地方議会議員互助年金法
法律第百二十号(昭三六・六・八)
(この法律の趣旨)
第一条 この法律は、地方公共団体の議会の任務の重要性にかんがみ、これを組織する議員及びその遺族の生活の安定に資するため、互助の精神にのつとり、議員の退職、公務傷病及び死亡について年金を給する制度に関し、必要な事項を定めるものとする。
(地方議会議員互助会)
第二条 地方公共団体の議会の議員(以下「地方議会議員」という。)は、地方議会議員の退職、公務傷病及び死亡について年金の給付を行なうため、地方議会議員互助会を組織することができる。
2 地方議会議員互助会(以下「互助会」という。)は、都道府県の議会の議員を会員とする都道府県議会議員互助会、市(特別区を含む。以下同じ。)の議会の議員を会員とする市議会議員互助会及び町村の議会の議員を会員とする町村議会議員互助会とする。
3 前項に規定する互助会は、それぞれ全国を通じて一とする。
4 互助会は、法人とする。
(互助年金の種類)
第三条 互助会が給する年金(以下「互助年金」という。)は、退職年金、公務傷病年金及び遺族年金とする。
(退職年金)
第四条 退職年金は、互助会の会員である地方議会議員が在職十二年以上で退職したときに、その者に給するものとする。
2 退職年金の年額は、在職期間十二年以上十三年未満につき、退職当時の議員の標準報酬年額(第十二条に規定する標準報酬月額に十二を乗じて得た額をいう。以下同じ。)の百五十分の五十に相当する金額とし、十二年以上一年を増すごとに、その一年につき、退職当時の議員の標準報酬年額の百五十分の一に相当する金額を加算した金額とする。
3 在職期間五十年をこえる者に給すべき退職年金の年額は、在職期間五十年として計算する。
(公務傷病年金)
第五条 公務傷病年金は、互助会の会員である地方議会議員が、当該互助会の会員である間における公務に基づく傷病により不具廃疾となり退職したときに、その者に給するものとする。退職した時において互助会の会員であつた地方議会議員が、退職後三年以内に、当該互助会の会員であつた間における公務に基づく傷病により不具廃疾となつたときも、同様とする。
2 公務傷病年金の年額は、在職期間十二年未満の者にあつては前条の規定により在職期間十二年の者に給すべき退職年金の年額に、在職期間十二年以上の者にあつてはその者が同条の規定により退職年金を受けるものとした場合における当該退職年金の年額に、それぞれ当該不具廃疾の程度に応じた金額を加算した金額とする。
3 前項の不具廃疾の程度は、恩給法(大正十二年法律第四十八号)別表第一号表ノ二の定めるところによるものとし、同項の加算額は、同法別表第二号表の定める金額によるものとする。
4 公務に基づく傷病により不具廃疾となつた場合において、その者に重大な過失があつたときは、前三項の規定による公務傷病年金は、給しない。
5 公務傷病年金の決定をするに当たつて、将来不具廃疾が回復し、又はその程度が低下することのあるべきことが認められるときは、五年間公務傷病年金を給する。
6 前項の期間満了の六箇月前までに傷病が回復しない者は、規約で定めるところにより、再審査を請求することができる。再審査の結果公務傷病年金を給すべきものであるときは、これに相当の公務傷病年金を給する。
(遺族年金)
第六条 遺族年金は、互助会の会員である地方議会議員が死亡し、その死亡を退職とみなすときはこれに退職年金又は公務傷病年金を給すべきときに、その者の遺族に給するものとする。退職年金又は公務傷病年金を受ける者が死亡したときも、同様とする。
2 前項の遺族年金の年額は、これを受ける者の人員にかかわらず、次の各号に掲げる金額の二分の一に相当する金額とする。
一 地方議会議員が公務に基づく傷病によらないで死亡した場合(第三号に規定する場合を除く。)においては、これに給すべき退職年金の年額
二 退職年金を受ける者が公務に基づく傷病によらないで死亡した場合(前号に規定する場合を除く。)においては、当該退職年金の年額
三 公務傷病年金を受ける者が公務に基づく傷病によらないで死亡した場合においては、在職期間十二年未満の者にあつては第四条の規定により在職期間十二年の者に給すべき退職年金の年額に、在職期間十二年以上の者にあつてはその者が同条の規定により退職年金を受けるものとした場合における当該退職年金の年額に、それぞれ百分の百二十八を乗じて得た金額
四 地方議会議員又は退職年金若しくは公務傷病年金を受ける者が公務に基づく傷病により死亡した場合においては、在職期間十二年未満の者にあつては第四条の規定により在職期間十二年の者に給すべき退職年金の年額に、在職期間十二年以上の者にあつてはその者が同条の規定により退職年金を受けるものとした場合における当該退職年金の年額に、それぞれ百分の百七十を乗じて得た金額
(在職期間の合算)
第七条 互助年金の基礎となるべき在職期間の計算については、都道府県、市又は町村の議会の区分ごとに、地方議会議員が退職した後それぞれの議会の議員として再就職したときは、前後の在職期間は、合算するものとする。
2 市町村の廃置分合若しくは境界変更により町村が市となり若しくは市が町村となつた場合又は町村を市とし若しくは市を町村とする処分があつた場合において、これらの場合における地方公共団体の議会の議員としての在職期間は、合算する。この場合において、互助会は、合算されるべき在職期間に係る互助年金の支給に要する費用を移換しなければならない。
(互助年金の停止)
第八条 退職年金は、これを受ける者が年齢満五十五歳に達する月まで、その支給を停止する。
2 退職年金及び公務傷病年金は、これを受ける者が前条第一項に規定する再就職をしたときは、再就職の月の翌月から退職の月まで、その支給を停止する。ただし、実在職期間が一箇月未満であるときは、この限りでない。
(互助年金の改定)
第九条 第七条第一項に規定する再就職その他の事由による互助年金の改定については、規約で定める。
(併給の禁止)
第十条 一の互助会が給する互助年金については、退職年金と公務傷病年金とは、併給しないものとする。
(互助年金の減額等)
第十一条 互助会は、互助年金を給する場合において、当該互助年金の基礎となるべき在職期間のうちに第十二条第一項の規定による掛金を納めていない期間及び規約で定めるこれに準ずる期間があるときは、規約で定めるところにより、当該互助年金の額を減額し、又は互助年金を給しないことができる。
(掛金)
第十二条 互助会の会員である地方議会議員は、規約で定めるところにより掛金を納めるものとし、その月額は、標準報酬月額に百分の五を乗じて得た額以上の額でなければならない。
2 前項の標準報酬月額は、地方議会議員の報酬額(一の地方公共団体の議会の議員については、その報酬額が職により異なるときは、その最も低い額をもつて当該議会の議員の報酬額とする。)に基づき、規約で定める。
3 自治大臣は、互助会の健全な運営を図るため必要があると認めるときは、当該互助会に対し、規約で定める掛金の額を変更するよう勧告することができる。
(時効)
第十三条 互助年金を受ける権利は、これを受けるべき事由が生じた日から七年間請求しなかつたときは、時効によつて消滅する。
2 前項の時効は、第八条第一項の規定により退職年金の支給を停止される者の当該退職年金については、その者が年齢満五十五歳に達する日の属する月の末日までの間は、進行しない。
3 退職年金又は公務傷病年金を受ける権利を有する者が退職後二箇月以内に第七条第一項に規定する再就職をしたときは、第一項の時効は、再就職に係る職を退職した日から進行する。ただし、退職年金を受ける権利を有する者が再就職に係る職を退職した日において年齢満五十五歳未満であるときは、その時効については、前項の規定を適用する。
(非課税)
第十四条 公務傷病年金及び遺族年金については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。
(規約)
第十五条 互助会は、規約で次に掲げる事項を定めなければならない。
一 目的
二 名弥
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 代議員会に関する事項
六 会員の加入及び脱退に関する事項
七 互助年金の給付及び掛金に関する事項
八 資産の管理その他財務に関する事項
九 その他組織及び業務に関する重要事項
2 設立当初の役員は、規約で定めなければならない。
3 規約の変更は、自治大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(設立の認可)
第十六条 互助会を設立するには、会員となるべき十人以上の者が発起人となり、規約を定め、自治大臣の認可を受けなければならない。
2 前項の認可の申請に当たつては、規約のほか、事業計画書その他必要な事項を記載した書面を添付しなければならない。
(基準会員数)
第十七条 互助会は、それぞれ次の各号に掲げる会員がなければ設立することができない。
一 都道府県議会議員互助会 千人以上
二 市議会議員互助会 五千人以上
三 町村議会議員互助会 一万人以上
(成立)
第十八条 互助会は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて、成立する。
(登記)
第十九条 互助会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第二十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、互助会について準用する。
(役員)
第二十一条 互助会に、役員として、会長一人、副会長一人、理事十人以内及び監事二人以内を置く。
2 会長は、互助会を代表し、その業務を執行する。
3 副会長は、会長を補佐して互助会の業務を執行し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
4 理事は、会長の定めるところにより、会長及び副会長を補佐して互助会の業務を掌理し、会長及び副会長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び副会長が欠員のときはその職務を行なう。
5 監事は、互助会の業務を監査する。
6 互助会と会長、副会長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が互助会を代表する。
(代議員会)
第二十二条 互助会に、代議員会を置く。
2 次に掲げる事項は、代議員会の議決を経なければならない。
一 規約の変更
二 事業計画書の作成及び規約で定める重要な変更並びに決算報告の認定
三 訴訟の提起及び和解
四 その他互助会の業務に関する重要事項で規約で定めるもの
(余裕金の運用)
第二十三条 互助会の業務上の余裕金の運用は、自治省令で定めるところにより、安全かつ効率的にしなければならない。
(報告の徴収)
第二十四条 自治大臣は、必要があると認めるときは、互助会に、業務及び資産の状況に関し報告をさせることができる。
(解散)
第二十五条 互助会の解散については、別に法律で定める。
(省令への委任)
第二十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、自治省令で定める。
(過料)
第二十七条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした互助会の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により自治大臣の認可を受けなければならない場合において、その認可を受けなかつたとき。
二 第十九条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十三条の規定による自治省令に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の施行前における在職期間の取扱い及び互助年金の年額)
2 昭和二十二年四月三十日からこの法律の施行の日の前日までの間における地方議会議員としての在職期間は、この法律に規定する互助年金の基礎となるべき在職期間とし、この法律の規定を適用する。
3 前項の規定によりこの法律の施行前における在職期間がこの法律に規定する互助年金の基礎となる場合における互助年金の年額は、当該在職期間につき規約で定めるところにより算定した額を減額した額とする。
(地方公務員の退職年金制度実施の際の取扱い)
4 この法律に基づく地方議会議員の互助年金制度は、新たに地方公務員の統一的な退職年金制度に関する法律が制定される際、これに統合されるものとする。
5 前項の場合においては、地方公務員の退職年金に係る経理と互助年金に係る経理とは区分すべきものとする。
(他の法律の一部改正)
6 自治省設置法(昭和二十七年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十六号の二の次に次の一号を加える。
十六の三 地方議会議員互助会の設立及び規約の変更の認可等をすること。
第十条第九号の二の次に次の一号を加える。
九の三 地方議会議員互助会に関する事務を処理すること。
7 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「農林漁業団体職員共済組合」の下に「、地方議会議員互助会」を、「農林漁業団体職員共済組合法」の下に「、地方議会議員互助年金法」を加える。
8 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ十三の次に次の一号を加える。
六ノ十四 地方議会議員互助会ガ地方議会議員互助年金法ニ基ク給付ニ関シ発スル証書、帳簿
9 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十二号中「町村職員恩給組合連合会」の下に「、地方議会議員互助会」を加える。
第八条第八項中第七号の三を第七号の四とし、第七号の二の次に次の一号を加える。
七の三 地方議会議員互助年金法第十二条第一項の規定による掛金
第九条第二項中「第七号の三」の下に「、第七号の四」を加える。
10 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第四号中「町村職員恩給組合連合会」の下に「、地方議会議員互助会」を加える。
11 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第四号中「町村職員恩給組合連合会」の下に「、地方議会議員互助会」を加える。
(法務・大蔵・自治・内閣総理大臣署名)