石油資源探鉱促進臨時措置法
法律第八十九号(昭二九・五・一)
(地域の指定)
第一条 通商産業大臣は、石油資源の開発を図るため探鉱を急速に実施する必要があると認める地域を指定する。
2 前項の規定による指定は、告示により行う。
3 通商産業大臣は、第一項の規定による指定をするときは、石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会にはかり、その意見を尊重して、これをしなければならない。
4 第一項の規定による指定は、解除しないものとする。
(施業案の特例)
第二条 前条第一項の規定により指定された地域(以下「指定地域」という。)内に存する石油を目的とする試掘権に係る試掘権者が鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第六十三条第一項の規定により施業案を届け出るべき期限は、同項の規定にかかわらず、事業に着手する日の六十日前とする。
第三条 通商産業局長は、指定地域内に存する石油を目的とする試掘権に係る試掘権者の施業案を変更しなければ、その鉱区の油層の状態を確認することができないと認めるときは、その試掘権者に対し、施業案を変更すべきことを勧告することができる。
2 前項の規定による勧告があつたときは、試掘権者は、通商産業局長に対し、その指定する日までに、当該勧告を応諾するかしないか(応諾しない場合にはその理由及び勧告に係る措置に代るべき措置の内容を附して)を回答しなければならない。
3 通商産業局長は、試掘権者が前項に規定する回答をしないとき、その応諾しない理由が正当でないと認めるとき、又はその回答に係る措置の内容が適当でないと認めるときは、その試掘権者に対し、理由を示して、第一項の勧告に係る措置をとるべきこと又はその回答に係る措置の内容を変更して実施すべきことを命ずることができる。
4 通商産業局長は、第一項の規定による勧告又は前項の規定による命令をするには、鉱山保安監督部長に協議しなければならない。
第四条 通商産業局長は、試掘権者が前条第三項の規定による命令に違反したときは、鉱業法第十八条第二項の申請に対し、延長の許可をしてはならない。
(事業着手の義務の特例)
第五条 指定地域内に存する石油を目的とする試掘権に係る試掘権者についての鉱業法第五十五条第一号又は第六十二条第一項若しくは第三項の規定の適用については、同法第五十五条第一号及び第六十二条第三項中「一年」とあるのは「六箇月」と、同条第一項中「六箇月」とあるのは「三箇月」と読み替えるものとする。
(存続期間等の特例)
第六条 指定地域内に存する石油を目的とする試掘権
(第一条第一項の規定による指定の際現に存するものを除く。)の存続期間は、鉱業法第十八条第一項の規定にかかわらず、一年とする。
2 鉱業法第十八条第二項の規定により指定地域内に存する石油を目的とする試掘権の存続期間を延長することができる回数は、同項の規定にかかわらず、八年から当該試掘権の設定の登録の日から同項の申請があつた際における当該試掘権の存続期間の満了の日までの期間を控除した年数を一年で除して得た数とし、その延長する期間は、同条第三項の規定にかかわらず、一回ごとに一年とする。
(試掘権の譲渡)
第七条 指定地域において石油の探鉱を実施するため試掘権を譲り受けようとする者は、省令で定める手続に従い、通商産業局長の許可を受けて、当該試掘権者に対し協議することができる。
2 通商産業局長は、当該試掘権者が試掘権の設定若しくは移転の登録があつた日から三月以内に事業に着手せず、又は引き続き三月以上その事業を休止しており、且つ、試掘権を譲り受けようとする者が当該鉱区における探鉱を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有しているときでなければ、前項の許可をしてはならない。
3 通商産業局長は、第一項の許可をしたときは、直ちにその旨を当該試掘権者に通知しなければならない。
第八条 試掘権を譲り受けようとする者は、前条第一項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、省令で定める手続に従い、通商産業局長の決定を申請することができる。
第九条 通商産業局長は、前条の規定による決定の申請を受理したときは、その申請書の副本を試掘権者に交付し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならない。
第十条 試掘権者は、前条の規定による申請書の副本の交付を受けた後は、第八条の規定による申請を拒否する旨の決定があるまで、第十四条第二項の規定による試掘権の移転の登録があるまで、又は第十六条第二項において準用する鉱業法第九十九条の規定により決定がその効力を失うまでは、当該試掘権を譲渡し、又は当該鉱区の減少の出願をすることができない。
第十一条 通商産業局長は、試掘権者が現に事業を行つておらず、且つ、試掘権を譲り受けようとする者が当該鉱区における探鉱を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を現に有しているときでなければ、試掘権を譲り渡すべき旨を定める決定をしてはならない。
第十二条 通商産業局長は、左に掲げる事項を定めて、試掘権を譲り渡すべき旨を定める決定をしなければならない。
一 当該鉱区の所在地
二 当該試掘権の登録番号
三 試掘権の譲渡の時期
四 対価並びにその支払の時期及び方法
2 通商産業局長は、前項の決定をするときは、地方鉱業協議会にはかり、その意見を尊重して、これをしなければならない。
第十三条 第八条の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
2 通商産業局長は、第八条の決定をしたときは、決定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
第十四条 第十二条第一項の決定があつたときは、当事者の間に、試掘権の譲渡について協議がととのつたものとみなす。
2 前項の規定により協議がととのつたものとみなされた場合において、試掘権を譲り受けようとする者が対価の全部の支払又は供託をしたときは、通商産業局長は、当該試掘権の移転の登録をし、且つ、その旨を当事者に通知しなければならない。
第十五条 第七条第一項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわない場合において、同項の許可の後一月以内に第八条の規定による決定の申請がなかつたときは、許可は、その効力を失う。
第十六条 鉱業法第九十七条及び第九十八条の規定は、第十二条第一項の決定による対価に準用する。
2 鉱業法第九十九条の規定は、第十二条第一項の決定に準用する。
(業務又は経理に関する勧告)
第十七条 通商産業大臣は、石油の探鉱を急速に実施するため特に必要があると認めるときは、指定地域内に存する石油を目的とする鉱業権に係る鉱業権者に対し、業務又は経理の改善に関する勧告をすることができる。
(異議の申立)
第十八条 この法律の規定によつてした処分(第三条第一項の規定による勧告を除く。)に不服のある者は、通商産業大臣に対し、異議の申立をすることができる。
2 鉱業法第七章の規定は、前項の規定による異議の申立に準用する。
(報告及び検査)
第十九条 通商産業大臣及び通商産業局長は、この法律の施行に必要な限度において、指定地域内に存する石油を目的とする鉱業権に係る鉱業権者からその業務若しくは経理の状況に関する報告を徴し、又はその職員にその事業所若しくは事務所に立ち入り、業務若しくは経理の状況若しくは帳簿書類を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人に呈示しなければならない。
3 第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(行為の効力の承継)
第二十条 この法律の規定によつてした手続その他の行為は、指定地域内に存する石油を目的とする試掘権に係る試掘権者の承継人に対しても、その効力を有する。
(罰則)
第二十一条 第三条第二項の規定により勧告を応諾する旨を回答しながら当該勧告に従わず、又は同条第三項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第二十二条 第十九条第一項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。
第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、施行の日から十年以内に廃止するものとする。
(通商産業・内閣総理大臣署名)