輸出信用保険法の一部を改正する法律
法律第三十三号(昭二七・三・三一)
輸出信用保険法(昭和二十五年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第一条の前に次の目次及び章名を加える。
目次
第一章 総則(第一条―第一条の七)
第二章 甲種保険(第二条―第五条)
第三章 乙種保険(第五条の二―第五条の四)
第四章 丙種保険(第六条―第十条)
第五章 丁種保険(第十一条―第十四条)
第六章 不服の申立(第十五条)
第七章 輸出信用保険審議会(第十六条―第十九条)
附則
第一章 総則
第一条の次に次の六条及び章名を加える。
(定義)
第一条の二 この法律において「輸出契約」とは、本邦内で生産され、加工され、又は集荷される貨物を輸出する契約であつて、政令で定める事項についての定があるものをいう。
2 この法律において「輸出者」とは、輸出契約の当事者であつて、貨物を輸出するものをいう。
3 この法律において「供給契約」とは、輸出者が輸出契約に基いて輸出すべき貨物を本邦内で生産し、加工し、又は集荷して当該輸出者に引き渡す契約をいう。
4 この法律において「生産者」とは、輸出する目的をもつて本邦内で貨物を生産し、加工し、又は集荷する者をいう。
(輸出信用保険の種類)
第一条の三 輸出信用保険は、甲種保険、乙種保険、丙種保険及び丁種保険とする。
(保険料率)
第一条の四 輸出信用保険の保険契約(甲種保険にあつては、甲種保険を再保険する契約をいう。以下同じ。)の保険料率は、この法律による政府の保険事業の収入が支出を償うように、政令で定める。
(契約の解除等)
第一条の五 政府は、輸出信用保険の保険契約の保険契約者、被保険者又は保険金を受け取るべき者がこの法律(これに基く命令を含む。)の規定又は輸出信用保険の保険契約の条項に違反したときは、当該保険契約に基く保険金の全部若しくは一部を支払わず、若しくは保険金の全部若しくは一部を返還させ、又は将来にわたつて当該保険契約を解除することができる。
(保険関係の成立の制限等)
第一条の六 政府は、取引上の危険が大であるとき、その他この法律による政府の保険事業の経営上必要があるときは、将来にわたつて、再保険する甲種保険の保険金額を制限し、又は甲種保険の再保険若しくは丙種保険の保険契約に基く保険関係を成立させないことができる。
(契約の限度)
第一条の七 政府は、一会計年度内に締結する保険契約により再保険する甲種保険の保険金額の総額、一会計年度内に引き受ける乙種保険の保険金額の総額、一会計年度内に締結する丙種保険の保険契約に基いて成立する保険関係の保険金額の総額及び当該丙種保険の保険契約に基いて支払うべき保険金の総額並びに一会計年度内に引き受ける丁種保険の保険金額の総額が、それぞれ会計年度ごとに国会の議決を経た金額をこえない範囲内において、輸出信用保険の保険契約を締結するものとする。
第二章 甲種保険
第二条の前の見出しを「(再保険契約)」に改め、同条第一項中「輸出信用保険」を「甲種保険」に改め、「(以下「再保険契約」という。)」を削り、同条第二項中「再保険契約」を「前項の契約」に、「輸出信用保険契約」を「甲種保険の保険契約」に改め、同条第三項から第五項までを削る。
第三条に見出しとして「(保険契約)」を加え、同条中「政府が再保険を引き受ける輸出信用保険」を「甲種保険」に、「輸出契約(本邦内で生産、加工又は集荷される貨物を輸出する契約であつて政令で定めるものをいう。以下同じ。)」を「輸出契約又は供給契約」に改め、「輸出者」の下に「又は供給契約の当事者たる政令で定める貨物に係る生産者」を加え、「損害保険(以下「甲種保険」という。)」を「輸出信用保険」に改める。
第四条を次のように改める。
第四条 削除
第五条を次のように改める。
(保険金)
第五条 輸出者を被保険者とする甲種保険において保険会社がてん補すべき額は、輸出契約で定める輸出貨物の代金の額のうち第三条各号の一に該当する事由により輸出者が輸出契約に基いて受け取ることができなくなつた金額から左の各号に掲げる金額を控除した残額(当該事由による航海又は航路の変更により輸出者が新たに負担すべきこととなつた海上の運賃又は保険料の増加額をてん補すべきことを保険契約の締結の際約したときは、その増加額を加算した額)に、百分の八十の範囲内において政令で定める割合を乗じて得た額とする。但し、保険金額をこえることができない。
一 輸出者が輸出貨物の処分その他損失を軽減するために必要な措置を講じて回収した金額又は回収し得べき金額
二 輸出者が当該事由の発生により輸出契約の履行を免かれたために支出を要しなくなつた金額
三 輸出者が貨物の輸出により取得すべきであつた利益(当該事由の発生により輸出することができなくなつた貨物に係る部分に限る。)の額から輸出貨物の代金(当該事由の発生により輸出することができなくなつた貨物に係る部分に限る。)の額に政令で定める割合を乗じて得た額を控除した残額
2 前項の規定は、第三条に規定する生産者を被保険者とする甲種保険において保険会社がてん補すべき額に準用する。
第五条の次に次の章名を加える。
第三章 乙種保険
第五条の二の前の見出しを「(保険契約)」に改め、同条中第三項を削り、第二項を第三項とし、第一項中「政府」を「乙種保険」に、「輸出信用保険(以下「乙種保険」という。)を引き受けることができる。」を「輸出信用保険とする。」に改め、同項を第二項として、同条に第一項として次の一項を加える。
政府は、乙種保険を引き受けることができる。
第五条の三に見出しとして「(保険価額)」を加える。
第五条の四に見出しとして「(保険金)」を加え、同条中「第五条の二第一項」を「第五条の二第二項」に改める。
第五条の五及び第五条の六を削る。
第十条に見出しとして「(庶務)」を加え、同条を第十九条とする。
第九条を第十八条とし、第八条に見出しとして「(組織)」を加え、同条第一項中「九人」を「十一人」に、同条第三項中「貿易」を「貿易、金融」に改め、同条を第十七条とする。
第七条の見出しを「(設置及び権限)」に改め、同条を第十六条とし、同条の前に次の章名を加える。
第七章 輸出信用保険審議会
第六条の見出しを削り、同条第一項中「保険会社又は乙種保険の被保険者若しくは保険金を受け取るべき者は、」を削り、「第二条第三項又は第五条の五」を「第一条の六」に、「不服があるときは、」を「不服がある者は、」に「その旨を申し立てる」を「不服の申立をする」に改め、同条第三項を削り、同条を第十五条とし、同条の前に次の章名を加える。
第六章 不服の申立
第五条の四の次に次の二章を加える。
第四章 丙種保険
(保険契約)
第六条 政府は、会計年度又はその半期ごとに、銀行(日本銀行を除き、農林中央金庫及び商工組合中央金庫を含む。以下同じ。)を相手方として、丙種保険の保険契約を締結することができる。
2 丙種保険は、銀行が輸出者又は生産者に対し左の各号に掲げる資金を融通するため手形貸付又は手形割引を行つたことを政府に通知することにより、その手形貸付又は手形割引につき政府と銀行との間に、輸出者又は生産者がその手形貸付又は手形割引により融通を受けた資金によつて輸出し、又は輸出する目的をもつて譲渡しようとした貨物の全部又は一部を輸出し、又は輸出する目的をもつて譲渡することができなくなつたことによつて生ずる銀行の回収未済の額をてん補すべき保険関係が成立する輸出信用保険とする。
一 輸出者が輸出契約に基いて政令で定める地域に向け、若しくは政令で定める代金の決済方法により輸出すべき貨物を輸出するため、又は生産者が当該貨物を生産し、加工し、若しくは集荷するために必要とする資金
二 前号に掲げるものの外、通商産業大臣が、政令で定める地域に向け政令で定める貨物を輸出する輸出契約が確実に成立する見込があると認めた場合において、生産者が当該貨物を生産し、加工し、又は集荷するために必要とする資金
(保険価額及び保険金額)
第七条 丙種保険の保険関係においては、手形金額を保険価額とし、保険価額に百分の七十五を乗じて得た金額を保険金額とする。
(保険金)
第八条 丙種保険の保険関係に基いて政府がてん補すべき額は、保険価額のうち第六条第二項に規定する事由により銀行が手形の満期において回収することができなかつた金額から満期後に回収した金額を控除した残額に百分の七十五を乗じて得た金額とする。
(資金の回収)
第九条 保険金の支払を受けた銀行は、第六条第二項の保険関係が成立した手形貸付又は手形割引により融通した資金について、手形上の権利の行使によりその回収に努めなければならない。
(回収金の納付)
第十条 保険金の支払を受けた銀行は、その支払の請求をした後回収した金額から手形の満期以後保険金の支払を受けた日の前日までの利息を控除した残額に百分の七十五を乗じて得た金額を政府に納付しなければならない。
第五章 丁種保険
(保険契約)
第十一条 政府は、丁種保険を引き受けることができる。
2 丁種保険は、生産者が政令で定める地域に向け貨物を輸出することを目的として当該貨物の見本の輸出その他広告に必要な費用を支出した場合において当該貨物を輸出し、又は輸出する目的をもつて譲渡することによつて当該費用を回収することができなかつたことにより受ける損失をてん補する輸出信用保険とする。
第十二条 丁種保険の保険契約においては、貨物の種類及び貨物を輸出すべき地域、当該貨物の広告のため支出すべき費用の額、その費用を回収すべき期間(以下「回収期間」という。)並びに回収期間内に当該地域に向け輸出される貨物の代金として生産者が取得すべき額のうち当該費用の支出により取得すべき金額に対する当該費用の額の割合(以下「回収率」という。)を定めるものとする。
(保険価額)
第十三条 丁種保険においては、前条に規定する費用の額を保険価額とする。
2 丁種保険の保険金額が保険価額に百分の五十の範囲内において政令で定める割合を乗じて得た金額をこえるときは、そのこえる部分については、保険契約は、無効とする。
(保険金)
第十四条 丁種保険において政府がてん補すべき額は、保険価額のうち生産者が当該貨物の広告のため支出した費用の額から回収期間内に当該地域に向け輸出された当該貨物の代金として生産者が取得した額のうち当該費用の支出により取得したものとみなすべき金額に回収率を乗じて得た金額を控除した残額に、保険金額の保険価額に対する割合を乗じて得た金額とする。
附 則
1 この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
2 この法律の施行前に保険会社が引き受けた甲種保険については、なお従前の例による。
3 政府は、第一条の七の規定にかかわらず、昭和二十七年度に限り、丁種保険の保険金額の総額が一億円をこえない範囲内で、丁種保険の保険契約を締結することを妨げない。
(大蔵・通商産業・内閣総理大臣署名)