防災建築街区造成法
法律第百十号(昭三六・六・一)
目次
第一章 総則(第一条−第三条)
第二章 防災建築街区造成組合
第一節 通則(第四条−第八条)
第二節 事業(第九条)
第三節 組合員(第十条−第十六条)
第四節 設立(第十七条−第二十三条)
第五節 管理(第二十四条−第四十三条)
第六節 監督(第四十四条−第四十六条)
第七節 解散及び清算(第四十七条−第五十条)
第八節 補則(第五十一条−第五十三条)
第三章 地方公共団体が施行する防災建築街区造成事業(第五十四条・第五十五条)
第四章 国及び地方公共団体の援助(第五十六条−第五十九条)
第五章 雑則(第六十条・第六十一条)
第六章 罰則(第六十二条−第六十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、防災建築街区における防災建築物及びその敷地の整備について必要な事項を規定することにより、都市における災害の防止を図り、あわせて土地の合理的利用の増進及び環境の整備改善に資し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害 火災又は津波、高潮若しくは出水による災害をいう。
二 防災建築物 災害の防止上有効な性能を有する建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二に規定する耐火建築物(以下「耐火建築物」という。)及びその附帯施設で政令で定めるものをいう。
三 防災建築街区 次条第一項の規定により指定された街区をいう。
四 借地権 建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう。ただし、臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
五 借家権 建物の賃借権をいう。ただし、一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
(防災建築街区)
第三条 建設大臣は、関係市町村の申出に基づき、建築基準法第三十九条第一項の災害危険区域内で都市計画法(大正八年法律第三十六号)第二条に規定する都市計画区域内にある土地又は建築基準法第六十条第一項の防火地域内にある土地について、防災建築物及びその敷地を整備すべき街区を防災建築街区として指定することができる。この場合においては、あらかじめ、自治大臣と協議しなければならない。
2 防災建築街区は、都市の枢要地帯において、災害を効果的に防止することを考慮して、系統的に配置されるように、指定しなければならない。
3 建設大臣は、第一項の規定により防災建築街区を指定したときは、遅滞なく、これを官報で告示しなければならない。
第二章 防災建築街区造成組合
第一節 通則
(目的)
第四条 防災建築街区造成組合(以下「組合」という。)は、防災建築街区において防災建築物を建築しようとする者の共同の利益となる事業を行なうことにより、防災建築街区における適正な防災建築物の建築を促進し、土地の合理的利用と環境の整備改善を図ることを目的とする。
(人格)
第五条 組合は、法人とする。
(名称)
第六条 組合は、その名称中に防災建築街区造成組合という文字を用いなければならない。
2 組合でない者は、防災建築街区造成組合という名称を用いてはならない。
(登記)
第七条 組合は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条第一項及び第五十条の規定は、組合について準用する。
第二節 事業
(事業の範囲)
第九条 組合は、第四条の目的を達成するため、次に掲げる事業の全部又は一部を行なうものとする。
一 防災建築物の敷地、位置、構造、形態、意匠又は建築設備(建築基準法第二条第三号に規定する建築設備をいう。)に関する基準を作成し、その他防災建築物の建築に関し組合員に対して助言し、又は指導すること。
二 組合員の委託を受けて、防災建築物の建築及びその敷地の整備に関し組合員が行なうべき事務を処理すること。
三 組合員のために、防災建築物の建築及びその敷地の整備に要する資金の借入れをあつせんし、又はその借入れについての保証をあつせんすること。
四 組合員の共同の利便に供する施設を建設すること。
五 前各号の事業に附帯する事業
2 組合は、前項に掲げる事業のほか、必要があるときは、防災建築物の敷地の取得及び整備、防災建築物の建築並びに防災建築物及びその敷地の組合員に対する譲渡その他組合の目的を達成するため必要な事業を行なうことができる。
第三節 組合員
(資格)
第十条 組合員たる資格を有する者は、組合の地区内において土地の所有権又は借地権を有する者及び定款で定めるその他の者とする。
(出資及び組合員の責任)
第十一条 組合は、定款で定めるところにより、組合員に出資させることができる。
2 組合員は、出資の払込みについて、相殺をもつて組合に対抗することができない。
3 組合財産によつて組合の債務を完済することができないときは、組合に出資した各組合員は、その出資額に応ずる割合により、これを弁済する責に任ずる。この場合においては、民法第六百七十五条の規定を準用する。
(議決権及び選挙権)
第十二条 組合員は、定款に別段の定がある場合を除き、各一個の議決権及び役員の選挙権を有する。
(経費)
第十三条 組合は、定款で定めるところにより、組合員に経費を賦課することができる。
2 組合員は、前項の経費の支払について、相殺をもつて組合に対抗することができない。
(過怠金)
第十四条 組合は、定款で定めるところにより、出資の払込み、経費の支払その他組合に対する義務を怠つた組合員に対して、過怠金を課することができる。
(法定脱退)
第十五条 組合員は、次に掲げる理由によつて脱退する。
一 組合員たる資格の喪失
二 死亡又は解散
三 除名
2 除名は、次に掲げる組合員につき、総会の議決によつてすることができる。この場合において、組合は、その総会の会日の一週間前までに、その組合員に対してその旨を通知し、その者又は代理人が総会において弁明する機会を与えなければならない。
一 出資の払込み、経費の支払その他組合に対する義務を怠つた組合員
二 その他定款で定める理由に該当する組合員
3 除名は、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもつてその組合員に対抗することができない。
(組合員の地位の承継)
第十六条 前条第一項第一号又は第二号の規定により組合員が脱退したときは、当該組合員の第十条に規定する権利を承継した者は、定款で定めるところにより、当該組合員の地位を承継することができる。
第四節 設立
(発起人)
第十七条 組合を設立するには、その組合員になろうとする五人以上の者が発起人とならなければならない。
(創立総会)
第十八条 発起人は、定款、事業計画及び収支予算を作成し、定款並びに事業計画及び収支予算の概要を会議の日時、場所及び議題とともに公告して、創立総会を開かなければならない。
2 前項の公告は、会日の少なくとも二週間前までに、組合員たる資格を有する者のすべての者に対して周知させることができるように行なわなければならない。
3 発起人が作成した定款、事業計画及び収支予算の承認その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。
4 創立総会においては、前項の定款、事業計画又は収支予算を修正することができる。ただし、地区及び組合員たる資格に関する定款の規定については、この限りでない。
5 創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席して、その出席者の三分の二以上で決する。
6 第十二条、第四十一条第三項及び第四項並びに商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百三十九条第三項及び第五項、第二百四十条第二項、第二百四十三条、第二百四十四条、第二百四十七条から第二百五十条まで、第二百五十二条並びに第二百五十三条の規定は、創立総会について準用する。この場合において、同法第二百四十三条中「第二百三十二条ノ規定ヲ適用セズ」とあるのは「防災建築街区造成法第十八条第一項ノ規定ニ依ル公告ハ之ヲ為スコトヲ要セズ」と、同法第二百四十四条第二項中「取締役」とあるのは「発起人」と、同法第二百四十七条第一項中「第三百四十三条」とあるのは「防災建築街区造成法第十八条第五項」と読み替えるものとする。
(設立の認可)
第十九条 発起人は、創立総会の終了後、遅滞なく、申請書に定款、事業計画及び収支予算並びに建設省令で定める事項を記載した書面を添附し、市町村長を経由して、建設大臣に設立の認可を申請しなければならない。
2 市町村長は、前項の書類の提出があつたときは、すみやかに、その意見をつけて、これを建設大臣に送付しなければならない。
3 建設大臣は、第一項の認可の申請があつた場合において、設立しようとする組合が次の各号に適合していないと認めるときは、同項の認可をしてはならない。
一 設立の手続並びに定款及び事業計画の内容が法令に違反しないこと。
二 組合又は組合員が建築しようとする建築物及びその敷地が、当該防災建築街区において災害を効果的に防止するものであり、かつ、土地の合理的利用及び環境の整備改善を図ることを考慮したものであること。
三 事業を行なうため必要な経済的基礎その他その目的を達成するため必要な能力が充分であること。
(認可又は不認可の通知)
第二十条 建設大臣は、前条第一項の認可の申請があつたときは、遅滞なく、認可又は不認可の処分をし、その旨を当該発起人に通知しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定により不認可の通知をするときは、その理由をあわせて通知しなければならない。
(事務の引渡し)
第二十一条 発起人は、設立の認可があつたときは、遅滞なく、その事務を理事に引き渡さなければならない。
(成立の時期)
第二十二条 組合は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。
(商法の準用)
第二十三条 商法第四百二十八条の規定は、組合の設立について準用する。この場合において、同条第一項中「二年」とあるのは、「六月」と読み替えるものとする。
第五節 管理
(定款)
第二十四条 組合の定款には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事業
四 地区
五 事務所の所在地
六 組合員たる資格並びに組合員の加入及び脱退に関する事項
七 経費の分担に関する事項
八 役員に関する事項
九 総会に関する事項
十 経理に関する事項
十一 事業年度
十二 公告の方法
2 組合の定款には、前項に掲げる事項のほか、組合の存立時期又は解散の原因となる事実を定めたときは、その時期又は原因となる事実を記載しなければならない。
(規約)
第二十五条 組合の業務の執行について必要な事項は、定款で定めなければならないものを除き、規約で定めることができる。
(役員)
第二十六条 組合に、役員として理事三人以上及び監事一人以上を置く。
2 役員は、組合員又は組合員である法人の役員でなければならない。ただし、設立当時の役員は、組合員となろうとする者又は組合員となろうとする法人の役員でなければならない。
3 役員は、定款で定めるところにより、総会において選任し、又は解任する。ただし、設立当時の役員は、創立総会において選任する。
(役員の変更の届出)
第二十七条 組合は、役員に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を建設大臣に届け出なければならない。
(役員の任期)
第二十八条 役員の任期は、二年以内において、定款で定める期間とする。
2 設立当時の役員の任期は、前項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。ただし、その期間は一年をこえてはならない。
3 役員は、再任されることができる。
(役員の責任)
第二十九条 役員がその任務を怠つたときは、その役員は、組合に対し連帯して損害賠償の責に任ずる。
2 役員がその職務を行なうにつき悪意又は重大な過失があつたときは、その役員は、第三者に対し連帯して損害賠償の責に任ずる。
(役員の兼職禁止)
第三十条 監事は、理事又は組合の使用人と兼ねてはならない。
(代表権の制限)
第三十一条 組合と理事との利益が相反する事項については、理事は、代表権を有しない。この場合には、監事が組合を代表する。
(定款その他の書類の備付け及び閲覧)
第三十二条 理事は、定款、規約、総会の議事録及び建設省令で定める事項を記載した組合員名簿を主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 組合員又は組合の債権者は、いつでも前項に規定する書類の閲覧を求めることができる。この場合には、理事は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない。
(決算関係書類の提出、備付け及び閲覧)
第三十三条 理事は、通常総会の会日の一週間前までに財産目録、貸借対照表、事業報告書、収支決算書及び剰余金処分案又は損失処理案を監事に提出し、かつ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 理事は、監事の意見書を添えて前項の書類を通常総会に提出し、その承認を求めなければならない。
3 前条第二項の規定は、第一項の書類について準用する。
(会計帳簿等の閲覧)
第三十四条 組合員は、総組合員の十分の一以上の同意を得て、会計に関する帳簿及び書類の閲覧を求めることができる。この場合には、理事は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない。
(民法及び商法の準用)
第三十五条 民法第五十二条第二項及び第五十三条から第五十六条までの規定は理事について、同法第五十九条の規定は監事について、商法第二百五十四条第三項、第二百五十四条ノ二及び第二百五十八条第一項の規定は役員について準用する。
(総会の招集)
第三十六条 理事は、定款で定めるところにより、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
第三十七条 理事は、必要があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
2 組合員が総組合員の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して総会の招集を請求したときは、理事は、その請求があつた日から三週間以内に臨時総会を招集しなければならない。
第三十八条 理事の職務を行なう者がないとき、又は前条第二項の請求があつた場合において理事が正当な理由がないのに総会招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。
(総会招集の手続)
第三十九条 総会招集の通知は、少なくとも会日の一週間前までに、会議の目的たる事項、日時及び場所を示し、定款で定める方法に従つてしなければならない。
(総会の議決事項等)
第四十条 次に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 規約の設定、変更又は廃止
三 毎事業年度の事業計画及び収支予算の決定又は変更
四 その他定款で定める事項
2 定款の変更は、建設省令で定めるところにより、建設大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 第十九条第三項及び第二十条の規定は、前項の認可について準用する。
(総会の議事等)
第四十一条 総会は、総組合員の半数以上の出席がなければ、議事を開き、議決をすることができない。
2 総会の議事は、この法律又は定款に特別の定のある場合を除いて、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
3 議長は、総会において選任する。
4 議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない。
(特別の議決)
第四十二条 次の事項は、出席者の議決権の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
一 定款の変更
二 解散
三 組合員の除名
(民法及び商法の準用)
第四十三条 民法第六十四条並びに商法第二百三十九条第三項及び第五項、第二百四十条第二項、第二百四十三条、第二百四十四条、第二百四十七条から第二百五十条まで、第二百五十二条並びに第二百五十三条の規定は、総会について準用する。この場合において、民法第六十四条中「第六十二条」とあり、又は商法第二百四十三条中「第二百三十二条」とあるのは「防災建築街区造成法第三十九条」と、同法第二百四十七条第一項中「第三百四十三条」とあるのは「防災建築街区造成法第四十二条」と読み替えるものとする。
第六節 監督
(届出等)
第四十四条 組合は、設立の登記をしたときは、その日から二週間以内に、その旨を建設大臣に届け出なければならない。主たる事務所を移転したときも、同様とする。
2 組合は、毎事業年度、通常総会の終了の日から一月以内に、財産目録、貸借対照表、事業報告書及び収支決算書を建設大臣に提出しなければならない。
(報告及び検査)
第四十五条 建設大臣は、この法律の適正かつ円滑な実施を確保するため必要があると認めるときは、組合に対して、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、組合の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(警告等)
第四十六条 建設大臣は、組合の運営がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは定款に違反し、又は著しく不当であると認めるときは、その組合に対して警告を発し、それによつてもなお改善されないと認めるときは、次の各号の一に掲げる処分をすることができる。
一 業務の一部の停止
二 設立の認可の取消し
2 建設大臣は、前項に規定する処分をする場合には、関係市町村長の意見をきかなければならない。
第七節 解散及び清算
(解散)
第四十七条 組合は、次の場合には、解散する。
一 総会において解散の決議をした場合
二 破産した場合
三 定款で定める存立時期が満了した場合
四 定款で定める解散の原因となる事実が発生した場合
五 設立の認可を取り消された場合
2 解散の決議は、建設省令で定めるところにより、建設大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
3 第二十条の規定は、前項の認可について準用する。
(清算事務)
第四十八条 清算人は、就職の後、遅滞なく、組合の財産の状況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作成し、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
第四十九条 清算事務が終わつたときは、清算人は、遅帯なく、決算報告書を作成し、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。
(民法及び非訟事件手続法の準用)
第五十条 民法第七十三条から第七十六条まで及び第七十八条から第八十三条まで並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百三十五条ノ二十五第二項及び第三項、第百三十六条、第百三十七条前段、第百三十八条並びに第百三十八条ノ三の規定は、組合の解散及び清算について準用する。
第八節 補則
(組合への加入の勧告等)
第五十一条 都道府県知事又は市町村長は、組合の申請があつた場合において、災害を効果的に防止し、かつ、土地の合理的利用を図るため必要があると認めるときは、組合員たる資格を有する者に対して組合への加入を勧告することができる。
2 都道府県知事、市町村長又は組合は、組合の地区内の土地又は建物について権利を有する者の間に紛争があるため組合に加入することができない者があるときは、当事者の間の権利関係の調整について、あつせんを行なうことができる。
(建築協定のあつせん)
第五十二条 組合は、土地の所有者及び借地権者が建築基準法第六十九条に規定する建築物に関する協定をすることをあつせんすることができる。
(不服の申立て等)
第五十三条 この章の規定による建設大臣の処分(第六十条の規定により建設大臣の権限の一部が都道府県知事に委任された場合には、当該都道府県知事の処分)に不服のある者は、その処分があつた日から三十日以内に建設大臣に対して不服の申立てをすることができる。
2 前項の規定による不服の申立てがあつたときは、建設大臣は、その不服の申立てを受理した日から三十日以内に文書をもつて決定しなければならない。
3 訴願法(明治二十三年法律第百五号)第十二条の規定は、第一項の規定による不服の申立てについて準用する。
第三章 地方公共団体が施行する防災建築街区造成事業
(地方公共団体が施行する防災建築街区造成事業)
第五十四条 都道府県又は市町村は、みずから必要な権利を取得し、又は関係権利者の委託を受けて、防災建築街区造成事業(防災建築街区において行なう防災建築物及びその敷地の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業をいう。以下同じ。)を施行することができる。
第五十五条 都道府県又は市町村が、防災建築街区内の地上階数三以上の耐火建築物を建築する者がない部分(現に地上階数二以下の耐火建築物がある部分で、防災建築街区における防災の効果を著しく害するおそれがないと認めた部分を除く。)で次の各号に掲げる条件に該当する土地の区域につき、当該区域内の土地の所有者、その土地について借地権を有する者(その者がさらに借地権を設定しているときは、その借地権の設定を受けた者)及びその土地にある建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者)の総数の三分の二以上の申出に基づいて施行する防災建築街区造成事業については、公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三十六年法律第百九号。以下「市街地改造法」という。)第二章(第十七条第二項及び第五節を除く。)、第三章(第六十四条から第六十七条までを除く。)及び附則第二項の規定を準用する。この場合においては、同法第十三条第一項中「都市計画事業として決定された」とあるのは、「事業計画の認可を受けた旨の公告があつた」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
一 当該区域内に建築基準法第三十九条第二項の規定に基づく条例の規定又は同法第六十一条の規定に適合しない建築物が当該区域内にある建築物の合計戸数の四分の三以上あり、かつ、これらの建築物が密集しているため災害の発生のおそれが著しいこと。
二 当該区域内にあるもつぱら居住の用に供する建築物の建築面積が当該区域内にある建築物の建築面積の合計の四分の一以下であること。
三 当該区域内における防災建築街区造成事業の完成が、当該都市における災害の防止及び都市機能の向上に著しく貢献するものであること。
2 建設大臣は、前項の規定により準用する市街地改造法第十八条の規定により事業計画又はその変更について認可する場合においては、あらかじめ、都市計画審議会の意見をきかなければならない。
第四章 国及び地方公共団体の援助
(地方公共団体の補助)
第五十六条 都道府県又は市町村は、防災建築街区において防災建築物の建築を行なう者に対して、これに要する経費の一部を補助することができる。
(国の補助)
第五十七条 国は、都道府県又は市町村が前条の規定により補助金を交付し、又はみずから防災建築街区において防災建築物を建築する場合には、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その費用の一部を補助することができる。
(技術的援助の請求)
第五十八条 防災建築街区において防災建築物を建築しようとする者又は組合は都道府県知事及び市町村長に対し、市町村は建設大臣及び都道府県知事に対し、都道府県は建設大臣に対し、防災建築物の建築又はその敷地の整備のため、それぞれ防災建築物の建築又はその敷地の整備に関し専門的知識を有する職員の技術的援助を求めることができる。
(固定資産税の軽減)
第五十九条 第五十六条の規定による補助に係る防災建築物に対して課する固定資産税については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定の適用があるものとする。
第五章 雑則
(権限の委任)
第六十条 この法律(第五十五条第一項において準用する市街地改造法を含む。以下同じ。)又はこの法律に基づく政令の規定により建設大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
(政令への委任)
第六十一条 この法律に特に定めるもののほか、この法律によりなすべき公告の方法その他この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
第六章 罰則
(罰則)
第六十二条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第五十五条第一項において準用する市街地改造法第七条第一項の規定による土地の立入りを拒み、又は妨げた者
二 第五十五条第一項において準用する市街地改造法第八条第一項に規定する場合において、市町村長の許可を受けないで障害物を伐除した者又は都道府県知事の許可を受けないで土地に試掘等を行なつた者
三 第五十五条第一項において準用する市街地改造法第十三条第四項の規定による命令に違反して、土地の原状回復をせず、又は建築物その他の工作物若しくは物件を移転し、若しくは除却しなかつた者
第六十三条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十九条第一項の規定による申請書又は添付書類に虚偽の記載をして提出した者
二 第五十五条第一項において準用する市街地改造法第十一条第二項の規定に違反して、同条第一項の規定による標識を移転し、除却し、汚損し、又は損壊した者
三 第五十五条第一項において準用する市街地改造法第十五条の規定による命令に違反して、建築物、工作物その他の物件を移転せず、又は所有者に引き渡さなかつた者
第六十四条 第四十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、その違反行為をした組合の役員又は職員は、一万円以下の罰金に処する。
第六十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第六十六条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした組合の発起人、役員又は清算人は、一万円以下の過料に処する。
一 第七条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
二 第十八条第六項、第二十三条若しくは第四十三条において準用する商法の規定又は第五十条において準用する民法の規定による公告をせず、又は不正の公告をしたとき。
三 第二十七条又は第四十四条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
四 第三十二条、第三十三条又は第三十四条後段の規定に違反したとき。
五 第四十条第二項又は第四十七条第二項の規定による認可の申請の際提出すべき書類に虚偽の記載をして提出したとき。
六 第四十四条第二項の規定による書類を同項に規定する期間内に提出しなかつたとき。
七 定款、財産目録、貸借対照表、事業報告書、収支決算書又は議事録に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。
第六十七条 第六条第二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(名称の使用制限に関する経過規定)
2 この法律の施行の際現に防災建築街区造成組合という名称を用いている者については、この法律の施行の日から起算して六月間は、第六条第二項の規定は適用しない。
(耐火建築促進法の廃止)
3 耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)は、廃止する。
4 旧耐火建築促進法(以下「旧法」という。)第五条、第六条又は第十一条の規定によつてした補助及びその補助に係る耐火建築物に関しては、なお従前の例による。旧法第六条の規定による国の補助金で財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十四条の三第一項の規定により昭和三十六年度に繰り越された歳出予算の経費に係るもの及びその補助に係る耐火建築物についても、同様とする。
5 この法律の施行前一年以内に制定された旧法第七条第二項の政令により定められた区域内における耐火建築物の建築に関しては、この法律の施行の日から一年間は、なお従前の例による。
(登録税法の一部改正)
6 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第二十一号ノ二中「市街地改造事業」の下に「又ハ防災建築街区造成法第五十五条第一項ノ規定ニ依ル防災建築街区造成事業」を加える。
(建設省設置法の一部改正)
7 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十二号の二中「耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)」を「防災建築街区造成法(昭和三十六年法律第百十号)」に改める。
(住宅金融公庫法の一部改正)
8 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
第十七条第八項を次のように改める。
8 公庫は、第一条第三項に掲げる目的を達成するため、相当の住宅部分を有する中高層耐火建築物を建設する者又は防災建築街区造成法(昭和三十六年法律第百十号)第二条第三号に規定する防災建築街区内において相当の住宅部分を有する同条第二号に規定する防災建築物を建設する者に対し、その建設に必要な資金の貸付けの業務を行なう。
第二十一条の三第三項第四号中「他人」の下に「(防災建築街区造成法による防災建築街区造成組合が貸付けを受けた場合においては、当該組合の組合員を除く。)」を加える。
9 住宅金融公庫は、昭和三十七年三月三十一日までは、前項の規定による改正前の住宅金融公庫法第十七条第八項の規定の例により、この法律の施行の際現に指定されている防火建築帯の区域内において建築物を建設する者に対し、その建設に必要な資金の貸付けをすることができる。
10 附則第八項の規定による改正前の住宅金融公庫法第十七条第八項の規定(前項の規定によりその例による場合を含む。以下附則第十二項において同じ。)により防火建築帯の区域内において建築物を建設するため必要な資金の貸付けを受けた者の当該貸付けに関しては、なお従前の例による。
(地方税法の一部改正)
11 地方税法の一部を次のように改正する。
第七十三条の六第二項中「又は耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)第十五条の規定によつて耐火建築物の一部の所有権をもつて損失を補償された場合」及び「又は当該耐火建築物の一部の取得」を削る。
第七十三条の十四中第四項を削り、第五項を第四項とし、第六項を第五項とし、同条第七項中「第三十一条第一項」の下に「(防災建築街区造成法(昭和三十六年法律第百十号)第五十五条第一項において準用する場合を含む。)」を、「第四十一条第一項」の下に「(防災建築街区造成法第五十五条第一項において準用する場合を含む。)」を、「市街地改造事業」の下に「又は防災建築街区造成事業」を加え、同条中同項を第六項とし、第八項を第七項とし、同項の次に次の一項を加え、第九項を削る。
8 住宅金融公庫法第十七条第八項の規定により資金の貸付けを受けて防災建築街区造成法第三条の規定に基づき指定された防災建築街区の区域内に防災建築物(同法第二条第二号に規定する防災建築物をいう。以下本条及び第七十三条の二十七の三において同じ。)である家屋を新築した場合における当該家屋の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、住宅金融公庫法第二十条第七項の規定により住宅金融公庫の定めるところによつて算出した防災建築物と木造の建築物との単位面積当りの標準建設費の差額に政令で定める率を乗じて得た額に当該家屋の床面積の合計を乗じた額を価格から控除するものとする。
第七十三条の二十七の二の次に次の一条を加える。
(防災建築街区造成組合の取得に対して課する不動産取得税の納税義務の免除等)
第七十三条の二十七の三 道府県は、防災建築街区造成組合(以下本条において「組合」という。)が、防災建築街区造成法第九条第二項の規定に基づき防災建築物の敷地を取得し、又は防災建築物を新築した場合において、当該不動産の取得の日から六月以内に当該組合の組合員に当該不動産を譲渡したときは、当該組合による当該不動産の取得に対する不動産取得税に係る地方団体の徴収金に係る納税義務を免除するものとする。
2 前条第二項から第五項までの規定は、組合が防災建築物に係る不動産を取得した場合における不動産取得税額の徴収猶予及び当該不動産取得税に係る地方団体の徴収金の還付について準用する。この場合において、同条第四項中「当該譲渡担保権者」とあるのは、「当該組合」と読み替えるものとする。
12 旧法第五条又は第十一条の規定に基づく補助金の交付を受けて家屋を新築し、又は増築した場合及び附則第八項の規定による改正前の住宅金融公庫法第十七条第八項の規定により資金の貸付けを受けて防火建築帯の区域内に家屋を新築した場合における不動産取得税の課税標準の算定については、なお従前の例による。
(租税特別措置法の一部改正)
13 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第六節 その他の特例(第四十一条の七)」を「第六節 その他の特例(第四十一条の七・第四十一条の八)」に改める。
第三十一条第一項第一号中「以下次条」を「防災建築街区造成法(昭和三十六年法律第百十号)第五十五条第一項において準用する場合を含むものとし、以下次条」に改める。
第三十二条第一項第三号中「市街地改造事業」の下に「又は防災建築街区造成事業」を加える。
第二章第六節中第四十一条の七の次に次の一条を加える。
(防災建築補助金の総収入金額不算入)
第四十一条の八 個人が、防災建築街区造成法第五十六条の規定により地方公共団体から同法第二条第二号に規定する防災建築物で当該個人の事業の用に供さないものの新築に要する費用に充てるため交付を受けた補助金を、当該補助金の交付の目的に従つて、当該建築物の新築の費用に充てた場合には、当該費用に充てた補助金の金額は、政令で定めるところにより、当該個人の当該補助金の交付を受けた年分の所得の計算上、所得税法第九条第一項に規定する総収入金額に算入しない。
2 前項の防災建築物の新築の費用に充てるため交付を受けた補助金につき同項の規定の適用を受けた場合には、当該防災建築物の取得価額については、同項の規定の適用を受けた補助金に相当する金額の取得価額がないものとみなす。
3 第一項の規定は、確定申告書等に、同項の規定の適用を受けようとする旨並びに交付を受けた補助金の金額、その建築の費用に充てた補助金の額、その取得した資産の取得価額及びその取得した資産に関する事項の記載がない場合には、適用しない。
第六十五条第一項第三号中「市街地改造事業」の下に「又は防災建築街区造成事業」を加える。
(法務・大蔵・建設・自治・内閣総理大臣署名)