水産業団体整理特別措置法
法律第九十号(昭二四・五・二〇)
(法律の目的)
第一条 この法律は、水産業団体(漁業会、製造業会及び都道府県水産業会をいう。以下同じ。)が水産業協同組合法の制定に伴う水産業団体の整理等に関する法律(昭和二十三年法律第二百四十三号。以下「整理法」という。)に基いてその財産を処分するについて、債権者の保護手続及び財産の評価基準等を定め、もつて財産処分の公正と水産業協同組合への円滑な財産移転とを図ることを目的とする。
(債権者に対する措置)
第二条 水産業団体は、整理法第五条、第七条及び第九条から第十一条までの規定に基き水産業協同組合が債務を承継することにつき異議を有する債権者は一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、知れている債権者には、各別にその旨を催告しなければならない。
2 前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。
3 債権者が第一項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、同項に規定する債務の承継を承諾したものとみなす。
4 債権者が第一項の一定の期間内に異議を述べたときは、水産業団体は、遅滞なく、弁済をし、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託業務を営む銀行若しくは信託会社に相当の財産を信託しなければならない。
第三条 前条第四項の規定による弁済又は信託をするために必要な財産の売却は、法令又はこれに基く行政庁の処分に従つて処分しなければならない資産を除き、随意契約によつてしなければならない。
2 前項の随意契約ができないとき又は成立しなかつたときの財産の売却は、入札又は競売の方法のうち整理法第十三条第三項の資産処理委員会(以下「資産処理委員会」という。)の定める方法によつてしなければならない。
3 第一項の随意契約の方法によつて資産を処分する場合において、その価格は、公定価格(法令に基く価格をいう。以下同じ。)があるときはこれによるものとし、公定価格がないときは時価を基準として資産処理委員会の定める価格によるものとする。
(買受人又は落札人の決定)
第四条 随意契約の方法をもつて水産業団体の財産を水産業協同組合以外の者に売却しようとする場合には、当該水産業団体は、当該財産の種類、売却しようとする相手方の氏名若しくは名称及び住所並びに売却価格を公告しなければならない。
2 前項の場合において、水産業協同組合は、当該水産業団体に対し、当該売却価格により当該財産を譲渡すべきことを申し出ることができる。但し、公告の日から二週間を経過したときは、この限りでない。
3 水産業団体は、前項本文の規定に基いて同項但書の期間内に当該財産の譲渡を申し出た水産業協同組合に、第一項の売却価格をもつて、当該財産を譲渡しなければならない。
4 前項の規定により当該財産の譲渡を受けるべき水産業協同組合が二以上ある場合には、水産業団体はこれらの水産業協同組合につき入札又は競売を行い、その結果落札人又は競落人となつた者に落札価格又は競落価格をもつて、当該財産を譲渡しなければならない。
5 前項の落札価格又は競落価格は、第一項の売却価格を下ることができない。
第五条 入札の方法をもつて水産業団体の財産を売却するにあたり、落札となるべき同価の入札をした者が二人以上ある場合において、そのうちに水産業協同組合があるときは、当該水産業協同組合をもつて落札人とする。
2 入札の方法をもつて水産業団体の財産を売却する場合において水産業協同組合以外の者が最高価の入札をしたときは、入札に加わつた水産業協同組合は、水産業団体に対し、当該入札価格により当該財産を譲渡すべきことを申し出ることができる。但し、入札開封の日から十日を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、前条第三項から第五項までの規定を準用する。
第六条 前二条の規定中「水産業協同組合」とあるのは、売却しようとする財産が漁業会に属する場合にあつては当該漁業会の会員の十分の一以上を組合員とする漁業協同組合又は漁業生産組合とし、当該財産が都道府県水産業会に属する場合にあつては当該都道府県水産業会の地区の全部又は一部を地区とする漁業協同組合又は漁業協同組合連合会とし、当該財産が製造業会に属する場合にあつては当該製造業会の地区の全部又は一部を地区とする水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会とする。
第七条 前三条に規定するものの外、第三条の規定による財産の売却につき必要な事項は、資産処理委員会が定める。
(財産移転の認可申請の制限)
第八条 水産業団体は、前六条の規定による手続を完了した後でなければ、整理法第五条第一項、第七条第一項、第九条第一項、第十条第一項又は第十一条第一項の規定による財産移転の認可の申請をすることができない。
(財産の評価)
第九条 水産業団体が整理法第五条、第七条、第九条、第十条又は第十一条の規定により財産を移転する場合における当該財産の価格は、公定価格があるときはその価格によるものとし、公定価格がないときは帳簿価格と時価との範囲内で資産処理委員会が定める価格によるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
(大蔵・農林・内閣総理大臣署名)