電子工業振興臨時措置法

法律第百七十一号(昭三二・六・一一)

 (目的)

第一条 この法律は、電子工業を振興することにより、産業の設備及び技術の近代化その他国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「電子機器等」とは、電子機器(電子管、半導体素子その他これらに類似する部品を使用することにより電子の運動の特性を応用する機械器具をいう。以下この項において同じ。)並びに主として電子機器に使用される部品及び材料をいう。

2 この法律で「電子工業」とは、電子機器等を製造する事業をいう。

 (電子工業振興基本計画)

第三条 通商産業大臣は、電子工業審議会の意見をきいて、次に掲げる電子機器等に係る電子工業について、電子工業振興基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

 一 わが国において製造技術が確立されていないか又はその水準が外国の水準に比して著しく低い電子機器等のうち、その製造技術に関する試験研究(試作を含む。以下同じ。)を特に促進する必要があるものであつて、政令で定めるもの

 二 わが国において工業生産が行われていないか又は生産数量が著しく少い電子機器等のうち、工業生産の開始又は生産数量の増加を特に促進する必要があるものであつて、政令で定めるもの

 三 性能又は品質の改善、生産費の低下その他生産の合理化を特に促進する必要がある電子機器等であつて、政令で定めるもの

2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 前項第一号の電子機器等の製造技術に関する試験研究の内容及びその完成の目標年度

 二 前項第二号の電子機器等の工業生産の開始の目標年度又は目標年度における生産数量

 三 前項第三号の電子機器等の目標年度における性能又は品質、生産費その他生産の合理化の目標

 四 前二号に掲げる事項を達成するために新たに設置すべき設備の種類及び数量並びにその設置に必要な資金に関する事項

 五 前各号に掲げるもののほか、生産能率の増進その他前項に規定する電子工業の振興に関する重要事項

3 前項第一号から第三号までに規定する目標年度は、電子機器等ごとに定めるものする。

4 通商産業大臣は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 (電子工業振興実施計画)

第四条 通商産業大臣は、毎年、電子工業審議会の意見をきいて、基本計画の実施を図るため必要な電子工業振興実施計画(以下「実施計画」という。)を定めなければならない。

2 前条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (計画の変更)

第五条 通商産業大臣は、電子工業における技術の著しい進歩又は生産条件その他経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、電子工業審議会の意見をきいて、基本計画又は実施計画を変更しなければならない。

2 第三条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (資金の確保)

第六条 政府は、実施計画に定める電子工業の合理化のための設備の設置に必要な資金の確保に努めるものとする。

 (共同行為の実施に関する指示)

第七条 通商産業大臣は、第三条第一項第三号の電子機器等に関して、基本計画に定める合理化の目標を達成するため特に必要があると認めるときは、その電子機器等を製造する電子工業を営む者に対し、次の事項に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。ただし、第二号の事項については、第一号の事項に係る共同行為を実施することが著しく困難であると認められる場合に限る。

 一 品種の制限

 二 品種別の生産数量の制限

 三 技術の制限

 四 部品又は原材料の購入方法

2 通商産業大臣は、前項第一号の事項に係る共同行為をもつてしては、第三条第一項第三号の電子機器等のうち特定のものの規格の制限をすることが困難である場合において、特に必要があると認めるときは、その電子機器等を部品又は材料として使用する電子工業(第三条第一項第三号の電子機器等を製造するものを除く。以下この項において同じ。)を営む者に対し、その使用する電子機器等の規格の制限に係る共同行為を実施すべきことを指示することができる。ただし、その電子機器等を部品又は材料として使用する電子工業の合理化に資すると認められないときは、この限りでない。

3 前二項の規定による指示は、共同行為をすべき期間及び共同行為の内容を定めて、告示により行う。

 (共同行為の内容)

第八条 前条第一項又は第二項の共同行為の内容は、次の各号に適合するものでなければならない。

 一 基本計画に定める合理化の目標を達成するため必要な程度をこえないこと。

 二 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。

 三 不当に差別的でないこと。

 (共同行為の指示の変更等)

第九条 通商産業大臣は、第七条第一項又は第二項の規定による指示に係る共同行為の内容が前条各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その指示を変更し、又は取り消さなければならない。

 (共同行為の届出)

第十条 第七条第一項又は第二項の規定による指示(前条の規定による変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)を受けた者は、その指示に従い共同行為をしたときは、遅滞なく、通商産業省令で定める事項を通商産業大臣に届け出なければならない。これを変更し、又は廃止したときも、同様とする。

 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第十一条 私的独占の禁示及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、第七条第一項又は第二項の規定による指示に従つてする共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。

 (公正取引委員会との関係)

第十二条 通商産業大臣は、第七条第一項又は第二項の規定による指示をしようとするときは、公正取引委員会に協議しなければならない。

2 通商産業大臣は、第九条の規定による処分をしたとき、又は第十条の規定による届出を受理したときは、遅滞なく、その旨を公正取引委員会に通知しなければならない。

 (検査設備)

第十三条 通商産業大臣は、電子工業審議会の意見をきいて、第三条第一項第二号又は第三号の電子機器等について、基本計画を達成するためにはその製造工程において特に品質管理を励行させる必要があると認めるときは、当該電子機器等を製造する電子工業を営む者が備えるべき検査設備の種類及びその検査設備を維持すべき基準を定めて、公表するものとする。

 (電子工業審議会)

第十四条 通商産業省に、電子工業審議会を置く。

第十五条 電子工業審議会(以下「審議会」という。)は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、通商産業大臣の諮問に応じ、電子工業の振興に関する重要事項を調査審議する。

第十六条 審議会は、委員四十人以内で組織する。

2 専門の事項を調査させるため、審議会に、専門委員を置くことができる。

第十七条 委員及び専門委員は、関係行政機関の職員及び電子工業に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。

2 通商産業大臣は、委員のうち一人を会長として指名し、会務を総理させる。

第十八条 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、一年とする。

第十九条 委員及び専門委員は、非常勤とする。

第二十条 審議会に、部会を置くことができる。

2 部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当る。

3 部会に属すべき委員は、会長が指名する。

4 審議会は、その定めるところにより、部会の決議をもつて審議会の決議とすることができる。

第二十一条 第十四条から前条までに定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。

 (報告の徴収)

第二十二条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、電子工業を営む者に対し、その業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる。

 (罰則)

第二十三条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三万円以下の罰金に処する。

第二十四条 第十条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一万円以下の罰金に処する。

第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律は、施行の日から七年以内に廃止するものとする。

3 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十五条第一項の表中

機械工業審議会

機械工業の振興に関する重要事項を調査審議すること

 を

機械工業審議会

機械工業(電子工業を除く。)の振興に関する重要事項を調査審議すること。

電子工業審議会

電子工業の振興に関する重要事項を調査審議すること

 に改める。

4 機械工業振興臨時措置法(昭和三十一年法律第百五十四号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「機械器具」の下に「(電子機器を除く。)」を加える。

  第十四条中「機械工業の」を「機械工業(電子工業を除く。以下同じ。)の」に改める。

(内閣総理・通商産業大臣署名) 

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