ヘき地教育振興法

法律第百四十三号(昭二九・六・一)

 (目的)

第一条 この法律は、教育の機会均等の趣旨に基き、かつ、へき地における教育の特殊事情にかんがみ、国及び地方公共団体がへき地における教育を振興するために実施しなければならない諸施策を明らかにし、もつてへき地における教育の水準の向上を図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「へき地学校」とは、交通困難で自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、離島その他の地域に所在する公立の小学校及び中学校をいう。

 (市町村の任務)

第三条 市町村は、へき地における教育の振興を図るため、当該地方の必要に応じ、左に掲げる事務を行う。

 一 へき地学校の教材、教具等の整備、へき地学校に勤務する教員の研修その他へき地における教育の内容を充実するため必要な措置を講ずること。

 二 へき地学校に勤務する教員及び職員のための住宅の建築、あつ旋その他その福利厚生のため必要な措置を講ずること。

 三 体育、音楽等の学校教育及び社会教育の用に供するための施設をへき地学校に設けること。

2 市町村は、前項に掲げる事務を行うほか、へき地学校における教員及び職員並びに児童及び生徒の健康管理の適正な実施を図り、児童及び生徒の通学を容易にするため必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 (都道府県の任務)

第四条 都道府県は、へき地における教育の特殊事情に適した学習指導、教材、教具等について必要な調査、研究を行い、及び資料を整備し、前条に規定する市町村の任務の遂行について、市町村に対し、適切な指導、助言又は援助を行い、並びにへき地学校に勤務する教員の研修について教員に十分な機会を与えるように努めなければならない。

2 都道府県は、必要に応じ、へき地学校に勤務する教員の養成施設を設けなければならない。

3 都道府県は、へき地学校に勤務する教員及び職員に対する特殊勤務手当の支給について、特別の考慮を払わなければならない。

4 都道府県は、市町村の行うへき地学校に勤務する教員及び職員の定員の決定について特別の考慮を払い、並びにこれらの者の採用について必要な指導、助言及びあつ旋をしなければならない。

 (文部大臣の任務)

第五条 文部大臣は、へき地における教育について必要な調査、研究を行い、及び資料を整備し、並びに前二条に規定する地方公共団体の任務の遂行について、地方公共団体に対し、適切な指導、助言を行い、又は必要なあつ旋をしなければならない。

 (国の補助)

第六条 国は、市町村が行う第三条第一項第二号又は第三号に掲げる事務に要する経費について、予算の範囲内でその一部を補助するものとする。

2 国は、都道府県が設置する第四条第二項に規定する施設に要する経費について、予算の範囲内で、その一部を補助するものとする。

3 前二項の規定により国が補助する場合の経費の範囲、算定基準及び補助の比率は、政令で定める。

 (補助金の返還)

第七条 国は、国庫から補助金の交付を受けた地方公共団体が左の各号の一に該当するに至つたときは、当該年度におけるその後の補助金の全部又は一部の交付をやめるとともに、すでに交付した当該年度の補助金の全部又は一部を返還させることができる。

 一 補助金を補助の目的以外の目的に使用したとき。

 二 正当な理由がなくて補助金の交付を受けた年度内に補助に係る施設を設けないこととなつたとき。

 三 補助に係る施設を、正当な理由がなくて補助の目的以外の目的に使用し、又は文部大臣の許可を受けないで処分したとき。

 四 補助金の交付の条件に違反したとき。

 五 虚偽の方法により補助金の交付を受けたことが明らかになつたとき。

 (政令への委任)

第八条 この法律に定めるもののほか、補助金の交付及び返還の手続その他国の補助金に関し必要な事項は、政令で定める。

 (負担金、補助金等の配分)

第九条 国及び都道府県は、学校施設の建設又は復旧、教材、教具等の整備その他の教育事務に要する経費について市町村に交付する負担金、補助金等の配分を行うに当つては、へき地における教育の特殊性に留意して適切な配分を行わなければならない。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

(内閣総理・大蔵・文部大臣署名) 

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