南方同胞援護会法
法律第百六十号(昭三二・六・一)
目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 役員及び職員(第九条―第十五条)
第三章 評議員会(第十六条―第十九条)
第四章 業務(第二十条)
第五章 会計(第二十一条―第二十四条)
第六章 監督及び助成(第二十五条―第二十八条)
第七章 罰則(第二十九条―第三十一条)
第八章 雑則(第三十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 南方同胞援護会は、次に掲げる地域(以下「南方地域」という。)に関する諸問題の解決の促進を図るため必要な調査研究及び啓蒙宣伝を行うとともに、同地域に居住する日本国民に対し援護を行い、もつてその福祉の増進を図ることを目的とする。
一 硫黄鳥島及び伊平屋島並びに北緯二十七度以南の南西諸島(大東諸島を含む。)
二 孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島をいう。)
三 沖の鳥島及び南鳥島
(法人格)
第二条 南方同胞援護会(以下「援護会」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 援護会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 援護会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(定款)
第四条 援護会は、定款で次の各号に掲げる事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 評議員会及び評議員に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 資産に関する事項
八 会計に関する事項
2 定款の変更は、内閣総理大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第五条 援護会は、政令の定めるところにより、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 援護会でない者は、南方同胞援護会という名称又はこれに類似する名称を用いてはならない。
(解散)
第七条 援護会の解散及びその解散した場合における残余財産の処置については、別に法律で定める。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、援護会に準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第九条 援護会に、役員として、会長一人、副会長一人、専務理事一人、理事十五人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十条 会長は、援護会を代表し、その業務を総理する。
2 副会長は、定款で定めるところにより、援護会を代表し、会長を補佐して援護会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行う。
3 専務理事は、定款で定めるところにより、援護会を代表し、会長及び副会長を補佐して援護会の業務を掌理し、会長及び副会長にともに事故があるときは会長の職務を代理し、会長及び副会長がともに欠員のときは会長の職務を行う。
4 理事は、会長、副会長及び専務理事を補佐して援護会の業務を掌理し、会長、副会長及び専務理事にともに事故があるときは会長の職務を代理し、会長、副会長及び専務理事がともに欠員のときは会長の職務を行う。
5 監事は、援護会の業務を監査する。
(役員の任命)
第十一条 会長及び監事は、内閣総理大臣が任命する。
2 副会長及び専務理事は、会長が内閣総理大臣の同意を得て任命する。
3 理事は、会長が評議員会の同意を得て任命する。
(役員の任期)
第十二条 役員の任期は、二年とする。
2 役員は、再任されることができる。
3 役員が欠員となつたときは、遅滞なく、補欠の役員を任命しなければならない。補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
(代表権の制限)
第十三条 援護会と会長、副会長、専務理事又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合において、援護会を代表する者がないときは、監事が援護会を代表する。
(民法の準用)
第十四条 民法第五十四条(理事の代表権の制限)の規定は、援護会に準用する。
(役員及び職員の地位)
第十五条 援護会の役員及び職員(常時勤務して一定の報酬を受ける職員であつて、二月以内の期間を定めて雇用される者以外の者をいう。)は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 評議員会
(評議員会)
第十六条 援護会に評議員会を置く。
2 評議員会は、三十人以上四十人以内の評議員をもつて組織する。
(評議員会の権限)
第十七条 次に掲げる事項は、評議員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 収支予算
三 事業計画
四 収支決算
五 その他定款で定める事項
(評議員の任命及び任期)
第十八条 評議員は、援護会の目的を達成するために必要な学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
2 第十二条の規定は、評議員に準用する。
(評議員会の会議)
第十九条 評議員会は、会長が招集する。
2 会長は、評議員の三分の一以上から会議に付議すべき事項を示して評議員会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から三十日以内にこれを招集しなければならない。
3 評議員会に議長を置き、評議員の互選で定める。
4 評議員会は、評議員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。
5 評議員会の議事は、出席評議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
6 前項の場合において、議長は、評議員として議決に加わることができない。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十条 援護会は、第一条の目的を達成するため、次の各号に掲げる業務を行う。
一 南方地域に関する諸問題について調査研究を行うこと。
二 南方地域に関する諸問題について定期刊行物その他の印刷物の発行、講演会、講習会等の開催その他必要な啓蒙宣伝を行うこと。
三 南方地域に居住する日本国民に対し援護を行うこと。
四 前三号に掲げる業務に関し協力する者に対し、必要な資金を貸し付け、又は助成を行うこと。
五 その他第一条の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
第五章 会計
(事業年度)
第二十一条 援護会の事業年度は、毎年四月一日に始り、翌年三月三十一日に終る。
2 援護会は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。
(事業計画及び予算)
第二十二条 援護会は、毎事業年度、事業計画並びに収入及び支出の予算を作成し、事業年度開始前に内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これに重要な変更を加えようとするときも、また同様とする。
(決算)
第二十三条 会長は、毎事業年度、決算報告書を作成し、監事の意見をつけて、決算完結後一月以内に評議員会に提出しなければならない。
2 援護会は、前項の決算報告書に評議員会の議決書をつけて、決算完結後二月以内にこれを内閣総理大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(借入金)
第二十四条 援護会は、内閣総理大臣の定める場合を除くほか、借入金をするについては、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
第六章 監督及び助成
(報告及び検査)
第二十五条 内閣総理大臣は、法令、法令に基いてする行政庁の処分及び定款が遵守されているかどうかを確かめるため必要があると認めるときは、援護会からその業務又は会計の状況に関し、報告を徴し、又は当該職員をして援護会の事務所その他の場所に立ち入り、業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(監督処分)
第二十六条 内閣総理大臣は、援護会が、その業務に関し、法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反したときは、援護会に対し、必要な命令をすることができる。
(役員の解任)
第二十七条 内閣総理大臣は、役員が次の各号の一に該当するに至つたときは、これを解任し、又は援護会に対しその役員の解任を勧告することができる。
一 この法律、この法律に基く命令、前条の規定に基く内閣総理大臣の監督上の命令又は定款に違反したとき。
二 刑事事件により有罪の宣告を受けたとき。
三 禁治産、準禁治産又は破産の宣告を受けたとき。
四 心身の故障により職務を執ることができないとき、その他前各号に掲げるもののほか、役員として不適当と認められるとき。
(助成)
第二十八条 国は、必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、援護会に対し、補助金を支出し、又は通常の条件よりも援護会に有利な条件で、貸付金を支出し、若しくはその他の財産を貸し付けることができる。ただし、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)の規定の適用を妨げない。
2 国は、援護会が前項の規定による助成を受けた場合においてその助成の条件に違反したときは、交付した補助金若しくは貸付金又は貸し付けたその他の財産の全部又は一部の返還を命ずることができる。
第七章 罰則
(罰則)
第二十九条 第二十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。
2 援護会の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、援護会の業務又は財産に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、援護会に対しても同項の刑を科する。
第三十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした援護会の役員を一万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により内閣総理大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の規定に違反して登記をすることを怠つたとき。
三 第二十条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第二十六条の規定による内閣総理大臣の命令に違反したとき。
第三十一条 第六条の規定に違反して南方同胞援護会という名称又はこれに類似する名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。
第八章 雑則
(政令への委任)
第三十二条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十二年九月一日から施行する。ただし、附則第二項から附則第六項までの規定は、公布の日から施行する。
(設立の手続)
2 内閣総理大臣は、援護会の設立前に、援護会の会長又は監事となるべき者を指名する。
3 前項の規定により指名された会長又は監事となるべき者は、援護会の成立の日において、この法律の規定により、それぞれ援護会の会長又は監事に任命されたものとする。
4 内閣総理大臣は、設立委員を命じて、援護会の設立に関する事務を処理させる。
5 設立委員は、定款並びに最初の事業年度の事業計画及び収支予算を作成し、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。
6 前項の認可があつたときは、設立委員は、遅滞なく、その事務を附則第二項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
7 附則第二項の規定により指名された会長となるべき者は、前項の事務の引継を受けたときは、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
8 援護会は、前項の規定による設立の登記をすることによつて成立する。
(援護会の最初の事業年度)
9 援護会の最初の事業年度は、第二十一条第一項の規定にかかわらず、昭和三十二年九月一日に始まり、昭和三十三年三月三十一日に終るものとする。
(財団法人の解散等)
10 財団法人南方同胞援護会は、援護会成立の日に解散し、その権利義務は、援護会が承継する。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
11 前項の財団法人南方同胞援護会の解散の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
(他の法律の一部改正)
12 南方連絡事務局設置法(昭和二十七年法律第二百十八号)の一部を次のように改正する。
第二条に次の一号を加える。
六 南方同胞援護会法(昭和三十二年法律第百六十号)の施行に関すること。
13 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「日本学校給食会」の下に「、南方同胞援護会」を、「日本学校給食会法」の下に「、南方同胞援護会法」を加える。
14 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条中第六号ノ九ノ二の次に次の一号を加える。
六ノ九ノ三 南方同胞援護会ガ其ノ業務ニ関シテ発スル証書、帳簿
15 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「損害保険料率算出団体」の下に「、南方同胞援護会」を加える。
16 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号中「損害保険料率算出団体」の下に「、南方同胞援護会」を加える。
17 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「損害保険料率算出団体」の下に「、南方同胞援護会」を加える。
(内閣総理・法務・大蔵大臣署名)