けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法

法律第九十一号(昭三〇・七・二九)

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 けい肺健康診断、症状等の決定及び作業の転換(第三条―第九条)

 第三章 けい肺に関する給付等(第十条―第十三条)

 第四章 費用の負担(第十四条―第三十条)

 第五章 不服の申立等(第三十一条―第三十七条)

 第六章 国の援助等(第三十八条―第四十二条)

 第七章 雑則(第四十三条―第五十一条)

 第八章 罰則(第五十二条―第五十四条)

 附則

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、けい肺にかかつた労働者の病勢の悪化の防止を図るとともに、けい肺及び外傷性せき髄障害にかかつた労働者に対して療養給付、休業給付等を行い、もつて労働者の生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 けい肺 遊離けい酸じん又は遊離けい酸を含む粉じんを吸入することによつて肺に生じた繊維増殖性変化の疾病及びこれと肺結核の合併した疾病をいう。

 二 粉じん作業 別表第一に掲げる作業をいう。ただし、けい肺を生ずるおそれがないと認められる政令で定める作業を除く。

 三 けい肺健康診断 直接撮影による胸部全域のエツクス線写真(以下単に「エツクス線写真」という。)による検査、胸部に関する臨床検査及び粉じん作業についての職歴の調査によつて行うけい肺についての健康診断をいう。

 四 外傷性せき髄障害 落盤、落石、墜落等によつて生ずる外部からの圧力によりせき髄が完全に、又はこれに近い程度に損傷し、これによつて運動麻ひ、知覚麻ひ、反射異常、腸管障害、尿路障害、生殖器障害又は呼吸障害を生ずる疾病をいう。

 五 労働者 他人に使用される者で、労働の対償として賃金、給料その他の報酬を支払われるものをいう。

2 この法律においては、けい肺の症状を次の表の下欄に掲げるところにより区分し、その名称は、それぞれ上欄に掲げるところによる。

症度

症状

けい肺第一症度

エツクス線写真の像が第一型と認められるもの

けい肺第二症度

エツクス線写真の像が第二型又は第三型と認められ、かつ、けい肺による心肺機能の障害その他の症状が認められないもの

けい肺第三症度

一 エツクス線写真の像が第二型又は第三型と認められ、かつ、けい肺による軽度の心肺機能の障害その他の症状が認められるもの

二 エツクス線写真の像が第四型と認められ、かつ、けい肺による心肺機能の障害その他の症状が認められないか、又は軽度の心肺機能の障害その他の症状が認められるもの(活動性の肺結核があると認められるものを除く。)

けい肺第四症度

一 エツクス線写真の像が第二型、第三型又は第四型と認められ、かつ、けい肺による高度の心肺機能の障害その他の症状が認められるもの

二 エツクス線写真の像が第四型と認められ、かつ、活動性の肺結核があると認められるもの

3 この法律においては、エツクス線写真の像を次の表の下欄に掲げるところにより区分し、その名称は、それぞれ上欄に掲げるところによる。

エツクス線写真の像

第一型

両肺野に、明りような結節像でその大きさが粟粒大以上のものが部分的にあるもの

第二型

両肺野に、明りような結節像でその大きさが粟粒大以上のものが全面的にあり、かつ、その分布が粗であるもの

第三型

両肺野に、明りような結節像でその大きさが粟粒大以上のものが全面的にあり、かつ、その分布が密であるもの

第四型

第一型、第二型又は第三型のもので融合像又は塊状陰影があるもの

   第二章 けい肺健康診断、症状等の決定及び作業の転換

 (けい肺健康診断)

第三条 使用者は、別表第二に掲げる作業(けい肺を生ずるおそれがないと認められる政令で定める作業を除く。以下同じ。)に常時従事させる労働者に対して、その就業の際、けい肺健康診断を行わなければならない。ただし、次の各号の一に該当する者に対しては、この限りでない。

 一 その作業に従事する前一年以内にけい肺健康診断を受けて第五条第一項、第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定によりけい肺第二症度又はけい肺第三症度のけい肺にかかつていると決定された者

 二 前号以外の者で、その作業に従事する前三年以内にけい肺健康診断を受けて第五条第一項、第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定によりけい肺にかかつていないか、又はけい肺第一症度のけい肺にかかつていると決定されたもの

 三 前二号以外の者で、その作業に従事する前粉じん作業に従事したことがないもの

2 使用者は、別表第二に掲げる作業に常時従事させる労働者に対して、三年以内ごとに一回、けい肺健康診断を行わなければならない。

3 使用者は、前項の規定にかかわらず、別表第二に掲げる作業に常時従事させる労働者のうち、第五条第一項、第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定によりけい肺第二症度又はけい肺第三症度のけい肺にかかつていると決定された者に対して、一年以内ごとに一回、けい肺健康診断を行わなければならない。

4 使用者は、前二項に規定する場合のほか、別表第二に掲げる作業に常時従事させる労働者のうち、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第五十二条第一項の規定による健康診断において医師により肺結核にかかつていると診断された者に対して、遅滞なく、けい肺健康診断を行わなければならない。ただし、同項の規定による健康診断を行う前において、第五条第一項、第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定によりけい肺第一症度、けい肺第二症度又はけい肺第三症度のけい肺にかかつていると決定された労働者については、この限りでない。

5 使用者は、第八条第一項の勧告に係る労働者が当該事業において粉じん作業以外の作業に従事しているときは、その者に対して、三年以内ごとに一回、けい肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該けい肺健康診断の結果、けい肺の症状がその直前のけい肺健康診断の結果の症状に比較して進行していないときは、その後は、けい肺健康診断を行わなくてもよい。

6 使用者は、けい肺健康診断において医師によりけい肺にかかつていると診断された労働者のうち、エツクス線写真に融合像又は塊状陰影が認められない者に対しては労働省令で定める心肺機能検査(以下「機能検査」という。)を、エツクス線写真に融合像又は塊状陰影が認められる者に対しては労働省令で定める結核精密検査(以下「結核検査」という。)を、結核検査により活動性の肺結核にかかつていないと診断された者に対しては機能検査を、遅滞なく、行わなければならない。

7 使用者は、第四項本文に規定する労働者で同項ただし書の規定により同項のけい肺健康診断を行わないもの及び第八条第一項の勧告に係る労働者で当該事業において粉じん作業以外の作業に従事しているもののうち、労働基準法第五十二条第一項の規定による健康診断において、医師により、肺結核にかかつているが、それが活動性の肺結核でないと診断された者に対して、遅滞なく、機能検査を行わなければならない。

8 第一項から前項までの規定によるけい肺健康診断、機能検査又は結核検査の対象労働者は、正当な理由がある場合を除き、それぞれ使用者が行うけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を受けなければならない。ただし、使用者が指定した医師のけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を受けることを希望しない場合において、他の医師のけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を受けて、それぞれエツクス線写真及びけい肺健康診断の結果を証明する書面、機能検査の結果を証明する書面又は結核検査の結果を証明する書面を使用者に提出したときは、この限りでない。

9 使用者は、けい肺健康診断、機能検査又は結核検査を行つた場合においては、その限度において、労働基準法第五十二条第一項の規定による健康診断を行わなくてもよい。

 (エツクス線写真等の提出義務)

第四条 使用者が前条第一項から第六項までの規定によりけい肺健康診断、機能検査若しくは結核検査を行つたとき、又は労働者が同条第八項ただし書の規定により提出すべきエツクス線写真若しくは書面を使用者に提出したときは、使用者は、医師によりけい肺にかかつていると診断された者について、遅滞なく、それぞれ次の各号に掲げる物を当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

 一 けい肺健康診断については、エツクス線写真、粉じん作業についての職歴を証明する書面及びけい肺健康診断の結果を証明する書面

 二 機能検査については、その結果を証明する書面

 三 結核検査については、その結果を証明する書面

2 使用者は、前条第七項の労働者に係る労働基準法第五十二条第一項の規定による健康診断において、当該労働者が医師により活動性の肺結核にかかつていると診断されたときは、その者について、遅滞なく、その診断の結果を証明する書面を当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

3 使用者が前条第七項の規定により機能検査を行つたとき、又は労働者が同条第八項ただし書の規定により提出すべき書面を使用者に提出したときは、使用者は、その者について、遅滞なく、同条第七項に規定する医師の診断の結果を証明する書面及び機能検査の結果を証明する書面を当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

 (症状等の決定)

第五条 都道府県労働基準局長は、前条の規定によりエツクス線写真又は書面の提出を受けたときは、これを基礎として、地方けい肺診査医の診断又は審査により、当該労働者がけい肺にかかつているかどうか、及びけい肺にかかつている者については第二条第二項の症状の区分に従つてその症状を決定し、その旨を当該使用者に通知するものとする。

2 都道府県労働基準局長は、前項の通知をしたときは、遅滞なく、前条の規定により提出されたエツクス線写真又は書面を使用者に返還するものとする。

3 使用者は、第一項の通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を当該労働者に通知するとともに、けい肺の症状がけい肺第四症度に該当すると決定された者については療養を要する旨を通知しなければならない。

第六条 粉じん作業に従事する労働者又は従事していた労働者若しくは労働者であつた者は、けい肺健康診断、機能検査又は結核検査を受け、医師によりけい肺にかかつていると診断されたときは、随時に、都道府県労働基準局長に第二条第二項の症状の区分に従つてけい肺の症状の決定をすべきことを申請することができる。

2 前項の規定による申請をしようとする者は、申請書に、エツクス線写真、粉じん作業についての職歴を証明する書面、けい肺健康診断の結果を証明する書面及び次の各号に掲げる書面を添えて、都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

 一 医師によりエツクス線写真に融合像又は塊状陰影がないと認められた者については、機能検査の結果を証明する書面

 二 医師によりエツクス線写真に融合像又は塊状陰影があると認められた者については、結核検査の結果を証明する書面

 三 医師によりエツクス線写真に融合像又は塊状陰影があると認められた者で、結核検査により活動性の肺結核にかかつていないと診断されたものについては、機能検査の結果を証明する書面

3 都道府県労働基準局長は、第一項の規定による申請を受けたときは、前項の規定により提出されたエツクス線写真及び書面を基礎として、地方けい肺診査医の診断又は審査により申請者がけい肺にかかつているかどうか、及びけい肺にかかつている者については第二条第二項の症状の区分に従つてけい肺の症状を決定し、その旨を申請者及び当該使用者に通知するものとする。

4 都道府県労働基準局長は、前項の通知をしたときは、遅滞なく、第二項の規定により申請書に添えて提出されたエツクス線写真及び書面を申請者に返還するものとする。

第七条 粉じん作業に従事する労働者がけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を受け、医師によりけい肺にかかつていると診断されたときは、使用者は、当該労働者について、随時に、都道府県労働基準局長に第二条第二項の症状の区分に従つてけい肺の症状の決定をすべきことを申請することができる。

2 前条第二項から第四項までの規定は、前項の場合に準用する。この場合において、前条第三項中「当該使用者」とあるのは「当該労働者」と読み替えるものとする。

 (作業の転換)

第八条 都道府県労働基準局長は、第五条第一項、第六条第三項(前条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定による症状の決定を受けた労働者で次の各号の一に該当するものが現に粉じん作業に従事しているときは、使用者に対して、その者を粉じん作業以外の作業につかせることを勧告することができる。

 一 けい肺第三症度のけい肺にかかつていると決定された者

 二 けい肺第二症度のけい肺にかかつていると決定された者で、粉じん作業に従事した期間が五年以内であり、かつ、エツクス線写真の像が第二型に該当するもの

 三 けい肺第二症度のけい肺にかかつていると決定された者で、粉じん作業に従事した期間が十年以内であり、かつ、エツクス線写真の像が第三型に該当するもの

2 使用者は、前項の勧告を受けたときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業につかせるように努めなければならない。

3 使用者は、第一項の勧告を受けて、当該労働者を粉じん作業に従事させなくなつたときは、遅滞なく、その旨を当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長に通知しなければならない。

 (職業紹介等)

第九条 公共職業安定所その他の職業安定機関は、前条第一項の勧告に係る労働者が作業の転換に関する使用者の努力にもかかわらず、当該事業において粉じん作業以外の作業につくことができないときは、当該労働者に対して職業紹介、職業補導等について適切な措置を講ずるように努めなければならない。

   第三章 けい肺に関する給付等

 (転換給付)

第十条 政府は、第八条第一項の勧告に係る労働者が粉じん作業に従事しなくなつたときは、その者に対して、転換給付として労働基準法第十二条に規定する平均賃金の三十日分に相当する額を支給する。

2 前項の転換給付の支給の回数は、当該労働者につき一回に限る。

 (療養給付)

第十一条 政府は、けい肺にかかつた労働者又は労働者であつた者が労働基準法第八十一条の規定による打切補償を受け、又は労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第十二条第一項第六号に規定する打切補償費の支給を受けたときは、その者に対して、その後二年間、療養給付として必要な療養を行い、又は必要な療養の費用に相当する額を支給する。

2 前項の療養の範囲は、労働基準法第七十五条第二項の規定による療養の範囲による。

 (休業給付)

第十二条 労働者又は労働者であつた者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、政府は、その者に対して、その療養の期間につき休業給付を行う。

2 前項の休業給付の額は、労働者又は労働者であつた者が労働基準法第八十一条の規定による打切補償又は労働者災害補償保険法第十二条第一項第六号に規定する打切補償費の支給を受けた直前において受けるべき休業補償の額に相当する額とする。

3 労働基準法第七十六条第二項及び第三項の規定は、前項の休業給付の額について準用する。

 (外傷性せき髄障害についての準用)

第十三条 前二条の規定は、業務上、外傷性せき髄障害にかかつた労働者又は労働者であつた者に関して準用する。

   第四章 費用の負担

 (国庫の負担)

第十四条 国庫は、第十条から前条までの規定により政府が行う給付に関して必要な費用の二分の一を負担する。

 (負担金の徴収)

第十五条 政府は、第十条から第十三条までの規定により政府が行う給付に関して必要な費用に充てるため、粉じん作業に労働者を従事させる事業等の事業主から負担金を徴収する。

 (数次の請負によつて行われる事業の事業主)

第十六条 事業が数次の請負によつて行われる場合においては、この章の規定の適用については、元請負人を事業主とする。

2 元請負人が下請負人との間の書面による契約で下請負人に前条の負担金の納付を引き受けさせることとした場合において、元請負人の申請により、政府がこれを承認したときは、前項の規定にかかわらず、その下請負人をその請負に係る事業の事業主とする。

 (けい肺についての給付に係る負担金の額)

第十七条 けい肺についての給付に関して第十五条の規定により事業主から徴収する負担金の額は、その事業の賃金総額に次条の規定により定めるけい肺負担金率を乗じて得た額とする。

2 労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係の成立していない事業であつて次条の規定によるけい肺負担金率が政令で定める率以下のものの事業主からけい肺についての給付に関して徴収する負担金の額は、前項の規定にかかわらず、政府が、その事業によりけい肺にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して第十条から第十二条までの規定により行つた給付に関する費用の二分の一に相当する額とする。

 (けい肺負担金率)

第十八条 けい肺負担金率は、粉じん作業に労働者を従事させる事業について、その種類の事業の過去五年間のけい肺の発生率を基礎として、その事業に関し政府が第十条から第十二条までの規定により行う給付に関して必要な費用の二分の一に相当する額をまかなうように、事業の種類に応じ数等級に区分して、労働省令で定める。

 (外傷性せき髄障害についての給付に係る負担金の額)

第十九条 外傷性せき髄障害についての給付に関して第十五条の規定により事業主から徴収する負担金の額は、次の各号に定めるところによる。

 一 労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係の成立している事業については、その事業の賃金総額に外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得た額

 二 労働者災害補償保険法第二章に規定する保険関係の成立していない事業については、政府が、その事業により外傷性せき髄障害にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して第十三条の規定により行つた給付に関する費用の二分の一に相当する額

2 前項第一号の外傷性せき髄障害負担金率は、過去五年間の外傷性せき髄障害の発生率を基礎として、その種類の事業に関し政府が第十三条の規定により行う給付に関して必要な費用の二分の一に相当する額をまかなうように、事業の種類に応じ数等級に区分して、労働省令で定める。

 (賃金総額)

第二十条 この章に規定する賃金総額は、賃金、給料、手当、賞与その他いかなる名称によるかを問わず、労働の対償として事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払うすべてのものの総額とする。

 (概算負担金の報告及び納付)

第二十一条 第十七条第一項に規定する額につき負担金を徴収される事業又は第十九条第一項第一号に規定する額につき負担金を徴収される事業(以下「負担金率適用事業」と総称する。)の事業主(次項の有期事業の事業主を除く。)は、毎年四月一日から翌年三月三十一日まで(以下「徴収年度」という。)の賃金総額(その事業が新たに負担金率適用事業に該当するに至つたものについては、該当するに至つた日からその徴収年度の末日までの賃金総額)の見込額にけい肺負担金率又は外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得た概算負担金の額その他労働省令で定める事項を、その徴収年度の初日から十五日以内(その事業が新たに負担金率適用事業に該当するに至つたものについては、該当するに至つた日から五日以内)に都道府県労働基準局長に報告するとともに、概算負担金をその徴収年度の初日から四十五日以内(その事業が新たに負担金率適用事業に該当するに至つたものについては、該当するに至つた日から三十五日以内)に、政府に納付しなければならない。

2 負担金率適用事業であつて事業の期間が予定されるもの(以下「有期事業」という。)の事業主は、その事業の全期間の賃金総額の見込額にけい肺負担金率又は外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得た概算負担金の額その他労働省令で定める事項を、その事業を開始する日前十日までに都道府県労働基準局長に報告するとともに、概算負担金をその事業を開始した日から二十日以内に、政府に納付しなければならない。

3 都道府県労働基準局長は、負担金率適用事業の事業主が前二項の規定による報告をしないとき、又はその報告に誤があると認めたときは、その調査により概算負担金の額を算定し、これを事業主に通知する。

4 前項の通知を受けた事業主は、都道府県労働基準局長の算定した額又はその額と納付した概算負担金の額との差額を、通知を受けた日から十五日以内に、政府に納付しなければならない。

 (確定負担金の報告)

第二十二条 負担金率適用事業の事業主(有期事業の事業主を除く。)は、徴収年度の初日から末日までの賃金総額(その事業が負担金率適用事業に該当しなくなつたものについては、その徴収年度の初日からその事業が負担金率適用事業に該当しなくなつた日の前日までの賃金総額)にけい肺負担金率又は外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得た確定負担金の額その他労働省令で定める事項を、次の徴収年度の初日(その事業が負担金率適用事業に該当しなくなつたものについては、該当しなくなつた日)から十五日以内に、都道府県労働基準局長に報告しなければならない。

2 有期事業の事業主は、その事業の全期間の賃金総額にけい肺負担金率又は外傷性せき髄障害負担金率を乗じて得た確定負担金の額その他労働省令で定める事項を、その事業が終了し、又は廃止された日から十五日以内に、都道府県労働基準局長に報告しなければならない。

3 都道府県労働基準局長は、負担金率適用事業の事業主が前二項の規定による報告をしないとき、又はその報告に誤があると認めたときは、その調査により確定負担金の額を算定し、これを事業主に通知する。

 (概算負担金と確定負担金の差額の充当、還付又は納付)

第二十三条 負担金率適用事業の事業主が第二十一条の規定により納付した概算負担金の額が、前条第一項又は第二項の規定による確定負担金の額(同条第三項の規定により都道府県労働基準局長が確定負担金の額を算定した場合には、その算定した額)をこえる場合には、政府は、労働省令で定めるところにより、そのこえる額を次の徴収年度の概算負担金若しくは未納の負担金に充当し、又は還付する。

2 負担金率適用事業の事業主は、前条第一項又は第二項の規定により報告をした場合においては、納付した概算負担金の額がこれらの規定による確定負担金の額に足りないときはその不足額を、納付した概算負担金がないときはこれらの規定による確定負担金を、次の徴収年度の初日から三十日以内(その事業が負担金率適用事業に該当しなくなつたものについては、その日から三十日以内)に、政府に納付しなければならない。

3 負担金率適用事業の事業主は、前条第三項の規定による通知を受けた場合においては、納付した負担金の額が都道府県労働基準局長が算定した確定負担金の額に足りないときはその不足額を、納付した負担金がないときは都道府県労働基準局長が算定した確定負担金を、その通知を受けた日から十五日以内に、政府に納付しなければならない。

 (延納)

第二十四条 政府は、労働省令で定めるところにより、負担金率適用事業の事業主が第二十一条第一項、第二項又は第四項の規定により納付すべき概算負担金を、その申請に基き、延納させることができる。

 (追徴金)

第二十五条 政府は、事業主が第二十三条第三項の規定により確定負担金又はその不足額を納付しなければならない場合においては、その納付すべき額に百分の十を乗じて得た額を追徴金として徴収する。ただし、事業主が、天災その他やむを得ない事由により、同項の規定による確定負担金又はその不足額の納付をしなければならなくなつた場合は、この限りでない。

2 政府は、前項の追徴金を徴収する場合には、労働省令で定めるところにより、事業主に対して、期限を指定して、その納付すべき追徴金の額を通知しなければならない。

 (負担金率適用事業以外の事業についての負担金の徴収)

第二十六条 第十七条第二項又は第十九条第一項第二号に規定する事業の事業主から徴収する負担金は、政府が、その事業によりけい肺又は外傷性せき髄障害にかかつた労働者又は労働者であつた者に対して第十条から第十三条までの規定による給付を行つた場合に、そのつど、徴収する。

2 政府は、前項の負担金を徴収する場合には、労働省令で定めるところにより、事業主に対して、期限を指定して、その納付すべき負担金の額を通知しなければならない。

3 前項の期限は、同項の通知を発する日から起算して三十日以上経過した日でなければならない。

4 第一項の事業主は、労働省令で定めるところにより、同項の負担金を分割して納付することができる。

 (滞納処分)

第二十七条 事業主が負担金その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、政府は、期限を指定して督促をしなければならない。

2 前項の規定による督促をするときは、政府は、納付義務者に対して督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、これを発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。

3 第一項の規定による督促は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。

4 第一項の規定による督促を受けた者が、同項の期限までに、負担金その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、政府は、国税滞納処分の例によつて、これを処分する。

 (延滞金)

第二十八条 政府は、事業主が負担金の納付を怠つた場合において、前条第一項の規定による督促をしたときは、その金額百円につき一日六銭の割合で、納期限の翌日から負担金の完納又は財産差押の日の前日までの日数により計算した延滞金を徴収する。ただし、負担金の額が千円未満であるときは、延滞金は、徴収しない。

2 前項の場合において、負担金の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の額の計算の基礎となる負担金の額は、その納付のあつた負担金の額を控除した金額による。

3 延滞金の計算において、前二項の負担金の額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

4 前三項の規定によつて計算した延滞金の額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

5 延滞金は、次の各号の一に該当する場合には、徴収しない。ただし、第四号の場合には、その執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る。

 一 督促状の指定期限までに徴収金を完納したとき。

 二 納付義務者の住所又は居所が不明なため、公示送達の方法によつて督促したとき。

 三 延滞金の額が十円未満であるとき。

 四 負担金について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。

 五 負担金を納付しないことについてやむを得ない事由があると認められるとき。

 (先取特権の順位)

第二十九条 負担金その他この法律の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぎ、他の公課に先だつものとする。

 (書類の送達)

第三十条 負担金その他この法律の規定による徴収金に関する書類の送達については、国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)第四条ノ九及び第四条ノ十の規定を準用する。

   第五章 不服の申立等

 (症状等の決定についての不服の申立)

第三十一条 第五条第一項又は第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による都道府県労働基準局長の決定に不服のある者は、エツクス線写真及び労働省令で定める書面を添え、書面をもつて、当該都道府県労働基準局長を経由し、労働大臣に不服の申立をすることができる。

2 労働大臣は、前項の規定による不服の申立があつたときは、申立の日から六十日以内に、中央けい肺診査医の診断又は審査により、裁決をしなければならない。

3 労働大臣は、第一項の不服の申立が理由があると認めるときは、前項の裁決において、不服の申立に係る都道府県労働基準局長の処分を取り消し、不服の申立に係る労働者又は労働者であつた者がけい肺にかかつているかどうか、及びけい肺にかかつている者については第二条第二項の症状の区分に従つてけい肺の症状を決定しなければならない。

4 労働大臣は、第二項の裁決をしたときは、書面をもつて、当該都道府県労働基準局長を経由し、不服の申立をした者に通知しなければならない。

 (給付に関する審査の請求)

第三十二条 給付に関する決定に不服がある者は、労働者災害補償保険法第三十五条の保険審査官に審査を請求し、その決定に不服がある者は、同条の労働者災害補償保険審査会に審査を請求し、その決定に不服がある者は、裁判所に訴を提起することができる。

2 前項の審査の請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。

 (保険審査官の権限)

第三十三条 保険審査官は、前条の審査のため必要があると認めるときは、使用者、労働者若しくは労働者であつた者に対して報告をさせ、若しくは出頭を命じて質問し、又は労働者若しくは労働者であつた者に対してその指定する医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。

 (都道府県労働基準局長が算定した負担金の額に関する審査の請求)

第三十四条 事業主は、第二十一条第三項又は第二十二条第三項の規定により都道府県労働基準局長が算定した負担金の額について不服があるときは、都道府県労働基準局長に審査の請求をすることができる。

 (訴願)

第三十五条 前条の規定による審査の決定又は負担金その他この法律の規定による徴収金の徴収に関する処分について不服がある者は、労働大臣に訴願をすることができる。

 (申立の期間)

第三十六条 第三十一条第一項の不服の申立、第三十二条の審査の請求若しくは訴の提起、第三十四条の審査の請求又は前条の訴願は、処分の通知を受けた日から六十日以内にしなければならない。この場合において、不服の申立及び審査の請求については、訴願法(明治二十三年法律第百五号)第八条第三項の規定を準用する。

 (政令への委任)

第三十七条 この章に定めるもののほか、第三十一条第一項の不服の申立若しくは第三十二条若しくは第三十四条の審査の請求又はこれらに係る処分に関し必要な事項は、政令で定める。

   第六章 国の援助等

 (国の援助)

第三十八条 政府は、この法律の目的を達成するため必要な場合には、使用者の行うけい肺健康診断等について援助を行うように努めるとともに、けい肺にかかつた労働者のために適当な就労のための施設を設けること等によつて労働者の生活の安定を図るように努めなければならない。

 (公課の禁止)

第三十九条 租税その他の公課は、第十条から第十三条までの規定により給付を受けた金品を標準として課することができない。

 (差押の禁止等)

第四十条 第十条から第十三条までの規定により給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

 (印紙税の非課税)

第四十一条 第十条から第十三条までの規定による給付に関する書類には、印紙税を課さない。

 (時効)

第四十二条 第十条から第十三条までの規定による給付を受ける権利及び負担金その他の徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によつて、消滅する。

2 前項の時効の中断、停止その他の事項に関しては、民法の時効に関する規定を準用する。

   第七章 雑則

 (けい肺審議会)

第四十三条 労働省に、けい肺審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、労働大臣の諮問に応じて、けい肺に関する重要事項を調査審議し、及びこれらに関して必要な事項を関係行政機関に建議する。

第四十四条 審議会は、委員二十人以内で組織する。

2 委員は、労働者を代表する者、使用者を代表する者、学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから、労働大臣が任命する。

3 委員の任期は、一年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 委員は、非常勤とする。

5 審議会に会長を置く。会長は、学識経験のある者のうちから任命された委員のうちから、委員が選挙する。

6 会長は、審議会の会務を総理する。

第四十五条 この法律に規定するもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

 (けい肺診査医)

第四十六条 この法律の規定によるけい肺の診断又は審査及びこれらに関する事務を行わせるために、労働省に中央けい肺診査医を、都道府県労働基準局に地方けい肺診査医を置く。

2 中央けい肺診査医及び地方けい肺診査医は、けい肺の診断に関し知識又は経験を有する医師のうちから、労働大臣が任命する。

3 けい肺診査医は、非常勤とすることができる。

 (けい肺診査医の権限)

第四十七条 中央けい肺診査医又は地方けい肺診査医は、この法律の規定により、けい肺にかかつた労働者又はけい肺にかかつている疑のある労働者に対して行う診断又は審査のため必要があるときは、当該労働者がいる事業場に立ち入り、労働者その他の関係者に質問し、資料の提出を求め、又は診療録その他の書類を検査することができる。

2 前項の場合において、けい肺診査医は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

 (労働基準監督官の権限)

第四十八条 労働基準監督官は、第二章の規定の施行のため必要な限度において、使用者に対し報告若しくは帳簿書類の提出を求め、又は事業場及びその附属建造物に立ち入り、関係者に質問し、若しくは遊離けい酸を含み、若しくは含む疑のある粉じんの測定若しくは検査を行うことができる。

2 前項の場合において、労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

第四十九条 労働基準監督官は、第三条第一項から第七項まで、第四条及び第五条第三項の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員としての職務を行う。

 (労働大臣又は都道府県労働基準局長の権限)

第五十条 労働大臣又は都道府県労働基準局長は、この法律の規定による給付及び負担金その他の徴収金に関する処分並びにこれらに関する審査に関し、必要があると認めるときは、これらに係る事業の事業主に報告をさせ、又は当該職員に、その事業の事業場に立ち入り、関係者に質問させ、及び帳簿書類を検査させることができる。

2 第四十八条第二項及び第三項の規定は、前項の規定によつて質問及び検査を行う職員について準用する。

 (国家公務員についての適用除外)

第五十一条 国家公務員については、この法律の規定は、適用しない。

   第八章 罰則

第五十二条 第二十一条第一項若しくは第二項又は第二十二条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、六箇月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

第五十三条 次の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。

 一 第三条第一項から第七項まで、第四条又は第五条第三項の規定に違反した者

 二 第四十七条第一項の規定による質問に対して虚偽の陳述をし、資料の提出をせず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

 三 第四十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、帳簿書類の提出をせず、若しくは虚偽の記載をした帳簿書類を提出し、質問に対して虚偽の陳述をし、又は測定若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

 四 第五十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第五十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、昭和三十年九月一日から施行する。ただし、附則第二項の規定は、公布の日から施行する。

 (この法律施行前に打切補償又は打切補償費の支給を受けた者に対する特例)

2 けい肺にかかつた労働者若しくは労働者であつた者又は業務上、外傷性せき髄障害にかかつた労働者若しくは労働者であつた者が、この法律の公布の日以後この法律の施行前において労働基準法第八十一条の規定による打切補償を受け、又は労働者災害補償保険法第十二条第一項第六号に規定する打切補償費の支給を受けたときは、その者について、その者が当該打切補償又は打切補償費の支給を受けた日から、第十一条から第十三条までの規定を適用する。

 (都道府県労働基準局長の行うけい肺健康診断)

3 この法律の施行後、使用者が第三条第二項又は第六項の規定により行うべき最初のけい肺健康診断、機能検査又は結核検査は、これらの規定にかかわらず、都道府県労働基準局長が行うものとする。

4 都道府県労働基準局長は、前項の規定により行つたけい肺健康診断、機能検査又は結核検査に基き、当該労働者がけい肺にかかつているかどうか、及びけい肺にかかつている者については第二条第二項の症状の区分に従つてその症状を決定するものとする。

5 前項の規定による症状等の決定は、第五条第一項の規定による症状等の決定とみなす。

6 第三条第九項の規定は、附則第三項の規定により都道府県労働基準局長がけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を行つた場合に準用する。

7 国庫は、附則第三項の規定により都道府県労働基準局長が行うけい肺健康診断、機能検査又は結核検査に関して必要な費用の二分の一を負担する。

8 政府は、附則第三項の規定により都道府県労働基準局長が行うけい肺健康診断、機能検査又は結核検査に関して必要な費用に充てるため、けい肺健康診断、機能検査又は結核検査を行つた場合に、その事業の事業主から、そのつど、負担金を徴収する。

9 前項の負担金の額は、労働省令で労働者一人当りにつき定める額にその事業においてけい肺健康診断、機能検査又は結核検査を行つた労働者の数を乗じて得た額とする。

10 前項の労働省令で定める額は、都道府県労働基準局長が行うけい肺健康診断、機能検査又は結核検査に関する費用の二分の一に相当する額をまかなうように定めなければならない。

11 政府は、附則第八項の負担金を徴収する場合には、その負担金の額を定めて、三十日以内にこれを納付すべきことを当該事業主に通知しなければならない。

 (けい肺健康診断の暫定措置)

12 使用者は、政令で定める日までは、第三条第一項から第四項までの規定によりけい肺健康診断を行つたとき、又は同条第八項ただし書の規定によりエツクス線写真及び書面の提出を受けたときは、遅滞なく、医師によりけい肺にかかつていないと診断された労働者についての第四条第一項第一号に掲げるエツクス線写真及び書面を、当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働基準局長に提出しなければならない。

13 都道府県労働基準局長は、前項の規定によりエツクス線写真及び書面が提出されたときは、これを基礎として、地方けい肺診査医の診断又は審査により、当該労働者がけい肺にかかつているかどうか、及びけい肺にかかつている者については第二条第二項の症状の区分に従つてその症状を決定するものとする。

14 前項の規定による症状等の決定は、第五条第一項の規定による症状等の決定とみなす。

15 都道府県労働基準局長は、附則第十三項の決定に係る第五条第一項の通知をしたときは、遅滞なく、附則第十二項の規定により提出されたエツクス線写真及び書面を使用者に返還するものとする。

 (負担金率の暫定措置)

16 この法律の施行後五年間は、けい肺負担金率は、第十八条の規定にかかわらず、けい肺審議会にはかつて、事業の種類に応じ数等級に区分して、労働大臣が定める。

 (負担金納付の経過措置)

17 この法律の施行の際、この法律の規定により負担金率適用事業となる事業であつて事業の期間が予定されないもののうち政令で定める率以下のけい肺負担金率又は外傷性せき髄障害負担金率によつて負担金が徴収される事業を営む事業主については、昭和三十一年三月三十一日までは、第二十一条第一項の規定は、適用しない。

18 この法律の施行の際、この法律の規定により負担金率適用事業となる事業であつて事業の期間が予定されないもの(前項に規定する事業を除く。)を営む事業主についての第二十一条第一項の規定の適用については、同項中「五日以内」とあるのは「十五日以内」と、「三十五日以内」とあるのは「四十五日以内」とする。

19 この法律の施行の際、この法律の規定により負担金率適用事業となる事業であつて事業の期間が予定されるもののうち昭和三十一年三月三十一日までに事業の終了が予定される事業を営む事業主については、その日までは、第二十一条第二項の規定は、適用しない。

20 この法律の施行の際、この法律の規定により負担金率適用事業となる事業であつて事業の期間が予定されるもの(前項に規定する事業を除く。)を営む事業主についての第二十一条第二項の規定の適用については、同項中「開始する日前十日までに」とあるのは「この法律の施行の日から十五日以内に」と、「その事業を開始した日から二十日以内に」とあるのは「この法律の施行の日から四十五日以内に」とする。

 (他の法律の一部改正)

21 労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給与の応急措置に関する法律(昭和二十二年法律第百六十七号)の一部を次のように改正する。

  第一項中「又は船員法」を「、けい肺及び外傷性せき髄傷害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号)第十一条から第十三条までの規定(国家公務員災害補償法第一条に規定する職員に係るものを除く。)又は船員法」に改める。

22 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三十二号の次に次の三号を加える。

  三十二の二 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号)に基いて、けい肺に関する症状等の決定及び作業の転換の勧告をすること。

  三十二の三 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基いて、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する給付をすること。

  三十二の四 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法に基いて、前号の給付に関し負担金を徴収すること。

  第八条第六号の次に次の二号を加える。

  六の二 けい肺に関する症状等の決定に関すること。

  六の三 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する給付に関すること。

  第八条第十一号中「及び労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)」を「、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法」に改める。

  第十三条第一項の表中

けい肺対策審議会

けい肺対策を調査審議すること。

けい肺審議会

けい肺に関する重要事項を調査審議すること。

に改める。

  第十五条第一項中「及び労働者災害補償保険法(これに基く命令を含む。)」を「、労働者災害補償保険法(これに基く命令を含む。)及びけい肺及び外傷性せき髄傷害に関する特別保護法(これに基く命令を含む。)」に改める。

  第十六条第一項の表の目的の欄中「労働者災害補償保険の保険給付」の下に「及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の規定による給付」を加える。

  第十七条第一項中「及び労働者災害補償保険法(これに基く命令を含む。)」を「、労働者災害補償保険法(これに基く命令を含む。)及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(これに基く命令を含む。)」に改める。

23 国庫出納金等端数計算法(昭和二十五年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。

  第七条第二号中「及び失業保険法(昭和二十二年法律第百四十六号)第三十六条の規定」を「、失業保険法(昭和二十二年法律第百四十六号)第三十六条及びけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法第二十八条第一項本文」に改める。

24 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十二条中第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。

  八 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号)の規定により給付として支給を受ける金品

  第六百七十二条中第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。

  八 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法の規定により給付として支給を受ける金品

25 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。

  第二十三条に次の一項を加える。

 2 この法律に定める療養補償及び休業補償の実施については、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法(昭和三十年法律第九十一号)による療養給付及び休業給付の実施との関係におけるつり合を失わないように十分考慮しなければならない。

別表第一

一 坑内における作業

二 土石又は鉱物を掘さくする場所における作業

三 土石又は鉱物を破砕し、さい断し、選別し、又はふるいわける場所における作業

四 岩石をのみ仕上げし、たたき仕上げし、動力により研まし、その他岩石を加工する場所における作業

五 粉状の土石若しくは鉱物又はこれらを含む物を混合し、投げ入れ、袋詰し、積み込み、積みおろしする等の行為をする場所における作業

六 鉱物をばい焼し、又は焼結する場所における作業

七 陶磁器、耐火れんが(クローム質、苦土質、炭素質等の特殊質のれんがを除く。以下同じ。)、けいそう土製品、タイル、製錬用レトルト等を製造する工程において、成形し、乾燥し、かま詰し、かま出しし、又は仕上げする場所における作業

八 砂型を用いて鋳物を製造し、又は動力により鋳物を研まする場所における作業

九 石若しくは砂を用いて動力により研まし、又はけい砂のふきつけにより研まする場所における作業

十 金属又は非金属を製錬する工程において、溶鉱炉、転炉その他の溶解炉によつて溶解する場所における作業

十一 耐火れんがを用いる炉の中に入つて、耐火れんがを取り換え、その他炉を修理する作業

十二 金属又は非金属を製錬する場所において、炉又は煙突に附着した鉱さいをかきおとす作業

十三 前各号に掲げるもののほか、政令で定める作業

別表第二

一 坑内の、土石又は鉱物を掘さくし、破砕し、又はふるいわける場所における作業

二 坑内において土石又は鉱物を積み込み、又は運搬する作業

三 坑外の、岩石を掘さくし、又は動力により破砕する場所における作業

四 岩石をさい断し、のみ仕上げし、たたき仕上げし、又は動力により研まする場所における作業

五 ガラスを製造する工程において、原料をふるいわけ、若しくは混合する場所における作業又は原料を溶解炉に投げ入れる作業

六 陶磁器、耐火れんが、けいそう土製品、タイル、製錬用レトルト又はクレー製品を製造する工程において、原料を混合し、ふるいわけ、乾燥し、かま詰し、又はかま出しする場所における作業

七 粉状のけいそう土製品又はクレー製品を袋詰し、積み込み、又は積みおろしする場所における作業

八 砂型を用いて鋳物を製造する工程において、砂をふるいわけ、砂型をこわし、砂落しし、又ははつりをする場所における作業

九 石若しくは砂を用いて動力により研まし、又はけい砂のふきつけにより研まする場所における作業

十 耐火れんがを用いる炉の中に入つて、耐火れんがを取り換え、その他炉を修理する作業

十一 金属又は非金属を製錬する場所において、炉又は煙突に附着した鉱さいをかきおとす作業

十二 前各号に掲げるもののほか、政令で定める作業

(内閣総理・大蔵・労働大臣署名) 

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