消防法の一部を改正する法律

法律第八十六号(昭三四・四・一)

 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)の一部を次のように改正する。

 第十条第三項を次のように改め、同条第四項中「制限について必要な事項は、市町村条例」を「技術上の基準は、政令」に改める。

  製造所、貯蔵所又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱は、政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。

 第十一条を次のように改める。

第十一条 製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、製造所、貯蔵所又は取扱所ごとに、消防本部及び消防署を置く市町村の区域にあつては当該市町村長、消防本部及び消防署を置かない市町村の区域にあつては当該区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする。

  前項の市町村長又は都道府県知事(以下この章において「市町村長等」という。)は、同項の規定による許可の申請があつた場合において、その製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造及び設備が前条第四項の技術上の基準に適合するものであるときは、許可を与えなければならない。

  第一項の規定による許可を受けた者は、製造所、貯蔵所若しくは取扱所を設置したとき又は製造所、貯蔵所若しくは取扱所の位置、構造若しくは設備を変更したときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所につき市町村長等が行う完成検査を受け、これらが前条第四項の技術上の基準に適合していると認められた後でなければ、これを使用してはならない。

  製造所、貯蔵所又は取扱所の譲渡又は引渡があつたときは、譲受人又は引渡を受けた者は、第一項の規定による許可を受けた者の地位を承継する。この場合において、同項の規定による許可を受けた者の地位を承継した者は、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。

 第十二条を次のように改める。

第十二条 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造及び設備が第十条第四項の技術上の基準に適合するように維持しなければならない。

  市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造及び設備が第十条第四項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者で権限を有する者に対し、技術上の基準に適合するように、これらを修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる。

第十二条の次に次の二条を加える。

第十二条の二 市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が左の各号の一に該当するときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、期間を定めてその使用の停止を命ずることができる。

 一 第十一条第一項の規定による許可を受けないで、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更したとき。

 二 第十一条第三項に規定する完成検査を受けないで、製造所、貯蔵所又は取扱所を使用したとき。

 三 第十二条第二項の規定による命令に違反したとき。

 四 第十三条第一項の規定に違反したとき。

第十二条の三 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の用途を廃止したときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。

 第十三条第一項及び第二項を次のように改め、同条第三項中「取扱主任者」を「危険物取扱主任者」に改める。

  製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、危険物取扱主任者免状の交付を受けている者のうちから、危険物取扱主任者を定め、危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない。

  製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、前項の規定により危険物取扱主任者を定めたときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。

 第十三条の次に次の二条を加える。

第十三条の二 危険物取扱主任者免状の種類は、甲種危険物取扱主任者免状及び乙種危険物取扱主任者免状とする。

  危険物取扱主任者免状の交付を受けている者がその取扱作業に関して保安の監督をすることができる危険物の種類は、前項に規定する危険物取扱主任者免状の種類に応じて命令で定める。

  危険物取扱主任者免状は、都道府県知事の行う危険物取扱主任者試験(以下「危険物取扱主任者試験」という。)に合格した者に対し、都道府県知事が交付する。

  都道府県知事は、左の各号の一に該当する者に対しては、危険物取扱主任者免状の交付を行わないことができる。

 一 次項の規定により危険物取扱主任者免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者

 二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しないもの

  都道府県知事は、危険物取扱主任者免状の交付を受けている者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定に違反しているときは、その危険物取扱主任者免状の返納を命ずることができる。

  前五項に規定するものの外、危険物取扱主任者免状の書換、再交付その他危険物取扱主任者免状に関し必要な事項は、政令で定める。

第十三条の三 危険物取扱主任者試験は、危険物の取扱作業の保安に関して必要な知識及び技能について行う。

  危険物取扱主任者試験の種類は、甲種危険物取扱主任者試験及び乙種危険物取扱主任者試験とする。

  左の各号の一に該当する者は、甲種危険物取扱主任者試験を受けることができる。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学若しくは短期大学において化学に関する学科若しくは課程を修めて卒業した者又はこれと同等以上の学力を有すると都道府県知事が認定した者で、六月以上危険物取扱の実務経験を有するもの

 二 乙種危険物取扱主任者免状の交付を受けた後二年以上危険物取扱の実務経験を有する者

  六月以上危険物取扱の実務経験を有する者は、乙種危険物取扱主任者試験を受けることができる。

  前四項に規定するものの外、危険物取扱主任者試験の試験科目、受験手続その他試験の実施細目は、命令で定める。

 第十四条第一項中「市町村条例で定める資格を有する映写技術者でない者」を「映写技術者免状の交付を受けていない者」に改め、同条第二項中「市町村条例で定める資格を有する所属の」を「映写技術者免状の交付を受けている者のうちから、」に、「所轄消防長又は消防署長」を「市町村長等」に改め、同条同項に後段として次のように加える。

   これを解任したときも、同様とする。

 第十四条第二項の次に次の二項を加える。

  第一項に規定する映写技術者免状は、都道府県知事が行う映写技術者試験に合格した者に対し、都道府県知事が交付する。

  第十三条の二第四項から第六項まで並びに第十三条の三第一項及び第五項の規定は、映写技術者免状及び映写技術者試験について準用する。

 第十五条第一項中「映写室は、市町村条例で定める」を「政令で定める映写室は、政令で定める技術上の基準に従い、」に改め、同条第二項中「映写室を設置し、又は廃止した者及び」及び「、市町村条例の定めるところにより」を削り、同条第一項の次に次の一項を加える。

  前項の映写室を設置し、又は廃止した者は、その旨を市町村長等に届け出なければならない。

 第十六条を次のように改める。

第十六条 危険物の運搬は、その容器、積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。

 第十六条の次に次の五条を加える。

第十六条の二 第十三条の三第一項(第十四条第四項において準用する場合を含む。)に規定する危険物取扱主任者試験及び映写技術者試験の実施に関する事務を行わせるため、都道府県知事の監督に属する危険物取扱主任者等試験委員を置く。

  前項の危険物取扱主任者等試験委員の組織、任期その他危険物取扱主任者等試験委員に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。

第十六条の三 製造所、貯蔵所若しくは取扱所の設置若しくは変更の許可、製造所、貯蔵所若しくは取扱所の完成検査、危険物取扱主任者若しくは映写技術者の試験又は危険物取扱主任者免状若しくは映写技術者免状の交付、書換若しくは再交付を受けようとする者は、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。

第十六条の四 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱に伴う火災の防止のため必要があると認めるときは、製造所、貯蔵所若しくは取扱所の所有者、管理者若しくは占有者に対して資料の提出を命じ、又は当該消防事務に従事する職員に、製造所、貯蔵所若しくは取扱所に立ち入り、これらの場所の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱が技術上の基準に適合しているかどうかを検査させ、関係者に質問させ、若しくは試験のため必要な最少限度の数量に限り危険物を収去させることができる。

 第四条第四項から第六項までの規定は、前項の場合にこれを準用する。

第十六条の五 消防本部若しくは消防署の設置又は廃止により、あらたに消防本部及び消防署が置かれることとなつた市町村又は消防本部及び消防署が置かれないこととなつた市町村の区域に係る第十一条、第十二条第二項、第十二条の二、第十二条の三、第十三条第二項、第十四条第二項及び第十五条第二項に規定する当該行政庁に変更があつた場合においては、変更前の行政庁がした許可その他の処分又は受理した届出は、変更後の行政庁がした許可その他の処分又は受理した届出とみなす。

第十六条の六 この章の規定は、航空機、船舶、鉄道及び軌道による危険物の貯蔵、運搬、詰替その他の取扱には、これを適用しない。

 第四十一条第一項第三号中「第十五条」の下に「第一項」を加える。

 第四十二条第一項第一号を次のように改める。

 一 第十一条第一項の規定に違反して製造所、貯蔵所若しくは取扱所を設置し、又はその位置、構造若しくは設備を変更した者

 第四十二条第一項第三号及び第四号を削り、同項第二号中「違反して」の下に「危険物」を加え、同号を同項第四号とし、同項第一号の次に次の二号を加え、同項第七号中「所属の」を削る。

 二 第十一条第三項の規定に違反した者

 三 第十二条の二の規定による命令に違反した者

 第四十三条を次のように改める。

第四十三条 第十条第三項又は第十六条の規定に違反した者は、これを三箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

  前項の罪を犯した者に対しては、情状により懲役及び罰金を併科することができる。

 第四十四条第二号中「第四条」の下に「、第十六条の四」を加え、同条第三号中「第一項又は第十四条第二項」を「第二項、第十四条第二項又は第十五条第三項」に改め、同条中第十号を第十一号とし、第四号から第九号までを一号ずつ繰り下げ、第三号の次に次の一号を加える。

 四 第十三条の二第五項(第十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者

 第四十五条中「第十一条」を「第十一条第一項若しくは第三項」に、「第十二条第一項」を「第十二条の二」に、「及び第十五条の規定並びに第十六条の規定による市町村条例」を「、第十五条第一項若しくは第三項又は第十六条」に改める。

 別表中第十条第一項及び第十一条の数量の欄中「第十条第一項及び第十一条の」を削り、同表備考第二号を次のように改める。

  二 動植物油類とは、常温で液状となる動植物油類であつて、不燃性容器に収納密栓され、かつ、貯蔵保管されているもの以外のものをいう。

 同表備考第八号の次に次の一号を加える。

  九 塗料類その他品名の異なる危険物を混合したものの属する品名は、命令で定める。


   附 則

1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内で政令で定める日から施行する。

2 この法律の施行の際、この法律による改正前の第三章の規定に基く市町村条例によりなされている許可の申請、届出その他の手続又は同章の規定に基く市町村条例によりなされた許可その他の処分は、それぞれこの法律による改正後の相当規定に基いてなされた手続又は処分とみなす。

3 この法律の施行の際、この法律による改正前の第三章の規定に基く市町村条例が制定されていない市町村の区域において設置されている製造所、貯蔵所又は取扱所については、この法律の施行の日から起算して三月間は、この法律による改正後の第十条第一項から第三項までの規定、第十一条第一項から第三項までの規定及び第十二条第一項の規定は、適用しない。この場合において、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が、命令で定めるところにより、その期間内に市町村長等に届け出たときは、その者は、この法律による改正後の第十一条第一項及び第三項の規定により、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について設置の許可及び完成検査を受けて使用しているものとみなす。

4 この法律の施行の際、現にこの法律による改正前の第十三条第二項又は第十四条第一項の規定に基き市町村条例で定める取扱主任者又は映写技術者の資格を有する者は、この法律による改正後の第十三条の二第三項又は第十四条第三項の規定にかかわらず、昭和三十六年三月三十一日までの間は、この法律により危険物取扱主任者免状又は映写技術者免状の交付を受けた者とみなす。

5 前項の取扱主任者又は映写技術者が、昭和三十六年三月三十一日までの間において都道府県知事の指定する講習を修了したときは、その者は、この法律による改正後の第十三条の二第三項又は第十四条第三項に規定する試験に合格した者とみなされ、それぞれ危険物取扱主任者免状又は映写技術者免状の交付を受けることができる。

6 この法律の施行の際、この法律による改正前の第三章の規定に基く市町村条例が制定されていない市町村の区域において、現に製造所、貯蔵所又は取扱所に係る危険物の取扱作業に関して保安の監督をしている者又は映写室の映写機を操作している者は、この法律による改正後の第十三条の二第三項又は第十四条第三項の規定にかかわらず、この法律の施行の日から起算して一年間は、当該市町村の区域に限つて、この法律により危険物取扱主任者免状又は映写技術者免状の交付を受けた者とみなす。ただし、この法律の施行の日から起算して三月以内に市町村長等に届け出なかつたときは、この限りでない。

7 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

8 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。

  第百十五条の二第一項中「及び第十一条」を削る。

(内閣総理大臣署名) 

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