臨時宅地賃貸価格修正法

法律第八十五号(昭二四・五・一九)

 (目的)

第一条 この法律は、宅地につき地租の課税標準たる賃貸価格が経済事情の変動等に因り著しく不均衡となつている状況にかんがみ、租税負担の適正を図るため、土地の賃貸価格の一般改定と切り離して、臨時に宅地の賃貸価格を修正することとし、その実施の時期、基準、方法その他必要な事項を定めることを目的とする。

 (修正の実施及びその時期)

第二条 政府は、土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)の規定にかかわらず、土地台帳に登録された宅地の賃貸価格(以下「台帳賃貸価格」という。)で昭和二十四年四月一日現在の土地の状況に照らし著しく不均衡であるものにつき、この法律の定めるところにより、昭和二十四年十月一日において臨時に台帳賃貸価格の修正を行う。

2 前項の宅地は、昭和二十四年四月一日において土地台帳に宅地として登録された土地とする。

 (基準地区及び基準地区調査会)

第三条 政府は、前条第一項の規定により台帳賃貸価格の修正を行う場合の基準とするため、政令の定めるところにより、台帳賃貸価格の修正を要しないと認められる市区町村の全部又は一部の区域のうちから、基準地区を定める。

2 前項の基準地区の選定その他基準地区に関する事項を諮問するため、大蔵省に基準地区調査会を置く。

3 基準地区調査会は、会長及び十五人以内の委員をもつて組織し、委員は、地方公共団体の職員及び学識経験のある者のうちから、大蔵大臣が命ずる。

4 会長は、大蔵次官をもつて充てる。

5 会長は、会務を総理する。

6 会長に事故があるときは、あらかじめ会長の指名する者が、その職務を代理する。

7 前五項に規定するものの外、基準地区調査会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (修正賃貸価格の算出方法)

第四条 第二条第一項の規定により修正する台帳賃貸価格(以下「修正賃貸価格」という。)は、昭和二十四年四月一日現在において、現行の台帳賃貸価格の定められた時以後における経済事情の変動等に因る影響が類似するものと認められる区域を一区域とし、その区域内において標準となるべき宅地(以下「標準地」という。)を選定し、当該標準地の台帳賃貸価格に対する基準地区内の当該標準地と状況類似する宅地の台帳賃貸価格の割合を求め、その割合を当該区域内の宅地の台帳賃貸価格に乗じて得た価額によつて定める。

2 前項の場合において、基準地区内に当該標準地と状況類似する宅地がないときは、修正賃貸価格は、左の各号に定める割合を同項の区域内の宅地の台帳賃貸価格に乗じて得た価額によつて定める。

一 基準地区内の当該標準地と比較的状況類似する宅地の台帳賃貸価格に比準して当該標準地の修正賃貸価格を定め、当該修正賃貸価格の従前の台帳賃貸価格に対する割合

二 前号の規定によることを困難とする場合には、基準地区以外の区域内の当該標準地と状況類似する宅地で修正賃貸価格を定めることができたものの修正賃貸価格の当該標準地の台帳賃貸価格に対する割合

三 前二号の規定によることを困難とする場合には、基準地区以外の区域内の当該標準地と比較的状況類似する宅地で修正賃貸価格を定めることができたものの修正賃貸価格に比準して当該標準地の修正賃貸価格を定め、当該修正賃貸価格の従前の台帳賃貸価格に対する割合

3 前二項に規定する割合を計算する場合においては、標準地又は標準地と対比される宅地が耕地整理年期を有する宅地(特別法人税法の一部を改正する等の法律(昭和二十二年法律第二十九号)附則第十四条第一項の規定により耕地整理年期を有するものとみなされた宅地を含む。以下同じ。)であるときは、当該宅地の台帳賃貸価格(当該宅地が第四項の規定に該当するものであるときは、同項の規定により台帳賃貸価格とみなされた価額)を耕地整理法(明治四十二年法律第三十号)第十三条ノ三第二項又は昭和六年法律第二十九号(耕地整理法の一部を改正する法律)附則第八条の比率で除して得た価額をもつて、当該宅地の台帳賃貸価格とみなす。

4 第一項又は第二項に規定する割合を計算する場合においては、標準地又は標準地と対比される宅地が特別法人税法の一部を改正する等の法律附則第十四条第三項に規定する配当金(以下「配当金」という。)を有するものであるときは、当該宅地の台帳賃貸価格に配当金を加えたもの(当該宅地に台帳賃貸価格がない場合には、政令で定める価額)をもつて、当該宅地の台帳賃貸価格とみなす。

5 第一項又は第二項に規定する割合を計算する場合においては、標準地又は標準地と対比される宅地が耕地整理施行中のものであるときは、当該宅地につき政令の定めるところにより土地台帳法第十七条の規定に準じて定める価額をもつて、当該宅地の台帳賃貸価格とみなす。

6 第一項又は第二項に規定する割合を計算する場合においては、標準地又は標準地と対比される宅地が土地区画整理を施行した宅地で昭和十三年一月一日から昭和二十四年四月一日までの間において賃貸価格の配賦のあつたものであるときは、当該宅地につき政令の定めるところにより土地台帳法第十七条の規定に準じて定める価額をもつて、当該宅地の台帳賃貸価格とみなす。

第五条 前条第一項又は第二項に規定する一定の割合をもつて一率に修正賃貸価格を算出することを不適当とする区域内の宅地については、まず、これらの項に規定する一定の割合を当該区域内の標準地の台帳賃貸価格に乗じてその修正賃貸価格を算出し、これに比準して当該区域内の各筆の宅地の修正賃貸価格を定める。

2 前項の標準地が前条第三項から第六項までの規定に該当する宅地である場合には、これらの項の規定により台帳賃貸価格とみなされた価額をもつて、当該標準地の台帳賃貸価格とみなして前項の規定を適用する。

3 第一項の規定により修正賃貸価格を定める場合において、耕地整理年期を有する宅地があるときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定により定められるべき価額に耕地整理法第十三条ノ三第二項又は昭和六年法律第二十九号附則第八条の比率を乗じて得た価額をもつて、当該宅地の修正賃貸価格とする。

4 第一項の規定により修正賃貸価格を定める場合において、配当金を有する宅地があるときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定により定められるべき価額から第十五条第二項の規定により修正された配当金に相当する価額を控除して得た価額をもつて、当該宅地の修正賃貸価格とする。

第六条 政府が第七条第一項の規定により第四条第一項の区域又は前条第一項の区域を定める場合において耕地整理施行中の宅地があるときは、当該宅地については、昭和二十四年四月一日の状況によらず当該耕地整理の工事着手当時の状況を基準とし、第四条第一項又は前条第一項の区域を定めなければならない。

2 第四条の規定により修正賃貸価格を定める場合において標準地若しくは標準地と対比される宅地が耕地整理施行中のものであるとき、又は前条の規定により修正賃貸価格を定める場合において耕地整理施行中の宅地があるときは、当該宅地については、昭和二十四年四月一日の状況によらず当該耕地整理の工事着手当時の状況を基準として、第四条第一項又は第二項に規定する一定の割合又は前条に規定する修正賃貸価格を定めなければならない。

 (地方宅地賃貸価格調査会及び宅地賃貸価格調査会)

第七条 第四条の規定により修正賃貸価格を定める場合における同条第一項に規定する区域、当該区域内における標準地、標準地と対比される宅地及び同条第一項及び第二項に規定する一定の割合並びに第五条の規定により修正賃貸価格を定める場合における同条第一項に規定する区域、当該区域内における標準地、標準地と対比される宅地及び標準地の修正賃貸価格については、政府が、地方宅地賃貸価格調査会に諮問して定める。

2 第五条の規定により定められる標準地以外の宅地の修正賃貸価格については、政府が、宅地賃貸価格調査会に諮問して定める。

3 地方宅地賃貸価格調査会は、基準地区の数に応じそれぞれの担当区域を定めて、各財務局に置き、宅地賃貸価格調査会は、第五条第一項に規定する区域を管轄する税務署に置く。

4 地方宅地賃貸価格調査会は、会長及び七人以内の委員をもつて組織し、委員は、当該調査会の担当区域内にある地方公共団体の職員及び学識経験のある者のうちから、財務局長が命ずる。

5 宅地賃貸価格調査会は、会長及び五人以内の委員をもつて組織し、委員は、当該調査会の置かれる税務署の管轄区域内にある地方公共団体の職員及び学識経験のある者のうちから、税務署長が命ずる。

6 地方宅地賃貸価格調査会の会長は、財務局長をもつて充て、宅地賃貸価格調査会の会長は、税務署長をもつて充てる。

7 会長は、会務を総理する。

8 会長に事故があるときは、あらかじめ会長の指名する者が、その職務を代理する。

9 前各項に規定するものの外、地方宅地賃貸価格調査会及び宅地賃貸価格調査会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (都道府県知事の意見)

第八条 都道府県知事は、政令の定めるところにより、当該都道府県内の宅地の台帳賃貸価格の修正に関し、政府に対し必要な意見を述べることができる。

 (修正賃貸価格の縦覧)

第九条 政府は、第二条第一項の規定により修正賃貸価格を定めたときは、当該修正賃貸価格を市区町村長に通知しなければならない。

2 市区町村長は、前項の通知を受けたときは、これを二十日間関係者の縦覧に供しなければならない。

3 前項の縦覧期間は、あらかじめ公示しなければならない。

 (審査の請求)

第十条 自己の所有する宅地につき第四条から第六条までの規定により定められた修正賃貸価格につき異議のある者は、政令の定めるところにより、前条第二項の縦覧期間満了の日から一月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をすることができる。

2 質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる宅地については、当該質権者又は地上権者からも、前項の審査の請求をすることができる。

 (審査の決定)

第十一条 政府は、前条の請求があつたときは、これを決定し、当該請求人に通知しなければならない。

2 前項の規定による決定をした場合において、当該請求に係る修正賃貸価格が第四条の規定により定められたものであつても、当該決定は、第四条第一項に規定する区域内における他の宅地の修正賃貸価格に影響を及ぼさないものとする。

 (訴願又は出訴)

第十二条 前条第一項の決定に対し不服のある者は、訴願し、又は行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)第二条の規定にかかわらず、裁判所に出訴することができる。

 (検査及び質問)

第十三条 当該職員は、台帳賃貸価格の修正に関する調査をする場合において、必要があるときは、宅地の検査をし、又は宅地の所有者、質権者その他の利害関係人に対し質問をすることができる。

2 前項の場合において、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

 (異動地の台帳賃貸価格の修正)

第十四条 昭和二十四年四月二日から同年九月三十日までの間に土地の異動により新たに宅地となり、賃貸価格を設定され、又は修正されたものについては、政府は、第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格に比準して、当該宅地の台帳賃貸価格を修正しなければならない。

2 昭和二十四年四月二日から同年九月三十日までの間に分筆又は合筆をした宅地については、政府は、分筆又は合筆前の宅地につき第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格を、土地台帳法第三十条の規定に準じ、配分し、又は合算しなければならない。

3 昭和二十四年四月二日から同年九月三十日までの間に耕地整理法第十三条第二項の規定により賃貸価格を配賦された耕地整理施行地区内の宅地については、政府は、第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格に比準して定められる価額に同法第十三条ノ三第二項に規定する比率を乗じて得た価額により、当該宅地の台帳賃貸価格を修正しなければならない。

4 昭和二十四年四月二日から同年九月三十日までの間に耕地整理法第十五条ノ三の規定により同法第十五条第一項に規定する賃貸価格を土地台帳に登録された宅地については、政府は、耕地整理の工事着手当時における当該宅地の状況を基準とし、第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格に比準して、当該宅地の台帳賃貸価格を修正しなければならない。

 (配当金の修正)

第十五条 第四条の規定により修正賃貸価格が定められた場合において、配当金を有する宅地があるときは、政府は、当該配当金に第四条第一項又は第二項に規定する一定の割合を乗じて得た価額により、当該配当金を修正しなければならない。

2 第五条の規定により修正賃貸価格が定められた場合において、配当金を有する宅地があるときは、政府は、当該配当金に当該宅地の台帳賃貸価格に対する修正賃貸価格の割合(当該宅地に台帳賃貸価格がない場合には、政令で定める割合)を乗じて得た価額により、当該配当金を修正しなければならない。

 (耕地整理地の設定賃貸価格等の修正)

第十六条 昭和二十四年十月一日現在において、耕地整理法第十四条ノ二第一項の規定に該当する宅地につき同項の規定により設定された賃貸価格がある場合には、政府は、耕地整理の工事完了当時における当該宅地の状況を基準とし、第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格に比準して、当該賃貸価格を修正しなければならない。

2 昭和二十四年十月一日現在において、耕地整理法第十五条第一項の規定に該当する宅地につき同項の規定により修正又は設定された賃貸価格(同法第十五条ノ三の規定により土地台帳に登録されたものを除く。)がある場合には、政府は、耕地整理の工事着手当時における当該宅地の状況を基準とし、第二条第一項の規定により定められた修正賃貸価格に比準して、当該賃貸価格を修正しなければならない。

3 前二項の規定に該当する宅地がある場合には、当該宅地の耕地整理施行者は、政令の定めるところにより、前二項の規定により修正されるべき賃貸価格その他必要な事項を政府に申告しなければならない。

 (罰則)

第十七条 第十三条第一項の規定による宅地の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。

第十八条 台帳賃貸価格の修正に関する調査若しくは審査の事務に従事し、又は基準地区調査会、地方宅地賃貸価格調査会若しくは宅地賃貸価格調査会の議事に参加した者が、その調査、審査又は議事に関し知り得た秘密を漏らしたときは、五万円以下の罰金に処する。

附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 農地調整法(昭和十三年法律第六十七号)及び自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号)の規定の適用については、第二条第一項の規定にかかわらず、昭和二十五年三月三十一日までは、修正前の賃貸価格をもつて、土地台帳法による賃貸価格とする。

(内閣総理・大蔵大臣署名)

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