簡易生命保険法
法律第六十八号(昭二四・五・一六)
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 契約(第五条―第五十四条)
第三章 簡易生命保険郵便年金審査会(第五十五条―第六十七条)
第四章 簡易生命保険郵便年金事業審議会(第六十八条)
第五章 被保険者の保健施設(第六十九条)
第六章 積立金の運用(第七十条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、国民に、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営により、なるべく安い保険料で提供し、もつて国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。
(簡易生命保険の国営)
第二条 この法律の規定により国が行う生命保険(以下「簡易生命保険」という。)は、営利を目的としない事業であつて、郵政省が、これをつかさどる。
(代表機関)
第三条 簡易生命保険の契約の締結及び契約上の権利義務に関する事項は、郵政省簡易保険局長が行う。
2 郵政省簡易保険局長は、前項に定める職権のうち細目の事項に関するものを地方簡易保険局長、地方郵政局長又は郵便局長に委任することができる。
(印紙税の免除)
第四条 簡易生命保険に関する書類には、印紙税を課さない。
第二章 契約
(保険契約)
第五条 簡易生命保険契約(以下「保険契約」という。)においては、国が保険契約者又は第三者の生死について保険金を支払うことを約し、保険契約者が国に保険料を支払ううことを約するものとする。
(保険約款)
第六条 保険契約は、この法律に定めるものの外、左の事項を定めた簡易生命保険約款(以下「保険約款」という。)による。
一 保険金額及び保険料額に関する事項
二 保険期間及び保険料払込期間に関する事項
三 加入年齢に関する事項
四 保険契約の成立に関する事項
五 保険料の払込及びその払込猶予期間並びに保険料の還付に関する事項
六 保険金の削減その他保険金の支払に関する事項
七 保険契約の変更及び解除、保険契約関係者の異動及び変更並びに被保険者の年齢の錯誤に関する事項
八 還付金の支払に関する事項
九 保険契約の復活に関する事項
十 保険契約者貸付に関する事項
十一 剰余金の分配に関する事項
2 保険約款は、簡易生命保険郵便年金事業審議会の議を経て、郵政大臣が定める。
3 保険約款は、官報で公示しなければならない。
4 この法律及び保険約款は、郵便局に備えて、保険契約の申込をする者の閲覧に供しなければならない。
(保険契約者の制限)
第七条 年齢十年に満たない者を被保険者とする保険契約においては、保険契約者は、被保険者の父、母、祖父、祖母、兄又は姉でなければならない。
(第三者を被保険者とする契約)
第八条 第三者の死亡に因り保険金を支払うことを定める保険契約をするには、その者の同意がなければならない。但し、その第三者が保険金受取人であるとき、又は年齢十年に満たない者であるときは、この限りでない。
(第三者を保険金受取人とする契約)
第九条 保険契約においては、第三者を保険金受取人とすることができる。この場合には、保険契約者は、国に対し保険料を支払わなければならない。
(第三者の利益享受)
第十条 保険金受取人が第三者であるときは、その第三者は、当然保険契約の利益を受ける。
(保険金受取人の制限)
第十一条 被保険者の年齢が十年に満たない間は、保険契約者を保険金受取人とする。
(保険契約者又は保険金受取人の代表者)
第十二条 同一の保険契約につき保険契約者又は保険金受取人が数人あるときは、それらの者は、各代表者一人を定めなければならない。この場合には、その代表者は、当該保険契約につき、それぞれ他の保険契約者又は保険金受取人を代理するものとする。
2 前項の代表者が定まらないとき、又はその所在が不明であるときは、当該保険契約につき保険契約者の一人に対してした行為は、他の者に対しても、その効力を有する。
(債務の連帯)
第十三条 同一の保険契約につき保険契約者が数人あるときは、当該保険契約に関する未払保険料、貸付金その他国に弁済すべき債務は、連帯とする。
(保険の種類)
第十四条 簡易生命保険は、終身保険及び養老保険とする。
(終身保険)
第十五条 終身保険とは、被保険者が死亡したことに因り保険金の支払をするものをいう。
(養老保険)
第十六条 養老保険とは、被保険者の生存中に保険期間が満了し、又はその期間の満了前に被保険者が死亡したことに因り保険金の支払をするものをいう。
(保険金額)
第十七条 保険金額は、被保険者一人につき五万円をこえてはならない。
2 保険金額は、保険契約一件につき五千円以上でなければならない。但し、第四十六条の規定により、貸付金の弁済に代えて保険金額の減額をしたときは、この限りでない。
(保険料計算の基礎)
第十八条 保険料は、左の基礎によつて計算する。
一 昭和五年四月から昭和十年三月に至る期間の簡易生命保険経験死亡率を基礎として作成した死亡生残表。但し、保険約款の定めるところにより算出した被保険者の年齢が六年に満たない場合にあつては、昭和十一年内閣統計局の発表した第五回生命表の男子死亡率にその百分の十を加えて作成した死亡生残表
二 年三分五厘の予定利率
三 前二号により計算した純保険料の額の百分の十八に相当する額と保険金額の千分の八に相当する額との合計額をこえない額による附加保険料
(積立金計算の方法)
第十九条 被保険者のために積み立てるべき金額は、前条の基礎によつて、純保険料式で計算する。但し、保険料払済保険契約及び保険約款の定めるところにより廃疾に因る保険料払込の免除を受けた保険契約以外の保険契約については、その効力発生後十年を経過しない間に限り、チルメル式で計算することができる。
2 前項但書に規定するチルメル式計算におけるチルメル控除額は、三箇月分の保険料に相当する額をこえない額とする。
(無診査及び面接)
第二十条 簡易生命保険では、被保険者の身体検査を行わない。
2 保険契約の申込をしようとする者は、申込の際、被保険者となるべき者をして、郵便局の職員に面接させなければならない。
(告知義務違反に因る契約の解除)
第二十一条 保険契約の申込の当時、保険契約者又は被保険者が質問表に掲げる質問事項につき悪意又は重大な過失に因つて事実を告げず、又は真実でない事を告げたときは、国は、保険契約の解除をすることができる。但し、国がその事実を知り、又は過失に因つてこれを知らなかつたときは、この限りでない。
2 前項の解除権は、国が解除の原因を知つた時から一箇月間これを行わないときは消滅する。保険契約が当該保険契約の効力発生の日から三年以上継続したときも、同様とする。
(解除の効果)
第二十二条 前条の規定により国が保険契約の解除をしたときは、その解除は、将来に向かつてのみその効力を生ずる。
2 国は、被保険者が死亡した後保険契約の解除をした場合においても、保険金の支払をする責に任ぜず、また、既に保険金の支払をしたときは、その返還を請求することができる。但し、保険契約者において、被保険者の死亡の原因がその告げ又は告げなかつた事実に基かないことを証明したときは、この限りでない。
(解除の相手方)
第二十三条 第二十一条の規定による解除は、保険契約者若しくはその法定代理人を知ることができないとき、又はこれらの者の所在を知ることができないときは、保険金受取人に対する意思表示によつても、これをすることができる。
2 第二十一条第二項に規定する一箇月の期間は、保険契約者若しくはその法定代理人又は前項の場合における保険金受取人若しくはその法定代理人を知ることができないとき、又はこれらの者の所在を知ることができないときは、これらの者の所在が知れた時から起算する。
(契約の成立及び効力の発生)
第二十四条 保険契約は、その申込を承諾したときは、申込の日において成立したものとみなし、且つ、その日から効力を生ずる。
(保険証書及び標準約款)
第二十五条 保険契約の申込を承諾したときは、保険証書を作成し、これを保険契約者に交付する。
2 保険証書には、左の事項を記載することを要する。
一 保険の種類
二 保険金額
三 保険料の額
四 保険契約者の氏名又は名称
五 被保険者の氏名及び生年月日
六 被保険者が年齢十年に満たない者であるときは、被保険者と保険契約者との続柄
七 保険金受取人の指定があつたときは、その者の氏名又は名称
八 養老保険にあつては、保険期間の終期
九 保険契約の効力発生年月日
十 保険証書作成の年月日
3 保険約款のうち左に掲げる事項(標準約款)及び保険金の支払免責に関する事項は、保険証書に記載しなければならない。但し、保険証書に記載することに代え、これを記載した書面を保険証書に添附することを妨げない。
一 保険料払込猶予期間に関する事項
二 保険金の削減に関する事項
三 年齢の錯誤に関する事項
四 還付金の支払に関する事項
五 保険契約の復活に関する事項
六 保険契約者貸付に関する事項
七 剰余金の分配に関する事項
(詐欺に因る無効)
第二十六条 保険契約者又は被保険者の詐欺に因る保険契約は、無効とする。
(契約の無効)
第二十七条 国又は保険契約者が、保険契約の申込の当時、既に保険事故の生じたことを知つているときは、その保険契約は、無効とする。
(契約の失効)
第二十八条 保険契約者が保険料を払い込まないで保険約款の定める払込猶予期間を経過したときは、保険契約は、その効力を失う。
(保険料払済保険契約)
第二十九条 保険契約者は、前条の規定にかかわらず、同条の払込猶予期間経過後三箇月以内に限り、保険約款の定めるところにより、その保険契約を保険料払済保険契約に変更することを請求することができる。
(保険契約者破産の場合における保険料の払込)
第三十条 保険金受取人が第三者である場合において、保険契約者が破産の宣告を受けたときは、国は、保険金受取人に対して保険料の払込を請求することができる。但し、保険金受取人がその権利を放棄したときは、この限りでない。
(保険金の倍額支払)
第三十一条 被保険者が保険契約の効力発生後二年を経過した後において、不慮の事故その他不可抗力又は第三者の加害行為に因つて身体の外部に生じた傷害を直接の原因として被害の日から二箇月以内に死亡したときは、保険金支払の際、当該保険金の外、これと同額の保険金を支払う。但し、当該保険契約につき復活のあつた場合において、復活の効力発生後一年を経過しないものは、この限りでない。
2 身体の外部に生じた傷害に因らない場合であつても、不慮の事故その他不可抗力又は第三者の加害行為に因ることを保険契約者又は保険金受取人が証明したときは、前項と同様とする。但し、疾病に因る死亡の場合は、この限りでない。
3 前二項の規定は、被保険者が左に掲げる事由に因つて死亡した場合においては、これを適用しない。
一 精神障害又はめいてい中に招いた事故に因つて死亡したとき。
二 重大な過失に因つて死亡したとき。
(保険金の削減)
第三十二条 被保険者が保険契約の効力発生後二年を経過する前に災害又は伝染病予防法(明治三十年法律第三十六号)第一条第一項の伝染病に因らないで死亡したときは、保険約款の定めるところにより、保険金額の一部を支払う。
(幼児の場合の支払保険金額)
第三十三条 被保険者が年齢六年に満たないで死亡したときは、保険約款の定めるところにより、保険金額の一部を支払う。
2 前項の場合において、前条又は第四十四条の規定を適用するものにあつては、その支払金額は、前項の規定により支払うべき金額と前条又は第四十四条の規定により支払うべき金額とのいずれか少いものとする。
(無指定の場合の保険金受取人)
第三十四条 保険契約者が保険金受取人を指定しないとき(保険契約者の指定した保険金受取人が死亡し更に保険金受取人を指定しない場合を含む。)は、左の者を保険金受取人とする。
一 保険期間の満了に因り保険金を支払う場合にあつては、被保険者。但し、保険期間の満了後保険金を請求する前に被保険者が死亡した場合にあつては、被保険者の遺族
二 被保険者の死亡に因り保険金を支払う場合にあつては、被保険者の遺族
2 前項の遺族は、被保険者の配偶者(届出がなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに被保険者の死亡当時被保険者の扶助によつて生計を維持していた者及び被保険者の生計を維持していた者とする。
3 胎児たる子又は孫は、前項の規定の適用については、既に生まれたものとみなす。
4 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは適用しない。
5 第二項に規定する遺族が数人あるときは、同項に掲げる順序により先順位にある者を保険金受取人とする。
6 遺族であつて故意に被保険者、先順位者又は同順位者たるべき者を殺したものは、保険金受取人となることができない。
(保険金支払の免責)
第三十五条 左の場合には、国は、保険金を支払う責に任じない。
一 被保険者が保険契約又はその復活の効力発生後二年を経過する前に自殺したとき。
二 保険金受取人が故意に被保険者を殺したとき。但し、その者が保険金の一部を受け取るべき場合には、国は、他の保険金受取人にその残額を支払う。
三 保険契約者が故意に被保険者を殺したとき。
(保険契約者の地位の任意承継)
第三十六条 保険契約者は、被保険者の同意を得て、第三者に保険契約に因る権利義務を承継させることができる。但し、被保険者が年齢十年に満たない者であるときは、被保険者の同意を要しない。
2 前項の承継は、国に通知しなければ、これをもつて国に対抗することができない。
(保険契約者の地位の法定承継)
第三十七条 保険契約者が死亡した場合において、その者に相続人がないときは、保険契約者の指定した保険金受取人(保険契約者が保険金受取人を指定しない場合又は保険契約者の指定した保険金受取人が死亡し更に保険金受取人を指定しない場合には被保険者)が、保険契約者の保険契約に因る権利義務を承継する。
2 被保険者が年齢十年に達する前に保険契約者が死亡した場合において、その相続人が第七条に規定する者でないときは、被保険者が、保険契約者の保険契約に因る権利義務を承継する。被保険者が年齢十年に達する前に保険契約者が第七条に規定する者でなくなつたときも、同様とする。
(保険金受取人の指定又はその変更)
第三十八条 保険契約者は、保険金又は還付金の支払の事由(第三十九条の規定により保険契約の変更に因る還付金を支払う場合を除く。)が発生するまでは、保険金受取人を指定し、又はその指定を変更することができる。但し、保険契約者の指定した保険金受取人が第三者である場合において、保険契約者が指定の変更をしない旨の意思を国に対して表示したときは、この限りでない。
2 前項の指定又はその変更は、国に通知しなければ、これをもつて国に対抗することができない。
3 第一項の指定又はその変更をする場合には、第八条の規定を準用する。
(還付金の支払)
第三十九条 保険契約の解除、失効若しくは変更又は保険金支払の免責(第三十五条第二号の場合を除く。)の場合には、保険金受取人は、保険約款の定めるところにより、被保険者のために積み立てられた金額の百分の八十から九十八までに相当する額の範囲内において、還付金の支払を請求することができる。
(復活の申込)
第四十条 第二十八条の場合には、保険契約者は、保険契約の失効後一年を経過する前に限り、その復活の申込をすることができる。
(復活の効力発生)
第四十一条 保険契約の復活は、その申込を承諾したときは、その申込の日から効力を生ずる。
2 前項の場合においては、保険証書に保険契約復活の旨を記載する。
(復活の効果)
第四十二条 保険契約が復活したときは、始めからその効力を失わなかつたものとみなす。
(準用規定)
第四十三条 保険契約の復活の場合には、第二十一条から第二十三条まで、第二十六条、第二十七条及び第四十八条の規定を準用する。
(復活した場合の保険金の削減)
第四十四条 被保険者が保険契約復活の効力発生後一年を経過する前に災害又は伝染病予防法第一条第一項の伝染病に因らないで死亡したときは、保険約款の定めるところにより、保険金額の一部を支払う。
(契約の乗換)
第四十五条 保険契約の効力発生後二年を経過した一個又は数個の保険契約の被保険者(被保険者が数人ある場合にはそのうち一人)を被保険者とする新たな保険契約の申込をする者は、既に成立している保険契約を消滅させて、当該保険契約の被保険者のために積み立てられた金額と当該保険契約につき保険金支払の事由が発生したとすれば第四十七条の規定により分配されるべき剰余金の額との合計額(当該保険契約に関し未払保険料、貸付金その他国が弁済を受けるべき金額があるときは、これを差し引いた残額。以下第二項において同じ。)を新たな保険契約の保険料の全部又は一部に充てることを請求することができる。この場合において、既に成立している保険契約の保険契約者と新たな保険契約の申込をする者とが異なるときは、既に成立している保険契約の保険契約者の同意がなければならない。
2 前項の請求があつた場合において、新たな保険契約が効力を発生したときは、既に成立している保険契約は、その効力を失い、当該保険契約に関し国が有する未払保険料、貸付金その他の債権は消滅し、同項の合計額は、保険約款の定めるところにより、新たな保険契約の保険料に充てられるものとする。
(貸付金の法定弁済)
第四十六条 国が保険約款の定めるところにより保険契約者に対して貸付をした場合において、保険契約者が貸付金の弁済をしないで弁済期後四年を経過したときは、国は、保険約款の定めるところにより、貸付金の弁済に代えて保険金額の減額をすることができる。
(剰余金の分配)
第四十七条 簡易生命保険事業の経営上剰余を生じたときは、保険約款の定めるところにより、保険金受取人にこれを分配する。
2 保険約款の定めるところにより保険料払込の免除を受けた保険契約又は保険料払済保険契約については、前項の規定により分配すべき金額は、保険約款の定めるところにより、その全部又は一部を減ずる。
3 第三十一条の規定により保険金を支払う場合には、前二項の規定は適用しない。
(保険料の還付)
第四十八条 保険契約の全部又は一部が無効である場合において、保険契約者及び被保険者が善意で且つ重大な過失のないときは、保険契約者は保険料の全部又は一部の還付を請求することができる。
(譲渡禁止)
第四十九条 保険金、還付金又は剰余金を受け取るべき権利は、譲り渡すことができない。
(差押禁止)
第五十条 保険金又は還付金を受け取るべき権利は、差し押えることができない。
(控除支払)
第五十一条 保険金、還付金、剰余金又は保険契約者若しくは保険金受取人に還付する保険料を支払う場合において、当該保険契約に関し末払保険料、貸付金その他国が弁済を受けるべき金額があるときは、支払金額からこれを控除する。
(正規の支払)
第五十二条 保険金、還付金、貸付金、剰余金又は保険契約者若しくは保険金受取人に還付する保険料をこの法律及び保険約款に定める手続によつて支払つたときは、その支払は、有効とする。
(保険約款改正の効力)
第五十三条 保険約款の改正は、既に存する保険契約に対してその効力を及ぼさない。
2 郵政大臣は、保険約款を改正する場合において、保険契約者、被保険者及び保険金受取人の全体の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、既に存する保険契約についても、将来に向かつてその改正の効力が及ぶものとすることができる。但し、左に掲げる事項については、この限りでない。
一 前納保険料の割引率の引下に関する事項
二 保険金の削減に関する事項
三 剰余金の分配に関する事項
(時効)
第五十四条 保険金、還付金及び剰余金の支払義務並びに保険料の返還義務は、五年、保険料の払込義務は一年を経過したときは、時効に因つて消滅する。
第三章 簡易生命保険郵便年金審査会
(審査会の審査)
第五十五条 保険契約者又は保険金受取人が、簡易生命保険の契約上の権利義務に関する事項について、国を被告として民事訴訟を提起するには簡易生命保険郵便年金審査会(以下「審査会」という。)の審査を経なければならない。
2 保険契約者又は保険金受取人が審査請求書を審査会に提出した後六箇月を経過しても審査会が裁決をしないときは、前項の規定にかかわらず、その審査請求書を提出した者は、民事訴訟を提起することができる。
3 第一項の審査請求書を提出した者が前項の規定により民事訴訟を提起したときは、審査会は、当該審査請求につき審査をしない。
(時効の中断)
第五十六条 前条第一項の審査の請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。
(審査会の権限及び組織)
第五十七条 審査会は、郵政大臣の所轄に属し、第五十五条及び郵便年金法(昭和二十四年法律第六十九号)第四十条の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
2 審査会は、委員十三人以内をもつて組織する。
3 前項に規定するものの外、審査会の組織に関し必要な事項は、政令で定める。
(審査の請求)
第五十八条 審査の請求は、審査請求書を審査会に提出して、これをするものとする。
2 審査請求書には左の事項を記載し、請求人又はその法定代理人が、これに記名押印しなければならない。
一 請求人の氏名又は名称、生年月日及び住所
二 法定代理人の氏名及び住所
三 保険契約者、被保険者及び保険金受取人の氏名又は名称
四 保険証書の記号番号
五 請求の趣旨
六 請求の理由
3 証拠書類があるときは、これを審査請求書に添えて差し出さなければならない。
4 法定代理人が審査請求をするときは、審査請求書にその資格を証明する文書を添えて差し出さなければならない。
5 請求人が数人あるときは、請求人は、代表者一人を定めなければならない。この場合には、その代表者は、その請求に係る審査に関する事項につき、他の者を代理するものとする。
(請求の取下)
第五十九条 審査の請求は、審査会の裁決がある前に限り、その全部又は一部を取り下げることができる。
2 前項の取下は、書面でするものとする。
(謄本の送付及び弁明書の提出)
第六十条 審査会は、審査請求書の提出があつたときは、その謄本を作成し、郵政省簡易保険局長に送付しなければならない。
2 郵政省簡易保険局長は、前項の謄本の送付を受けたときは、弁明書を審査会に差し出さなければならない。
(書面審理)
第六十一条 審査会の審査は、審査請求書及び弁明書について行う。
(審査会の議事)
第六十二条 審査会の会議は、委員の過半数の出席がなければ開くことができない。
2 審査会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
(裁決)
第六十三条 審査会は、文書をもつて裁決を行う。
(裁決書の記載事項)
第六十四条 審査会の裁決書には、左の事項を記載し、裁決に参加した委員が、これに記名押印しなければならない。
一 裁決の主文
二 事実及び争点の要旨
三 裁決の理由
四 請求人及び法定代理人の氏名又は名称及び住所
(裁決の効力発生)
第六十五条 裁決は、裁決書の正本が請求人に到達した時に、その効力を生ずる。
(却下)
第六十六条 審査の請求が審査会の権限に属しない事項についてされたときは、裁決をもつて却下する。
(再審査の請求)
第六十七条 審査会の裁決を経た事件については、更に審査会の審査を請求することができない。
第四章 簡易生命保険郵便年金事業審議会
(審議会の権限及び組織)
第六十八条 簡易生命保険郵便年金事業審議会(以下「審議会」という。)は、郵政大臣の所轄に属し、第六条第二項及び第七十条第一項並びに郵便年金法第六条第二項及び第四十二条第一項の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。
2 審議会は、前項の外、郵政大臣の諮問に応じて、簡易生命保険及び郵便年金事業の経営に関する重要事項を調査審議する。
3 審議会は、前項の事項について、関係各大臣に建議することができる。
4 審議会の組織に関する事項は、政令で定める。
第五章 被保険者の保健施設
(被保険者の保健施設)
第六十九条 郵政大臣は、被保険者の健康を保持し、又はこれを増進するため必要な保健施設を設けることができる。
2 前項の保健施設に要する費用は、国の負担とする。但し、郵政大臣が特に必要があると認めたときは、命令の定めるところにより、被保険者の負担とすることができる。
第六章 積立金の運用
(積立金の運用)
第七十条 積立金は、保険契約者に貸付をする場合を除いては、審議会に諮問し、有利確実に、且つ、公共の利益のために、左の方法により運用しなければならない。
一 公共団体に対する貸付
二 国債、地方債、社債その他の有価証券の応募、引受又は買入
2 積立金は、前項の規定にかかわらず、同項の規定による運用をするまで一時これを大蔵省預金部に預け入れることができる。
附 則
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。但し、第五項の規定は、公布の日から施行する。
2 簡易生命保険法(大正五年法律第四十二号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
3 この法律の規定(第十四条から第十九条まで、第三十一条から第三十三条まで、第三十九条及び第四十四条の規定を除く。)は、この法律施行前の簡易生命保険契約についても適用する。
4 この法律施行前の簡易生命保険契約に係る保険の種類、保険金の削減、被保険者が年齢十年に満たないで死亡した場合における保険金支払額、還付金支払額並びに保険料及び被保険者のために積み立てるべき金額の計算の基礎に関しては、なお従前の例による。
5 郵政大臣は、この法律施行前において、旧法第二十八条ノ二に規定する簡易生命保険及郵便年金事業委員会の議を経て第六条第一項の簡易生命保険約款を定めることができる。
(逓信・内閣総理大臣署名)