勤労婦人福祉法
法律第百十三号(昭四七・七・一)
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 勤労婦人福祉対策基本方針(第六条)
第三章 福祉の措置(第七条―第十二条)
第四章 福祉施設(第十三条・第十四条)
第五章 雑則(第十五条―第十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、勤労婦人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、勤労婦人について、職業指導の充実、職業訓練の奨励、職業生活と育児、家事その他の家庭生活との調和の促進、福祉施設の設置等の措置を推進し、もつて勤労婦人の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。
(基本的理念)
第二条 勤労婦人は、次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、経済及び社会の発展に寄与する者であることにかんがみ、勤労婦人が職業生活と家庭生活との調和を図り、及び母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるように配慮されるものとする。
第三条 勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。
(関係者の責務)
第四条 事業主は、その雇用する勤労婦人の福祉を増進するように努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、勤労婦人の福祉を増進するように努めなければならない。
3 事業主がその雇用する勤労婦人の福祉の増進のための措置を講じ、又は国若しくは地方公共団体が勤労婦人の福祉の増進のための施策を講ずるにあたつては、事業主又は国若しくは地方公共団体は、その措置又は施策を通じて、前二条に規定する基本的理念が具現されるように配慮しなければならない。
(啓発活動)
第五条 国及び地方公共団体は、勤労婦人の福祉について国民の関心と理解を深め、かつ、勤労婦人の勤労に従事する者としての意識を高めるとともに、とくに、勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行なうものとする。
第二章 勤労婦人福祉対策基本方針
第六条 労働大臣は、勤労婦人の福祉に関する施策の基本となるべき方針(以下「勤労婦人福祉対策基本方針」という。)を定めるものとする。
2 勤労婦人福祉対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 勤労婦人の職業生活及び家庭生活の動向に関する事項
二 勤労婦人の福祉の増進について講じようとする施策の基本となるべき事項
3 勤労婦人福祉対策基本方針は、勤労婦人の労働条件、意識並びに年齢別及び配偶の関係別の就業状況等を考慮して定められなければならない。
4 労働大臣は、勤労婦人福祉対策基本方針を定めるにあたつては、あらかじめ、婦人少年問題審議会の意見をきくほか、都道府県知事の意見を求めるものとする。
5 労働大臣は、勤労婦人福祉対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表するものとする。
6 前二項の規定は、勤労婦人福祉対策基本方針の変更について準用する。
第三章 福祉の措置
(職業指導等)
第七条 職業安定機関は、勤労婦人がその適性、能力、経験、技能の程度等にふさわしい職業を選択し、及び職業に適応することを容易にするため、勤労婦人その他関係者に対して雇用情報、職業に関する調査研究の成果等を提供し、勤労婦人の特性に適応した職業指導を行なう等必要な措置を講ずるものとする。
(職業訓練)
第八条 国、都道府県及び雇用促進事業団は、勤労婦人が職業に必要な技能(これに関する知識を含む。)を習得し、その能力の向上を図ることを促進し、かつ、勤労婦人に対し職業訓練の機会が均等に確保されるようにするため、勤労婦人その他関係者に対して、職業訓練に関する啓もう宣伝を行なうとともに、施設の整備その他勤労婦人の職業訓練の受講を容易にするために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(妊娠中及び出産後の健康管理に関する配慮及び措置)
第九条 事業主は、その雇用する勤労婦人が母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるような配慮をするように努めなければならない。
第十条 事業主は、その雇用する勤労婦人が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(育児に関する便宜の供与)
第十一条 事業主は、その雇用する勤労婦人について、必要に応じ、育児休業(事業主が、乳児又は幼児を有する勤労婦人の申出により、その勤労婦人が育児のため一定期間休業することを認める措置をいう。)の実施その他の育児に関する便宜の供与を行なうように努めなければならない。
(相談、講習等)
第十二条 国及び地方公共団体は、勤労婦人に対して、勤労に従事する者としての教養の向上、職業生活と家庭生活との調和の促進等に資するため、必要な指導、相談、講習その他の措置を講ずるように努めなければならない。
第四章 福祉施設
(働く婦人の家)
第十三条 地方公共団体は、必要に応じ、働く婦人の家を設置するように努めなければならない。
2 働く婦人の家は、勤労婦人に対して、各種の相談に応じ、及び必要な指導、講習、実習等を行ない、並びに休養及びレクリエーションのための便宜を供与する等勤労婦人の福祉に関する事業を総合的に行なうことを目的とする施設とする。
3 労働大臣は、働く婦人の家の設置及び運営についての望ましい基準を定めるものとする。
(働く婦人の家指導員)
第十四条 働く婦人の家には、勤労婦人に対する相談及び指導の業務を担当する職員(以下「働く婦人の家指導員」という。)を置くように努めなければならない。
2 働く婦人の家指導員は、その業務について熱意と識見を有し、かつ、労働大臣が定める資格を有する者のうちから、選任するものとする。
第五章 雑則
(国の助言等)
第十五条 国は、勤労婦人の福祉を増進するための事業を推進するために必要な助言、指導その他の援助を行なうように努めなければならない。
(調査等)
第十六条 労働大臣は、勤労婦人の職業生産及び家庭生活に関し必要な調査研究を実施するものとする。
2 労働大臣は、この法律の施行に関し、関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。
3 労働大臣は、この法律の施行に関し、都道府県知事から必要な調査報告を求めることができる。
(船員に関する特例)
第十七条 船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員及び同項に規定する船員になろうとする者に関しては、第六条第一項並びに同条第四項及び第五項(同条第六項において準用する場合を含む。)並びに前条中「労働大臣」とあるのは「運輸大臣」と、第六条第四項(同条第六項において準用する場合を含む。)中「婦人少年問題審議会」とあるのは「船員中央労働委員会」とする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(労働省設置法の一部改正)
2 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条中第三十二号の十を第三十二号の十一とし、第三十二号の九を第三十二号の十とし、第三十二号の八の次に次の一号を加える。
三十二の九 勤労婦人福祉法(昭和四十七年法律第百十三号)に基づいて、勤労婦人福祉対策基本方針並びに働く婦人の家の設置及び運営についての望ましい基準を定めること。
第九条中第七号を第八号とし、第三号から第六号までを一号ずつ繰り下げ、第二号の次に次の一号を加える。
三 勤労婦人福祉対策基本方針を定めることその他勤労婦人福祉法(第七条及び第八条の規定を除く。)の施行に関すること。
第十条第一項第八号中「勤労青少年福祉法」を「勤労婦人福祉法(第七条の規定に限る。)、勤労青少年福祉法」に改める。
第十条の二第六号中「勤労青少年福祉法」を「勤労婦人福祉法(第八条の規定に限る。)及び勤労青少年福祉法」に改める。
第十三条第一項の表婦人少年問題審議会の項中「勤労青少年福祉法」を「勤労婦人福祉法及び勤労青少年福祉法」に改める。
第十八条第一項中「港湾労働法(これに基づく命令を含む。)」の下に「、勤労婦人福祉法」を加える。
(運輸省設置法の一部改正)
3 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第二十四号の二の次に次の一号を加える。
二十四の二の二 船員に係る勤労婦人福祉対策基本方針を定めること。
第五十七条中「及び勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)」を「、勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)及び勤労婦人福祉法(昭和四十七年法律第百十三号)」に改める。
(運輸・労働・内閣総理大臣署名)