酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律

法律第百三号(昭三六・六・一)

 (目的)

第一条 この法律は、酒に酔つている者(アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者をいう。以下「酩酊者」という。)の行為を規制し、又は救護を要する酩酊者を保護する等の措置を講ずることによつて、過度の飲酒が個人的及び社会的に及ぼす害悪を防止し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

 (節度ある飲酒)

第二条 すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない。

 (保護)

第三条 警察官は、酩酊者が、道路、公園、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の場所又は乗物」という。)において、粗野又は乱暴な言動をしている場合において、当該酩酊者の言動、その酔いの程度及び周囲の状況等に照らして、本人のため、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当の理由があると認められるときは、とりあえず救護施設、警察署等の保護するのに適当な場所に、これを保護しなければならない。

2 前項の措置をとつた場合においては、警察官は、できるだけすみやかに、当該酩酊者の親族、知人その他の関係者(以下「親族等」という。)にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。

3 第一項の規定による保護は、責任ある親族等の引取りがない場合においては、二十四時間をこえない範囲内でその酔いをさますために必要な限度でなければならない。

4 警察官は、第一項の規定により保護をした者の氏名、住所、保護の理由、保護及び引渡しの時日並びに引渡先を毎週当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所に通知しなければならない。


 (罰則等)

第四条 酩酊者が、公共の場所又は乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をしたときは、拘留又は科料に処する。

2 前項の罪を犯した者に対しては、情状により、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる。

3 第一項の罪を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準ずる。

第五条 警察官は、前条第一項の罪を現に犯している者を発見したときは、その者の言動を制止しなければならない。

2 前項の規定による警察官の制止を受けた者が、その制止に従わないで前条第一項の罪を犯し、公衆に著しい迷惑をかけたときは、一万円以下の罰金に処する。


 (立入り)

第六条 警察官は、酩酊者がその者の住居内で同居の親族等に暴行をしようとする等当該親族等の生命、身体又は財産に危害を加えようとしている場合において、諸般の状況から判断して必要があると認めるときは、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第六条第一項の規定に基づき、当該住居内に立ち入ることができる。


 (通報)

第七条 警察官は、第三条第一項又は警察官職務執行法第三条第一項の規定により酩酊者を保護した場合において、当該酩酊者がアルコールの慢性中毒者(精神障害者を除く。)又はその疑のある者であると認めたときは、すみやかに、もよりの保健所長に通報しなければならない。


 (診察等)

第八条 前条の通報を受けた保健所長は、必要があると認めるときは、当該通報に係る者に対し、医師の診察を受けるようにすすめなければならない。この場合において、保健所長は、当該通報に係る者の治療又は保健指導に適当な他の医療施設を紹介することができる。

第九条 前条前段の規定により医師の診察を受けるようにすすめられた者がそのすすめに従つて受ける診察及び診察の結果必要と診断された治療については、当該診療を受ける者が困窮のため最低限度の生活を維持することのできないものであるときは、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十五条に規定する医療扶助を受けることができる。

 (適用上の注意)

第十条 この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。


   附 則

 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。

(内閣総理・厚生大臣署名) 

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