連合国占領軍の管理下から解除された貴金属等に代るべき貴金属の地金の連合国占領軍に対する引渡に関する法律
法律第百十九号(昭二三・七・一〇)
(貴金属の地金の引渡)
第一条 大蔵大臣は、連合国占領軍の管理に属する貴金属(金、銀、白金、ルテニウム、ロヂウム、パラヂウム、オスミウム、イリヂウム及びイリドスミンをいう。以下同じ。)の地金、合金若しくは製品又は大蔵大臣の指定する貴石(以下貴金属等という。)が、その管理下から解除された場合において、連合国最高司令官の指示に基き、政府が、これに代るべき貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡さなければならないときは、金資金特別会計法(昭和十二年法律第六十一号)第四条第一項の規定により金資金の運用として保有する貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡すことができる。
(受益者の納付義務)
第二条 前条の規定により、大蔵大臣が貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡したときは、同条に規定する貴金属等の解除を受けた者(以下受益者という。)は、大蔵大臣の引き渡した貴金属の地金の価格に相当する金額を、国庫に納付しなければならない。
2 前項の規定による納付金の国庫における経理に関しては、金資金の運用として保有する貴金属の地金が売却された場合の例による。
3 大蔵大臣は、前条の規定による貴金属の地金を引き渡したときは、その引き渡した貴金属の地金の種類、数量その他必要な事項を受益者に通知しなければならない。
4 第一項の規定により受益者が国庫に納付する場合における納期限は、大蔵大臣が前項の通知を発した日から三十日とする。但し、当期限内に納付することを困難とする特別の事由があるときは、大蔵大臣は、受益者の申請により、その納付を困難とする金額について、同項の通知を発した日から六箇月の期間内において、その納期限を定めることができる。
5 第一項の規定による納付金は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。この場合において、先取特権の順位は、国税に次ぐものとする。
(納付金の算出方法)
第三条 前条第一項の規定による納付金の金額は、第一条の規定により大蔵大臣が引き渡した貴金属の地金の当該解除の日における統制価格により計算した金額とする。但し、当該金額によることを不適当と認めるときは、大蔵大臣は、当該日における解除された貴金属等の統制価格により計算した金額とすることができる。
(受益者との関係の整理)
第四条 受益者が、第二条第一項の規定による納付金の全部又は一部を国庫に納付したときは、大蔵大臣が第一条の規定により連合国占領軍に引き渡した貴金属の地金の全部又は一部は、その納付した金額の割合に応じて、これを金資金から当該受益者に売り渡し、当該受益者から連合国占領軍に引き渡したものとみなす。
(受益者の承継人に対する措置)
第五条 第一条の規定により大蔵大臣が貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡すまでに、受益者が死亡し、又は解散により消滅した場合においては、前三条の規定の適用については、当該受益者の権利義務を承継した者を受益者とみなす。
2 前項の場合において、権利義務を承継する者が二以上あるときは、その承継する者は、連帯して第二条第一項の規定による納付の責に任ずるものとする。
附 則
第六条 この法律は、公布の日から、これを施行する。
第七条 昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く連合国占領軍に対しその管理下から解除された貴金属等に代るべき貴金属の地金の引渡をなすに関する件(昭和二十三年大蔵省令第二十一号。以下旧令という。)は、これを廃止する。
2 この法律施行前において、大蔵大臣が旧令第一号の規定に基いてなした貴金属の地金の連合国占領軍に対する引渡は、これを第一条の規定に基いてなしたものとみなす。
3 第五条の規定は、大蔵大臣が旧令第一項の規定に基いて貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡した場合において、受益者が、その引渡があつた後この法律施行までの間において死亡し、又は解散により消滅したときに、これを準用する。
4 第二条から第五条まで及び前項の規定は、この法律施行の前において、大蔵大臣が、旧令第二号の規定に基いて、金、銀又は白金等の取引等の取締に関する勅令(昭和二十年勅令第五百七十七号)による大蔵大臣の使用の許可があつたときにおいて、貴金属の地金を連合国占領軍に引き渡した場合に、これを準用する。但し、この場合において、第二条中「貴金属等の解除を受けた者」とあるのは「貴金属の地金又は合金の使用の許可を受けた者」と、第三条中「当該解除の日における統制価格」とあるのは「当該許可の日における統制価格」と読み替えるものとする。
(大蔵・内閣総理大臣署名)