酪農振興法の一部を改正する法律
法律第百号(昭三四・四・一)
酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)の一部を次のように改正する。
目次を次のように改める。
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 集約酪農地域
第一節 集約酪農地域の指定(第三条―第七条)
第二節 集約酪農地域における草地の改良等(第八条・第九条)
第三節 集約酪農地域に係る集乳施設及び乳業施設(第十条―第十七条)
第二章の二 酪農経営改善計画(第十八条―第十八条の三)
第三章 生乳等の取引(第十九条―第二十四条の二)
第三章の二 国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進等に関する措置(第二十四条の三・第二十四条の四)
第四章 雑則(第二十四条の五―第二十六条の二)
第五睾 罰則(第二十七条―第二十九条)
附則
第一条中「及び生乳等の取引の公正」を「並びに生乳等の取引の公正並びに牛乳及び乳製品の消費の増進」に、「急速な普及発達」を「健全な発達」に改める。
第八条を削る。
第二章第二節の節名を次のように改める。
第二節 集約酪農地域における草地の改良等
第二章第二節中第九条を削り、第十条の見出し並びに同条第一項及び第四項から第六項までの規定中「又は市町村」を削り、同条第一項中「前条の規定により定められた計画」を「酪農振興計画」に、「その区域内にある草地」を「集約酪農地域の区域内にある草地(主として家畜の放牧又はその飼料若しくは敷料の採取の目的に供される土地をいう。以下同じ。)」に改め、同条第二項及び第三項中「又は市町村長」を削り、同条第二項中「事項を定めて」の下に「、省令で定める手続により、これを公表するとともに、」を加え、「又は政令で定める使用収益の権利」を「、使用貸借による権利又はその他の使用収益を目的とする権利」に改め、同条を第八条とし、第十一条を第九条とする。
第二章第三節の節名中「集約酪農地域における」を「集約酪農地域に係る」に改め、同節中第十二条を第十条とし、第十三条中「酪農事業施設を」を「酪農事業施設(第十三条第一項の規定による届出がなされているものを除く。)を」に改め、同条を第十一条とし、第十四条第二項中「第十二条第二項」を「第十条第二項」に改め、同条を第十二条とし、同条の次に次の一条を加える。
(指定地域における酪農事業施設の届出等)
第十三条 集約酪農地域の周辺の地域のうち、その地域内に酪農事業施設を設置すればその酪農事業施設が輸送条件から見てその集約酪農地域の区域内の生乳の生産者の相当部分から継続して生乳の供給を受けることができると認められる地域で農林大臣の指定するもの(以下「指定地域」という。)の区域内において、酪農事業施設を新たに設置しようとする者は、省令で定める手続に従い、都道府県知事に届け出なければならない。指定地域の区域内に設置されている酪農事業施設につき前条第一項の省令で定める変更をしようとする者についても、同様とする。
2 都道府県知事は、前項の規定による届出があつた場合において、当該集約酪農地域における生乳の生産者及び当該生乳の生産者から生乳を買い受けて乳業を行う者の経営の健全な発展に資するため必要があると認めるときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けて、その届出をした者に対し、その届出に係る事項に関し、当該集約酪農地域に係る酪農事業施設の配置を適正なものとするために必要な勧告をすることができる。
3 第十一条の規定は、第一項の規定による農林大臣の指定があつた場合において、その指定の際現にその指定地域の区域内において酪農事業施設を設置している者について準用する。
第十五条中「集約酪農地域」の下に「若しくは指定地域」を加え、同条を第十四条とする。
第十六条第一項中「第十二条第一項又は第十四条第一項」を「第十条第一項又は第十二条第一項」に改め、同条を第十五条とする。
第十七条を第十六条とし、第十八条を第十七条とし、第二章の次に次の一章を加える。
第二章の二 酪農経営改善計画
(酪農経営改善計画)
第十八条 次の各号の一に該当する市町村は、その区域内における酪農経営の改善を図るため、省令で定める手続により、その区域内の酪農経営農業者の意見を聞き、これを基礎として、これらの者の酪農経営の改善を図るための計画(以上「酪農経営改善計画」という。)を作成することができる。
一 その区域内における乳牛の飼養頭数及び飼養密度、その区域内の農用地の利用に関する条件並びにその区域内で生産される生乳の販売に関する条件が省令で定める基準に適合する市町村
二 その区域の全部又は一部が集約酪農地域の区域の一部である市町村
2 酪農経営改善計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 その区域内の農業者の農業経営の条件に応ずる酪農経営の改善の目標
二 当該計画の期間
三 乳牛の導入、生産、更新等に関すること。
四 牛乳の生産数量並びにその販売、処理及び加工に関すること。
五 乳牛の飼養管理の改善及び生乳の品質の向上に関すること。
六 市町村、農業協同組合又は農業協同組合連合会の行う草地改良事業に関すること。
七 前号に掲げるもののほか、草地の造成、改良及び保全、飼料作物の作付その他自給飼料の生産並びに飼料の購入に関すること。
八 その他酪農経営の改善を図るために必要な事項
九 前六号に掲げる事項を行う場合における所要資金の額及びその調達方法並びにその全部又は一部を借入金による場合にあつてはその償還方法
3 酪農経営改善計画は、当該計画における酪農経営の改善の目標が当該計画に係る地域の自然的経済的条件に適合し、かつ、当該計画に定められる改善措置がその地域内の酪農経営農業者の大部分についてその酪農経営の改善の目標に到達するための手段として適切なものでなければならない。
4 酪農経営改善計画で、その計画に係る地域の全部又は一部が集約酪農地域の区域の一部であるものについては、前項の規定によるほか、当該計画の内容がその集約酪農地域に係る酪農振興計画の内容と調和するものでなければならない。
5 市町村は、第一項の規定により酪農経営改善計画を作成する場合において、当該計画の内容として当該計画に係る地域の全部又は一部をその地区の全部又は一部とする農業協同組合又は農業協同組合連合会が行うベき事項について定めようとするときは、省令で定める手続により、当該農業協同組合又は農業協同組合連合会に協議しなければならない。
6 酪農経営改善計画については、都道府県知事は、市町村からの申出があつたときは、その作成に関し必要な助言、勧告その他の援助を行うものとする。
7 市町村は、酪農経営改善計画を作成したときは、遅滞なく、これを公示しなければならない。
(酪農経営改善計画の変更)
第十八条の二 市町村は、酪農経営改善計画の変更をするには、省令で定める手続により、その変更しようとする部分につき、その区域内の酪農経営農業者の意見を聞き、これを基礎として変更計画を作成しなければならない。
2 前条第三項から第七項までの規定は、前項の酪農経営改善計画の変更について準用する。
(草地改良事業についての規定の準用)
第十八条の三 第八条第二項から第五項までの規定は、市町村、農業協同組合又は農業協同組合連合会が、第十八条第七項の規定により公示した酪農経営改善計画に基き草地改良事業を行う場合及び酪農経営改善計画に係る市町村の区域内にある草地又はその保全若しくは利用上必要な施設につき災害復旧事業を行う場合に準用する。この場合において、同条第五項中「条例」とあるのは、「それぞれ当該市町村の条例又は当該農業協同組合若しくは農業協同組合連合会の規約」と読み替えるものとする。
第十九条の次に次の二条を加える。
(売買価格等の約定)
第十九条の二 生乳等取引契約でその存続期間が三十日をこえるものについては、当事者は、少なくとも、その生乳等取引契約の存続期間の最初の三十日につき、生乳等の売買価格及び数量並びに生乳等及びその代金の受渡の方法を約定しておかなければならない。
2 前項に規定する生乳等取引契約で、生乳等の売買価格若しくは数量又は生乳等若しくはその代金の受渡の方法がその生乳等取引契約の存続期間の一部について約定されていないものについては、当事者は、その約定されていない期間の開始する日から省令で定める一定期間前までに約定しようとする内容を明らかにして相手方に申し出て、当該期間の開始するまでに成約するように努めなければならない。
(組合等が当事者となる契約等についての勧告)
第十九条の三 農林大臣又は都道府県知事は、生乳の生産者を直接又は間接の構成員とし、その構成員の生産する生乳の販売事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会(以下この条において「組合等」という。)が、省令で定めるところにより、乳業を行う者に対し、案を示して生乳等取引契約又は生乳等取引契約に関する農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第十一号の団体協約の締結又は変更のため交渉をしたい旨の申込をし、かつ、その申込をした旨を農林大臣又は都道府県知事に申し出た場合において、生乳等の取引の公正を確保するため特に必要があると認めるときは、その乳業を行う者に対し、その生乳等取引契約又は団体協約の締結又は変更の交渉に応ずべき旨の勧告をすることができる。
第二十条の前の見出し及び同条から第二十二条までを次のように改める。
(紛争のあっせん又は調停)
第二十条 都道府県知事は、生乳等取引契約に係る紛争につき、その当事者の双方又は一方から政令で定めるところによりあっせん又は調停の申請があつた場合には、すみやかに、あっせん又は調停を行うものとする。
第二十一条 都道府県知事は、前条の調停を行う場合には、その紛争の当事者から意見を聞いて、紛争の解決に必要な調停案を作成しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の調停案を作成するため特に必要があるときは、農林大臣に対し、助言、資料の提示その他必要な協力を求めることができる。
3 農林大臣は、前項の規定による請求に係る協力をする場合において必要があるときは、中央生乳取引調停審議会の委員の中から適当な者を指名し、その者にその事務を行わせることができる。
第二十二条 都道府県知事は、前条第一項の調停案を作成したときは、これを当事者に示してその受諾を勧告するものとする。
2 当事者は、前項の規定による勧告に係る調停案を受諾したときは、協定書を作成し、これにその双方が署名押印した上、これを都道府県知事に提出しなければならない。
第二十三条を削り、第二十四条中「第二十二条第一項の協定案」を「前条第一項の規定による勧告に係る調停案」に、「あつ旋」を「調停」に、「及び協定案」を「及び調停案」に改め、同条を第二十三条とし、第三章中同条の次に次の二条を加える。
第二十四条 農林大臣は、生乳等取引契約に係る紛争でこれにつき都道府県知事に対し調停の申請があつたものについて当該都道府県知事からの申出があつた場合において、その申出に係る紛争のなりゆきによつては二以上の都道府県にわたり生乳等の取引関係に悪影響を及ぼすおそれがあるときは、中央生乳取引調停審議会の意見を聞き、その紛争の調停を農林大臣において処理すべき旨の決定をすることができる。
2 農林大臣は、前項の決定をしたときは、遅滞なく、その旨を、当該申出をした都道府県知事及び当該紛争の当事者に通知しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定による通知を受けたときは、当該紛争に係る調停を打ち切り、すみやかに、農林大臣に対し、当該紛争について処理の経過を報告するとともに、関係書類を送付しなければならない。
第二十四条の二 農林大臣は、前条第一項の決定をしたときは、遅滞なく、中央生乳取引調停審議会の委員の中から三人を調停員として指名し、当該紛争に係る調停をその指名した調停員に行わせなければならない。
2 第二十一条第一項、第二十二条及び第二十三条の規定は、前項の調停員が行う調停について準用する。この場合において、第二十三条中「都道府県知事」とあるのは、「農林大臣」と読み替えるものとする。
第三章の次に次の一章を加える。
第三章の二 国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進等に関する措置
(国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進)
第二十四条の三 国は、国内産の牛乳及び乳製品の消費の増進を図ることにより酪農の健全な発達に資するため、国内産の牛乳及び乳製品について、これを学校給食の用に供することを促進するほか、集団飲用を奨励し、流通の合理化を促進するための援助を行う等必要な措置を講ずるものとする。
(国内産の乳製品の保管)
第二十四条の四 農林大臣は、牛乳及び乳製品の需給が著しく均衡を失したため、乳業を行う者の経営が著しく困難となり、その事態を放置すれば、広範な地方にわたり生乳の取引価格が低落するおそれがあると認める場合において、乳業を行う者(乳業を行う者に乳製品の製造を委託する農業協同組合及び農業協同組合連合会を含む。)が国内産の乳製品で学校給食の用に供することができるものを計画的に保管すれば当該事態を克服して酪農の健全な発達を図ることができると認めるときは、文部大臣に協議し、かつ、酪農振興基金の意見を聞き、保管すべき乳製品の種類、数量、保管期間その他省令で定める事項を記載した乳製品の保管計画を定めることができる。
2 農林大臣は、前項の規定により乳製品の保管計画を定めたときは、省令で定める手続により、これを公表するとともに、酪農振興基金に通知しなければならない。
3 酪農振興基金は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、農林大臣に対し、第一項の乳製品の保管計画の実施のために必要な債務保証の計画を作成して農林大臣に提出しなければならない。
第四章中第二十五条の前に次の一条を加える。
(助成)
第二十四条の五 国は、毎年度、予算の範囲内において、第三条第二項の酪農振興計画の実施、酪農経営改営計画の実施、第二十四条の三の学校給食に係る措置の実施及び前条第一項の乳製品の保管計画の実施に要する経費を補助することができる。
2 国は、第三条第二項の酪農振興計画及び酪農経営改善計画を実施するため必要な資金の融通のあっせんその他必要な奨励措置を講ずるように努めるものとする。
第二十五条を次のように改める。
(報告及び検査)
第二十五条 農林大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、牛乳又は乳製品の生産、集荷、保管又は販売の事業を行う者からその業務に関し必要な報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第二十六条第一項中「(以下「審議会」という。)」を削り、同条第二項、第三項、第五項、第七項、第九項及び第十一項中「審議会」を「酪農審議会」に改め、同条第四項を次のように改める。
4 委員は、牛乳又は乳製品の生産、集荷、保管、販売又は消費に関し学識経験を有する者の中から農林大臣が任命する。
第二十六条第九項中「学識経験」を「牛乳又は乳製品の生産、集荷、保管、販売又は消費に関し学識経験」に改め、同条第十一項中「規定するものを除く外」を「定めるもののほか」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(生乳取引調停審議会)
第二十六条の二 農林省に、中央生乳取引調停審議会を置く。
2 都道府県は、条例で定めるところにより都道府県生乳取引調停審議会を置くことができる。
3 中央生乳取引調停審議会は農林大臣の、都道府県生乳取引調停審議会は都道府県知事の諮問に応じて、それぞれこの法律の規定による生乳等取引契約に係る紛争の調停に関する重要事項を調査審議する。
4 中央生乳取引調停審議会及び都道府県生乳取引調停審議会(以下「調停審議会」という。)は、委員五人以内で組織する。
5 委員は、生乳等の取引に関し学識経験を有する者の中から、中央生乳取引調停審議会にあつては農林大臣が、都道府県生乳取引調停審議会にあつては都道府県知事が任命する。
6 調停審議会に会長を置く。
7 会長は、委員の中から中央生乳取引調停審議会にあつては農林大臣が、都道府県生乳取引調停審議会にあつては都道府県知事が任命する。
8 会長は、会務を総理し、調停審議会を代表する。
9 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指定した委員がその職務を代理する。
10 委員は、非常勤とする。
11 前各項に定めるもののほか、調停審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、中央生乳取引調停審議会にあつては政令、都道府県生乳取引調停審議会にあつては都道府県知事の定めるところによる。
第二十七条第一号中「第十二条第一項」を「第十条第一項」に改め、同条第二号中「第十四条第一項」を「第十二条第一項」に改める。
第二十八条中「同条第二項」を「同項」に改める。
第二十九条中「第十一条、第十三条又は第十五条」を「第九条、第十一条(第十三条第三項において準用する場合を含む。)、第十三条第一項又は第十四条」に改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の施行の際現に改正前の第十条の規定により都道府県又は市町村が行つている草地改良事業(同条第六項の災害復旧事業を含む。)については、なお従前の例による。
3 この法律の施行前に改正前の第二十条の規定による申請があつた生乳等取引契約についての紛争に係るあっせんについては、なお従前の例による。
4 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中
「 |
酪農審議会 |
酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)により酪農振興に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
を
「 |
酪農審議会 |
酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)により酪農振興に関する重要事項を調査審議すること。 |
|
中央生乳取引調停審議会 |
酪農振興法により生乳等の取引契約に係る紛争の調停に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
に改める。
(大蔵・文部・農林・内閣総理大臣署名)