旧軍関係債権の処理に関する法律

法律第二百五十七号(昭二四・一二・一二)

 (納付期限の延期、分割納付及び繰上げ徴収)

第一条 この法律施行の際現に存する旧陸軍省、海軍省及び軍需省に係る左に掲げる国の債権(以下「旧軍関係債権」という。)で、その債務者の資力の状況により直ちに当該債権に係る収入金を納付させることが著しく困難であるものについては、主務大臣は、収納上有利であると認められる場合に限り、三年をこえない期限をもつて、その納付期限を延期し、又は適宜分割して納付させる特約をすることができる。

 一 法令により前金払又は概算払をなしたもので過払となつた金額の返還請求権

 二 払下財産の代金請求権

 三 誤払による返還請求権

 四 その他前三号に掲げる債権に準ずる債権

2 前項の規定により納付期限を延期し、又は分割して納付させる特約をする場合には、確実な担保を提供させ、及び大蔵大臣が市場金利を考慮して定める基準による利息を附さなければならない。但し、同一人に対する旧軍関係債権の総額が一万円以下の場合には、担保の提供を免除することができる。

3 第一項の規定により分割して納付させる特約をした場合において、債務者がその分納金を滞納したときは、主務大臣は、その債務残額の繰上げ徴収をすることができる。

 (裁判所の和解又は調停における譲歩)

第二条 旧軍関係債権について裁判所(調停委員会を含む。以下本条において同じ。)が和解又は調停をする場合においては、法務総裁又はその指定する職員は、裁判所の勧告に基いて、前条の規定にかかわらず、特別の譲歩をすることができる。

 (債務の免除)

第三条 主務大臣は、旧軍関係債権に係る収入金について第六条第一項の規定による督促があつた日から五年を経過した場合において、その債務者の住所又は居所が不明のため当該収入金の徴収を不可能と認めるときは、その債務を免除することができる。

2 前項の規定による債務の免除の通知は、官報に公告してすることができる。この場合においては、その通知は、官報に公告した日から二週間を経過した時において債務者に到達したものとみなす。

 (公告による納入の告知)

第四条 主務大臣又はその委任を受けた職員は、旧軍関係債権の債務者の住所又は居所が不明の場合には、公告をもつて当該債権に係る収入金の納入の告知をすることができる。

2 前条第二項の規定は、前項の公告に準用する。

 (債権の確定)

第五条 旧軍関係債権について、債務者から書面による債務の承認があつたときは、その債権は、確定したものとし、主務大臣又はその委任を受けた職員は、第六条及び第七条の規定によつてこれを処理することができる。

2 主務大臣又はその委任を受けた職員は、前項の債務の承認があつた場合を除く外、旧軍関係債権の債務者に対し、債務の金額その他その内容を記載した催告書をもつて、その債務を承認するか否かを一定の期間内に述ぶべき旨を催告しなければならない。但し、その期間に一月を下ることはできない。

3 主務大臣又はその委任を受けた職員は、債務者の住所又は居所が不明の場合には、公告をもつて前項の催告をすることができる。

4 第三条第二項の規定は、前項の公告に準用する。

5 債務者が第二項に規定する期間内に書面により異議を述べなかつたときは、第一項の債務の承認をしたものとみなす。

 (督促)

第六条 前条の規定により確定した債権に係る収入金について債務者が納付期限を過ぎなお完納しない場合には、主務大臣又はその委任を受けた職員は、督促状をもつて、その指定する期限内に納付すべき旨を督促しなければならない。

2 前項の督促状には、同項の期限内に完納しないときは、この法律に基いて徴収の処分をする旨を記載しなければならない。

3 第一項の規定により督促をした場合には、督促手数料として十円を徴収する。

4 主務大臣又はその委任を受けた職員は、債務者の住所又は居所が不明の場合には、公告をもつて第一項の督促をすることができる。

5 第三条第二項の規定は、前項の公告に準用する。

 (徴収処分)

第七条 債務者が前条第一項の規定による督促を受け、同項の期限内に完納しないときは、主務大臣又はその委任を受けた職員は、部下の職員をして国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)第三章(滞納処分)(第十三条、第十九条及び第二十八条を除く。)に規定する手続に準じて当該債権に係る収入金の徴収の処分をさせることができる。この場合において、同法中「収税官吏」とあるのは「当該職員」と、「延滞金」とあるのは「遅延損害金」と、「税金」とあるのは「収入金(利息を含む。)」と、同法第二十六条中「税務ニ関スル官吏、公吏、雇員」とあるのは「旧軍関係債権に係る収入金の徴収の処分に従事する職員」と読み替えるものとする。

2 前項の規定は、旧軍関係債権について、他の債権に優先する弁済順位を認めるものではなく、又、破産法(大正十一年法律第七十一号)第四十七条(財団債権の範囲)、第七十一条第一項(滞納処分に対する破産宣告の効力)その他国税徴収若しくは国税滞納処分の例によつて徴収することができる債権又は国税徴収の例による滞納処分に関して特別の取扱を規定する他の法令の規定の適用を認めるものでもない。

3 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百八十三条、和議法(大正十一年法律第七十二号)第四十条その他他の法令中強制執行の禁止、中止若しくは停止又はその効力の消滅に関する規定がある場合には、第一項の徴収の処分は、強制執行とみなして、当該規定を適用する。

4 第一項の規定により徴収の処分をする場合における物件の売却代金その他の処分金に対する他の債権者の配当要求及び当該処分金の配当に関する手続については、強制執行の場合の手続に準じて政令で定める。

5 旧軍関係債権中第五条第三項及び第五項の規定により確定したものについては、その債務者の住所又は居所が不明である間、第一項の規定は、適用しないことができる。但し、この法律の規定による徴収処分を免かれる目的をもつてその住所又は居所を不明にしたものについては、この限りでない。

 (異議の訴)

第八条 債務者は、第五条の規定にかかわらず、同条の規定により確定した債権について、国を被告として異議の訴を提出することができる。

2 前項の訴は、第五条に規定する債務の承認に関する事務を処理した職員の所属する行政機関の所在地の地方裁判所の管轄とする。

3 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五百四十五条第三項、第五百四十七条第一項から第三項まで及び第五百四十八条の規定(請求異議の訴)は、第一項の訴に準用する。この場合において、同法第五百四十七条第一項及び第二項中「強制執行」とあるのは、「旧軍関係債権に係る収入金の徴収の処分」と読み替えるものとする。

 (適用除外)

第九条 前四条の規定は、執行力のある債務名義を有する旧軍関係債権については、適用しない。

 (他の法令との関係)

第十条 この法律の規定は、閉鎖機関令(昭和二十二年勅令第七十四号)その他他の法令中債務の弁済その他債務を消滅させる行為を制限し、又は禁止する旨の規定がある場合には、当該規定の適用を妨げるものではない。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

(法務総裁・大蔵・厚生・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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