所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律

法律第百十七号(昭四一・七・四)

 (趣旨)

第一条 この法律は、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定(以下「協定」という。)を実施するため、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の特例その他必要な事項を定めるものとする。

 (配当に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)

第二条 ドイツの居住者(所得税法第二条第一項第五号に規定する非居住者又は同項第七号に規定する外国法人(同項第八号に規定する人格のない社団等を含む。)で、ドイツ連邦共和国の協定第四条第一項に規定する居住者であるものをいう。以下同じ。)が支払を受ける協定第十条第一項に規定する配当で同法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある協定第五条に規定する恒久的施設(以下「恒久的施設」という。)に帰せられるものを除く。)に対する同法第百七十条、第百七十九条又は第二百十三条第一項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十五」とする。ただし、当該配当のうち協定第十条第三項(b)の規定に該当するものに対する同法第百七十九条又は第二百十三条第一項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十」とする。

 (利子又は使用料に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例)

第三条 ドイツの居住者が支払を受ける協定第十一条第一項に規定する利子又は協定第十二条第一項に規定する使用料で所得税法の施行地にその源泉があるもの(その者の同法の施行地にある恒久的施設に帰せられるものを除く。)に対する同法第百七十条、第百七十九条又は第二百十三条第一項の規定の適用については、これらの規定中「百分の二十」とあるのは、「百分の十」とする。

2 前項の規定は、同項に規定する利子又は使用料に対し所得税を課さず、又は当該利子又は使用料に対する所得税額をその支払を受けるべき金額の百分の十に相当する金額以下とする他の法律の規定の適用を妨げない。

 (配当、利子又は使用料に対する申告納税に係る所得税の軽減)

第四条 所得税法第百六十四条第一項第一号に掲げる非居住者に該当するドイツの居住者である個人が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の所得税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、当該各号に掲げる所得に係る収入金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の所得税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。

 一 第二条に規定する配当に係る所得 百分の十五

 二 前条第一項に規定する利子又は使用料に係る所得 百分の十

2 前項に規定する所得税額のうち同項に規定する所得に対応する部分の金額は、当該所得の生じた年分につき、同項の規定の適用がないものとして計算した場合における所得税額に相当する金額から、当該所得が生じなかつたものとして計算した場合における所得税額に相当する金額を控除して得た金額とする。


 (配当、利子又は使用料に対する法人税の軽減)

第五条 法人税法第百四十一条第一号に掲げる外国法人に該当するドイツの居住者である法人(同法第二条第八号に規定する人格のない社団等を含む。以下同じ。)が次の各号に掲げる所得を有する場合において、その者の法人税額のうち当該所得に対応する部分の金額が、当該各号に掲げる所得に係る収入金額に当該各号に掲げる割合を乗じて計算した金額の合計額をこえるときは、その者の法人税額につき、そのこえる金額に相当する税額を軽減する。

 一 第二条に規定する配当(次号の配当に該当するものを除く。)に係る所得 百分の十三

 二 第二条ただし書に規定する配当に係る所得 百分の八・七

 三 第三条第一項に規定する利子又は使用料に係る所得 百分の八・七

2 前項に規定する法人税額のうち同項に規定する所得に対応する部分の金額は、当該所得の生じた事業年度分につき、同項の規定の適用がないものとして計算した場合における法人税額に相当する金額から、当該所得が生じなかつたものとして計算した場合における法人税額に相当する金額を控除して得た金額とする。

 (配当、利子又は使用料に係る地方税の課税の特例)

第六条 ドイツの居住者である法人に対して課する次の各号に掲げる地方税については、その課税標準である法人税額のうち前条第一項各号に掲げる所得に対応する部分の金額に係る税率は、それぞれ次の各号に掲げる税率とする。

 一 道府県民税の法人税割 百分の五・八

 二 市町村民税の法人税割 百分の八・九

 三 都民税の法人税割 百分の十四・七

2 前項に規定するその課税標準である法人税額のうち前条第一項各号に掲げる所得に対応する部分の金額は、当該法人の法人税額のうち、当該所得に対応する部分の金額として同条第二項の規定により計算した金額から同条第一項の規定によつて軽減された金額を控除した金額とする。

3 二以上の都道府県又は市町村において事務所又は事業所を有する法人で第一項の規定の適用を受けるものが地方税法第五十七条第一項又は第三百二十一条の十三第一項の規定によりその法人税額を関係都道府県又は関係市町村に分割する場合には、当該法人税額を第一項の規定の適用がある部分の金額とその他の部分の金額とに区分して、それぞれ分割するものとする。

4 都道府県は、ドイツの居住者の行なう事業に対して課する事業税については、その者が支払を受けるべき第二条に規定する配当並びに第三条第一項に規定する利子及び使用料をその課税標準に含めないものとする。

 (双方居住者の取扱い)

第七条 所得税法第二条第一項第三号に規定する居住者で協定第四条第二項の規定により協定の適用上ドイツ連邦共和国の居住者とみなされるものは、同法及び地方税法の施行地に住所及び居所を有しないものとみなして、所得税法(第十五条及び第十六条を除く。)、地方税法及びこの法律の規定を適用する。

 (協定に基づく協議で地方税に係るものに関する手続)

第八条 大蔵大臣は、協定第四条第二項の協議をする場合又は地方公共団体が課する租税に関し協定第二十五条第二項の協議をする場合には、あらかじめ自治大臣に協議し、その結果に基づいて、これらの規定の協議をするものとする。

2 自治大臣は、前項の規定により大蔵大臣から協議を受けた場合には、必要に応じ、関係地方公共団体の意見をきかなければならない。

 (実施規定)

第九条 第二条から前条までに定めるもののほか、協定の実施及びこの法律の適用に関し必要な事項は、大蔵省令、自治省令で定める。


   附 則

1 この法律は、協定の効力発生の日から施行する。

2 第二条及び第三条中所得税法第百七十条及び第百七十九条の規定に係る部分は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)の属する年の一月一日以後に支払を受けるべき第二条に規定する配当又は第三条第一項に規定する利子若しくは使用料について、第二条及び第三条中所得税法第二百十三条第一項の規定に係る部分は、同日以後に支払を受けるべき当該配当、利子又は使用料で施行日以後に支払われるものについて、それぞれ適用する。

3 第四条の規定は、施行日の属する年の一月一日以後に支払を受けるべき同条第一項各号に掲げる所得について適用する。

4 第五条の規定は、施行日の属する年の一月一日以後に終了する事業年度の開始の日以後に支払を受けるべき同条第一項各号に掲げる所得について適用する。

5 昭和四十一年一月一日前に開始した事業年度又は同日以後に開始し同年三月三十一日以前に終了した事業年度において支払を受けるべき第五条第一項各号に掲げる所得について同条の規定の適用がある場合には、同条第一項中「百分の十三」とあるのは、「百分の十三・一」とする。

6 第六条第一項から第三項までの規定は、施行日の属する年の一月一日以後に終了する事業年度の開始の日以後に支払を受けるべき第五条第一項各号に掲げる所得に係る法人税額を課税標準として課する道府県民税、市町村民税及び都民税について適用する。

7 次の表の中欄又は下欄に掲げる事業年度において支払を受けるべき第五条第一項各号に掲げる所得に係る法人税額を課税標準として課する道府県民税、市町村民税及び都民税について第六条第一項から第三項までの規定の適用がある場合には、同条第一項中同表の上欄に掲げる字句は、それぞれ同表の中欄又は下欄に掲げる字句とする。

 

昭和四十一年一月一日前に開始し、同年六月三十日以後に終了する事業年度

昭和四十一年一月一日前に開始し、同年六月三十日前に終了する事業年度又は同年一月一日以後に開始し、同年三月三十一日以前に終了した事業年度

百分の五・八

百分の五・六五

百分の五・五

百分の八・九

百分の八・六五

百分の八・四

百分の十四・七

百分の十四・三

三百分の十三・九

8 第六条第四項の規定は、個人の行なう事業に対する事業税にあつては施行日の属する年の一月一日以後に支払を受けるべき第二条に規定する配当又は第三条第一項に規定する利子若しくは使用料について、法人の行なう事業に対する事業税にあつては同日以後に終了する事業年度の開始の日以後に支払を受けるべき当該配当、利子又は使用料について、それぞれ適用する。

(大蔵・自治・内閣総理大臣署名) 

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