酪農振興法及び土地改良法の一部を改正する法律
法律第百十一号(昭四〇・六・二)
(酪農振興法の一部改正)
第一条 酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一章 総則(第一条・第二条)」を
「 |
第一章 総則(第一条・第二条) |
」 |
第一章の二 酪農近代化基本方針及び酪農近代化計画(第二条の二―第二条の四) |
に、
「 |
第二章の二 酪農経営改善計画(第十八条―第十八条の三) |
」 |
第三章 生乳等の取引(第十九条―第二十四条の二) |
を「第三章 生乳等の取引(第十八条―第二十四条の二)」に、「第二十四条の三」を「第二十四条の三―第二十四条の三の四」に改める。
第一条を次のように改める。
(目的)
第一条 この法律は、酪農適地を中心として構成される一定の酪農圏における酪農経営の近代化を計画的に推進するための措置及び当該酪農適地に生乳の濃密生産団地を形成するための集約酪農地域の制度並びにこれらに関連して生乳等の取引の公正並びに牛乳及び乳製品の消費の増進を図るための措置を定めて、酪農の健全な発達及び農業経営の安定を図り、あわせて牛乳及び乳製品の安定的な供給に資することを目的とする。
第二条に次の一項を加える。
3 この法律において「草地」とは、主として家畜の放牧又はその飼料若しくは敷料の採取の目的に供される土地をいう。
第一章の次に次の一章を加える。
第一章の二 酪農近代化基本方針及び酪農近代化計画
(酪農近代化基本方針)
第二条の二 農林大臣は、政令で定めるところにより、酪農の近代化を図るための基本方針(以下「酪農近代化基本方針」という。)を定めなければならない。
2 酪農近代化基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 生乳の需要の長期見通しに即した生乳の地域別の需要の長期見通し及び生乳の地域別の生産数量の目標
二 近代的な酪農経営の基本的指標
三 集乳及び乳業の合理化に関する基本的な事項
四 その他酪農の近代化に関する重要事項
3 農林大臣は、生乳の需給事情、農業事情その他の経済事情の変動により必要があるときは、酪農近代化基本方針を変更するものとする。
4 農林大臣は、酪農近代化基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、酪農審議会の意見を聞かなければならない。
5 農林大臣は、酪農近代化基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(都道府県酪農近代化計画)
第二条の三 都道府県知事は、政令で定めるところにより、当該都道府県における酪農の近代化を図るための計画(以下「都道府県酪農近代化計画」という。)を作成し、農林大臣の認定を受けることができる。
2 都道府県酪農近代化計画においては、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、酪農近代化基本方針の内容と調和するものでなければならない。
一 生乳の生産数量の目標
二 その区域又はその区域を分けて定める区域ごとの自然的経済的条件に応ずる近代的な酪農経営方式の指標
三 酪農経営における乳牛の飼養規模の拡大に関する事項
四 飼料の自給度の向上に関する事項
五 集乳及び乳業の合理化に関する事項
六 その他酪農の近代化を図るために必要な事項
3 都道府県知事は、第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画を変更しようとするときは、政令で定めるところにより、その変更の内容につき農林大臣の認定を受けなければならない。
4 都道府県知事は、都道府県酪農近代化計画につき第一項の認定を受けたときは、遅滞なく、当該計画を公表しなければならない。同項の認定に係る都道府県酪農近代化計画の変更の内容につき前項の認定を受けた場合におけるその変更の内容についても、同様とする。
(市町村酪農近代化計画)
第二条の四 市町村長は、次に掲げる事項が市町村における酪農の合理的な発展を図るために必要なものとして省令で定める基準に適合する場合には、政令で定めるところにより、当該市町村における酪農の近代化を図るための計画(以下「市町村酪農近代化計画」という。)を作成し、都道府県知事の認定を受けることができる。
一 その区域内における乳牛の飼養頭数及び飼養密度
二 その区域内の農用地の利用に関する条件
三 その区域内で生産される生乳の販売に関する条件
2 市町村酪農近代化計画においては、次に掲げる事項を定めるものとし、その内容は、前条第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画の内容と調和するものでなければならない。
一 生乳の生産数量の目標
二 乳牛の飼養頭数の目標
三 その区域内の農業者の農業経営の条件に応ずる酪農経営の改善の目標
四 乳牛の導入、育成その他酪農経営における乳牛の飼養規模の拡大のための措置
五 草地の造成、改良及び保全、飼料作物の作付その他飼料の自給度の向上のための措置
六 生乳の生産者の共同集乳組織の整備その他集乳の合理化のための措置
七 その他酪農の近代化を図るために必要な事項
3 前条第三項及び第四項の規定は、第一項の認定に係る市町村酪農近代化計画について準用する。この場合において、同条第三項中「農林大臣」とあるのは、「都道府県知事」と読み替えるものとする。
第三条第一項中「必要と認められる一定の区域」を「相当と認められる一定の区域であつて、生乳の円滑な供給に資するため生乳の濃密生産団地として形成することが必要と認められるもの」に改め、同条第二項中「酪農振興計画」を「集約酪農振興計画」に改め、同項第三号中「生乳の生産者の共同集乳組織の整備」を「集乳」に改め、同条第三項中「酪農振興計画」を「集約酪農振興計画」に改め、同条第四項中「合理的な酪農経営の成立」を「近代的な酪農経営の成立及び合理的な生乳の濃密生産団地の形成」に、「酪農振興計画がその区域における酪農の振興の方法」を「集約酪農振興計画が第二条の三第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画に即してその区域における酪農の振興を図るための方法」に改め、同項第一号中「、農業労働条件」を削り、同項第二号中「その区域における輸送条件その他その区域内で生産される生乳についての共同集乳組織及び乳業の成立のための条件」を「その区域における生乳の生産状況、輸送条件その他その区域内で生産される生乳についての集乳及び乳業施設への供給の条件」に改める。
第五条(見出しを含む。)中「酪農振興計画」を「集約酪農振興計画」に改める。
第六条第一項中「第三条第四項」を「第三条第四項各号」に改め、同条第二項中「第三条第二項の酪農振興計画」を「、第三条第二項の集約酪農振興計画」に改め、「認められるとき」の下に「、又はその集約酪農振興計画が、第二条の三第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画に即しないものとなり、若しくはその区域における酪農の振興を図るための方法として著しく不適当となるに至つたと認められるとき」を加える。
第七条第二項中「酪農振興計画の概要」を「集約酪農振興計画の概要」に、「当該酪農振興計画」を「当該集約酪農振興計画」に改める。
第八条を次のように改める。
(草地の造成等のため必要な事業の推進)
第八条 国及び都道府県は、第三条第二項の集約酪農振興計画の達成のため必要があるときは、集約酪農地域の区域内にある草地につき、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の規定により同法第二条第二項第三号に掲げる事業を行なうほか、その造成、改良及び災害復旧の事業並びにその保全又は利用のため必要な事業の推進を図るものとする。
第十条第二項第四号中「酪農振興計画」を「集約酪農振興計画」に改める。
第二章の二を削り、第三章中第十九条を第十八条とし、第十九条の二を第十九条とし、同条の次に次の一条を加える。
(契約の更新)
第十九条の二 前条第一項に規定する生乳等取引契約(この条の規定により締結したものとみなされる生乳等取引契約を含む。)について、当事者のいずれもが、その契約の存続期間の満了する日の翌日から省令で安める一定期間前までに、相手方に対し、更新若しくはその拒絶又は新たな生乳等取引契約の締結についての申出をしないときは、その当事者は、当該契約の存続期間の満了する日の翌日から起算して一月を経過する日までを存続期間とし、当該契約の存続期間の満了の際における生乳等の売買価格及び数量、生乳等及びその代金の受渡しの方法その他その契約の内容と同一の内容により、さらに、生乳等取引契約を締結したものとみなす。ただし、契約で、別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
第二十一条に次の二項を加える。
4 都道府県知事は、第一項の規定により当事者から意見を聞くため必要があると認めるとき、又は同項の規定により調停案を作成するため当該事案の関係者から意見を聞くことが特に必要であると認めるときは、当該当事者又は当該関係者に出頭を求めることができる。
5 前項の規定により、出頭を求められた者は、政令で定めるところにより、費用の弁償を受けることができる。
第二十四条の二第二項中「第二十一条第一項、第二十二条及び」を「第二十一条第一項、第四項及び第五項、第二十二条並びに」に改める。
第二十四条の三中「酪農の健全な発達に資するため」の下に「、酪農近代化基本方針に即して」を加える。
第三章の二中第二十四条の三の次に次の三条を加える。
(学校給食供給目標)
第二十四条の三の二 農林大臣は、政令で定めるところにより、国内産の牛乳の消費の増進を図ることにより酪農の健全な発達に資するため、国内産の牛乳を学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校及び中学枚その他政令で定める学校における学校給食用として広範に供給することを目途として、国内産の牛乳の学校給食への供給に関する目標(以下「学校給食供給目標」という。)を酪農近代化基本方針に即して定め、これを公表しなければならない。
2 農林大臣は、学校給食供給目標を定めようとするときは、文部大臣に協議しなければならない。
(学校給食供給計画数量)
第二十四条の三の三 農林大臣は、毎年度、学校給食供給目標に即し、かつ、牛乳の需要及び供給の動向並びに前条第一項に規定する学校の幼児、児童及び生徒の数を勘案して、国内産の牛乳の学校給食への供給計画数量(以下「学校給食供給計画数量」という。)を定め、これを公表しなければならない。
2 農林大臣は、学校給食供給計画数量を定めようとするときは、文部大臣に協議しなければならない。
(学校給食への供給の円滑化)
第二十四条の三の四 国は、学校給食供給計画数量に相当する数量の国内産の牛乳の学校給食への供給の円滑化を図るため、国内産の牛乳を学校給食の用に供する事業について援助する等必要な措置を講ずるものとする。
第二十四条の四第一項中「第三条第二項の酪農振興計画の実施及び酪農経営改善計画」を「第二条の四第一項の認定に係る市町村酪農近代化計画の実施及び第三条第二項の集約酪農振興計画」に改め、同条第二項中「国」の下に「及び都道府県」を加え、「第三条第二項の酪農振興計画及び酪農経営改善計画を実施するため必要な資金」を「第二条の四第一項の認定に係る市町村酪農近代化計画及び第三条第二項の集約酪農振興計画の達成のために必要な助言、指導、資金」に、「その他必要な奨励措置を講ずる」を「その他の援助を行なう」に改める。
第二十四条の四の次に次の一条を加える。
(酪農近代化基本方針等と酪農振興に関する施策)
第二十四条の五 農林大臣及び地方公共団体の長は、酪農振興に関する施策を実施するに当たつては、農林大臣にあつては酪農近代化基本方針、都道府県知事にあつては第二条の三第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画及び第三条第二項の集約酪農振興計画、市町村長にあつては第二条の四第一項の認定に係る市町村酪農近代化計画に即してしなければならない。
第二十九条中「又は第十四条の規定による届出をせず、又は」を「若しくは第十四条の規定による届出をせず、若しくは」に改め、「届出をした者」の下に「又は正当な理由がなくて第二十一条第四項(第二十四条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による出頭の要求に応じなかつた者」を加える。
(土地改良法の一部改正)
第二条 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第八十五条の次に次の一条を加える。
第八十五条の二 地方公共団体、農業協同組合又は農業協同組合連合会(以下「地方公共団体等」という。)は、政令の定めるところにより、当該地方公共団体等が権原に基づき使用し及び収益している土地で当該地方公共団体等の第三条に規定する資格に係るものについての農用地造成事業を国又は都道府県が行なうべきことを、(当該農用地造成事業の施行に係る地域内にある土地を権原に基づき使用し及び収益している地方公共団体等が二以上ある場合にあつては、当該関係地方公共団体等が共同して、)国営土地改良事業にあつては農林大臣に、都道府県営土地改良事業にあつては都道府県知事に、それぞれ申請することができる。
2 前項の地方公共団体等は、同項の規定による申請をするには、省令の定めるところにより、その申請書に同項の農用地造成事業の計画の概要及び当該農用地造成事業により生ずる土地改良施設(省令で定めるものに限る。)がある場合にはその土地改良施設に係る予定管理方法等その他必要な事項を記載した書面を添附し、これを、国営土地改良事業にあつては関係都道府県知事を経由して農林大臣に、都道府県営土地改良事業にあつては関係都道府県知事に提出しなければならない。
第八十六条第一項中「前条第一項」を「第八十五条第一項又は前条第一項」に改め、同条第二項中「前条第二項の規定により公告のあつた事項」を「第八十五条第二項の規定により公告のあつた事項又は前条第二項の申請書に添附された書面に記載された事項」に、「当該公告のあつた事項を記載した書面」を「書面」に改める。
第八十七条の二第一項中「第八十五条第一項」の下に「又は第八十五条の二第一項」を加える。
第八十七条の三第一項中「前条第一項の規定により定めた」を「第八十五条の二第一項の規定による申請に基づいて行なう農用地造成事業に係る土地改良事業の計画並びに前条第一項の規定により定めた」に、「同条第一項の規定により行なう」を「第八十五条の二第一項の規定による申請に基づいて行なう農用地造成事業並びに前条第一項の規定により行なう」に改め、同条第六項を同条第八項とし、同条第五項中「第一項」の下に「又は第五項」を加え、同項を同条第七項とし、同条第四項中「第一項」の下に「又は前項」を加え、同項を同条第六項とし、同条第三項の次に次の二項を加える。
4 国又は都道府県が第八十五条の二第一項の規定による申請に基づいて行なう農用地造成事業に係る土地改良事業の計画につき土地改良事業の施行に係る地域を変更することにより新たな地域をその農用地造成事業の施行に係る地域の一部とすることができるのは、その新たに当該農用地造成事業の施行に係る地域の一部となる地域内にある土地を地方公共団体等が権原に基づき使用し及び収益している場合でその土地が当該地方公共団体等の第三条に規定する資格に係るものである場合に限るものとする。
5 農林大臣又は都道府県知事は、第八十五条の二第一項の規定による申請に基づいて行なう農用地造成事業に係る土地改良事業の計画につき土地改良事業の施行に係る地域その他省令で定める重要な部分を変更しようとする場合には、あらかじめ、省令の定めるところにより、その変更後の土地改良事業の計画の概要及び予定管理方法等を変更する必要があるときは変更後の予定管理方法等その他必要な事項を示して、その変更後の土地改良事業計画に係る土地改良事業の施行に係る地域内(その変更によりその施行に係る地域の一部がその変更後のその施行に係る地域に該当しないこととなるものがあるときは、その該当しないこととなる地域をその変更後のその施行に係る地域に含めた地域内)にある土地について権原に基づき使用及び収益をしているすべての地方公共団体等の同意を得なければならない。
第百十八条第一項第四号中「第八十五条第一項」の下に「若しくは第八十五条の二第一項」を加える。
第百二十二条第二項中「第八十七条の三第四項」を「第八十七条の三第六項」に改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行の際現に改正前の酪農振興法(以下「旧法」という。)第三条第一項の規定により集約酪農地域として指定されている区域は、改正後の酪農振興法(以下「新法」という。)第三条第一項の規定により集約酪農地域として指定されたものとみなす。
3 前項の規定により集約酪農地域として指定されたものとみなされる区域についての旧法第三条第二項の酪農振興計画は、新法第三条第二項の集約酪農振興計画とみなす。
4 前項に規定する区域についての新法第六条の規定の適用については、この法律の施行の日から起算して二年を経過する日(その日までに新法第二条の三第四項の規定による都道府県酪農近代化計画の公表のあつた都道府県の区域内のものについては、その公表の日から起算して三十日をこえない範囲内において農林大臣が都道府県知事と協議して告示で定める日)までは、同条第一項中「第三条第四項各号」とあるのは「酪農振興法及び土地改良法の一部を改正する法律(昭和四十年法律第百十一号)第一条の規定による改正前の第三条第四項各号」と、同条第二項中「又はその集約酪農振興計画が、第二条の三第一項の認定に係る都道府県酪農近代化計画に即しないものとなり、若しくは」とあるのは「又はその集約酪農振興計画が」とする。
5 この法律の施行の際現に旧法第八条(旧法第十八条の三において準用する場合を含む。)の規定により行なわれている草地改良事業又は災害復旧事業については、なお従前の例による。
6 農林漁業金触公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)の一部を次のように改正する。
附則第二十三項中「同法第十八条」を「酪農振興法及び土地改良法の一部を改正する法律(昭和四十年法律第百十一号)第一条の規定による改正前の酪農振興法第十八条」に改める。
(法務・大蔵・文部・農林・内閣総理大臣署名)