心身障害者対策基本法の一部を改正する法律(衆法)
法律第九十四号(平五・一二・三)
心身障害者対策基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
障害者基本法
目次中「第八条」を「第九条」に、「心身障害の発生の予防に関する基本的施策(第九条)」を「障害者の福祉に関する基本的施策(第十条―第二十六条)」に、「心身障害者の福祉に関する基本的施策(第十条―第二十六条)」を「障害の予防に関する基本的施策(第二十六条の二)」に、「心身障害者対策協議会」を「障害者施策推進協議会」に改める。
第一条を次のように改める。
(目的)
第一条 この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的とする。
第二条を次のように改める。
(定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
第三条の見出しを「(基本的理念)」に改め、同条中「心身障害者」を「障害者」に改め、同条に次の一項を加える。
2 すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。
第四条中「心身障害の発生を予防し、及び心身障害者」を「障害者」に、「増進する」を「増進し、及び障害を予防する」に改める。
第五条中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第六条第一項中「心身障害者」を「障害者」に、「参与するように」を「参加するよう」に改め、同条第二項中「心身障害者」を「障害者」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(障害者の日)
第六条の二 国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるため、障害者の日を設ける。
2 障害者の日は、十二月九日とする。
3 国及び地方公共団体は、障害者の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。
第七条中「心身障害者」を「障害者」に、「心身障害」を「障害」に、「連けい」を「連携」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(障害者基本計画等)
第七条の二 政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
3 市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第五項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、中央障害者施策推進協議会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5 都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たつては、地方障害者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。地方障害者施策推進協議会を設置している市町村が市町村障害者計画を策定する場合においても、同様とする。
6 政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならない。
7 都道府県又は市町村は、都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定したときは、その要旨を公表しなければならない。
8 第四項及び第六項の規定は障害者基本計画の変更について、第五項及び前項の規定は都道府県障害者計画又は市町村障害者計画の変更について準用する。
「第二章 心身障害の発生の予防に関する基本的施策」を削る。
第九条を次のように改める。
(年次報告)
第九条 政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を提出しなければならない。
「第三章 心身障害者の福祉に関する基本的施策」を「第二章 障害者の福祉に関する基本的施策」に改める。
第十条の見出し中「、保護等」を削り、同条第一項中「心身障害者が」を「障害者が」に、「行ない、及び心身障害者の障害を補うために必要な補装具その他の用具の給付を行なう」を「行う」に改め、同条第二項を削り、同条第三項中「前二項」を「前項」に改め、「指導、訓練及び補装具その他の用具」を削り、同項を同条第二項とし、同条の次に次の一条を加える。
(施設への入所、在宅障害者への支援等)
第十条の二 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢並びに障害の種別及び程度に応じ、施設への入所又はその利用により、適切な保護、医療、生活指導その他の指導、機能回復訓練その他の訓練又は授産を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の家庭を訪問する等の方法により必要な指導若しくは訓練が行われ、又は日常生活を営むのに必要な便宜が供与されるよう必要な施策を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者の障害を補うために必要な補装具その他の福祉用具の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前三項に規定する指導、訓練及び福祉用具の研究及び開発を促進しなければならない。
第十一条の見出し中「重度心身障害者」を「重度障害者」に改め、同条中「心身障害が」を「障害が」に、「心身障害者」を「障害者」に、「行なう」を「行う」に改める。
第十二条第一項中「心身障害者」を「障害者」に、「心身障害」を「障害」に改め、同条第二項中「心身障害者」を「障害者」に改め、「調査研究」の下に「及び環境の整備」を加える。
第十三条を次のように改める。
第十三条 削除
第十四条第一項中「心身障害者」を「障害者」に改め、「するため、」の下に「その障害の種別、程度等に配慮した」を加え、同条第二項中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第十五条を次のように改める。
(雇用の促進等)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。
2 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もつてその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。
第十六条中「心身障害者」を「障害者」に、「行なわれ」を「行われ」に改める。
第十七条中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第十八条第一項中「及び第三項」を「、第十<条の二第一項及び第四項」に改める。
第十九条第二項中「心身障害者」を「障害者」に、「第十条第一項に規定する用具」を「第十条の二第三項に規定する福祉用具」に改める。
第二十条及び第二十一条中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第二十二条の見出し中「等」を削り、同条第一項中「心身障害者」を「障害者」に改め、同条第二項を削り、同条の次に次の二条を加える。
(公共的施設の利用)
第二十二条の二 国及び地方公共団体は、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設を障害者が円滑に利用できるようにするため、当該公共的施設の構造、設備の整備等について配慮しなければならない。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、事業者が設置する交通施設その他の公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るための適切な配慮が行われるよう必要な施策を講じなければならない。
(情報の利用等)
第二十二条の三 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 電気通信及び放送の役務の提供を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
第二十三条中「心身障害者及びこれを」を「障害者及び障害者を」に、「心身障害者」を「障害者」に改める。
第二十四条中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第二十五条中「心身障害者」を「障害者」に、「行なう」を「行う」に改める。
第二十六条中「心身障害者」を「障害者」に改める。
第二章の次に次の一章を加える。
第三章 障害の予防に関する基本的施策
第二十六条の二 国及び地方公共団体は、障害の原因及び予防に関する調査研究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。
「第四章 心身障害者対策協議会」を「第四章 障害者施策推進協議会」に改める。
第二十七条の前の見出し及び同条第一項中「中央心身障害者対策協議会」を「中央障害者施策推進協議会」に改め、同条第二項中「の各号」を削り、同項第二号中「心身障害者」を「障害者」に改め、同号を同項第三号とし、同項第一号中「心身障害者」を「障害者」に改め、同号を同項第二号とし、同号の前に次の一号を加える。
一 障害者基本計画に関し、第七条の二第四項に規定する事項を処理すること。
第二十八条第二項中「及び学識経験のある者」を「、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者」に改め、同条第四項中「学識経験のある者」の下に「、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者」を加える。
第三十条を次のように改める。
(地方障害者施策推進協議会)
第三十条 都道府県(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、地方障害者施策推進協議会を置く。
2 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 当該都道府県における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項を調査審議すること。
二 当該都道府県における障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。
3 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
4 市町村(指定都市を除く。)は、当該市町村における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議させるため、条例で定めるところにより、地方障害者施策推進協議会を置くことができる。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、目次の改正規定(「心身障害者対策協議会」を「障害者施策推進協議会」に改める部分に限る。)、第七条の次に一条を加える改正規定、第四章の章名の改正規定、第二十七条の前の見出し並びに同条第一項及び第二項の改正規定、第二十八条第二項及び第四項の改正規定、第三十条の改正規定並びに次項から附則第四項までの規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
2 第七条の次に一条を加える改正規定の施行の際現に策定されている障害者のための施策に関する国の基本的な計画であって、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、この法律による改正後の障害者基本法の規定により策定された障害者基本計画とみなす。
(地方自治法の一部改正)
3 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
別表第七中「地方心身障害者対策協議会」を「地方障害者施策推進協議会」に、「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に、「第三十条第一項」を「第三十条第二項」に、「心身障害者」を「障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者」に、「連絡調整に関する」を「連絡調整を要する事項の調査審議に関する」に改める。
(総理府設置法の一部改正)
4 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第二号の次に次の一号を加える。
二の二 障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第七条の二第四項の規定に基づき、障害者のための施策に関する基本的な計画の案を作成すること。
(内閣総理・大蔵・文部・厚生・通商産業・運輸・郵政・労働・建設・自治大
臣署名)