農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律

法律第百二十一号(昭四〇・六・三)

 (この法律の趣旨)

第一条 この法律は、農地被買収者及びその遺族等に対する給付金の支給に関し必要な事項を規定するものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「農地被買収者」とは、旧自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号。以下「措置法」という。)第三条第一項若しくは第五項又は農地法施行法(昭和二十七年法律第二百三十号)第二条第一項第一号の規定により農地を買収された者で、その被買収農地の面積が一畝以上のものをいう。

2 この法律において「被買収農地の面積」とは、第一号に掲げる面積から第二号に掲げる面積を控除して得た面積をいう。

 一 措置法第三条第一項若しくは第五項又は農地法施行法第二条第一項第一号の規定により買収された農地(昭和四十年三月三十一日以前に農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第八十条の規定によりその買収前の所有者に売り払われた農地その他政令で定める農地を除く。)に係る次の面積(措置法第十条の面積をいう。以下同じ。)の合計面積

  イ 田の面積(北海道の区域内にある田については、その面積に政令で定める割合を乗じて得た面積。次号において同じ。)

  ロ 畑の面積(北海道の区域内にある畑については、その面積に政令で定める割合を乗じて得た面積。次号において同じ。)の百分の六十に相当する面積

 二 措置法第十六条第一項又は第二十八条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定により売り渡された農地(昭和二十五年七月三十一日以後に売り渡された農地については、その対価が旧自作農創設特別措置法施行規則(昭和二十一年農林省、大蔵省令第一号)第七条の二の二第一号又は第二号に定める額を基準として定められたものに限る。)に係る次の面積の合計面積

  イ 田の面積

  ロ 畑の面積の百分の六十に相当する面積

 (給付金の支給)

第三条 次に掲げる者には、給付金を支給する。

 一 農地被買収者

 二 昭和四十年三月三十一日以前に死亡した個人たる農地被買収者の遺族及び同日以前に解散した法人たる農地被買収者の一般承継人

2 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者には、給付金は、支給しない。

 一 昭和四十年四月一日において日本の国籍を有しない個人

 二 外国法人、株式会社その他の政令で定める法人その他の団体

3 給付金の支給は、これを受けようとする者の請求に基づいて行なう。

4 前項の請求は、総理府令で定めるところにより、昭和四十二年三月三十一日までに、内閣総理大臣に対して行なわなければならない。

5 前項の期間内に給付金の支給を請求しなかつた者には、給付金は、支給しない。

 (給付金の支給を受けるべき遺族の範囲)

第四条 給付金の支給を受けるべき遺族の範囲は、次に掲げるものとする。

 一 死亡した者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていなかつたが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)

 二 子、孫及び父母

2 死亡した者の死亡の当時胎児であつた子が、昭和四十年四月一日以後に出生し、かつ、出生によつて日本の国籍を取得したときは、その子は、同日において出生し、かつ、日本の国籍を有していたものとみなす。

 (給付金の支給を受けるべき遺族の順位等)

第五条 給付金の支給を受けるべき遺族の順位は、次に定めるところによる。

 一 前条第一項第二号に規定する順序による。この場合において、同項第一号に掲げる配偶者は先順位の遺族と常に同順位とする。

 二 子のうちに昭和四十年三月三十一日以前に死亡した者があるときは、その者に係る孫は、代襲により他の子と同順位とする。

 三 父母については、養父母、実父母の順とする。

2 給付金の支給を受けるべき同順位の遺族が二人以上あるときは、その一人のした給付金の支給の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした給付金の支給は、全員に対してしたものとみなす。


 (給付金の額)

第六条 第三条第一項第一号に掲げる者でその被買収農地の面積が一反以上のものに支給する給付金の額は、当該被買収農地の面積(一反に満たない面積は、切り捨てる。)を次の表の上欄に掲げる区分に区分し、その区分に応ずる同表の下欄に掲げる割合を二万円に乗じて得た金額に、順次、当該区分に応ずる被買収農地の面積の反数を乗じて得た金額の合計額とする。ただし、当該合計額が百万円をこえる場合は、百万円とする。

区分

割合

一町以下の面積

百分の百

一町をこえ二町以下の面積

百分の五十

二町をこえ三町以下の面積

百分の三十

三町をこえる面積

百分の十

2 第三条第一項第一号に掲げる者でその被買収農地の面積が一反に満たないものに支給する給付金の額は、一万円とする。

3 第三条第一項第二号に掲げる者に支給する給付金の額は、その者に係る死亡し又は解散した農地被買収者につき前二項の規定の例によつて算定した金額と同額とする。

 (記名国債の交付)

第七条 給付金は、十年(前条第二項の規定により算定した給付金及び同条第三項の規定により同条第二項の規定の例によつて算定した給付金にあつては、五年)以内に償還すべき記名国債をもつて交付する。

2 前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。

3 前項の規定により発行する国債は、無利子とする。

4 第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。

5 第一項に規定する国債の記名者が死亡した場合において、同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人のした当該死亡した者の死亡前に支払うべきであつた当該国債の償還金の請求又は当該国債の記名変更の請求は、全員のためにその金額につきしたものとみなし、その一人に対してした当該国債の償還金の支払又は当該国債の記名変更は、全員に対してしたものとみなす。

6 前各項に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。


 (支給未済の給付金の支給の特例)

第八条 給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡し又は解散した場合において、その者がその死亡前又は解散前に給付金の支給を請求していなかつたときは、その者の一般承継人は、自己の名で、当該給付金の支給を請求することができる。

2 第五条第二項の規定は、前項の規定による請求に基づいて給付金の支給を受けるべき同順位の相続人が二人以上ある場合について準用する。

 (譲渡又は担保の禁止)

第九条 給付金の支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。

 (差押えの禁止)

第十条 給付金の支給を受ける権利及び第七条第一項に規定する国債は、差し押えることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)による場合は、この限りでない。

 (非課税)

第十一条 給付金には、所得税を課さない。

2 給付金に関する書類及び第七条第一項に規定する国債の譲渡又は当該国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。

 (国債の償還金の支払)

第十二条 第七条第一項に規定する国債の償還金の支払に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。

2 前項の規定により郵政大臣が取り扱う事務について必要な事項は、郵政省令で定める。

 (給付金の返還)

第十三条 不実の申請その他不正の手段により国債の交付を受け、その償還金を受領した者があるときは、内閣総理大臣は、その者に対して、償還金の全部又は一部に相当する金額の返還を命ずることができる。

2 前項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しない者があるときは、内閣総理大臣は、期限を指定してこれを督促しなければならない。

3 前項の規定による督促を受けた者がその指定期限までに第一項の規定により返還を命ぜられた金額を納付しないときは、内閣総理大臣は、国税滞納処分の例によりこれを処分することができる。

4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (権限の委任)

第十四条 この法律により内閣総理大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、都道府県知事その他政令で定める者にその一部を委任することができる。


 (総理府令への委任)

第十五条 この法律に特別の規定がある場合を除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、総理府令で定める。


   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行し、昭和四十年四月一日から適用する。

 (国債の発行の日)

2 第七条第二項に規定する国債の発行の日は、昭和四十年六月十六日とする。

 (総理府設置法の一部改正)

3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

  第六条第十六号の次に次の一号を加える。

  十六の二 農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律(昭和四十年法律第百二十一号)の施行に関すること。

(内閣総理・大蔵・郵政大臣署名)