じん肺法

法律第三十号(昭三五・三・三一)

 目次

 第一章 総則(第一条―第四条)

 第二章 予防及び健康管理(第五条―第二十三条)

 第三章 じん肺審議会(第二十四条―第三十一条)

 第四章 政府の援助等(第三十二条―第三十五条)

 第五章 雑則(第三十六条―第四十四条)

 第六章 罰則(第四十五条・第四十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、じん肺に関し、適正な予防及び健康管理その他必要な措置を講ずることにより、労働者の健康の保持その他福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 じん肺 鉱物性粉じん(以下「紛じん」という。)を吸入することによつて生じたじん肺及びこれと肺結核の合併した病気をいう。

 二 粉じん作業 当談作業に従事する労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業をいう。

 三 労働者 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第九条に規定する労働者をいう。

 四 使用者 労働基準法第十条に規定する使用者で、粉じん作業を行なう事業に係るものをいう。

2 前項第二号の粉じん作業の範囲は、労働省令で定める。

 (じん肺健康診断)

第三条 この法律の規定によるじん肺健康診断は、次の方法によつて行なうものとする。

 一 エックス線写真(直接撮影による胸部全域のエックス線写真をいう。以下同じ。)による検査及び粉じん作業についての職歴の調査

 二 胸部に関する臨床検査

 三 労働省令で定める方法による結核精密検査

 四 労働省令で定める方法による心肺機能検査

2 胸部に関する臨床検査は、前項第一号の検査及び調査の結果じん肺にかかつていないと診断された者以外の者について行なう。

3 結核精密検査は、第一項第一号及び第二号の検査及び調査の結果、肺結核が合併し、又は合併している疑いがあるじん肺にかかつていると診断された者について行なう。ただし、エックス線写真に一側の肺野の二分の一をこえる大きさの大陰影(じん肺によるもの(肺結核のみによるものを除く。)に限る。以下この条及び次条において同じ。)があると認められる者を除く。

4 心肺機能検査は、第一項第一号及び第二号の検査及び調査の結果じん肺にかかつていると診断された者について行なう。ただし、エックス線写真に一側の肺野の二分の一をこえる大きさの大陰影があると認められる者及び結核精密検査の結果活動性の肺結核があると診断された者を除く。

 (エックス線写真の像及び健康管理の区分)

第四条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の中欄及び下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。

粒状影を主とする像

異常線状影を主とする像

第一型

両肺野のそれぞれ二肋間以上三分の一以下の範囲に、明らかな粒状影(じん肺によるもの(肺結核のみによるものを除く。)でその大きさが点大以上のものに限る。以下この表において同じ。)があり、かつ、大陰影がないと認められるもの

両肺野に分布が粗である異常線状影(じん肺によるものに限る。以下この表において同じ。)があり、かつ、大陰影がないと認められるもの

第二型

両肺野のそれぞれ三分の一をこえる範囲に、分布が粗である明らかな粒状影があり、かつ、大陰影がないと認められるもの

両肺野に分布が密である異常線状影があり、かつ、大陰影がないと認められるもの(第三型に該当するものを除く。)

第三型

両肺野のそれぞれ三分の一をこえる範囲に、分布が密である明らかな粒状影があり、かつ、大陰影がないと認められるもの

両肺野に分布が著しく密である異常線状影があり、かつ、大陰影がないと認められるもの

第四型

明らかな粒状影があり、かつ、両肺野又は一側の肺野に大陰影があると認められるもの

異常線状影があり、かつ、両肺野又は一側の肺野に大陰影があると認められるもの

2 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行なうものとする。

 

 

健康管理の区分

じん肺健康診断の結果

管理一

一 じん肺にかかつていないと認められるもの

二 エックス線写真の像が第一型又は第二型で、じん肺による心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、肺結核がないと認められるもの

管理二

一 エックス線写真の像が第一型又は第二型で、じん肺による軽度の心肺機能の障害その他の症状があり、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの(エックス線写真の像が第二型と認められるもので粉じん作業に従事した期間が五年以内の者に係るものを除く。)

二 エックス線写真の像が第三型で、じん肺による中等度以上の心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの(粉じん作業に従事した期間が十年以内の者に係るものを除く。)

三 エックス線写真の像が第一型又は第二型で、じん肺による心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、病勢の進行のおそれがない肺結核があると認められるもの

管理三

一 エックス線写真の像が第一型、第二型又は第三型で、じん肺による中等度の心肺機能の障害その他の症状があり、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの

二 エックス線写真の像が第二型で、じん肺による軽度の心肺機能の障害その他の症状があり、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの(粉じん作業に従事した期間が五年以内の者に係るものに限る。)

三 エックス線写真の像が第三型で、じん肺による中等度以上の心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの(粉じん作業に従事した期間が十年以内の者に係るものに限る。)

四 エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の二分の一以下のものに限る。)で、じん肺による高度の心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、病勢の進行のおそれがある肺結核がないと認められるもの

五 エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の二分の一以下のものに限る。)で、じん肺による高度の心肺機能の障害その他の症状がなく、かつ、病勢の進行のおそれがある不活動性の肺結核があると認められるもの

管理四

一 エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の二分の一以下のものに限る。)で、じん肺による高度の心肺機能の障害その他の症状があると認められるもの

二 エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の二分の一をこえる大きさのものに限る。)と認められるもの

三 エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型で、活動性の肺結核があると認められるもの

   第二章 予防及び健康管理


 (使用者及び労働者の義務)

第五条 使用者及び粉じん作業に従事する労働者は、じん肺の予防に関し、労働基準法及び鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)の規定によるほか、粉じんの発散の抑制、保護具の使用その他について適切な措置を講ずるように努めなければならない。


 (教育)

第六条 使用者は、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、常時粉じん作業に従事する労働者に対してじん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を行なわなければならない。


 (就業時診断)

第七条 使用者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行なわなければならない。ただし、当該作業に従事することとなつた前に常時粉じん作業に従事すべき職業に従事したことがない者であつて、その時前三月以内に労働基準法第五十二条第一項の健康診断を受けたものその他労働省令で定める労働者については、この限りでない。


 (定期診断)

第八条 使用者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行なわなければならない。

 一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年

 二 常時粉じん作業に従事する労働者で健康管理の区分が管理二又は管理三であるもの 一年

 三 第二十一条第一項の勧告を受けて、当該事業場において、常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者で健康管理の区分が管理三であるもの 一年


 (定期外診断)

第九条 使用者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行なわなければならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。

 一 常時粉じん作業に従事する労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断において、当該健康診断の直前のじん肺健康診断の後新たに肺結核にかかつたと診断されたとき(当該健康診断を行なう前において、じん肺にかかつており、かつ、健康管理の区分が管理一、管理二又は管理三と決定された労働者について、当該肺結核が活動性のものであると診断されたときを除く。)。

 二 第二十一条第一項の勧告を受けて当該事業場において常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断において、当該健康診断の直前のじん肺健康診断の後新たに肺結核にかかり、かつ、それが不活動性のものであると診断されたとき。

 三 健康管理の区分が管理四である労働者が、医師により療養を要しなくなつたと診断されたとき。


 (労働基準法の健康診断との関係)

第十条 使用者は、じん肺健康診断を行なつた場合においては、その限度において、労働基準法第五十二条第一項の健康診断を行なわなくてもよい。


 (受診義務)

第十一条 関係労働者は、正当な理由がある場合を除き、第七条から第九条までの規定により使用者が行なうじん肺健康診断を受けなければならない。ただし、使用者が指定した医師の行なうじん肺健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行なうじん肺健康診断を受け、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を使用者に提出したときは、この限りでない。


 (エックス線写真等の提出)

第十二条 使用者は、第七条から第九条までの規定によりじん肺健康診断を行なつたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、じん肺にかかつていると診断された労働者について、当該エックス線写真及び次の各号に掲げる書面を都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

 一 じん肺健康診断の結果を証明する書面

 二 粉じん作業についての職歴を証明する書面

 三 胸部に関する臨床検査の結果を証明する書面

 四 結核精密検査の結果を証明する書面

 五 心肺機能検査の結果を証明する書面

2 使用者は、常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺にかかつており、かつ、健康管理の区分が管理一、管理二又は管理三と決定された者に限る。)又は第二十一条第一項の勧告を受けて当該事業場において常時粉じん作業以外の作業に従事している労働者が、労働基準法第五十二条第一項の健康診断の結果次の各号の一に該当する場合は、遅滞なく、当該エックス線写真及び健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

 一 直前のじん肺健康診断の後、新たに肺結核にかかり、かつ、それが活動性のものであると診断されたとき。

 二 直前のじん肺健康診断の後、従前不活動性であつた肺結核が活動性のものになつたと診断されたとき。

 三 直前のじん肺健康診断の後、従前病勢の進行のおそれがないと認められた肺結核(健康管理の区分が管理二である者に係るものに限る。)が、病勢の進行のおそれがある不活動性のものになつたと診断されたとき。


 (健康管理の区分の決定等)

第十三条 第七条から第九条まで又は第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断の結果、じん肺にかかつていないと診断された者の健康管理の区分は、管理一とする。

2 都道府県労働基準局長は、前条の規定により、エックス線写真及びじん肺健康診断又は労働基準法第五十二条第一項の健康診断に関する書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断又は審査により、当該労働者がじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分の決定をするものとする。

3 都道府県労働基準局長は、地方じん肺診査医の意見により、じん肺が相当に進行している疑いがあると認められる労働者について、前項の決定を行なうため必要があると認めるときは、使用者に対し、期日又は方法を指定してエックス線写真の撮影又は労働省令で定める範囲内の検査を行なうべきことを命ずることができる。

4 使用者は、前項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行なつたときは、遅滞なく、都道府県労働基準局長に、当該エックス線写真又は検査の結果を証明する書面その他その指定する当該検査に係る物件を提出しなければならない。

5 第十一条本文の規定は、第三項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行なう場合に準用する。


 (通知)

第十四条 都道府県労働基準局長は、前条第二項の決定をしたときは、労働省令で定めるところにより、その旨を当該使用者に通知するとともに、遅滞なく、第十二条又は前条第四項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。

2 使用者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を当該労働者に通知しなければならない。


 (随時申請)

第十五条 常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者は、何時でも、じん肺健康診断を受けて、都道府県労働基準局長にじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分を決定すべきことを申請することができる。

2 前項の規定による申請は、エックス線写真、粉じん作業についての職歴を証明する書面、当該じん肺健康診断の結果を証明する書面その他労働省令で定める書面を添えてしなければならない。

3 第十三条第二項から第四項まで及び前条第一項の規定は、第一項の規定による申請があつた場合に準用する。この場合において、第十三条第三項及び第四項中「使用者」とあるのは「申請者」と、前条第一項中「当該使用者」とあるのは「申請者及び申請者を使用する使用者」と読み替えるものとする。

第十六条 使用者は、何時でも、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者について、じん肺健康診断を行ない、都道府県労働基準局長にじん肺にかかつているかどうかの別及び健康管理の区分を決定すべきことを申請することができる。

2 前条第二項の規定は前項の規定による申請に、第十三条第二項から第四項まで及び第十四条の規定は前項の規定による申請があつた場合に準用する。


 (記録)

第十七条 使用者は、労働省令で定めるところにより、その行なつたじん肺健康診断及び第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成し、これを五年間保存しなければならない。


 (不服の申立て)

第十八条 第十三条第二項(第十五条第三項及び第十六条第二項において準用する場合を含む。)の決定に不服のある者は、労働大臣に不服の申立てをすることができる。

2 前項の不服の申立てをしようとする者は、第十四条第一項(第十五条第三項及び第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知を受けた日から六十日以内に、労働省令で定める事項を記載した申立書を提出しなければならない。

3 第一項の不服の申立ては、当該決定をした都道府県労働基準局長を経由して行なわなければならない。

4 第二項の申立書には、労働省令で定めるところにより、当該決定に係るエックス線写真その他の物件及び証拠となる物件を添附しなければならない。

5 訴願法(明治二十三年法律第百五号)第八条第三項の規定は、第一項の不服の由立てに準用する。

 (裁決)

第十九条 労働大臣は、中央じん肺診査医の診断又は審査により、前条第一項の不服の申立てに理由があると認めるときは、裁決において、当該決定を取り消し、かつ、当該労働者又は労働者であつた者がじん肺にかかつているかどうかの別及びその者の健康管理の区分を決定するものとする。

2 労働大臣は、中央じん肺診査医の診断又は審査により前条第一項の不服の申立てに理由がないと認めるとき、又はその申立てが不適法であると認めるときは、裁決において理由を附して却下しなければならない。ただし、申立ての手続の方式に欠けたものがあるときは、これを補正させなければならない。

3 第十三条第三項及び第四項の規定は、前条第一項の不服の申立てがあつた場合に準用する。この場合において、これらの規定中「地方じん肺診査医」とあるのは「中央じん肺診査医」と、「使用者」とあるのは「申立人」と読み替えるものとする。

4 労働大臣は、裁決をしたときは、労働省令で定める事項を記載した裁決書をもつて、当該都道府県労働基準局長を経由して、申立人に通知するとともに、前条第四項の規定又は第三項において準用する第十三条第四項の規定により提出されたエックス線写真その他の物件を返還しなければならない。

5 労働大臣は、裁決をしたときは、当該都道府県労働基準局長を経由して、裁決書の写を労働省令で定める利害関係者に送付するものとする。


 (労働省令への委任)

第二十条 前二条に規定するもののほか、第十八条第一項の不服の申立てに関し必要な事項は、労働省令で定める。


 (作業の転換)

第二十一条 都道府県労働基準局長は、健康管理の区分が管理三である労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、使用者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧告することができる。

2 使用者は、前項の勧告を受けたときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。

3 使用者は、第一項の勧告を受けた労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたときは、遅滞なく、その旨を都道府県労働基準局長に通知しなければならない。


 (転換手当)

第二十二条 使用者は、前条第一項の勧告を受けた労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたときは、労働省令で定めるところにより、その者に対して、労働基準法第十二条に規定する平均賃金の三十日分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。


 (療養)

第二十三条 健康管理の区分が管理四と決定された者は、療養を要するものとする。

2 使用者は、第十四条第一項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定によりその使用する労働者の健康管理の区分が管理四と決定された旨の通知を受けたときは、第十四条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知において、その者が療養を要する旨を明らかにしなければならない。

   第三章 じん肺審議会


 (設置)

第二十四条 労働省に、じん肺審議会(以下「審議会」という。)を置く。


 (権限)

第二十五条 審議会は、労働大臣その他関係大臣の諮問に応じて、じん肺に関する予防、健康管理その他に関する重要事項について調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項を関係行政機関に建議することができる。


 (組織)

第二十六条 審議会は、二十人以内の委員をもつて組織する。

2 審議会には、委員のほか、専門委員を置くことができる。

3 専門委員は、議決に加わることができない。


 (委員及び専門委員)

第二十七条 委員は、関係労働者を代表する者、関係使用者を代表する者及び学識経験のある者のうちから、労働大臣が任命する。

2 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

3 専門委員は、専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、労働大臣が任命する。

4 委員及び専門委員は、非常勤とする。


 (会長)

第二十八条 審議会に、会長を置く。

2 会長は、学識経験のある者のうちから任命された委員のうちから、委員が選挙する。

3 会長は、審議会の会務を総理する。

4 会長に事故があるときは、あらかじめ第二項の規定の例により選挙された委員が会長の職務を代理する。


 (部会)

第二十九条 審議会に、その議決により部会を置くことができる。

2 部会に属させる委員及び専門委員は、会長が指名する。

3 部会に、その部会に属する委員の互選により、部会長を置く。

4 部会長は、部会の会務を総理する。


 (庶務)

第三十条 審議会の庶務は、労働省労働基準局において処理する。


 (労働省令への委任)

第三十一条 この章に規定するもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、労働省令で定める。

   第四章 政府の援助等


 (技術的援助等)

第三十二条 政府は、使用者に対して、粉じんの測定、粉じんの発散の抑制、じん肺健康診断その他じん肺に関する予防及び健康管理に関し、必要な技術的援助を行なうように努めなければならない。

2 政府は、じん肺の予防に関する技術的研究及び前項の技術的援助を行なうため必要な施設の整備を図らなければならない。


 (粉じん対策指導委員)

第三十三条 都道府県労働基準局及び鉱山保安監督部に、使用者が行なうじん肺の予防に関する措置について必要な技術的援助を行なわせるため、粉じん対策指導委員を置くことができる。

2 粉じん対策指導委員は、衛生工学に関し学識経験のある者のうちから、労働大臣又は通商産業大臣が任命する。

3 粉じん対策指導委員は、非常勤とする。


 (職業紹介及び職業訓練)

第三十四条 政府は、第二十一条第一項の勧告を受けてもなお当該事業場において粉じん作業以外の作業に常時従事することができない労働者のために、職業紹介及び職業訓練に関し適切な措置を講ずるように努めなければならない。

 (就労施設等)

第三十五条 政府は、じん肺にかかつた労働者であつた者の生活の安定を図るため、就労の機会を与えるための施設及び労働能力の回復を図るための施設の整備その他に関し適切な措置を講ずるように努めなければならない。

   第五章 雑則


 (公課の禁止)

第三十六条 租税その他の公課は、転換手当を標準として課することができない。


 (譲渡等の禁止)

第三十七条 転換手当の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。


 (時効)

第三十八条 転換手当の支払を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて消滅する。


 (じん肺診査医)

第三十九条 この法律の規定によるじん肺の診断又は審査及びこれらに関する事務を行なわせるため、労働省に中央じん肺診査医を、都道府県労働基準局に地方じん肺診査医を置く。

2 中央じん肺診査医及び地方じん肺診査医(以下この条及び次条において「じん肺診査医」という。)は、じん肺に関し相当の学識経験を有する医師のうちから、労働大臣が任命する。

3 じん肺診査医は、非常勤とすることができる。


 (じん肺診査医の権限)

第四十条 じん肺診査医は、この法律の規定による診断又は審査のため必要があるときは、その必要の限度において、粉じん作業を行なう事業場に立ち入り、労働者その他の関係者に質問し、又はエックス線写真若しくは診療録その他の物件を検査することができる。

2 前項の規定により立入検査をするじん肺診査医は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。


 (労働基準監督署長及び労働基準監督官)

第四十一条 労働基準監督署長及び労働基準監督官は、労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる。


 (労働基準監督官の権限)

第四十二条 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要な限度において、粉じん作業を行なう事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿書類を検査し、又は粉じんの測定若しくは分析を行なうことができる。

2 前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第四十三条 労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行なう。


 (報告)

第四十四条 労働大臣、都道府県労働基準局長及び労働基準監督署長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、労働省令で定めるところにより、使用者に、じん肺に関する予防及び健康管理に関する事項を報告させることができる。

   第六章 罰則

第四十五条 次の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。

 一 第六条から第九条まで、第十二条、第十三条第四項、第十四条第二項(第十六条第二項において準用する場合を含む。)、第十七条、第二十二条又は第二十三条第二項の規定に違反した者

 二 第十三条第三項の規定による命令に違反した者

 三 第四十条第一項の規定による質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

 四 第四十二条第一項の規定による質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査、測定若しくは分析を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

 五 第四十四条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者

第四十六条 前条の違反行為をした者が、法人又は人のために行為した法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者であるときは、その法人又は人に対しても同条の刑を科する。


   附 則


 (施行期日)

第一条 この法律は、昭和三十五年四月一日から施行する。


 (経過規定)

第二条 この法律の施行の日から六月間に、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者については、第七条中「その就業の際」とあるのは、「就業の日から昭和三十五年十二月三十一日までの間に」とする。ただし、この法律の施行の日の前日において、旧けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号。以下「旧法」という。)第三条第一項の規定の適用を受けていた使用者に係る場合は、この限りでない。

2 この法律の施行の際現に常時粉じん作業に従事することとなつている労働者(この法律の施行の日の前日において旧法第三条第二項又は第三項の規定の適用を受けていた労働者を除く。)に対して、この法律の施行後最初に行なうべき第八条の規定によるじん肺健康診断は、昭和三十五年十二月三十一日までに行なわなければならない。

第三条 この法律の施行前に、旧法の規定により行なつたけい肺健康診断及び心肺機能検査その他の検査は、労働省令で定めるところにより、この法律の相当規定により行なつたじん肺健康診断又は心肺機能検査その他の検査とみなす。

2 旧法第八条第一項の勧告を受けて、この法律の施行前に粉じん作業以外の作業に常時従事することとなつた労働者は、第八条、第九条及び第十二条第二項の規定の適用については、第二十一条第一項の勧告を受けて転換したものとみなす。

第四条 この法律の施行前に、旧法第四条の規定により行なつたエックス線写真及び粉じん作業についての職歴を証明する書面その他の書面の提出は、第十二条の現定により行なつたものとみなす。

2 この法律の施行前に旧法の規定によりしたけい肺にかかつているかどうかの決定及びけい肺第一症度、けい肺第二症度、けい肺第三症度又はけい肺第四症度の決定は、この法律の規定によりしたじん肺にかかつているかどうかの別の決定又は管理一、管理二、管理三若しくは管理四の決定とみなす。

3 前項の規定により、じん肺にかかつていないと決定されたものとみなされた労働者は、第十三条第一項の規定により健康管理の区分が管理一となつたものとみなす。

第五条 旧法第六条第一項又は第七条第一項の規定によりした申請で、この法律の施行前にこれらの規定による決定がなかつたものは、第十五条第一項又は第十六条第一項の規定によりしたものとみなす。

第六条 旧法第八条第一項の規定によりした勧告で、この法律の施行の際なお従前の粉じん作業に常時従事している労働者に係るものは、第二十一条第一項の規定によりしたものとみなす。

第七条 旧法第三十一条第一項の規定による不服の申立てで、この法律の施行の時までに裁決がなかつたものは、第十八条第一項の規定によりしたものとみなす。


 (国会職員法の一部改正)

第八条 国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。

  第四十一条第一項中「及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」を「、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)及びじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)」に改める。


 (国家公務員法の一部改正)

第九条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。

  附則第十六条中「及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」を「、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)及びじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)」に改める。

 (地方税法の一部改正)

第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条中第八号を次のように改め、第八号の二を削る。

  八 じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)の規定による転換手当

  第六百七十二条中第八号を次のように改め、第八号の二を削る。

  八 じん肺法の規定による転換手当


 (自衛隊法の一部改正)

第十一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。

  第百八条中「及び最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)」を「、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)及びじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)」に改める。

(内閣総理・通商産業・労働大臣署名) 

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