特定機械情報産業振興臨時措置法

法律第八十四号(昭五三・七・一)

 (目的)

第一条 この法律は、特定機械情報産業について、生産技術の向上、生産の合理化等を促進することにより、その振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与し、あわせて国民生活の向上に資することを目的とする。


 (定義)

第二条 この法律において「電子機器」とは、電子管、半導体素子その他これらに類似する部品を使用することにより電子の運動の特性を応用する機械器具並びに主としてこれに使用される部品及び材料をいう。

2 この法律において「機械」とは、機械器具(電子機器であるものを除く。)及び主としてこれに使用される部品(部品の半製品を含む。以下同じ。)をいう。

3 この法律において「プログラム」とは、情報処理振興事業協会等に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第二条第二項のプログラムをいう。


 (高度化計画)

第三条 主務大臣は、次に掲げる事業(以下「特定機械情報産業」という。)について、その高度化に関する計画(以下「高度化計画」という。)を定めなければならない。

 一 電子機器を製造する事業のうち、次に掲げるもの

  イ 我が国において生産技術が確立されていない電子機器のうち、生産技術に関する試験研究(試作を含む。次項第四号を除き、以下同じ。)を特に促進する必要があるものであつて政令で定めるものを製造する事業

  ロ 我が国において工業生産が行われていないか又は生産数量が著しく少ない電子機器のうち、工業生産の開始又は生産数量の増加を特に促進する必要があるものであつて政令で定めるものを製造する事業

  ハ 性能又は品質の改善、生産費の低下その他生産の合理化を特に促進する必要がある電子機器であつて政令で定めるものを製造する事業

 二 機械を製造する事業のうち、次に掲げるもの

  イ 危害の防止、生活環境の保全、資源の利用の合理化又は機械を製造する事業の基盤の強化(以下「危害の防止等」という。)に資するため、生産技術に関する試験研究を特に促進する必要がある機械であつて政令で定めるものを製造する事業

  ロ 危害の防止等に資するため、工業生産の開始又は生産数量の増加を特に促進する必要がある機械(電子計算機その他の電子機器と組み合わせた機械(部品を除く。)であつて、当該電子機器と組み合わせたことにより著しく高い性能を有することとなつたものに限る。)であつて政令で定めるものを製造する事業

  ハ 危害の防止等に資するため、性能又は品質の改善、生産費の低下その他生産の合理化を特に促進する必要がある機械であつて政令で定めるものを製造する事業

 三 ソフトウエア業(他人の需要に応じてプログラムを作成する事業をいい、一の事業の分野に属する事業を営む者の需要に専ら応じて当該一の事業の分野における情報処理を目的とするプログラムを主として作成する事業を除く。以下同じ。)

2 高度化計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 前項第一号イの事業及び同項第二号イの事業にあつては、イの事項及び必要に応じロ又はハの事項であって生産技術の確立を促進する上での基本となるべきもの

  イ 試験研究の内容及びその完成の目標年度

  ロ 試験研究に必要な資金に関する事項

  ハ その他試験研究の促進に関する重要事項

 二 前項第一号ロの事業及び同項第二号ロの事業にあつては、イの事項及び必要に応じロからニまでの事項であつて工業生産の開始又は生産数量の増加を促進する上での基本となるべきもの

  イ 工業生産の開始の目標年度又は計画目標年度における生産数量

  ロ 新たに設置すべき設備の種類及び数量

  ハ 工業生産の開始又は生産数量の増加に必要な資金に関する事項

  ニ その他工業生産の開始又は生産数量の増加の促進に関する重要事項

 三 前項第一号ハの事業及び同項第二号ハの事業にあつては、イの事項及び必要に応じロからホまでの事項であつて生産の合理化を促進する上での基本となるべきもの

  イ 計画目標年度における性能又は品質、生産費その他合理化の目標

  ロ 新たに設置すべき設備の種類及び数量

  ハ 適正な生産の規模又は事業の共同化若しくは生産すべき品種の専門化に関する事項

  ニ 合理化に必要な資金に関する事項

  ホ その他合理化の促進に関する重要事項

 四 前項第三号の事業にあつては、イ及びロの事項並びに必要に応じハからホまでの事項(主として一の事業の分野における情報処理を目的とするプログラムの作成のみに係るものを除く。)であつてプログラムの作成に関する技術の向上及び合理化を促進する上での基本となるべきもの

  イ 計画目標年度におけるプログラムの作成に関する試験研究の目標その他技術の向上の目標

  ロ 計画目標年度におけるプログラム作成費その他合理化の目標

  ハ 事業の共同化に関する事項

  ニ 技術の向上又は合理化に必要な資金に関する事項

  ホ その他技術の向上又は合理化の促進に関する重要事項

3 主務大臣は、高度化計画を定めるに際しては、特定機械情報産業相互の関連に留意し、当該高度化計画に係る特定機械情報産業及びこれと密接な関連を有する他の特定機械情報産業の振興が効果的に図られるよう必要な配慮を払うものとする。

4 主務大臣は、第一項の規定により高度化計画を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。


 (計画の変更)

第四条 主務大臣は、特定機械情報産業に関する技術の著しい進歩又は生産条件その他経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、高度化計画を変更しなければならない。

2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の場合に準用する。


 (資金の確保)

第五条 政府は、高度化計画に定める所要の資金について、その確保に努めるものとする。


 (共同行為の実施に関する指示)

第六条 主務大臣は、第三条第一項第一号ハの事業又は同項第二号ハの事業(以下「合理化関係事業」という。)に関して、当該事業に係る高度化計画に定める合理化の目標を達成するため特に必要があると認めるときは、当該事業を営む者に対し、規格の制限又は技術の制限に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。

2 主務大臣は、合理化関係事業のうち、生産の合理化を促進しなければ国民経済の健全な発展に著しい支障を生ずるおそれがあるものに関して、当該事業に係る高度化計画に定める合理化の目標を達成するためやむを得ない必要があると認めるときは、当該事業を営む者に対し、品種の制限(規格の制限を除く。)又は生産施設の利用に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。

3 主務大臣は、第一項に規定する規格の制限に係る共同行為をもつてしては第三条第一項第一号ハの政令で定める電子機器又は同項第二号ハの政令で定める機械(以下「合理化関係機器」という。)の規格の制限をすることが困難である場合において、特に必要があると認めるときは、その合理化関係機器を部品又は材料として使用して電子機器又は機械を製造する事業(合理化関係事業を除く。以下同じ。)を営む者に対し、その使用する合理化関係機器の規格の制限に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。ただし、その合理化関係機器を部品又は材料として使用して電子機器又は機械を製造する事業の合理化に資すると認められないときは、この限りでない。

4 前三項の規定による指示は、共同行為をすべき期間及び共同行為の内容を定めて、告示により行う。


 (共同行為の内容)

第七条 前条第一項から第三項までに規定する共同行為の内容は、次の各号に適合するものでなければならない。

 一 高度化計画に定める合理化の目標を達成するため必要な程度を超えないこと。

 二 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。

 三 不当に差別的でないこと。


 (共同行為の指示の変更等)

第八条 主務大臣は、第六条第一項から第三項までの規定による指示に係る共同行為の内容が前条各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その指示を変更し、又は取り消さなければならない。

2 第六条第四項の規定は、前項の場合に準用する。


 (共同行為の届出)

第九条 第六条第一項から第三項までの規定による指示(前条第一項の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)を受けた者は、その指示に従つて共同行為をしたときは、遅滞なく、主務省令で定める事項を主務大臣に届け出なければならない。これを変更し、又は廃止したときも、同様とする。


 (規格の制限に関する命令)

第十条 主務大臣は、第六条第一項の規定により規格の制限に係る共同行為を実施すべきことを指示した場合において、次の各号に該当するときは、当該指示に係る合理化関係事業を営む者に対し、当該指示の内容に従つて合理化関係機器の規格を制限すべきことを主務省令で命ずることができる。

 一 当該指示に従つて共同行為を実施している者の当該合理化関係機器の生産額が当該合理化関係機器の総生産額に対し相当の比率を占めているとき。

 二 当該指示に係る合理化関係事業を営む者であつて共同行為を実施していないものの事業活動が当該事業に係る高度化計画に定める合理化の目標を達成するのに著しく障害となつているとき。

 三 第六条第三項の規定による指示によつては、当該合理化関係機器の規格の制限をすることができないか又は著しく困難であるとき。

 四 第二号に規定する状態が継続することが当該合理化関係事業の生産方式の改善に重大な悪影響を及ぼし、国民経済の健全な発展に著しい支障を生ずるおそれがあると認められるとき。


 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第十一条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第六条第一項から第三項までの規定による指示に従つてする共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。


 (公正取引委員会との関係)

第十二条 主務大臣は、第六条第一項から第三項までの規定による指示又は第十条の規定による命令をしようとするときは、公正取引委員会に協議しなければならない。

2 主務大臣は、第九条の規定による届出を受理したときは、遅滞なく、その旨を公正取引委員会に通知しなければならない。


 (勧告)

第十三条 主務大臣は、合理化関係事業又はソフトウエア業を営む者が当該事業に係る高度化計画に定めるところに従つて事業の共同化(合理化関係事業にあつては、事業の共同化又は生産すべき品種の専門化。以下「事業共同化等」という。)を実施していると認められ、かつ、その事業共同化等を実施している者の当該合理化関係機器又はプログラムの生産額が当該事業を営む者の当該合理化関係機器又はプログラムの総生産額に対し相当の比率を占めている場合において、その事業共同化等を実施している者以外の者が大規模な当該事業の開始又は当該事業の大規模な拡大をすることがその事業共同化等の実施に重大な悪影響を及ぼし、国民経済の健全な発展に著しい支障を生ずるおそれがあると認めるときは、当該事業の開始又は拡大をしようとする者に対し、その事業共同化等に参加し、又は事業の開始の時期、事業の拡大の時期若しくは事業の規模を変更すべきことを勧告することができる。

2 前項の規定による勧告の内容は、当該事業に係る高度化計画に定める合理化の目標を達成するため必要な程度を超えないものであり、かつ、一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないものでなければならない。

3 主務大臣は、第一項の規定による勧告をしようとするときは、当該事業の開始又は拡大をしようとする者に、意見を述べる機会を与えなければならない。


 (税制上の措置)

第十四条 国は、第三条第一項第一号ロの政令で定める電子機器(電子計算機その他の電子機器と組み合わせた電子機器(部品及び材料を除く。)であつて、当該電子機器と組み合わせたことにより著しく高い性能を有することとなつたものに限る。)又は同項第二号ロの政令で定める機械のうち、その普及を特に促進する必要があるものに関して、当該電子機器又は機械を使用する者に対し、税制上必要な措置を講ずるよう努めるものとする。


 (審議会への諮問等)

第十五条 主務大臣は、次に掲げる場合には、航空機・機械工業審議会に諮問しなければならない。

 一 第三条第一項第一号イ、ロ若しくはハ又は同項第二号イ、ロ若しくはハの政令の制定又は改廃の立案をしようとするとき。

 二 第三条第一項の規定により高度化計画を定め、又は第四条第一項の規定により高度化計画を変更しようとするとき。

 三 第六条第一項から第三項までの規定による指示、第十条の規定による命令又は第十三条第一項の規定による勧告をしようとするとき。

2 主務大臣は、前項第二号に掲げる場合においてその高度化計画がソフトウエア業に係るものであるときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。


 (報告の徴収)

第十六条 主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定機械情報産業を営む者又は合理化関係機器を部品若しくは材料として使用して電子機器若しくは機械を製造する事業を営む者に対し、その業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる。


 (主務大臣)

第十七条 この法律における主務大臣は、第三条第一項第一号イ、ロ又はハの政令で定める電子機器を製造する事業及びソフトウエア業に関する事項については通商産業大臣とし、同項第二号イ、ロ又はハの政令で定める機械を製造する事業に関する事項については当該機械の生産を所掌する大臣とする。


 (罰則)

第十八条 第十条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。

第十九条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。

 一 第九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。


   附 則


 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。


 (この法律の失効)

2 この法律は、この法律の施行の日から起算して七年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その時までにした行為に対する罰則の適用については、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。


 (中小企業信用保険法の一部改正)

3 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)の一部を次のように改正する。

 第二条第三項第一号中「特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法(昭和四十六年法律第十七号)」を「特定機械情報産業振興臨時措置法(昭和五十三年法律第八十四号)」に、「同法第三条第一項第二号ロ」を「同法第三条第一項第二号ハ」に改める。

(通商産業・運輸・内閣総理大臣署名)

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