放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
法律第百六十七号(昭三二・六・一〇)
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 使用及び販売の業の許可(第三条―第十二条)
第三章 使用者、販売業者等の義務(第十三条―第三十三条)
第四章 放射線取扱主任者(第三十四条―第三十八条)
第五章 放射線審議会(第三十九条―第四十一条)
第六章 雑則(第四十二条―第五十条)
第七章 罰則(第五十一条―第五十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の精神にのつとり、放射性同位元素の使用、販売その他の取扱並びに放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置の使用を規制することにより、これらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「放射線」とは、原子力基本法第三条第五号に規定する放射線をいう。
2 この法律において「放射性同位元素」とは、りん三十二、コバルト六十等放射線を放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物で政令で定めるものをいう。
3 この法律において「放射性同位元素装備機器」とは、放射線照射装置等放射性同位元素を装備している機器で政令で定めるものをいう。
4 この法律において「放射線発生装置」とは、サイクロトロン、シンクロトロン等荷電粒子を加速することにより放射線を発生させる装置で政令で定めるものをいう。
第二章 使用及び販売の業の許可
(使用の許可)
第三条 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用しようとする者は、政令で定めるところにより、科学技術庁長官の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を科学技術庁長官に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 放射性同位元素の種類及び数量又は放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の種類、台数及び性能
三 使用の目的及び方法
四 使用の場所
五 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用し、又は設置する施設(以下単に「使用施設」という。)の位置、構造及び設備
六 放射性同位元素を貯蔵する施設(以下単に「貯蔵施設」という。)の位置、構造、設備及び貯蔵能力
七 放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物を廃棄する施設(以下単に「廃棄施設」という。)の位置、構造及び設備
(販売の業の許可)
第四条 放射性同位元素を業として販売しようとする者は、政令で定めるところにより、科学技術庁長官の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を科学技術庁長官に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 放射性同位元素の種類
三 販売所の所在地
四 放射性同位元素の詰替をする施設(以下単に「詰替施設」という。)の位置、構造及び設備
五 貯蔵施設の位置、構造、設備及び貯蔵能力
六 廃棄施設の位置、構造及び設備
(欠格条項)
第五条 次の各号の一に該当する者には、第三条第一項又は前条第一項の許可を与えない。
一 第二十六条の規定により許可を取り消され、取消の日から二年を経過していない者
二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、二年を経過していない者
三 禁治産者
四 白痴者又は精神病者
五 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前各号の一に該当する者のあるもの
(使用の許可の基準)
第六条 科学技術庁長官は、第三条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 使用施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
二 貯蔵施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
三 廃棄施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
四 その他放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置による放射線障害の発生するおそれがないこと。
(販売の業の許可の基準)
第七条 科学技術庁長官は、第四条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 詰替施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
二 貯蔵施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
三 廃棄施設の位置、構造及び設備が政令で定める技術上の基準に適合するものであること。
四 その他放射性同位元素による放射線障害の発生するおそれがないこと。
(許可の条件)
第八条 第三条第一項又は第四条第一項の許可には、条件を附することができる。
2 前項の条件は、放射線障害の発生を防止するため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(許可証)
第九条 科学技術庁長官は、第三条第一項又は第四条第一項の許可をしたときは、許可証を交付する。
2 第三条第一項の許可をした場合において交付する許可証には、次の事項を記載しなければならない。
一 許可の年月日及び許可の番号
二 氏名又は名称及び住所
三 使用の目的
四 放射性同位元素の種類及び数量又は放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の種類、台数及び性能
五 使用の場所
六 貯蔵施設の貯蔵能力
七 許可の条件
3 第四条第一項の許可をした場合において交付する許可証には、次の事項を記載しなければならない。
一 許可の年月日及び許可の番号
二 氏名又は名称及び住所
三 放射性同位元素の種類
四 販売所の所在地
五 貯蔵施設の貯蔵能力
六 許可の条件
4 許可証は、他人に譲り渡し、又は貸与してはならない。
(使用施設等の変更)
第十条 第三条第一項の許可を受けた者(以下「使用者」という。)は、同条第二項第一号に掲げる事項を変更したときは、変更の日から三十日以内に、許可証を添えてその旨を科学技術庁長官に届け出て、許可証の訂正を受けなければならない。
2 使用者は、第三条第二項第二号から第七号までに掲げる事項を変更しようとするときは、政令で定めるところにより、科学技術庁長官の許可を受けなければならない。
3 第六条及び第八条の規定は、前項の許可に準用する。
4 第二項の規定により変更の許可を受けた使用者で許可証に記載された事項に変更を生じたものは、その許可を受けた日から三十日以内に、許可証を科学技術庁長官に提出し、訂正を受けなければならない。
(詰替施設等の変更)
第十一条 第四条第一項の許可を受けた者(以下「販売業者」という。)は、同条第二項第一号に掲げる事項を変更したときは、変更の日から三十日以内に、許可証を添えてその旨を科学技術庁長官に届け出て、許可証の訂正を受けなければならない。
2 販売業者は、第四条第二項第二号から第六号までに掲げる事項を変更しようとするときは、政令で定めるところにより、科学技術庁長官の許可を受けなければならない。
3 第七条及び第八条の規定は、前項の許可に準用する。
4 第二項の規定により変更の許可を受けた販売業者で許可証に記載された事項に変更を生じたものは、その許可を受けた日から三十日以内に、許可証を科学技術庁長官に提出し、訂正を受けなければならない。
(許可証の再交付)
第十二条 使用者及び販売業者は、許可証をよごし、損じ、又は失つたときは、総理府令で定めるところにより、科学技術庁長官に申請し、その再交付を受けることができる。
第三章 使用者、販売業者等の義務
(使用施設等の基準適合義務)
第十三条 使用者は、その使用施設、貯蔵施設及び廃棄施設の位置、構造及び設備を第六条第一号から第三号までの技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
2 販売業者は、その詰替施設、貯蔵施設及び廃棄施設の位置、構造及び設備を第七条第一号から第三号までの技術上の基準に適合するように維持しなければならない。
(使用施設等の基準適合命令)
第十四条 科学技術庁長官は、使用施設、貯蔵施設又は廃棄施設の位置、構造又は設備が第六条第一号、第二号又は第三号の技術上の基準に適合していないと認めるときは、その技術上の基準に適合させるため、使用者に対し、使用施設、貯蔵施設又は廃棄施設の移転、修理又は改造を命ずることができる。
2 科学技術庁長官は、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設の位置、構造又は設備が第七条第一号、第二号又は第三号の技術上の基準に適合していないと認めるときは、その技術上の基準に適合させるため、販売業者に対し、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設の移転、修理又は改造を命ずることができる。
(使用の基準)
第十五条 使用者は、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する場合においては、総理府令で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
(詰替の基準)
第十六条 使用者及び販売業者(第三十条第二号から第四号までに規定する者を含む。以下次条から第十九条までにおいて同じ。)は、放射性同位元素の詰替をする場合においては、総理府令で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
(保管の基準)
第十七条 使用者及び販売業者は、放射性同位元素を保管する場合においては、総理府令で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
(運搬の基準)
第十八条 使用者及び販売業者並びにこれらの者から運搬を委託された者は、放射性同位元素を運搬する場合(船舶又は航空機により運搬する場合を除く。)においては、総理府令(鉄道、軌道、索道、無軌条電車、自動車及び軽車両による運搬については、運輸省令)で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
(廃棄の基準)
第十九条 使用者及び販売業者は、放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物を廃棄する場合においては、総理府令で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
(測定)
第二十条 使用者及び販売業者は、総理府令で定めるところにより、放射線障害の発生するおそれのある場所について、放射線量率、粒子束密度及び放射性同位元素による汚染の状況を測定してその結果を記録し、かつ、これを保存しなければならない。
2 使用者及び販売業者は、総理府令で定めるところにより、使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入つた者について、その者の受けた放射線量、粒子束密度の時間積分量及び放射性同位元素による汚染の状況を測定してその結果を記録し、かつ、これを保存しなければならない。
(放射線障害予防規定)
第二十一条 使用者及び販売業者は、放射線障害の発生を防止するため、総理府令で定めるところにより、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の使用又は放射性同位元素の販売の業を開始する前に、放射線障害予防規定を作成し、科学技術庁長官に届け出なければならない。
2 科学技術庁長官は、放射線障害の発生を防止するために必要があると認めるときは、使用者又は販売業者に対し、放射線障害予防規定の変更を命ずることができる。
3 使用者及び販売業者は、放射線障害予防規定を変更したときは、変更の日から三十日以内に、科学技術庁長官に届け出なければならない。
(教育訓練)
第二十二条 使用者及び販売業者は、使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入る者に対し、放射線障害予防規定の周知その他放射線障害の発生を防止するために必要な教育及び訓練を施さなければならない。
(放射線障害者の発見)
第二十三条 使用者及び販売業者は、総理府令で定めるところにより、使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入る者に対し、放射線障害が発生しているかどうかを発見するために必要な措置を講じなければならない。
(放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者に対する措置)
第二十四条 使用者及び販売業者は、総理府令で定めるところにより、放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者に対し、使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設への立入の制限その他保健上必要な措置を講じなければならない。
(記帳義務)
第二十五条 使用者は、総理府令で定めるところにより、帳簿を備え、次の事項を記載しなければならない。
一 放射性同位元素の使用、保管又は廃棄に関する事項
二 放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置の使用に関する事項
三 放射性同位元素によつて汚染された物の廃棄に関する事項
四 その他放射線障害の防止に関し必要な事項
2 販売業者は、総理府令で定めるところにより、帳簿を備え、放射性同位元素の販売、保管又は廃棄に関する事項並びに前項第三号及び第四号に掲げる事項を記載しなければならない。
3 前二項の帳簿は、総理府令で定めるところにより、保存しなければならない。
(許可の取消等)
第二十六条 科学技術庁長官は、使用者又は販売業者が次の各号の一に該当する場合は、第三条第一項若しくは第四条第一項の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の使用若しくは放射性同位元素の販売の停止を命ずることができる。
一 第五条第二号から第五号までの一に該当するに至つた場合
二 第八条第一項の条件に違反した場合
三 第十条第二項又は第十一条第二項の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでした場合
四 第十四条の規定による命令に違反した場合
五 第十五条、第十六条、第十七条、第十八条又は第十九条の技術上の基準に違反した場合
六 第二十条、第二十三条、第二十四条又は前条の規定に違反した場合
七 第二十九条第一号、第二号若しくは第三号又は第三十条第一号の規定に違反した場合
八 第三十四条第一項又は第三十七条第一項及び第二項の規定に違反した場合
九 第三十八条の規定による命令に違反した場合
(使用の廃止等の届出)
第二十七条 前条に規定する場合を除き、使用者が放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置のすべての使用を廃止したとき、又は販売業者がその業を廃止したときは、その使用者又は販売業者は、総理府令で定めるところにより、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出をしたときは、第三条第一項又は第四条第一項の許可は、その効力を失う。
3 使用者若しくは販売業者が死亡し、又は法人である使用者若しくは販売業者が解散したときは、その相続人若しくは相続人に代つて相続財産を管理する者又は清算人、破算管財人若しくは合併後存続し、若しくは合併により設立された法人の代表者は、総理府令で定めるところにより、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。
(許可の取消、使用の廃止等に伴う措置)
第二十八条 第二十六条の規定により許可を取り消された使用者若しくは販売業者又は前条第一項若しくは第三項の規定により届出をしなければならない者は、総理府令で定めるところにより、その所有する放射性同位元素を使用者若しくは販売業者に譲り渡し、放射性同位元素による汚染を除去し、又は放射性同位元素若しくは放射性同位元素によつて汚染された物を廃棄する等の措置を講じなければならない。
2 前項に規定する者は、許可を取り消された日若しくは放射性同位元素の使用を廃止し、若しくは販売の業を廃止した日又は使用者若しくは販売業者が死亡し、若しくは法人である使用者若しくは販売業者が解散した日からそれぞれ三十日以内に、同項の規定により講じた措置を科学技術庁長官に報告しなければならない。
3 科学技術庁長官は、第一項に規定する者の講じた措置が適切でないと認めるときは、同項に規定する者に対し、放射線障害を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができる。
(譲渡及び譲受の制限)
第二十九条 放射性同位元素は、次の各号の一に該当する場合のほか、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
一 使用者又は販売業者がその許可証に記載された種類の放射性同位元素を他の使用者又は販売業者に譲り渡す場合
二 使用者又は販売業者がその許可証に記載された種類の放射性同位元素をその許可証に記載された貯蔵施設の貯蔵能力の範囲内で譲り受ける場合
三 販売業者がその許可証に記載された種類の放射性同位元素を輸出する場合
四 第二十六条の規定により許可を取り消された使用者又は販売業者がその許可を取り消された日に所有していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、使用者又は販売業者に譲り渡す場合
五 第二十七条第一項の規定により届出をしなければならない者が放射性同位元素の使用又は販売の業を廃止した日に所有していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、使用者又は販売業者に譲り渡す場合
六 第二十七条第三項の規定により届出をしなければならない者が、使用者若しくは販売業者が死亡し、又は法人である使用者若しくは販売業者が解散した日にその使用者又は販売業者が所有していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、使用者又は販売業者に譲り渡す場合
(所持の制限)
第三十条 放射性同位元素は、法令に基く場合は次の各号の一に該当する場合のほか、所持してはならない。
一 使用者又は販売業者がその許可証に記載された種類の放射性同位元素をその許可証に記載された貯蔵施設の貯蔵能力の範囲内で所持する場合
二 第二十六条の規定により許可を取り消された使用者又は販売業者がその許可を取り消された日に所持していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、所持する場合
三 第二十七条第一項の規定により届出をしなければならない者が放射性同位元素の使用又は販売の業を廃止した日に所持していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、所持する場合
四 第二十七条第三項の規定により届出をしなければならない者が、使用者若しくは販売業者が死亡し、又は法人である使用者若しくは販売業者が解散した日に使用者又は販売業者が所持していた放射性同位元素を、総理府令で定めるところにより、所持する場合
五 前各号に掲げる者から放射性同位元素の運搬を委託された者がその委託を受けた放射性同位元素を所持する場合
六 前各号に掲げる者の従業者がその職務上放射性同位元素を所持する場合
(取扱の制限)
第三十一条 何人も、十八歳未満の者又は精神障害者(精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第三条に規定する精神障害者をいう。)に放射性同位元素又は放射性同位元素によつて汚染された物の取扱をさせてはならない。
2 何人も、前項に掲げる者に放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用させてはならない。
3 前二項の規定は、保健婦助産婦看護婦法(昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた准看護婦その他総理府令で定める者については、適用しない。
(事故届)
第三十二条 使用者及び販売業者(第三十条第二号から第四号までに規定する者を含む。以下次条において同じ。)並びにこれらの者から運搬を委託された者は、その所持する放射性同位元素について盗取、所在不明その他の事故が生じたときは、遅滞なく、その旨を警察官に届け出なければならない。
(危険時の措置)
第三十三条 使用者及び販売業者並びにこれらの者から運搬を委託された者は、その所持する放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置に関し、地震、火災その他の災害が起つたことにより、放射線障害が発生するおそれがある場合又は放射線障害が発生した場合においては、直ちに、総理府令で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。
2 前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を警察官に通報しなければならない。
3 科学技術庁長官は、第一項の場合において、放射線障害を防止するため緊急の必要があると認めるときは、同項に規定する者に対し、放射性同位元素の所在場所の変更、放射性同位元素による汚染の除去その他放射線障害を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができる。
第四章 放射線取扱主任者
(放射線取扱主任者)
第三十四条 使用者及び販売業者は、放射線障害の発生の防止について監督を行わせるため、総理府令で定めるところにより、次条第一項の放射線取扱主任者免状を有する者のうちから、放射線取扱主任者を選任しなければならない。この場合において、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を診療のために用いるときは医師を、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を薬事法(昭和二十三年法律第百九十七号)第二条に規定する医薬品、用具又は化粧品の製造所において使用するときは薬剤師を、それぞれ放射線取扱主任者として選任することができる。
2 使用者及び販売業者は、放射線取扱主任者を選任したときは、選任した日から三十日以内に、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
(放射線取扱主任者免状)
第三十五条 科学技術庁長官は、次の各号の一に該当する者に対し、放射線取扱主任者免状を交付する。
一 科学技術庁長官の行う放射線取扱主任者試験に合格した者
二 科学技術庁長官が、政令で定めるところにより、放射線に関し前号に掲げる者と同等以上の学識及び経験を有すると認める者
2 科学技術庁長官は、次の各号の一に該当する者に対しては、放射線取扱主任者免状の交付を行わないことができる。
一 次項の規定により放射線取扱主任者免状の返納を命ぜられ、その日から一年を経過していない者
二 この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることのなくなつた後、二年を経過していない者
3 科学技術庁長官は、放射線取扱主任者免状の交付を受けた者がこの法律又はこの法律に基く命令の規定に違反したときは、その放射線取扱主任者免状の返納を命ずることができる。
4 第一項第一号の放射線取扱主任者試験の課目、受験手続その他放射線取扱主任者試験の実施細目並びに放射線取扱主任者免状の交付及び返納に関する手続は、総理府令で定める。
(放射線取扱主任者の義務等)
第三十六条 放射線取扱主任者は、誠実にその職務を遂行しなければならない。
2 使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入る者は、放射線取扱主任者がこの法律若しくはこの法律に基く命令又は放射線障害予防規定の実施を確保するためにする指示に従わなければならない。
(放射線取扱主任者の代理者)
第三十七条 使用者及び販売業者は、放射線取扱主任者が旅行、疾病その他の事故によりその職務を行うことができない場合において、その職務を行うことができない期間中放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置を使用し、又は放射性同位元素の詰替をしようとするときは、その職務を代行させるため、総理府令で定めるところにより、放射線取扱主任者の代理者を選任しなければならない。
2 第三十四条第一項の規定は、放射線取扱主任者の代理者の資格に準用する。
3 使用者及び販売業者は、放射線取扱主任者の代理者を選任したときは、総理府令で定める場合を除き、選任した日から三十日以内に、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
4 放射線取扱主任者の代理者は、放射線取扱主任者の職務を代行する場合は、この法律及びこの法律に基く命令の規定の適用については、これを放射線取扱主任者とみなす。
(解任命令)
第三十八条 科学技術庁長官は、放射線取扱主任者又はその代理者が、この法律又はこの法律に基く命令の規定に違反したときは、使用者又は販売業者に対し、放射線取扱主任者又はその代理者の解任を命ずることができる。
第五章 放射線審議会
(放射線審議会)
第三十九条 科学技術庁に、放射線審議会を置く。
2 放射線審議会は、科学技術庁長官の諮問に応じ、放射線障害の防止に関する重要事項について審議する。
(放射線審議会の委員)
第四十条 放射線審議会は、委員三十人以内で組織する。
2 放射線審議会の委員は、関係行政機関の職員及び放射線障害の防止に関し学識及び経験のある者のうちから、科学技術庁長官が任命する。
3 放射線審議会の委員は、非常勤とする。
4 放射線審議会の委員(関係行政機関の職員のうちから任命された委員を除く。以下この項において同じ。)の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(政令への委任)
第四十一条 前二条に規定するもののほか、放射線審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第六章 雑則
(報告徴収)
第四十二条 科学技術庁長官は、放射線障害を防止するため必要があると認めるときは、使用者又は販売業者に対し、報告を求めることができる。
(放射線検査官)
第四十三条 科学技術庁に、放射線検査官を置く。
2 科学技術庁長官は、この法律又はこの法律に基く命令の実施のため必要があると認めるときは、放射線検査官に、使用者又は販売業者の事務所、使用施設、詰替施設、貯蔵施設又は廃棄施設に立ち入り、その者の帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、又は検査のため必要な最小限度において、放射性同位元素若しくは放射性同位元素によつて汚染された物を収去させることができる。
3 放射線検査官は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4 放射線検査官の定数及び資格に関し必要な事項は、政令で定める。
5 第二項に規定する権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(聴聞)
第四十四条 科学技術庁長官は、第二十六条又は第三十五条第三項の規定による処分をする場合においては、当該処分に係る者に対して、相当の期間を置いて予告をした上、公開による聴聞を行わなければならない。
2 前項の予告においては、期日、場所及び事案の内容を示さなければならない。
3 聴聞に際しては、当該処分に係る者及び利害関係人に対して、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(訴願)
第四十五条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による科学技術庁長官の処分に対して不服のある者は、処分の日から三十日以内に、内閣総理大臣に訴願することができる。
(協議)
第四十六条 科学技術庁長官は、第三条第一項、第四条第一項、第十条第二項若しくは第十一条第二項の許可をし、第十四条の規定により命令を発し、又は第二十六条の規定による処分をする場合においては、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
2 前項の協議を受けた関係行政機関の長は、当該協議を受けた事項に関し特に調査する必要があると認める場合においては、使用者(第三条第一項の許可の申請者を含む。)若しくは販売業者(第四条第一項の許可の申請者を含む。)から必要な報告を徴し、又はその職員に、使用者若しくは販売業者の事務所、使用施設、詰替施設、貯蔵施設若しくは廃棄施設に立ち入り、その者の帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させることができる。
3 第四十三条第三項及び第五項の規定は、前項の規定による立入検査に準用する。
4 内閣総理大臣は、第二十条、第二十一条第一項、第二十三条及び第二十四条の総理府令を制定する場合においては、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
(国家公安委員会に対する連絡)
第四十七条 科学技術庁長官は、第三条第一項、第四条第一項、第十条第二項若しくは第十一条第二項の許可をし、第二十六条の規定により許可を取り消し、又は第二十七条第一項若しくは第三項の規定により届出を受理したときは、遅滞なく、その旨を国家公安委員会に連絡しなければならない。
(労働基準法との関係等)
第四十八条 この法律の規定は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)及びこれに基く命令によつて、労働基準監督官が労働者に対する放射線障害の防止についてその権限を行使することを妨げるものと解してはならない。
2 労働大臣は、労働者に対する放射線障害を防止するために特に必要があると認める場合においては、科学技術庁長官に勧告することができる。
(手数料の納付)
第四十九条 第三条第一項、第四条第一項、第十条第二項若しくは第十一条第二項の許可、第三十五条第一項第一号の放射線取扱主任者試験又は放射線取扱主任者免状の再交付を受けようとする者は、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。
(国に対する適用)
第五十条 この法律の規定は、第四十五条及び前条並びに次章の規定を除き、国に適用があるものとする。この場合において、「許可」とあるのは、「承認」とする。
第七章 罰則
第五十一条 放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置をみだりに操作し、又はその他不当な方法で、放射線を発散させて人の生命又は身体に危険を生ぜしめた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の罪を犯しよつて人を死亡させた者は、二年以上の有期懲役に処する。
3 前二項の規定にあたる行為が刑法(明治四十年法律第四十五号)の罪に触れるときは、その行為者は、同法の罪と比較して、重きに従つて処断する。
第五十二条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第三条第一項の許可を受けないで放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用した者
二 第四条第一項の許可を受けないで放射性同位元素を業として販売した者
三 第二十六条の規定による使用又は販売の停止の命令に違反した者
第五十三条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第九条第四項の規定に違反した者
二 第十条第二項の規定による許可を受けないで第三条第二項第二号から第七号までに掲げる事項を変更した者
三 第十一条第二項の規定による許可を受けないで第四条第二項第二号から第六号までに掲げる事項を変更した者
四 第二十九条、第三十条、第三十一条、第三十四条第一項又は第三十七条第一項及び第二項の規定に違反した者
五 第三十三条第一項の規定に違反し、又は同条第三項の規定による命令に違反した者
第五十四条 次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項(第十条第三項又は第十一条第三項において準用する場合を含む。)の条件に違反した者
二 第十四条の規定による命令に違反した者
三 第十五条、第十六条、第十七条、第十八条又は第十九条の規定に違反した者
四 第二十八条第一項の規定に違反し、又は同条第三項の規定による命令に違反した者
第五十五条 次の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
一 第二十条第一項又は第二項の規定に違反して測定、記録及び保存をしなかつた者
二 第二十五条第一項若しくは第二項の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は同条第三項の規定に違反して帳簿を保存しなかつた者
三 第二十七条第一項若しくは第三項若しくは第三十二条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
四 第四十二条の報告をせず、又は虚偽の報告をした者
五 第四十三条第二項の規定による立入、検査若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第五十六条 第二十二条、第二十三条又は第二十四条の規定に違反した者は、五千円以下の罰金に処する。
第五十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前五条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第五十八条 次の各号の一に該当する者は、一万円以下の過料に処する。
一 第二十一条第一項の規定に違反し、又は同条第二項の規定による命令に違反した者
二 第三十四条第二項又は第三十七条第三項の規定による届出を怠つた者
三 正当な理由なく、第三十五条第三項の規定による命令に違反して放射線取扱主任者免状を返納しなかつた者
第五十九条 次の各号の一に該当する者は、五千円以下の過料に処する。
一 第十条第一項又は第十一条第一項の規定による届出を怠つた者
二 第十条第四項又は第十一条第四項の規定に違反して許可証を提出しなかつた者
三 第二十一条第三項の規定による届出をしなかつた者
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十三年四月一日から施行する。ただし、第三十五条第一項及び第四項並びに第五章の規定並びに第四十九条中放射線取扱主任者に係る部分及び附則第七項中放射線審議会に係る部分は、公布の日から施行する。
(経過規定)
2 この法律の施行の際現に放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置を所有している者で、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置を使用しようとするもの又は放射性同位元素を業として販売しようとするものは、この法律の施行の日から一月以内に、第三条第一項又は第四条第一項の許可の申請をしなければならない。
3 この法律の施行の際現に放射性同位元素を所有している者で前項の規定により許可の申請をしないものは、この法律の施行後二月以内に、その氏名及び住所(法人にあつては、その名称、住所及び代表者の氏名)並びに所有している放射性同位元素の種類及び数量を科学技術庁長官に届け出なければならない。
4 前項の規定により届出をした者又は附則第二項の規定により許可を申請した者で許可を与えられなかつたものは、総理府令で定めるところにより、その所有する放射性同位元素を使用者若しくは販売業者に譲り渡し、放射性同位元素による汚染を除去し、又は放射性同位元素若しくは放射性同位元素によつて汚染された物を第十九条の技術上の基準に従い廃棄しなければならない。この場合において、科学技術庁長官は、これらの者の講じた廃棄の措置が適切でないと認めるときは、これらの者に対し、放射線障害の発生を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができる。
5 前項の規定により放射性同位元素を譲り渡す場合においては、第二十九条の規定は、適用しない。
6 附則第二項の許可の申請をした者又は附則第三項の規定により届出をした者については、この法律の施行の日からこれらの者が第三条第一項若しくは第四条第一項の許可を受け、又は附則第四項の規定により放射性同位元素を譲り渡し、若しくは廃棄するまでの間は、第三条第一項若しくは第四条第一項の規定にかかわらず、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置を使用し、又は放射性同位元素を業として販売することができる。この場合においては、これらの者及びこれらの者から運搬の委託を受けた者(これらの者の従業者でその職務上放射性同位元素を所持するものを含む。)には、第三十条の規定は、適用しない。
(科学技術庁設置法の一部改正)
7 科学技術庁設置法(昭和三十一年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第十三号の次に次の四号を加える。
十三の二 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置の使用を許可すること。
十三の三 放射性同位元素の販売の業を許可すること。
十三の四 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置による放射線障害を防止するため必要な措置を命ずること。
十三の五 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)第四十五条の訴願について内閣総理大臣を補佐すること。
第八条第六号中「障害防止の基本」を「障害防止」に改める。
第十九条第一項の表中発明奨励審議会の項の次に次のように加える。
放射線審議会 |
放射線障害の防止に関する重要事項を審議すること。 |
(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設大臣署名)