刑法等の一部を改正する法律

法律第五十二号(昭六二・六・二)

 (刑法の一部改正)

第一条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。

  第二条第五号中「及ヒ第百五十八条」を「、第百五十八条及ビ公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録ニ係ル第百六十一条ノ二」に改める。

  第三条第三号中「第百六十一条」の下に「及ビ前条第五号ニ記載シタル以外ノ電磁的記録二係ル第百六十一条ノ二」を加える。

  第四条の次に次の一条を加える。

 第四条ノ二 前三条ノ外本法ハ何人ヲ問ハズ日本国外ニ於テ第二編ノ罪ニシテ条約ニ依リ日本国外ニ於テ犯シタルトキト雖モ罰ス可キモノトセラレタルモノヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適用ス

  第七条の次に次の一条を加える。

 第七条ノ二 本法ニ於テ電磁的記録ト称スルハ電子的方式、磁気的方式其他人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハゼル方式ニ依リ作ラルル記録ニシテ電子計算機ニ依ル情報処理ノ用ニ供セラルルモノヲ謂フ

  第百五十七条第一項中「不実ノ記載ヲ」の下に「為サシメ又ハ権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本タル可キ電磁的記録ニ不実ノ記録ヲ」を加える。

  第百五十八条第一項中「又ハ図画ヲ行使シタル」を「若クハ図画ヲ行使シ又ハ前条第一項ニ記載シタル電磁的記録ヲ公正証書ノ原本トシテノ用ニ供シタル」に改め、「不実ノ記載」の下に「若クハ記録」を加える。

  第二編第十七章中第百六十一条の次に次の一条を加える。

 第百六十一条ノ二 人ノ事務処理ヲ誤ラシムル目的ヲ以テ其事務処理ノ用ニ供スル権利、義務又ハ事実証明ニ関スル電磁的記録ヲ不正ニ作リタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金ニ処ス

  前項ノ罪公務所又ハ公務員ニ依リ作ラル可キ電磁的記録ニ係ルトキハ十年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス

  不正ニ作ラレタル権利、義務又ハ事実証明ニ関スル電磁的記録ヲ第一項ノ目的ヲ以テ人ノ事務処理ノ用ニ供シタル者ハ其電磁的記録ヲ不正ニ作リタル者ト同一ノ刑ニ処ス

  前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

  第二編第三十五章中第二百三十四条の次に次の一条を加える。

 第二百三十四条ノ二 人ノ業務ニ使用スル電子計算機若クハ其用ニ供スル電磁的記録ヲ損壊シ若クハ人ノ業務ニ使用スル電子計算機ニ虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与へ又ハ其他ノ方法ヲ以テ電子計算機ヲシテ使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ又ハ使用目的ニ違フ動作ヲ為サシメテ人ノ業務ヲ妨害シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス

  第二百四十六条の次に次の一条を加える。

 第二百四十六条ノ二 前条ノ外人ノ事務処理二使用スル電子計算機ニ虚偽ノ情報若クハ不正ノ指令ヲ与へテ財産権ノ得喪、変更ニ係ル不実ノ電磁的記録ヲ作リ又ハ財産権ノ得喪、変更ニ係ル虚偽ノ電磁的記録ヲ人ノ事務処理ノ用ニ供シテ財産上不法ノ利益ヲ得又ハ他人ヲシテ之ヲ得セシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス

  第二百五十八条及び第二百五十九条中「文書」の下に「又ハ電磁的記録」を加える。

 (人質による強要行為等の処罰に関する法律の一部改正)

第二条 人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条中「前三条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条」を「第一条の罪は刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条及び第四条ノ二の例に、前三条の罪は同法第二条」に改め、同条を第五条とする。

  第三条第一項中「第一条」を「第二条」に改め、同条を第四条とし、第二条を第三条とする。

  第一条の前の見出しを「(加重人質強要)」に改め、同条中「逮捕」を「逮捕し、」に改め、同条を第二条とし、第一条として次の一条を加える。

  (人質による強要等)

 第一条 人を逮捕し、又は監禁し、これを人質にして、第三者に対し、義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求した者は、六月以上十年以下の懲役に処する。

 2 第三者に対して義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で、人を逮捕し、又は監禁した者も、前項と同様とする。

 3 前項の未遂罪は、罰する。

 (暴力行為等処罰に関する法律の一部改正)

第三条 暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の一部を次のように改正する。

  第一条ノ二第三項中「第三条」の下に「及第四条ノ二」を加える。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第一条中刑法第四条の次に一条を加える改正規定、第二条及び第三条の規定並びに次項の規定及び附則第四項中新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五十三年法律第四十二号)第二条第一項第十一号の改正規定は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約又は人質をとる行為に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。

 (経過措置)

2 改正後の刑法第四条ノ二の規定並びに人質による強要行為等の処罰に関する法律第五条及び暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第三項の規定(刑法第四条ノ二に係る部分に限る。)は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約により日本国外において犯したときであつても罰すべきものとされる罪に限り適用する。

 (罰金等臨時措置法の適用)

3 罰金等臨時措置法(昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第百六十一条ノ二及び第二百三十四条ノ二の罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。

 (新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法の一部改正)

4 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法の一部を次のように改正する。

  第二条第一項第一号中「第二百三十四条(威力業務妨害)」の下に「、第二百三十四条ノ二(電子計算機損壊等業務妨害)」を加え、同項第十一号中「第一条又は第二条(人質による強要)」を「第一条第一項若しくは第二項(人質による強要等)、第二条又は第三条(加重人質強要)」に改める。

(法務・運輸・内閣総理大臣署名) 

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