をした場合に準用する。
(登録)
第五十九条 左に掲げる事項は、鉱業原簿に登録する。
一 鉱業権の設定、変更、存続期間の延長、移転、消滅及び処分の制限
二 共同鉱業権者の脱退
三 採掘権を目的とする抵当権の設定、変更、移転、消滅及び処分の制限
2 前項の規定による登録は、登記に代るものとする。
3 登録に関する規程は、政令で定める。
(登録の効力)
第六十条 前条第一項に掲げる事項は、相続その他の一般承継、死亡による共同鉱業権者の脱退、混同若しくは担保する債権の消滅による抵当権の消滅又は存続期間の満了による鉱業権の消滅の場合を除き、登録しなければ、その効力を生じない。
(表示の変更)
第六十一条 通商産業局長は、鉱区の所在地の名称若しくは地目、境界又は面積についての鉱区図の記載が事実と相違することを発見したときは、その鉱区図を更正し、当該鉱業権につき変更の登録をした後、その旨を鉱業権者に通知しなければならない。
(事業着手の義務)
第六十二条 鉱業権者は、鉱業権の設定又は移転の登録があつた日から六箇月以内に、事業に着手しなければならない。
2 鉱業権者は、やむを得ない事由により前項の期間内に事業に着手することができないときは、期間を定め、事由を具して、通商産業局長の認可を受けなければならない。
3 鉱業権者は、引き続き一年以上その事業を休止しようとするときは、期間を定め、事由を具して、通商産業局長の認可を受けなければならない。
4 鉱業権者は、前項の認可を受けて休止した事業を開始したときは、遅滞なく、その旨を通商産業局長に届け出なければならない。
(施業案)
第六十三条 試掘権者は、事業に着手する前に、省令で定める手続に従い、施業案を定め、これを通商産業局長に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。
2 採掘権者は、事業に着手する前に、省令で定める手続に従い、施業案を定め、通商産業局長の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。
3 通商産業局長は、前項の認可をするには、あらかじめ鉱山保安監督部長に協議しなければならない。
4 鉱業権者は、第一項の規定により届出をし、又は第二項の規定により認可を得た施業案によらなければ、鉱業を行つてはならない。
(掘採の制限)
第六十四条 鉱業権者は、鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖、沼、池、橋、堤防、ダム、かんがい、排水施設、公園、墓地、学校、病院、図書館及びその他の公共の用に供する施設並びに建物の地表地下とも五十メートル以内の場所において鉱物を掘採するには、他の法令の規定によつて許可又は認可を受けた場合を除き、管理庁又は管理人の承諾を得なければならない。但し、当該管理庁又は管理人は、正当な事由がなければ、その承諾を拒むことができない。
(重複鉱区における鉱業)
第六十五条 第四十六条第一項の規定により隣接鉱区に重複して鉱区の増加の出願をし、その登録を得た採掘権者は、その重複する部分においては、同項の承諾を得て定めた鉱床以外の鉱床に掘進することができない。但し、隣接鉱区の鉱業権が消滅した後は、この限りでない。
第六十六条 異種の鉱床中に存する鉱物の鉱区が重複するときは、その重複する部分について鉱業権の設定又は鉱区の増加による変更の登録を得た日が後である者は、その先である者の承諾を得なければ、その部分において鉱物を掘採してはならない。但し、鉱業権の設定又は鉱区の増加による変更の登録を得た日が先である者は、正当な事由がなければ、その承諾を拒むことができない。
2 異種の鉱床中に存する鉱物の鉱区が重複する場合において、その重複する部分について鉱業権の設定又は鉱区の増加による変更の登録を得た日が同日であるときは、鉱業権者は、他の鉱業権者と協議し、その協議のととのつたところによらなければ、その部分において鉱物を掘採してはならない。
3 試掘権者が試掘権の存続期間中に、同種の鉱床中に存する鉱物について試掘鉱区に重複して採掘権の設定の出願をし、その許可を受けたときは、前二項の規定の適用については、その重複する部分に限り、試掘権の設定又は試掘鉱区の増加による変更の登録があつた日に採掘権の設定又は採掘鉱区の増加による変更の登録があつたものとみなす。
4 第一項の承諾を得ることができないとき、又は第二項の規定による協議をすることができず、若しくは協議がととのわないときは、鉱業権者は、通商産業局長の決定を申請することができる。
5 第四十七条第二項から第六項までの規定は、前項の決定に準用する。
(鉱種名の変更)
第六十七条 鉱業権者は、その鉱区において、登録を受けた鉱物と同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採しようとするときは、説明書を添えて通商産業局長に届け出て、その鉱物の存在の確認を受けなければならない。
(鉱業事務所)
第六十八条 鉱業権者は、事業に着手したときは、遅滞なく、鉱区の所在地又はその附近に鉱業事務所を定め、その所在地及び着手の年月日を通商産業局長に届け出なければならない。
(試掘工程表)
第六十九条 試掘権者は、省令で定める手続に従い、試掘工程表を作成し、鉱業事務所に備えて置かなければならない。
(坑内実測図及び鉱業簿)
第七十条 採掘権者は、省令で定める手続に従い、坑内実測図及び鉱業簿を作成し、鉱業事務所に備えて置かなければならない。
第三章 租鉱権
(性質)
第七十一条 租鉱権は、物権とみなし、この法律に別段の定がある場合を除く外、不動産に関する規定を準用する。
第七十二条 租鉱権は、相続その他の一般承継の目的となる外、権利の目的となることができない。
(租鉱区)
第七十三条 租鉱権の区域(以下「租鉱区」という。)の境界は、直線で定め、地表の境界線の直下を限とする。
(設定)
第七十四条 租鉱権は、特定の鉱床を目的として設定することができる。
第七十五条 同一の鉱区中同一の区域においては、二以上の租鉱権を設定することができない。但し、前条の場合は、この限りでない。
(存続期間及びその延長)
第七十六条 租鉱権の存続期間は、登録の日から五年以内とする。
2 前項の期間は、その満了に際し、延長することができる。
3 前項の規定により延長する期間は、五年をこえることができない。
4 租鉱権者及び採掘権者は、第二項の規定により存続期間を延長しようとするときは、省令で定める手続に従い、契約書を添えて通商産業局長に申請し、その認可を受けなければならない。
(設定の申請)
第七十七条 租鉱権を設定しようとするときは、租鉱権者となろうとする者及び採掘権者は、省令で定める手続に従い、左に掲げる事項を記載した申請書に区域図、租鉱権の設定を必要とする理由を記載した書面及びその設定に関する契約書を添えて、通商産業局長に提出し、その認可を受けなければならない。
一 申請の区域の所在地
二 申請の区域の面積
三 目的とする鉱物の名称
四 採掘権の登録番号
五 鉱床を特定したときは、その鉱床
六 存続期間
七 租鉱料を支払うべきときは、租鉱料並びにその支払の時期及び方法
八 氏名又は名称及び住所
2 特定の鉱床を目的として租鉱権を設定しようとするときは、前項の書類の外、申請書に鉱床図及びその説明書を添えなければならない。
3 通商産業局長は、残鉱の掘採その他鉱区の一部における鉱物の経済的開発を行うため必要があると認めるときでなければ、第一項の規定による申請を認可してはならない。
4 租鉱権者となろうとする者が租鉱権の設定の認可の通知を受けた日から三十日以内に、省令で定める手続に従い、登録税を納付しないときは、認可は、その効力を失う。
(租鉱区の増減)
第七十八条 租鉱権者及び採掘権者は、租鉱区を増減することができる。
2 前条の規定は、租鉱区の増減に準用する。
(行為の効力の承継)
第七十九条 租鉱権の設定又は租鉱区の増加があつたときは、この法律の規定により採掘権者がした手続その他の行為は、租鉱権の範囲内において、租鉱権者に対しても、その効力を有する。
2 租鉱権の消滅又は租鉱区の減少があつたときは、この法律の規定により租鉱権者がした手続その他の行為は、採掘権の範囲内において、採掘権者に対しても、その効力を有する。但し、採掘権の消滅による租鉱権の消滅の場合は、この限りでない。
(採掘権の変更と租鉱権)
第八十条 採掘権者は、租鉱区について鉱区の減少又は分割の出願をしようとするときは、あらかじめ租鉱権者の承諾を得なければならない。採掘権の上に租鉱権が存する場合において、採掘権を放棄しようとするときも、同様とする。
(消滅の請求)
第八十一条 採掘権者は、租鉱権者が租鉱料を支払うべき場合において、その支払を遅滞したときは、三箇月以上の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行しないときは、租鉱権の消滅を請求することができる。
(放棄)
第八十二条 租鉱権者は、租鉱料を支払うべきときは、六箇月前に予告し、又は期限の到来しない六箇月分の租鉱料を支払わなければ、租鉱権を放棄することができない。但し、天災その他避けることのできない事由によつて、租鉱権を設定した目的を達することができなくなつたときは、この限りでない。
(取消)
第八十三条 通商産業局長は、租鉱権者が左の各号の一に該当するときは、租鉱権を取り消すことができる。
一 第八十六条の規定に違反して事業に着手しないとき、又は引き続き六箇月以上休業したとき。
二 施業案によらないで鉱業を行つたとき。
三 鉱山保安法第二十三条第一項の場合において、同項の特別掘採計画によらないで鉱物を掘採したとき。
四 第百二十条の規定による命令に従わないとき。
五 鉱山保安法第二十二条第二項又は第二十四条の規定による命令に従わないとき。
2 第四十条の規定は、前項第一号から第四号までの規定による租鉱権の取消に準用する。
(登録)
第八十四条 租鉱権の設定、変更、存続期間の延長、相続その他の一般承継による移転及び消滅は、鉱業原簿に登録する。
2 前項の規定による登録は、登記に代るものとする。
3 登録に関する規程は、政令で定める。
(登録の効力)
第八十五条 前条第一項に掲げる事項は、相続その他の一般承継、採掘鉱区の減少による租鉱権の変更又は採掘権の消滅、採掘鉱区の減少、存続期間の満了若しくは混同による租鉱権の消滅の場合を除き、登録しなければ、その効力を生じない。
(事業着手の義務)
第八十六条 租鉱権者は、租鉱権の設定又は移転の登録があつた日から六箇月以内に、事業に着手しなければならない。
2 租鉱権者は、引き続き六箇月以上その事業を休止してはならない。
(準用)
第八十七条 第十七条、第二十条、第二十三条第一項から第四項まで、第二十六条、第四十四条第一項から第四項まで、第五十二条から第五十四条まで、第五十六条、第六十一条、第六十三条第二項から第四項まで、第六十四条、第六十八条及び第七十条の規定は、租鉱権及び租鉱権者の鉱業に準用する。
第四章 勧告及び協議
(鉱業権の交換又は売渡)
第八十八条 通商産業局長は、同種の鉱床中に存する鉱物の鉱区が錯そうする地域において、鉱業権の交換又は売渡を行わせることによつてその地域の鉱床を経済的且つ能率的に開発し、公共の利益を増進することができると認めるときは、鉱業権の交換又は売渡について、当該鉱業権者に勧告することができる。
(鉱区の増減)
第八十九条 通商産業局長は、同種の鉱床中に存する鉱物の採掘鉱区が隣接する場合において、鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違し、その鉱区の位置形状を変更しなければその鉱床の完全な開発ができないと認めるときは、当該採掘権者に対し、鉱区の位置形状が鉱床の位置形状に合致するように、鉱区相互の間の鉱区の増減の出願について協議すべきことを勧告することができる。
2 同種の鉱床中に存する鉱物の採掘鉱区が隣接する場合において、鉱区の位置形状が鉱床の位置形状と相違し、その鉱区の位置形状を変更しなければその鉱床の完全な開発ができないときは、採掘権者は、他の採掘権者に対し、鉱区の位置形状が鉱床の位置形状に合致するように、鉱区相互の間に鉱区の増減の出願をすることについて協議することができる。
3 前二項の規定による協議に基く出願については、第四十五条第三項の規定にかかわらず、第二十二条及び第二十四条から第三十五条までの規定は、適用しない。
4 第一項又は第二項の規定による協議に基く出願は、当事者が連名でしなければならない。
(決定の申請)
第九十条 前条第一項又は第二項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、当事者は、省令で定める手続に従い、通商産業局長の決定を申請することができる。
(聴聞)
第九十一条 通商産業局長は、前条の規定による決定の申請を受理したときは、その申請書の副本を当該採掘権者並びに当該採掘権の抵当権者及び租鉱権者に交付するとともに、当事者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
2 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
3 聴聞に際しては、当事者及び利害関係人に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(処分の禁止)
第九十二条 第九十条の規定による決定の申請があつたときは、採掘権者は、その申請を拒否する旨の決定があるまで、第九十九条の規定によつて決定がその効力を失うまで、又は決定に基き採掘権の変更の登録があるまでは、当該採掘権を譲渡し、又は変更することができない。
(決定)
第九十三条 通商産業局長は、左に掲げる事項を定めて、鉱区相互の間の鉱区の増減の決定をしなければならない。
一 当該鉱区の所在地
二 当該採掘権の登録番号
三 採掘権の変更の内容
四 対価並びにその支払の時期及び方法
(決定の方式)
第九十四条 前条の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
2 通商産業局長は、前条の決定をしたときは、決定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
第九十五条 第九十三条の決定があつたときは、当事者の間に、鉱区相互の間の鉱区の増減について協議がととのつたものとみなす。
2 前項の規定により協議がととのつたものとみなされたときは、当事者の一方は、第八十九条第四項の規定にかかわらず、単独で鉱区の増減の出願をすることができる。
(鉱区の増減と租鉱権)
第九十六条 採掘鉱区のうち租鉱権が設定されている部分について、第九十三条の決定に基き鉱区の減少の登録があつたときは、租鉱権は、鉱区の減少により租鉱区が減少した限度においては、鉱区の増加があつた採掘権の上にも存続するものとする。
2 通商産業局長は、鉱区相互の間の鉱区の増減について、第九十三条の決定をする場合において、租鉱権が二以上の採掘権の上に存続することとなるときは、決定において租鉱権者が各採掘権者に対して支払うべき租鉱料の割合を定めなければならない。
(対価の不服の訴)
第九十七条 第九十三条の決定のうち対価について不服のある者は、その決定書の謄本の交付を受けた日から三十日以内に、訴をもつてその額の増減を請求することができる。
2 前項の訴においては、第九十条の規定による決定の申請をした者又は当該採掘権者を被告とする。
(対価の供託)
第九十八条 左に掲げる場合においては、対価を支払うべき者は、その対価を供託しなければならない。
一 対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき、又はこれを受領することができないとき。
二 決定のうち対価について不服の訴があつたとき。
三 当該採掘権について抵当権が存するとき。但し、抵当権者の承諾を得たときは、この限りでない。
2 前項第三号の場合においては、抵当権者は、供託金に対しても、その権利を行うことができる。
(決定の失効)
第九十九条 対価を支払うべき者が第九十三条の決定において定めた対価の支払の時期までに、その対価の全部の支払又は供託をしないときは、決定は、その効力を失う。
(施業案の変更)
第百条 通商産業局長は、採掘権者又は租鉱権者の施業案を変更しなければその鉱区又は租鉱区の鉱床の完全な開発ができないと認めるときは、採掘権者又は租鉱権者に対し、施業案を変更すべきことを勧告することができる。
2 通商産業局長は、採掘権者又は租鉱権者が前項の規定による勧告を受けた日から六十日以内に施業案を変更しないときは、施業案の変更を命ずることができる。
3 第四十条の規定は、前項の規定による命令に準用する。
4 通商産業局長は、第一項の規定による勧告又は第二項の規定による命令をするには、鉱山保安監督部長に協議しなければならない。
第五章 土地の使用及び収用
(土地の立入)
第百一条 鉱業に関する測量又は実地調査のため必要があるときは、鉱業権の設定を受けようとする者、租鉱権者となろうとする者、鉱業出願人、鉱業権者又は租鉱権者は、通商産業局長の許可を受けて、他人の土地に立ち入り、又は支障となる竹木を伐採することができる。
2 通商産業局長は、前項の許可の申請があつたときは、土地の所有者及び占有者並びに竹木の所有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。
3 第一項の許可を受けた者は、他人の土地に立ち入り、又は竹木を伐採するときは、あらかじめ土地の占有者及び竹木の所有者に通知しなければならない。
第百二条 前条の規定により他人の土地に立ち入り、又は竹木を伐採しようとする者は、通商産業局長の許可を受けたことを証する書面を携帯し、土地の占有者又は竹木の所有者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
第百三条 第百一条の規定により他人の土地に立ち入り、又は竹木を伐採した者は、これによつて生じた損失を補償しなければならない。
(使用の目的)
第百四条 鉱業権者又は租鉱権者は、鉱区若しくは租鉱区又はその附近において他人の土地を左に掲げる目的のため利用することが必要且つ適当であつて、他の土地をもつて代えることが著しく困難なときは、これを使用することができる。
一 坑口又は坑井の開設
二 露天掘による鉱物の掘採
三 探鉱又は鉱物の掘採作業のため必要な機械設備の設置
四 坑木、火薬類、燃料、カーバイトその他の重要資材、鉱物、土石、鉱さい又は灰じんの置場又は捨場の設置
五 選鉱又は製錬用の施設の設置
六 鉄道、軌道、索道、石油若しくは可燃性天然ガスの輸送管、道路、運河、港湾、用排水路、池井又は電気工作物の開設
七 鉱害の予防又は回復のため必要な施設
八 鉱業用の事務所又は鉱業に従事する者の宿舎若しくは保健衛生施設の設置
(収用の目的)
第百五条 採掘権者は、鉱区又はその附近において他人の土地を左に掲げる目的に供した結果、その土地の形質を変更し、これを原状に回復することが著しく困難となつた場合において、なおその土地をその目的に利用することが必要且つ適当であつて、他の土地をもつて代えることが著しく困難なときは、他人の土地を収用することができる。
一 坑口又は坑井の開設
二 土石又は鉱さいの捨場の設置
三 選鉱又は製錬用の施設の設置
四 鉄道、軌道、索道、道路、運河、港湾、用排水路又は池井の開設
(許可及び公告)
第百六条 鉱業権者又は租鉱権者は、前二条の規定により他人の土地を使用し、又は収用しようとするときは、省令で定める手続に従い、通商産業局長に申請して、その許可を受けなければならない。
2 通商産業局長は、前項の規定による許可の申請があつたときは、関係都道府県知事に協議するとともに、鉱業権者又は租鉱権者並びに土地の所有者及び土地に関して権利を有する者の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
3 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当事者に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
4 聴聞に際しては、当事者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
5 通商産業局長は、第一項の許可をしたときは、左に掲げる事項を公告しなければならない。
一 土地を使用し、又は収用しようとする者の氏名又は名称及び住所
二 使用又は収用の目的
三 使用し、又は収用しようとする土地の所在地及び区域
(土地収用法の適用)
第百七条 第百四条又は第百五条の規定による土地の使用又は収用に関しては、この法律に別段の定がある場合を除く外、土地収用法(明治三十三年法律第二十九号)の規定を適用する。
2 第百四条又は第百五条の規定による土地の使用又は収用については、前条第一項又は第五項の規定による許可又は公告があつたときは、土地収用法第十二条又は第十四条の規定による事業の認定又は公告があつたものとみなす。
(水の使用)
第百八条 土地の使用及び収用に関する規定は、水の使用に関する権利に準用する。
第六章 鉱害の賠償
第一節 賠償義務
(賠償義務)
第百九条 鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によつて他人に損害を与えたときは、損害の発生の時における当該鉱区の鉱業権者(当該鉱区に租鉱権が設定されているときは、その租鉱区については、当該租鉱権者)が、損害の発生の時既に鉱業権が消滅しているときは、鉱業権の消滅の時における当該鉱区の鉱業権者(鉱業権の消滅の時に当該鉱業権に租鉱権が設定されていたときは、その租鉱区については、当該租鉱権者)が、その損害を賠償する責に任ずる。
2 前項の場合において、損害が二以上の鉱区又は租鉱区の鉱業権者又は租鉱権者の作業によつて生じたときは、各鉱業権者又は租鉱権者は、連帯して損害を賠償する義務を負う。損害が二以上の鉱区又は租鉱区の鉱業権者又は租鉱権者の作業のいずれによつて生じたかを知ることができないときも、同様とする。
3 前二項の場合において、損害の発生の後に鉱業権の譲渡があつたときは、損害の発生の時の鉱業権者及びその後の鉱業権者が、損害の発生の後に租鉱権の設定があつたときは、損害の発生の時の鉱業権者及び損害の発生の後に租鉱権者となつた者が、連帯して損害を賠償する義務を負う。
4 第一項又は第二項の規定により租鉱権者が損害を賠償すべき場合においては、損害の発生の時当該租鉱権が設定されている鉱区の鉱業権者及びその後の鉱業権者が、損害の発生の時既に鉱業権が消滅しているときは鉱業権の消滅の時における鉱業権者が、租鉱権者と連帯して損害を賠償する義務を負う。
5 前四項の規定による賠償については、共同鉱業権者又は共同租鉱権者(租鉱権を共有する者をいう。)の義務は、連帯とする。
(負担部分と償還請求)
第百十条 前条第二項に規定する連帯債務者相互の間においては、その各自の負担部分は、等しいものと推定する。
2 前条第三項の場合において、鉱業権を譲り受けた者又は損害の発生の後に租鉱権者となつた者が賠償の義務を履行したときは、同条第一項又は第二項の規定により損害を賠償すべき者に対し、償還を請求することができる。同条第四項の場合において鉱業権者が賠償の義務を履行したときも、同様とする。
(賠償)
第百十一条 損害は、公正且つ適切に賠償されなければならない。
2 損害の賠償は、金銭をもつてする。但し、賠償金額に比して著しく多額の費用を要しないで原状の回復をすることができるときは、被害者は、原状の回復を請求することができる。
3 賠償義務者の申立があつた場合において、裁判所が適当であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、金銭をもつてする賠償に代えて原状の回復を命ずることができる。
(賠償についての基準)
第百十二条 通商産業局長は、損害の賠償に関する争議の予防又は解決に資するため、地方鉱害賠償基準協議会に諮問して、損害の賠償の範囲、方法等についての公正且つ適切な一般的基準を作成し、これを公表することができる。
2 何人も、前項の基準に拘束されるものではない。
(賠償についてのしんしやく)
第百十三条 損害の発生に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるのについて、これをしんしやくすることができる。天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。
(損害賠償の予定)
第百十四条 損害賠償の額が予定された場合において、その額が著しく不相当であるときは、当事者は、その増減を請求することができる。
2 土地又は建物に関する損害について予定された賠償額の支払は、賠償の目的となる損害の原因及び内容並びに賠償の範囲及び金額について、政令で定めるところにより、登録をしたときは、その後その土地又は建物について権利を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
(消滅時効)
第百十五条 損害賠償請求権は、被害者が損害及び賠償義務者を知つた時から三年間行わないときは、時効によつて消滅する。損害の発生の時から二十年を経過したときも、同様とする。
2 前項の期間は、進行中の損害については、その進行のやんだ時から起算する。
(適用除外)
第百十六条 この章の規定は、鉱業に従事する者の業務上の負傷、疾病及び死亡に関しては、適用しない。
第二節 担保の供託
(供託)
第百十七条 石炭又は亜炭を目的とする鉱業権者又は租鉱権者は、省令で定める手続に従い、当該鉱区又は租鉱区に関する損害の賠償を担保するため、その前年中に掘採した石炭又は亜炭の数量に応じて、毎年一定額の金銭を供託しなければならない。
2 前項の規定により供託すべき金銭の額は、前年中に掘採した石炭又は亜炭の数量一トンにつき二十円をこえない範囲内において通商産業局長が毎年鉱区又は租鉱区ごとに定める額とする。
3 通商産業局長は、石炭及び亜炭以外の鉱物を目的とする鉱業権者又は租鉱権者について、当該鉱区又は租鉱区に関する損害の賠償を担保するため必要があると認めるときは、当該鉱区又は租鉱区において前年中に掘採した鉱物の価額の百分の一をこえない範囲内において定める額の金銭を供託すべきことを命ずることができる。
4 第一項又は前項の規定により供託すべき金銭は、その金額に相当する国債をもつてこれに代えることができる。
第百十八条 被害者は、損害賠償請求権に関し、前条の規定により当該鉱区又は租鉱区に関する賠償を担保するため供託された金銭につき、他の債権者に優先して弁済を受ける権利を有する。
2 前項の権利の実行に関する手続は、政令で定める。
(取もどし)
第百十九条 鉱業権者若しくは租鉱権者又は鉱業権者若しくは租鉱権者であつた者は、左に掲げる場合においては、省令で定める手続に従い、通商産業局長の承認を受けて、供託した金銭を取りもどすことができる。
一 当該鉱区又は租鉱区に関する損害を賠償したとき。
二 鉱業権の消滅又は鉱業権の消滅若しくは鉱区の減少による租鉱権の消滅の後十年を経過しても、損害が生じないとき。
(事業の停止)
第百二十条 通商産業局長は、供託をしなければならない者が供託をしないときは、その事業の停止を命ずることができる。
(権利の移転)
第百二十一条 鉱業権者が鉱業権を譲渡したときは、供託した金銭に対する権利は、それによつて譲受人に移転する。
2 租鉱権が消滅したときは、鉱業権の消滅又は鉱区の減少による場合を除き、供託した金銭に対する権利は、鉱業権者に移転する。
第三章 和解の仲介及び調停
(和解の仲介の申立)
第百二十二条 鉱害の賠償に関して争議が生じたときは、当事者は、省令で定める手続に従い、通商産業局長に和解の仲介の申立をすることができる。
(仲介員名簿の作成)
第百二十三条 通商産業局長は、毎年仲介員候補者十五人以内を委嘱し、その名簿を作成して置かなければならない。
2 前項の仲介員候補者は、一般公益を代表する者並びに鉱業、農業、林業又はその他の産業に関し知識経験を有する者のうちから、委嘱されなければならない。
(仲介員の指定)
第百二十四条 通商産業局長は、第百二十二条の規定による申立があつたときは、前条第一項の名簿に記載されている者のうちから、仲介員五人以内を指定しなければならない。
2 前項の場合において、鉱害が農業、林業又はその他の産業に関するものであるときは、仲介員のうち、少くとも一人は、当該産業に関し知識経験を有するもののうちから、指定されなければならない。
(仲介員の任務)
第百二十五条 仲介員は、争議の実情を詳細に調査し、事件が公正に解決されるように努めなければならない。
(調停の申立)
第百二十六条 鉱害の賠償に関して争議が生じたときは、当事者は、損害の発生地を管轄する地方裁判所又は当事者の合意で定める地方裁判所に調停の申立をすることができる。
第百二十七条 調停の申立は、争議の実情を明らかにしてしなければならない。
(却下)
第百二十八条 裁判所は、当事者が不当な目的でみだりに調停の申立をしたと認めるときは、その申立を却下することができる。
(移送)
第百二十九条 調停の申立を受けた裁判所が調停をするについて適当であると認めるときは、決定をもつて事件を他の裁判所に移送することができる。管轄権のない裁判所が調停の申立を受けたときも、同様とする。
2 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(職権調停)
第百三十条 鉱害の賠償に関する争議について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は、職権をもつて事件を地方裁判所の調停に付することができる。
(訴訟手続の中止)
第百三十一条 調停の申立を受理した事件について訴訟が係属するとき、又は前条の規定により事件が調停に付されたときは、受訴裁判所は、決定をもつて調停の終了の時まで訴訟手続を中止することができる。
2 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(和解の仲介の申立の勧告)
第百三十二条 裁判所は、調停の申立を受理したとき、又は第百三十条の規定により事件が調停に付されたときは、調停の前に、当事者に対し、第百二十二条の規定により通商産業局長に和解の仲介の申立をすべきことを勧告することができる。
(調停委員会)
第百三十三条 裁判所は、調停の申立を受理したとき、又は第百三十条の規定により事件が調停に付されたときは、調停委員会を開かなければならない。但し、争議の実情にかんがみその必要がないと認めるときは、調停委員会を開かないで調停をすることができる。
2 当事者の申立があるときは、前項但書の規定にかかわらず、裁判所は、調停委員会を開かなければならない。
(総代の選任)
第百三十四条 当事者が多数であるときは、その全部又は一部を代表して調停に関する一切の行為を行わせるため、総代を選任することができる。
2 裁判所は、前項の総代がない場合において、必要があると認めるときは、総代の選任を命ずることができる。
3 総代は、当事者のうちから選任しなければならない。
(選任の証明及び解任の届出)
第百三十五条 総代の選任は、書面で証明しなければならない。
2 総代の解任は、裁判所に届け出なければ、その効力を生じない。
(呼出)
第百三十六条 裁判所は、期日を定めて、当事者又は総代を呼び出さなければならない。
2 前項の規定による呼出を受けた者は、正当な事由がなければ、出頭を拒むことができない。
(調停参加)
第百三十七条 調停の結果について利害関係がある者(以下この節において「利害関係人」という。)は、裁判所の許可を受けて、調停に参加することができる。
2 裁判所は、利害関係人の参加を求めることができる。
(出頭)
第百三十八条 当事者、総代及び利害関係人は、自ら出頭しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
2 弁護士でない者が前項の代理人となるには、裁判所の許可を受けなければならない。
3 裁判所は、いつでも前項の許可を取り消すことができる。
(意見の聴取)
第百三十九条 裁判所は、関係行政機関その他適当と認める者に対して、意見を求め、又は調査を嘱託することができる。
2 関係行政機関は、裁判所に対して意見を述べることができる。
(手続の非公開)
第百四十条 裁判所における調停手続は、公開しない。但し、裁判所は、適当と認める者の傍聴を許可することができる。
(費用の予納)
第百四十一条 裁判所は、費用を要する行為について、当事者の一方又は双方に、その費用を予納させることができる。
(申立の方式)
第百四十二条 申立その他の申述は、書面又は口頭ですることができる。
2 口頭で申述をするときは、裁判所書記官は、その調書を作らなければならない。
(調書)
第百四十三条 裁判所の調停については、裁判所書記官は、その調書を作らなければならない。
(調停前の措置)
第百四十四条 裁判所は、調停の前に、調停のため必要と認める措置をすることができる。
(費用の負担)
第百四十五条 裁判所の調停条項中に費用の負担に関する定をしなかつたときは、各当事者は、その支出した費用を自ら負担する。
(調停の効力)
第百四十六条 調停は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
(調停委員会の構成)
第百四十七条 調停委員会は、調停主任一人及び調停委員二人以上をもつて組織する。
(調停主任)
第百四十八条 調停主任は、裁判官のうちから、毎年あらかじめ地方裁判所が指定する。
(調停委員)
第百四十九条 調停委員は、特別の知識経験を有し、公正な調停をするのに適当な者について、毎年あらかじめ地方裁判所の選任した者又は当事者の合意によつて選定された者のうちから、各事件について調停主任が指定する。
(調停委員会の開催場所)
第百五十条 調停主任は、争議の実情にかんがみ適当であると認める場所で、調停委員会を開かなければならない。
(調停主任の指揮権)
第百五十一条 調停委員会における調停手続は、調停主任が指揮する。
(決議)
第百五十二条 調停委員会の決議は、調停委員の過半数の意見による。可否同数のときは、調停主任が決するところによる。
(評議の秘密)
第百五十三条 調停委員会の評議は、秘密とする。
(準用)
第百五十四条 第百三十四条から第百四十五条までの規定は、調停委員会における調停手続に準用する。
(証拠調)
第百五十五条 調停委員会は、当事者、総代又は利害関係人の陳述を聞き、且つ、必要があると認めるときは、証拠調をすることができる。
2 調停委員会は、調停主任に証拠調をさせ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所にこれを嘱託することができる。
3 証拠調については、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)を準用する。
4 証人及び鑑定人の受ける旅費、日当及び宿泊料については、民事訴訟費用法(明治二十三年法律第六十四号)を準用する。
(調停をしない場合)
第百五十六条 調停委員会は、第百二十八条に規定する事由があると認めるときは、調停をしないことができる。
(調停の認否)
第百五十七条 調停が成立したときは、裁判所は、調停主任の報告を聞き、調停の認否について決定をしなければならない。
2 調停認可の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
3 調停不認可の決定に対しては、当事者又は総代は、民事訴訟法の規定に従い、即時抗告をすることができる。
第百五十八条 裁判所は、調停が著しく公正でないと認めるときでなければ、調停不認可の決定をすることができない。
(調停委員会の調停の効力)
第百五十九条 調停委員会を開いた場合には、調停は、認可の決定があつたときに限り、裁判上の和解と同一の効力を有する。
(手数料)
第百六十条 調停の申立をするには、手数料を納付しなければならない。
2 前項の手数料の額は、調停を求める事項の価額千円につき二十円をこえない範囲内において政令で定める額とする。
(記録の閲覧等)
第百六十一条 当事者又は利害関係人は、政令で定める手数料を納付して、記録の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本、抄本若しくは事件に関する証明書の付与を裁判所書記官に求めることができる。但し、当事者が事件の係属中に記録の閲覧又は謄写をするときは、手数料を納付することを要しない。
(旅費、日当及び宿泊料)
第百六十二条 調停委員には、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
2 前項の旅費、日当及び宿泊料の額は、政令で定める。
(仲裁判断)
第百六十三条 調停委員会は、当事者の合意があるときは、鉱害の賠償に関する争議について民事訴訟法による仲裁判断をすることができる。
2 前項の場合には、当事者の指定した調停委員会の属する裁判所は、申立により調停委員会を開かなければならない。
(準用)
第百六十四条 第百六十条から第百六十二条までの規定は、前条の規定による仲裁に準用する。
第四節 地方鉱害賠償基準協議会
(設置)
第百六十五条 通商産業局に、地方鉱害賠償基準協議会を置く。
(所掌事務)
第百六十六条 地方鉱害賠償基準協議会は、通商産業局長の諮問に応じて、第百十二条第一項の基準に関し、調査審議する。
(組織)
第百六十七条 地方鉱害賠償基準協議会は、委員長及び委員十二人以内をもつて組織する。
2 委員長及び委員は、関係行政機関の職員のうちから、通商産業局長が任命する。
(勤務)
第百六十八条 委員長及び委員は、非常勤とする。
(委員長)
第百六十九条 委員長は、地方鉱害賠償基準協議会の会務を総理する。
(議事の手続等)
第百七十条 この法律に定めるものの外、議事の手続その他地方鉱害賠償基準協議会の運営に関し必要な事項は、通商産業局長が定める。
第七章 異議の申立
(異議の申立)
第百七十一条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による通商産業局長の処分に不服のある者は、通商産業大臣に対して異議の申立をすることができる。但し、第百八十七条の規定により土地調整委員会の裁定を申請することができる事項については、この限りでない。
2 異議の申立は、処分の通知を受けるべき者にあつては処分の通知を受けた日から、その他の者にあつては処分の公示の日から三十日以内に、理由を記載した申立書を通商産業大臣に提出して、行わなければならない。
3 正当な事由により前項の期間内に異議の申立をすることができなかつたことを疎明したときは、同項の期間の経過後でも、異議の申立をすることができる。
(却下)
第百七十二条 通商産業大臣は、異議の申立が不適法であると認めるときは、直ちにこれを却下する。
2 前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業大臣は、決定書の正本を申立人に交付しなければならない。
(異議の申立と処分の執行)
第百七十三条 異議の申立は、処分の執行を停止しない。但し、通商産業大臣は、処分の執行により生ずることのある償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、申立により又は職権で、その執行を停止することができる。
2 通商産業大臣は、前項但書の規定による決定をしたときは、異議の申立をした者、当該処分の相手方及び通商産業局長にその旨を通知するとともに、その旨を公示しなければならない。
(申立書の副本の送付等)
第百七十四条 通商産業大臣は、異議の申立があつたときは、第百七十二条第一項の規定により却下する場合を除き、申立書の副本を処分を行つた通商産業局長に送付しなければならない。
2 通商産業局長は、前項の規定による申立書の副本の送付を受けた日から十日以内に、弁明書を通商産業大臣に提出しなければならない。
(聴聞の開始)
第百七十五条 通商産業大臣は、異議の申立があつたときは、第百七十二条第一項の規定により却下する場合を除き、申立を受理した日から三十日以内に、聴聞を開始しなければならない。
第百七十六条 通商産業大臣は、聴聞の期日及び場所を定め、異議の申立をした者及び処分を行つた通商産業局長に通知しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の規定による通知をしたときは、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
(参加)
第百七十七条 異議の申立をした者の外、聴聞に参加して意見を述べようとする者は、利害関係のある理由及び主張の要旨を記載した文書をもつて、通商産業大臣に、利害関係人として参加する旨を申し出て、その許可を受けなければならない。
(証拠の提示等)
第百七十八条 聴聞に際しては、異議の申立をした者、当該処分の相手方及び前条の規定により参加した者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(決定)
第百七十九条 通商産業大臣は、聴聞の結果及び第百七十四条第二項の弁明書に基き事案の決定を行う。
2 前項の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業大臣は、決定書の正本を異議の申立をした者、当該処分の相手方及び第百七十七条の規定により参加した者並びに処分を行つた通商産業局長に送付するとともに、決定の要旨を公示しなければならない。
(手続)
第百八十条 この章に定めるものの外、異議の申立に関する手続は、省令で定める。
第八章 補則
(手数料)
第百八十一条 別表上欄に掲げる者は、それぞれ同表下欄に掲げる金額の範囲内において政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(修正又は補充)
第百八十二条 通商産業局長は、鉱業に関する出願、申請及び届出の書面並びに図面が完備していないときは、相当の期限を附してその修正又は補充を命ずることができる。
(立会通知)
第百八十三条 通商産業局長は、鉱業権若しくは租鉱権の設定若しくは変更に関する出願若しくは申請又は鉱区若しくは租鉱区について実地調査の必要があると認めるときは、調査に従事する職員、調査事項、立会場所及び調査日時を指定し、鉱業出願人、租鉱権者となろうとする者、鉱業権者又は租鉱権者に立会を命ずることができる。若し調査日時を指定することができないときは、予定期日を定め、確定日時は、調査に従事する職員の指定によることを命じなければならない。
(却下)
第百八十四条 通商産業局長は、左に掲げる場合においては、鉱業権の設定又は変更に関する出願を却下しなければならない。
一 第二十五条第二項の規定による命令を受けた場合において、同項の規定により指定した期限までに同項の書面を提出しないとき。
二 第二十六条の規定による命令を受けた場合において、同条の規定により指定した期限までに同条の設計書を提出しないとき。
三 第百八十二条の規定による命令を受けた場合において、同条の規定により指定した期限までに修正又は補充をしないとき。
四 前条の規定による命令を受けた場合において、実地調査に際し出願の区域を明示することができず、又は同条の規定により指定した日時に立会をしないとき。
(不許可等の理由)
第百八十五条 鉱業権又は租鉱権の設定又は変更の出願又は申請を許可せず、又は認可しない旨の通知には、その理由を附さなければならない。
(鉱区等の調査)
第百八十六条 隣接する鉱区又は租鉱区の鉱業権者又は租鉱権者その他の利害関係人は、他人の鉱区又は租鉱区について、通商産業局長に、その実地調査を依頼することができる。
2 前項の実地調査を依頼しようとする者は、省令で定める手続に従い、申請書に理由書を添えて提出しなければならない。
3 第一項の実地調査を依頼しようとする者は、調査に要する人夫及び物品を提供しなければならない。
(裁定の申請)
第百八十七条 第二十一条第一項(第四十五条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)の許可、第三十五条(第四十五条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)に規定する場合に該当することを理由とする不許可、第五十三条(第八十七条において準用する場合を含む。)の規定による鉱区若しくは租鉱区の減少の処分若しくは鉱業権若しくは租鉱権の取消、第百六条第一項の許可若しくはその拒否又は第百七条第一項の規定により適用される土地収用法の規定による土地の使用若しくは収用に関する裁決若しくは決定に不服のある者は、土地調整委員会の裁定を申請することができる。但し、第二十一条第一項の許可については、第三十五条の規定に違反することを理由とする場合に限る。
2 前項の規定により土地調整委員会の裁定を申請することができる事項については、土地収用法第八十一条第一項の規定による訴願を提起することができない。
(公示)
第百八十八条 通商産業局長は、この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分をしたときは、省令で定める手続に従い、その要旨を公示しなければならない。
(掲示)
第百八十九条 通商産業局長は、第二十一条第一項の許可の通知、第二十五条第一項の規定による通知又は第百八十二条若しくは第百八十三条の規定による命令をする場合において、相手方が知れないとき、又はその所在が不分明なときは、鉱業出願人若しくは鉱業権者にあつては願書若しくは鉱業原簿に記載された住所の所在地の、土地の所有者にあつては採掘出願地の所在地の市役所、町村役場又はこれに準ずるものの掲示場に、その通知又は命令の内容を掲示するとともに、その掲示をした旨及びその要旨を官報に掲載しなければならない。この場合においては、掲示を始めた日又は官報に掲載した日のいずれか遅い日から十四日を経過した日に、その通知又は命令は、相手方に到達したものとみなす。
(報告及び検査)
第百九十条 通商産業大臣及び通商産業局長は、この法律の施行に必要な限度において、鉱業権者若しくは租鉱権者からその業務の状況に関する報告を徴し、又はその職員にその事業所若しくは事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第九章 罰則
第百九十一条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第七条の規定に違反した者
二 詐偽その他不正の行為により第二十一条第一項の許可を受けた者
2 過失により鉱区外又は租鉱区外に侵掘した者は、二十万円以下の罰金に処する。
第百九十二条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第六十三条第四項(第八十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第六十四条(第八十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して鉱物を掘採した者
三 第百条第二項の規定による命令に違反した者
四 第百二十条の規定による命令に違反して事業を停止しなかつた者
第百九十三条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第六十九条又は第七十条(第八十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第百二条の規定に違反して書面を携帯せず、又はこれを呈示しなかつた者
三 第百九十条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
四 第百九十条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第百九十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第百九十五条 第百三十六条(第百五十四条において準用する場合を含む。)の規定による裁判所又は調停委員会の呼出を受けた者が、正当な事由がないのに出頭しないときは、調停事件の係属する裁判所は、三千円以下の過料に処することができる。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。
2 左に掲げる法律は、廃止する。
鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)
砂鉱法(明治四十二年法律第十三号)
別表
納付しなければならない者 |
金額 |
一 第十八条第二項の規定により試掘権の存続期間の延長の申請をする者 二 第二十一条第一項の規定により鉱業権の設定の出願をする者 試掘権の設定 採掘権の設定 三 第三十六条第一項の規定により鉱業出願地の増減の出願をする者 試掘出願地の増加又は増加及び減少 試掘出願地の減少 採掘出願地の増加又は増加及び減少 採掘出願地の減少 四 第四十二条第一項の規定により鉱業出願人の名義の変更の届出をする者 試掘権の設定 採掘権の設定 五 第四十二条第二項の規定により鉱業出願人の名義の変更の届出をする者 試掘権の設定 採掘権の設定 六 第四十五条第一項の規定により鉱区の増減の出願をする者 試掘鉱区の増加又は増加及び減少 試掘鉱区の減少 採掘鉱区の増加又は増加及び減少 採掘鉱区の減少 七 第五十条第一項又は第二項の規定により採掘鉱区の分割又は合併の出願をする者 八 第六十六条第四項の規定により決定の申請をする者 九 第六十七条の規定による届出をする者 十 第七十六条第四項の規定により租鉱権の存続期間の延長の申請をする者 十一 第七十七条第一項の規定により租鉱権の設定の認可の申請をする者 十二 第七十八条第一項の規定により租鉱区の増減の申請をする者 租鉱区の増加又は増加及び減少 租鉱区の減少 十三 第九十条の規定により決定の申請をする者 十四 第百一条第一項の規定により土地の立入又は竹木の伐採の許可の申請をする者 十五 第百六条第一項の規定により土地の使用又は収用の許可の申請をする者 十六 第百八十六条第一項の規定により実地調査を依頼する者 |
一件につき 二千円
一件につき 三千円 一件につき 五千円
一件につき 二千円 一件につき 五百円 一件につき 三千円 一件につき 七百円
一件につき 千五百円 一件につき 二千五百円
一件につき 百五十円 一件につき 二百円
一件につき 二千八百円 一件につき 七百円 一件につき 四千五百円 一件につき 千円 一件につき 四千円
一件につき 千円 一件につき 六百円 一件につき 二千円
一件につき 三千円
一件につき 二千円 一件につき 四百円 一件につき 三千円 一件につき 千円
一件につき 三千円
一件につき 千円 |
(法務総裁・通商産業・建設・内閣総理大臣署名)