土地収用法

法律第二百十九号(昭二六・六・九)

目次

 第一章 総則(第一条―第十条)

 第二章 事業の準備(第十一条―第十五条)

 第三章 事業の認定(第十六条―第三十条)

 第四章 収用又は使用の手続

  第一節 土地細目の公害及び協議(第三十一条―第四十一条)

  第二節 収用委員会の裁決(第四十二条―第五十条)

第五章 収用委員会

  第一節 組織及び権限(第五十一条―第五十九条)

  第二節 会議及び審理(第六十条―第六十七条)

第六章 損失の補償

  第一節 収用又は使用に因る損失の補償(第六十八条―第九十条)

  第二節 測量、事業の廃止等に因る損失の補償(第九十一条―第九十四条)

第七章 収用又は使用の効果(第九十五条―第百七条)

第八章 収用又は使用に関する特別手続

  第一節 収用委員会の調停(第百八条―第百十五条)

  第二節 協議の確認(第百十六条―第百二十一条)

  第三節 緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用(第百二十二条―第百二十四条)

第九章 手数料及び費用の負担(第百二十五条―第百二十八条)

第十章 訴願及び訴訟(第百二十九条―第百三十四条)

第十一章 雑則(第百三十五条―第百四十条)

第十二章 罰則(第百四十一条―第百四十六条)

附 則

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、公共の利益となる事業に必要な土地等の収用又は使用に関し、その要件、手続及び効果並びにこれに伴う損失の補償等について規定し、公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もつて国土の適正且つ合理的な利用に寄与することを目的とする。

 (土地の収用又は使用)

第二条 公共の利益となる事業の用に供するため土地を必要とする場合において、その土地を当該事業の用に供することが土地の利用上適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる。

 (土地を収用し、又は使用することができる事業)

第三条 士地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、左の各号の一に該当するものに関する事業でなければならない。

一 道路法(大正八年法律第五十八号)による道路若しくは道路の附属物、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般自動車道若しくは一般自動車運送事業の用に供する専用自動車道又は一般公共の用に供する駐車場

 二 河川法(明治二十九年法律第七十一号)が適用され、若しくは準用される河川その他公共の利害に関係のある河川又はこれらの河川に治水若しくは利水の目的をもつて設置する堤防、護岸、ダム、水路、貯水池その他の施設

三 砂防法(明治三十年法律第二十九号)による砂防設備又は同法が準用される砂防のための施設

四 運河法(大正二年法律第十六号)による運河の用に供する施設

五 国、地方公共団体又は土地改良区(土地改良区連合を含む。以下同じ。)が設置する農業用道路、用水路、排水路、海岸堤防、かんがい用若しくは農作物の災害防止用のため池又は防風林その他これに準ずる施設

六 国、都道府県又は土地改良区が土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)によつて行う客土事業又は土地改良事業の施行に伴い設置する用排水機若しくは地下水源の利用に関する設備

七 日本国有鉄道が日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第三条第一項各号に掲げる業務の用に供する施設又は日本専売公社が日本専売公社法(昭和二十三年法律第二百五十五号)第二十七条各号に掲げる業務の用に供する施設

八 地方鉄道法(大正八年法律第五十二号)第一条第一項若しくは第二項の規定による地方鉄道、同条第三項の規定による索道で一般の需要に応じ旅客若しくは物品を運送するもの又は軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道若しくは同法が準用される無軌条電車の用に供する施設

九 道路運送法による一般乗合旅客自動車運送事業又は一般路線貨物自動車運送事業の用に供する施設

十 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)による港湾施設又は漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)による漁港施設

十一 航路標識法(昭和二十四年法律第九十九号)による航路標識又は水路業務法(昭和二十五年法律第百二号)による水路測量標

十二 国が設置する航空保安施設(飛行場を含む。)

十三 気象、海象、地象又はこう水その他これに類する現象の観測又は通報の用に供する施設

十四 国が電波監視のために設置する無線方位又は電波の質の測定装置

十五 国又は地方公共団体が設置する電気通信設備

十六 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)による放送事業の用に供する放送設備

十七 公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)による公益事業の用に供する電気工作物又はガス工作物

十八 水道条例(明治二十三年法律第九号)による水道又は下水道法(明治三十三年法律第三十二号)による下水道の用に供する施設

十九 市町村が消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)によつて設置する消防の用に供する施設

二十 都道府県又は水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)による水防管理団体が水防の用に供する施設

二十一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校又はこれに準ずるその他の教育若しくは学術研究のための施設

二十二 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)による公民館(同法第四十二条に規定する公民館類似施設を除く。)若しくは博物館又は図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館(同法第二十九条に規定する図書館同種施設を除く。)

二十三 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)による社会福祉事業の用に供する施設又は職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)による公共職業補導所

二十四 国、地方公共同体若しくはその組合、健康保険組合若しくは同連合会、国民健康保険組合若しくは同連合会若しくは国家公務員共済組合若しくは共済組合連合会が設置する病院、療養所、診療所若しくは助産所、保健所法(昭和二十二年法律第百一号)による保健所若しくは医療法(昭和二十三年法律第二百五号)による公的医療機関又は検えき所

二十五 墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)による火葬場

二十六 屠場法(明治三十九年法律第三十二号)によると場又はへい獣処理場等に関する法律(昭和二十三年法律第百四十号)によるへい獣処理場

二十七 汚物掃除法(明治三十三年法律第三十一号)による公共溝きよ、公共便所、じんかい焼却場その他汚物掃除に関する施設

二十八 中央卸売市場法(大正十二年法律第三十二号)による中央卸売市場

二十九 国立公園法(昭和六年法律第三十六号)による国立公園事業

三十 国又は地方公共団体が建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第四十八条第一項の規定による住居地域内において、自ら居住するため住宅を必要とする者に対し賃貸し、又は譲渡する目的で行う五十戸以上の一団地の住宅経営

三十一 国又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所その他直接その事務又は事業の用に供する施設

三十二 国又は地方公共団体が設置する公園、緑地、広場、運動場、墓地、市場その他公共の用に供する施設

三十三 前各号の一に掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道、軌道、索道、電線路、水路、池井、土石の捨場、材料の置場、職務上常駐を必要とする職員の詰所又は宿舎その他の施設

 (収用し、又は使用することができる土地等の制限)

第四条 この法律又は他の法律によつて、土地等を収用し、又は使用することができる事業の用に供している土地等は、特別の必要がなければ、収用し、又は使用することができない。

 (権利の収用又は使用)

第五条 土地を第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、その土地にある左の各号に掲げる権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

 一 地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借又は賃貸借による権利その他土地に関する所有権以外の権利

 二 鉱業権

 三 温泉を利用する権利

2 土地の上にある立木、建物その他土地に定着する物件をその土地とともに第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらの物件に関する所有権以外の権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

3 土地、河川の敷地又は流水、海水その他の水を第三条各号の一に規定する事業の用に供するため、これらのものに関係のある漁業権、入漁権その他河川の敷地又は流水、海水その他の水を利用する権利を消滅させ、又は制限することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの権利を収用し、又は使用することができる。

 (立木、建物等の収用又は使用)

第六条 土地の上にある立木、建物その他土地に定着する物件をその土地とともに、第三条各号の一に規定する事業の用に供することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの物を収用し、又は使用することができる。

 (土石砂れきの収用)

第七条 土地に属する土石砂れきを第三条各号の一に規定する事業の用に供することが必要且つ相当である場合においては、この法律の定めるところにより、これらの物を収用することができる。

 (定義)

第八条 この法律において「起業者」とは、土地、第五条に掲げる権利若しくは第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用し、又は前条に規定する土石砂れきを収用することを必要とする第三条各号の一に規定する事業を行う者をいう。

2 この法律において「土地所有者」とは、収用又は使用に係る土地の所有者をいう。

3 この法律において「関係人」とは、第二条の規定によつて土地を収用し、又は使用する場合においては当該土地に関して地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借若しくは賃貸借による権利その他所有権以外の権利を有する者及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者を、第五条の規定によつて同条に掲げる権利を収用し、又は使用する場合においては当該権利に関して質権、抵当権、使用貸借若しくは賃貸借による権利その他の権利を有する者を、第六条の規定によつて同条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合においては当該物件に関して所有権以外の権利を有する者を、第七条の規定によつて土石砂れきを収用する場合においては当該土石砂れきの属する土地に関して所有権以外の権利を有する者及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者をいう。但し、第三十三条(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による土地細目の公告(第五条に掲げる権利を収用し、若しくは使用する場合にあつては権利細目の公告、第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用する場合にあつては物件細目の公告又は第七条に規定する土石砂れきを収用する場合にあつては、土石砂れき細目の公告)があつた後において新たな権利を取得した者は、既存の権利を承認した者を除き、関係人に含まれないものとする。

 (起業者の権利義務の承継)

第九条 合併その他の事由に因り事業の承継があつた場合においては、この法律の規定によつて従前の起業者が有していた権利義務は、当該事業を承継した者に移転する。

 (手続の承継)

第十条 起業者、土地所有者又は関係人の変更があつた場合においては、この法律又はこの法律に基く命令の規定によつて従前の起業者、土地所有者又は関係人がした手続その他の行為は、新たに起業者、土地所有者又は関係人となつた者に対しても、その効力を有する。

第二章 事業の準備

 (事業の準備のための立入権)

第十一条 第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査をする必要がある場合においては、起業者は、事業の種類並びに立ち入ろうとする土地の区域及び期間を記載した申請書を当該区域を管轄する都道府県知事に提出して立入の許可を受けなければならない。但し、起業者が国であるときは、当該事業の施行について権限を有する行政機関又はその地方支分部局の長は、事業の種類並びに立ち入ろうとする土地の区域及び期間を都道府県知事にあらかじめ通知することをもつて足り、許可を受けることを要しない。

2 都道府県知事は、前項本文の規定によつて立入の許可の申請があつた事業が第三条各号の一に掲げる事業に該当しない場合又は立ち入ろうとする土地の区域及び期間が当該事業の準備のために必要な範囲をこえる場合を除いては、立入を許可するものとする。

3 前項の規定によつて都道府県知事の許可を受けた起業者又は第一項但書の規定によつて都道府県知事に通知をした起業者は、土地に、自ら立ち入り、又は起業者が命じた者若しくは委任した者を立ち入らせることができる。

4 都道府県知事は、第二項の規定による許可をしたとき、又は第一項但書の規定による通知を受けたときは、直ちに、起業者の名称、事業の種類並びに起業者が立ち入ろうとする土地の区域及び期間をその土地の占有者に通知し、又はこれらの事項を公告しなければならない。

 (立入の通知)

第十二条 前条第三項の規定によつて他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の五日前までに、その日時及び場所を市町村長に通知しなければならない。

2 市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに、その旨を土地の占有者に通知し、又は公告しなければならない。

3 前条第三項の規定によつて宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ろうとする場合においては、その土地に立ち入ろうとする者は、立入の際あらかじめその旨を占有者に告げなければならない。

4 日出前又は日没後においては、宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入つてはならない。

 (立入の受忍)

第十三条 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第十一条第三項の規定による立入を拒み、又は妨げてはならない。

 (障害物の伐除)

第十四条 起業者又はその命を受けた者若しくは委仕を受けた者は、第三条各号の一に掲げる事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行うに当り、やむを得ない必要があつて、障害となる植物又はかき、さく等(以下「障害物」という。)を伐除しようとする場合において、その所有者及び占有者の同意を得ることができないときは、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて、これを伐除することができる。この場合において、市町村長は、許可を与える前に、あらかじめ、障害物の所有者及び占有者に意見を述べる機会を与えなければならない。

2 前項の規定によつて障害物を伐除しようとする者は、代除しようとする日の三日前までに、その所有者及び占有者に通知しなければならない。

3 障害物が山林、原野その他これらに類する土地にあつて、あらかじめ所有者及び占有者の同意を得ることが困難であり、且つ、障害物の現状を著しく損傷しない場合においては、起業者又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、前二項の規定にかかわらず、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて、直ちに、障害物を伐除することができる。この場合においては、障害物を伐除した後、遅滞なく、その旨を所有者及び占有者に通知しなければならない。

 (証票等の携帯)

第十五条 第十一条第三項の規定によつて他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証票及び都道府県知事の許可証(起業者が国である場合を除く。)を携帯しなければならない。

2 前条の規定によつて障害物を伐除しようとする者は、その身分を示す証票及び市町村長の許可証を携帯しなければならない。

3 前二項に規定する証票又は許可証は、土地又は障害物の所有者、占有者その他の利害関係人の請求があつたときは、示さなければならない。

4 第一項及び第二項に規定する証票及び許可証の様式は、建設省令で定める。

   第三章 事業の認定

 (事業の認定)

第十六条 起業者は、事業のために土地を収用し、又は使用しようとするときは、この章の定めるところに従い、事業の認定を受けなければならない。

 (事業の認定に関する処分を行う機関)

第十七条 事業が左の各号の一に掲げるものであるときは、建設大臣が事業の認定に関する処分を行う。

 一 国又は都道府県が起業者である事業

 二 事業を施行する土地(以下「起業地」という。)が二以上の都道府県の区域にわたる事業

2 事業が前項各号の一に掲げるもの以外のものであるときは、起業地を管轄する都道府県知事が事業の認定に関する処分を行う。

 (事業認定申請書)

第十八条 起業者は、第十六条の規定による事業の認定を受けようとするときは、建設省令で定める様式に従い、左に掲げる事項を記載した事業認定申請書を、前条第一項又は第二十七条第一項の場合においては建設大臣に、前条第二項の場合においては都道府県知事に提出しなければならない。

 一 起業者の名称

 二 事業の種類

 三 起業地

 四 事業の認定を申請する理由

2 前項の申請書には、建設省令で定める様式に従い、左に掲げる書類を添附しなければならない。

 一 事業計画書

 二 起業地及び事業計画を表示する図面

 三 起業地内に第四条に規定する土地があるときは、その土地に関する調書、図面及び当該土地の管理者の意見

 四 起業地内にある土地の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行について権眼を有する行政機関の意見

 五 事業の施行に関して行政機関の免許、許可又は認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があつたことを証明する書類又は当該行政機関の意見

 (事業認定申請書の欠陥の補正及び却下)

第十九条 前条の規定による事業認定申請書及びその添附書類が同条又は同条に基く建設省令に規定する方式を欠くときは、建設大臣又は都道府県知事は、相当な期間を定めて、その欠陥を補正させなければならない。第百二十五条の規定による手数料を納めないときも、同様とする。

2 起業者が前項の規定により欠陥の補正を命ぜられたにかかわらず、その定められた期間内に欠陥の補正をしないときは、建設大臣又は都道府県知事は、事業認定申請書を却下しなければならない。

 (事業の認定の要件)

第二十条 建設大臣又は都道府県知事は、申請に係る事業が左の各号のすべてに該当するときは、事業の認定をすることができる。

 一 事業が第三条各号の一に掲げるものに関するものであること。

 二 起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること。

 三 事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること。

 四 土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること。

 (関係行政機関の意見の聴取)

第二十一条 建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとする場合において必要があると認めるときは、当該事業の施行について関係のある行政機関又はその地方支分部局の長の意見を求めなければならない。

2 事業の施行について関係のある行政機関又はその地方支分部局の長は、事業の認定に関する処分について、建設大臣又は都道府県知事に対して意見を述べることができる。

 (専門的学識及び経験を有する者の意見の聴取)

第二十二条 建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとする場合において必要があると認めるときは、申請に係る事業の事業計画について専門的学識又は経験を有する者の意見を求めることができる。

 (公聴会)

第二十三条 建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとする場合において必要があると認めるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない。

2 前項の規定による公聴会を開こうとするときは、起業者の名称、事業の種類及び起業地並びに公聴会の期日及び場所を一般に公告しなければならない。

3 公聴会の手続に関して必要な事項は、建設省令で定める。

 (事業認定申請書の送付及び縦覧)

第二十四条 建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとするときは、申請に係る事業が第二十条に規定する要件に該当しないことが明らかである場合を除き、起業地が所在する市町村の長に対して事業認定申請書及びその添附書類のうち当該市町村に関係のある部分の写を送付しなければならない。この場合において、建設大臣にあつては、起業地を管轄する都道府県知事を経由するものとする。

2 市町村長が前項の書類を受け取つたときは、直ちに、起業者の名称、事業の種類及び起業地を公告し、公告の日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。

 (利害関係人の意見書の提出)

第二十五条 前条第二項の規定による公告があつたときは、事業の認定について利害関係を有する者は、同項の縦覧期間内に、都道府県知事に意見書を提出することができる。

2 都道府県知事は、建設大臣が認定に関する処分を行おうとする事業について、前項の規定による意見書を受け取つたときは、直ちに、これを建設大臣に送付し、前条第二項に規定する期間内に意見書の提出がなかつたときは、その旨を建設大臣に報告しなければならない。

 (事業の認定の告示)

第二十六条 建設大臣又は都道府県知事は、第二十条の規定によつて事業の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類及び起業地を建設大臣にあつては官報で、都道府県知事にあつては都道府県知事が定める方法で告示しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定による告示をしたときは、直ちに、建設大臣にその旨を報告し、建設大臣の要求があつた場合においては、事業の認定に関する書類の写を送付しなければならない。

3 建設大臣は、第一項の規定による告示をしたときは、直ちに、関係都道府県知事にその旨を通知し、第十八条第二項第一号から第四号までに掲げる書類の写を送付しなければならない。

4 事業の認定は、第一項の規定による告示があつた日から、その効力を生ずる。

 (事業の認定に関する処分を行う機関の特例)

第二十七条 起業者は、左の各号の一に該当するときは、建設大臣に対して事業の認定を申請することができる。この場合においては、起業者は、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。

 一 都道府県知事が事業の認定を拒否したとき。

 二 都道府県知事が第十八条の規定による事業認定申請書を受理した日から三月を経過しても事業の認定に関する処分を行わないとき。

2 建設大臣は、前項第一号の規定による申請を受けたときは、あらかじめ土地調整委員会の意見を聞いた上で、自ら事業の認定に関する処分を行わなければならない。

3 建設大臣は、第一項第二号の規定による申請を受けたときは、あらかじめ都道府県知事の意見を聞いた上で、都道府県知事に対して、相当な期間を定めて、事業の認定に関する処分を行うことを命ずることができる。

4 建設大臣は、都道府県知事が前項の規定によつて命ぜられた期間内に処分を行わないとき、又は同項の規定によつて処分を行うことを命ずることが適当でないと認めるときは、都道府県知事及び起業者にあらかじめ自ら事業の認定に関する処分を行うことを通知した上で、自ら事業の認定に関する処分を行うことができる。

5 前項の規定による建設大臣の通知を受けた後においては、都道府県知事は、当該事件につき事業の認定に関する処分を行うことができない。

6 都道府県知事は、第二項又は第四項の規定によつて建設大臣が自ら事業の認定に関する処分を行う場合において、既に開かれた公聴会の記録、既に提出された利害関係人の意見書等当該事業の認定に関する処分を行うために必要な書類があるときは、直ちに、これらの書類を建設大臣に送付しなければならない。

7 第二項又は第四項の規定によつて建設大臣が自ら事業の認定に関する処分を行う場合においては、建設大臣は、事業の認定に関する処分を行うための手続その他の行為で都道府県知事が既に行つたものを省略することができる。

 (事業の認定の拒否及び再審査)

第二十八条 建設大臣又は都道府県知事は、事業の認定を拒否したときは、遅滞なく、その旨を起業者に文書で通知しなければならない。

2 建設大臣が事業の認定を拒否したとき(前条第二項の規定によつて行う処分において拒否した場合を除く。)は、起業者は、その通知を受けた日から二週間以内に、建設省令で定める株式に従い、事業の認定の再審査を建設大臣に申請することができる。

3 建設大臣は、前項の規定による事業の認定の再審査の申請を受理したときはこれを審査し、あらかじめ土地調整委員会の意見を聞いた上で、再審査の申請が理由がないと認めるときは、事業の認定を拒否し、理由があると認めるときは事業の認定をしなければならない。

 (事業の認定の失効)

第二十九条 起業者が第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から三年以内に第三十一条の規定による土地細目の公告の申請をしないときは、事業の認定は、期間満了の日の翌日から将来に向つて、その効力を失う。

 (事業の廃止又は変更)

第三十条 第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた後、起業者が事業の全部又は一部を廃止し、又は変更したために土地を収用し、又は使用する必要がなくなつたときは、起業者は、遅滞なく、起業地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならない。この場合において、その事由の発生が第三十三条の規定による土地細目の公告の後であるときは、土地所有者及び関係人にも、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

2 都道府県知事は、前項前段の規定による届出を受け取つたときは、事業の全部又は一部の廃止又は変更があつたことを都道府県知事が定める方法で告示するとともに、直ちに、その旨を建設大臣に報告しなければならない。

3 都道府県知事は、第一項前段の規定による届出がない場合においても、起業者が事業の全部又は一部を廃止し、又は変更したために土地を収用し、又は使用する必要がなくなつたことを知つたときは、あらかじめ起業者の事情を聴取した上で、前項に規定する告示及び報告をしなければならない。

4 事業の認定は、前二項の規定による告示があつた日から将来に向つて、その効力を失う。

   第四章 収用又は使用の手続

    第一節 土地細目の公告及び協議

 (土地細目の公告の申請)

第三十一条 起業者は、土地を収用し、又は使用しようとするときは、第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた後、第二十九条に規定する期間内に都道府県知事に土地細目の公告を申請しなければならない。

2 第三十九条の規定によつて土地細目の公告が効力を失つた後においても、前項の規定によつて更に土地細目の公告の申請をすることを妨げない。

 (土地細目の公告の申請書)

第三十二条 起業者は、前条の規定による申請をしようとするときは、左に掲げる事項を記載した申書書を、起業地を管轄する都道府県知事に提出しなければならない。

 一 第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示の写

二 収用し、又は使用しようとする土地の所在、地番及び地目

 三 土地所有者及び関係人の氏名及び住所

2 前項第三号に掲げる事項に関して起業者が過失がなくて知ることができないものについては、同項の規定による申請書に記載することを要しない。

 (土地細目の公告及び通知)

第三十三条 都道府県知事は、第三十一条の規定による申請があつたときは、遅滞なく、前条第一項第二号に掲げる事項を都道府県知事が定める方法で公告するとともに、同項第三号に掲げる土地所有者及び関係人にこれを通知しなければならない。

 (土地の保全)

第三十四条 前条の規定による土地細目の公告があつた後においては、何人も、都道府県知事の許可を受けなければ、公告があつた土地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更をしてはならない。

2 都道府県知事は、土地の形質の変更について起業者の同意がある場合又は土地の形質の変更が災害の防止その他正当な事由に基き必要があると認められる場合に限り、前項の規定による許可をするものとする。

 (土地物件調査権)

第三十五条 第三十三条の規定による土地細目の公告があつた後は、起業者又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、事業の準備のため又は第三十六条第一項に規定する土地調書及び物件調書の作成のために、その土地又はその土地にある工作物に立ち入つて、これを測量し、又はその土地及びその土地若しくは工作物にある物件を調査することができる。

2 前項の規定によつて土地又は工作物に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その日時及び場所を当該土地又は工作物の占有者に通知しなければならない。

3 第十二条第三項及び第四項、第十三条並びに第十五条第一項、第三項及び第四項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、第十二条第三項中「前条第三項」とあり、又は第十三条及び第十五条第一項中「第十一条第三項」とあるのは「第三十五条第一項」と、第十二条第三項及び第四項中「又はかき、さく等で囲まれた土地」とあるのは「若しくはかき、さく等で囲まれた土地又は工作物」と、同条第三項、第十三条及び第十五条第一項中「土地」とあり、又は同条第三項中「土地又は障害物」とあるのは「土地又は工作物」と、第十五条第一項中「証票及び都道府県知事の許可証(起業者が国である場合を除く。)」とあり、又は同条第三項中「証票又は許可証」と、若しくは第四項中「証票及び許可証」とあるのは「証票」と読み替えるものとする。

 (土地調書及び物件調書の作成)

第三十六条 第三十三条の規定による土地細目の公告があつた後、起業者は、土地調書及び物件調書を作成し、これに署名押印しなければならない。

2 前項の規定により土地調書及び物件調書を作成する場合において、起業者は、土地所有者及び関係人(起業者が過失がなくて知ることができない者を除く。以下この節において同じ。)を立ち会わせた上、土地調書及び物件調書に署名押印させなければならない。

3 前項の場合において、土地所有者及び関係人のうち、土地調書及び物件調書の記載事項が真実でない旨の異議を有する者は、その内容を当該調書に附記して署名押印することができる。

4 第二項の場合において、土地所有者及び関係人のうちに同項の規定による署名押印を拒んだ者又は署名押印することができない者があるときは、起業者は、市町村長の立会及び署名押印を求めなければならない。この場合において、市町村長は、当該市町村の吏員を立ち会わせ、署名押印させることができる。

5 前項の場合において、市町村長が署名押印を拒んだときは、都道府県知事は、起業者の申請により、当該都道府県の吏員のうちから立会人を指名し、署名押印させなければならない。

6 前二項の規定による立会人は、起業者又は起業者に対し第六十一条第一項第二号から第四号までの規定の一に該当する関係にある者であつてはならない。

 (土地調書及び物件調書の記載事項)

第三十七条 前条第一項に規定する土地調書には、収用し、又は使用しようとする土地について、左に掲げる事項を記載し、実測平面図を添附しなければならない。

 一 土地の所在、地番、地目及び地積並びに土地所有者の氏名及び住所

 二 収用し、又は使用しようとする土地の面積

 三 土地に関して権利を有する者の氏名及び住所並びにその権利の種類及び内容

 四 調書を作成した年月日

 五 その他必要な事項

2 前条第一項に規定する物件調書には、収用し、又は使用しようとする土地にある物件について、左に掲げる事項を記載しなければならない。

一 物件がある土地の所在、地番及び地目

 二 物件の種類及び数量並びにその所有者の氏名及び住所

 三 物件に関して権利を有する者の氏名及び住所並びにその権利の種類及び内容

 四 調書を作成した年月日

 五 その他必要な事項

3 物件が建物であるときは、前項に掲げる事項の外、建物の種類、構造、床面積等を記載し、実測平面図を添附しなければならない。

4 土地調書及び物件調書の様式は、建設省令で定める。

 (土地調書及び物件調書の効力)

第三十八条 起業者、土地所有者及び関係人は、第三十六条第三項の規定によつて異議を附記した者がその内容を述べる場合を除くの外、前二条の規定によつて作成された土地調書及び物件調書の記載事項の真否について異議を述べることができない。但し、その調書の記載事項が真実に反していることを立証するときは、この限りでない。

 (土地細目の公告の失効)

第三十九条 起業者が第三十三条の規定による土地細目の公告があつた日から一年以内に第四十一条の規定による裁決の申請をしないときは、土地細目の公告は、期間満了の日の翌日から将来に向つて、その効力を失う。

 (協議)

第四十条 第三十三条の規定による土地細目の公告があつた後、起業者は、その土地について権利を取得し、又は消滅させるために土地所有者及び関係人と協議しなければならない。

 (協議の不調又は不能等)

第四十一条 前条の規定による協議が成立しないとき、協議をすることができないとき、又は第百十九条の規定によつて協議の確認が拒否されたため事業の施行が妨げられるときは、起業者は、第三十三条の規定による土地細目の公告があつた日から一年以内に限り、収用し、又は使用しようとする土地が所在する都道府県の収用委員会に収用又は使用の裁決を申請することができる。

    第二節 収用委員会の裁決

 (裁決申請書)

第四十二条 起業者は、前条の規定によつて収用委員会の裁決を申請しようとするときは、建設省令で定める様式に従い、裁決申請書に左に掲げる書類を添附して、これを収用委員会に提出しなければならない。

 一 事業計画書並びに起業地及び事業計画を表示する図面

 二 市町村別に左に掲げる事項を記載した書類

  イ 収用し、又は使用しようとする土地の所在、地番及び地目

  ロ 収用し、又は使用しようとする土地の面積並びにその土地にある物件の種類及び数量(土地又は物件が分割されることになる場合においては、その全部の面積、物件の数量等を含む。)

  ハ 土地を使用しようとする場合においては、その方法及び期間

  ニ 土地所有者及び関係人の氏名及び住所

  ホ 損失補償の見積及びその内訳

  ヘ 収用又は使用の時期

三 第三十六条の規定による土地調書及び物件調書又はこれらの写

四 土地所有者及び関係人との協議の経過説明書

2 第三十二条第二項の規定は、前項第二号ニに掲げる事項の記載について準用する。

 (裁決申請書の欠陥の補正)

第四十三条 第十九条の規定は、前条の規定による裁決申請書及びその添附書類の欠陥の補正について準用する。この場合において、「前条」とあるのは「第四十二条」と、「事業認定申請書」とあるのは「裁決申請書」と、「建設大臣又は都道府県知事」とあるのは「収用委員会」と読み替えるものとする。

 (裁決申請書の送付及び縦覧)

第四十四条 収用委員会は、第四十二条第一項の規定による裁決申請書及びその添附書類を受理したときは、前条において準用する第十九条第二項の規定により裁決申請書を却下する場合を除くの外、市町村別に当該市町村に関係がある部分の写を当該市町村長に送付するとともに、添附書類に記載されている土地所有者及び関係人に裁決の申請があつた旨の通知をしなければならない。

2 市町村長は、前項の書類を受け取つたときは、直ちに、裁決の申請があつた旨及び第四十二条第一項第二号イに掲げる事項を公告し、公告の日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。

3 市町村長は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、公告の日を収用委員会に報告しなければならない。

 (土地所有者及び関係人等の意見書の提出)

第四十五条 前条第二項の規定による公告があつたときは、土地所有者及び関係人は、同条の縦覧期間内に、収用委員会に意見書を提出することができる。但し、縦覧期間が経過した後において意見書が提出された場合においても、収用委員会は、相当の理由があると認めるときは、当該意見書を受理することができる。

2 前条第二項の規定による公告があつたときは、その公告があつた土地及びこれに関する権利について差押、仮差押又は仮処分をした者その他損失の補償の決定によつて権利を害される虞のある者(以下「準関係人」と総称する。)は、収用委員会の審理が終るまでは、自己の権利が影響を受ける限度において、損失の補償に関して収用委員会に意見書を提出することができる。

 (審理手続の開始)

第四十六条 収用委員会は、第四十四条第二項に規定する縦覧期間を経過した後、遅滞なく、審理を開始しなけれはならない。

2 収用委員会は、審理を開始する場合においては、起業者、第四十二条第一項の規定による裁決申請書の添附書類に記載されている土地所有者及び関係人並びに前条の規定によつて意見書を提出した者に、あらかじめ審理の期日及び場所を通知しなければならない。

 (却下の裁決)

第四十七条 起業者の申請が左の各号の一に該当するときその他この法律の規定に違反するときは、収用委員会は、裁決をもつて申請を却下しなければならない。

 一 申請に係る事業が第二十六条第一項の規定によつて告示された事業と異なるとき。

 二 申請に係る事業計画が第十八条第二項第一号の規定によつて事業認定申請書に添附された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき。

 (収用又は使用の裁決)

第四十八条 収用委員会は、前条の規定によつて申請を却下する場合を除くの外、左に掲げる事項について裁決しなければならない。

 一 収用する土地の区域又は使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間

 二 損失の補償

 三 収用又は使用の時期

 四 その他この法律に規定する事項

2 収用委員会は、前項第一号に掲げる事項については、第四十二条第一項の規定による裁決申請書の添附書類によつて起業者が申し立てた範囲内で、且つ、事業に必要な限度において裁決しなければならない。但し、第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求があつた場合においては、その請求の範囲内において裁決することができる。

3 収用委員会は、第一項第二号に掲げる事項については、第四十二条第一項の規定による裁決申請書の添附書類並びに第四十五条若しくは第六十三条第二項の規定による意見書又は第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出された意見書によつて起業者、土地所有者、関係人及び準関係人が申し立てた範囲をこえて裁決してはならない。

 (裁決事項の一部の先決)

第四十九条 収用委員会は、審理を円滑に進めるために必要があり、且つ、前条第一項第一号に掲げる事項について同項第二号から第四号までに掲げる事項と分離して判断するのに適当な期期であると認めるときは、審理の途中において、同項第一号の事項について決定をもつて、あらかじめこれを定めることができる。

2 前条第二項本文の規定は、前項の規定による決定に準用する。

3 第一項の規定による決定があつたときは、起業者、土地所有者及び関係人は、決定のあつた事項については、第六十三条の規定にかかわらず、収用委員会の審理において意見を述べ、又は意見書を提出することができない。但し、第七十六条第一項又は第八十一条第一項の規定による請求については、この限りでない。

 (和解)

第五十条 収用委員会は、審理の途中において、何時でも、起業者、土地所有者及び関係人に和解を勧めることができる。

2 収用し、又は使用しようとする土地の全部又は一部について起業者と土地所有者及び関係人の全員との間に第四十八条第一項各号に掲げるすべての事項に関して和解がととのつた場合において、その和解の内容が第七章の規定に適合するときは、収用委員会は、起業者、土地所有者及び関係人の申請により、和解調書を作成することができる。

3 前項の和解調書には、第四十八条第一項各号に掲げるすべての事項を記載し、収用委員会の会長及び和解調書の作成に加わつた委員並びに起業者、土地所有者及び関係人が、これに署名押印しなければならない。

4 和解調書の正本には、収用委員会の印章を押し、これを起業者、土地所有者及び関係人に送達しなければならない。

5 第三項の規定による和解調書が作成されたときは、この法律の適用については、第四十八条第一項の規定による収用又は使用の裁決があつたものとみなす。この場合において、起業者、土地所有者及び関係人は、和解の成立及び内容を争うことができない。

   第五章 収用委員会

    第一節 組繊及び権限

 (設置)

第五十一条 この法律に基く権限を行うため、都道府県知事の所轄の下に、収用委員会を設置する。

2 収用委員会は、独立してその職権を行う。

 (組織及び委員)

第五十二条 収用委員会は、委員七人をもつて組織する。

2 収用委員会には、就任の順位を定めて、二人以上の予備委員を置かなければならない。

3 委員及び予備委員は、法律、経済又は行政に関してすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、都道府県の議会の同意を得て、都道府県知事が任命する。

4 委員及び予備委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、都道府県の議会の閉会又は解散のためにその同意を得ることができないときは、都道府県知事は、前項の規定にかかわらず、都道府県の議会の同意を得ないで委員及び予備委員を任命することができる。

5 前項の場合においては、任命後最初の議会でその承認を得なければならない。この場合において、議会の承認を得ることができないときは、都道府県知事は、その委員及び予備委員を罷免しなければならない。

6 委員及び予備委員は、非常勤とする。

 (委員の任期)

第五十三条 委員及び予備委員の任期は、三年とする。

2 委員に欠員が生じたときは、予備委員のうち先順位者が、就任するものとする。

3 前項の規定による委員の任期は、前任者の残任期間とする。

4 委員及び予備委員は、再任されることができる。

 (委員の欠格条項)

第五十四条 左の各号の一に該当する者は、委員及び予備委員となることができない。

 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者

 二 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

 (身分保障)

第五十五条 委員及び予備委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中その意に反して罷免されることがない。

 一 収用委員会の議決により心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき。

 二 収用委員会の議決により職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められたとき。

2 委員及び予備委員が前項各号の一に該当するときは、都道府県知事は、その委員及び予備委員を罷免しなければならない。

3 委員及び予備委員が前条各号の一に該当するに至つたときは、当然失職するものとする。

 (会長)

第五十六条 収用委員会に会長を置く。

2 会長は、委員のうちから委員が互選する。

3 会長は、収用委員会を代表し、議事その他の会務を総理する。

4 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者が、その職務を代理する。

 (給与)

第五十七条 委員及び予備委員は、都道府県の条例で定めるところにより、給与を受ける。

 (収用委員会の庶務)

第五十八条 収用委員会の庶務は、都道府県知事が定める当該都道府県の局部において処理する。

 (収用委員会の運営)

第五十九条 この法律又はこの法律に基く条例に規定する事項を除くの外、収用委員会の会議その他運営に必要な事項は、収用委員会が定める。

    第二節 会議及び審理

 (会議及び議決)

第六十条 収用委員会の会議は、会長が招集する。

2 収用委員会は、会長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、審理を行い、又は議決をすることができない。

3 収用委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、会長の決するところによる。

4 収用委員会が第五十五条第一項各号の規定による議決をする場合においては、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。

 (委員の除斥)

第六十一条 左の各号の一に該当する者は、委員として収用委員会の会議若しくは審理に加わり、又は議決をすることができない。

 一 起業者、土地所有者及び関係人

 二 起業者、土地所有者及び関係人の配偶者、四親等内の親族、同居の親族、代理人及び保佐人

 三 起業者、土地所有者及び関係人である地方公共団体の長並びに副知事及び助投

 四 合名会社、合資会社、株式会社、有限会社その他の法人が起業者、土地所有者及び関係人である場合において、当該合名会社の社員、当該合資会社の無限責任社員、当該株式会社及び当該有限会社の取締役及び監査役その他当該法人の理事、監事その他これらに準ずる職務権限を有する者

2 委員のうち一人以上が前項の規定に該当するため委員の数が減少して、会議を開き、審理を行い、又は議決をすることができないときは、予備委員が就任の順位に従つて、会長の指名により臨時に補充されるものとする。

 (審理の公開)

第六十二条 収用委員会の審理は、公開しなければならない。但し、収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。

 (意見を述べる権利等)

第六十三条 起業者、土地所有者及び関係人は、第四十二条第一項の規定によつて提出された裁決申請書の添附書類又は第四十五条第一項の規定によつて提出し、若しくは受理された意見書に記載された事項については、第六十五条第一項第一号の規定によつて意見書の提出を命ぜられた場合又は第二項に規定する場合を除いては、これを説明する場合に限り、収用委員会の審理において意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。

2 起業者、土地所有者及び関係人は、損失の補償に関する事項については、収用委員会の審理において、新たに意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。

3 起業者、土地所有者及び関係人は、第四十二条第一項の規定による裁決申請書の添附書類により、若しくは第四十五条第一項の規定による意見書により申し立てた事項又は前二項の規定によつて意見書により、若しくは口頭で述べた意見の内容を証明するために、収用委員会に対して資料を提出すること、必要な参考人を審問すること、鑑定人に鑑定を命ずること又は土地若しくは物件を実地に調査することを申し立てることができる。

4 起業者、土地所有者及び関係人は、審理において収用委員会が第六十五条第一項の規定による処分によつて出頭を命じた参考人又は鑑定人を自ら審問することを申し立てることができる。

 (会長の審理指揮権)

第六十四条 収用委員会の審理の手続は、会長が指揮する。

2 会長は、起業者、土地所有者及び関係人が述べる意見、申立、審問その他の行為が既に述べた意見又は申立と重複するとき、裁決の申請に係る事件と関係がない事項にわたるときその他相当でないと認めるときは、これを制眼することができる。

3 会長は、収用委員会の公正な審理の進行を妨げる者に対しては、退場を命ずることができる。

 (審理又は調査のための権限等)

第六十五条 収用委員会は、第六十三条第三項の規定による申立が相当であると認めるとき、又は審理若しくは調査のために必要があると認めるときは、左の各号に掲げる処分をすることができる。

 一 起業者、土地所有者若しくは関係人又は参考人に出頭を命じて審問し、又は意見書若しくは資料の提出を命ずること。

 二 鑑定人に出項を命じて鑑定させること。

 三 収用委員会の委員又は収用委員会の庶務を処理する職員をして現地について土地又は物件を調査させること。

2 前項第三号の規定によつて委員又は職員が土地又は物件を実地に調査する場合においては、その身分を示す証票を携帯し、土地又は物件の所有者、占有者その他の利害関係人の請求があつたときは、これを示さなければならない。

3 前項に規定する証票の様式は、建設省令で定める。

4 第一項第二号の規定による鑑定人は、第六十一条第一項各号の一に該当する者であつてはならない。

5 第一項の規定による鑑定人又は参考人に対しては、条例で定めるところにより、旅費及び手当を給する。

 (裁決及び決定の会議等)

第六十六条 収用委員会の裁決及び決定の会議は、公開しない。

2 裁決及び決定は、文書によつて行う。裁決書及び決定書には、その理由及び成立の日を附記し、会長及び会議に加わつた委員は、これに署名押印しなければならない。

3 裁決書及び決定書の正本には、収用委員会の印章を押し、これを起業者、土地所有者及び関係人に送達しなければならない。

 (審理及び裁決の合同)

第六十七条 第四十一条の規定による裁決の申請があつた場合において、収用し、又は使用しようとする土地が二以上の都道府県の区域にわたるため、関係収用委員会がそれぞれの収用委員会において裁決することが適当でないと認めるとき、又は起業者の申立があり、且つ、関係収用委員会がその申立を相当と認めるときは、関係収用委員会は、協議により、合同して審理し、裁決することができる。

2 前項の規定によつて関係収用委員会が合同して審理し、裁決する場合においては、会長の職を行う者は、関係収用委員会の会長の互選によつて定め、その会議及び審理は、それぞれの収用委員会の委員が三人以上出席してこれを行わなければならない。

3 第一項の規定により関係収用委員会が合同してした裁決は、この法律の適用については、それぞれの収用委員会が、その裁決の申請に係る収用し、又は使用しようとする土地の全部についてした裁決とみなす。

4 収用委員会が合同して審理し、裁決する場合の手続については、前二項に規定するものを除くの外、第四十五条から第五十条まで及びこの節の規定を準用する。但し、これらの規定によつて起業者、土地所有者、関係人又は準関係人が収用委員会に提出すべき意見書は、関係収用委員会に提出すれば足りる。

   第六章 損失の補償

    第一節 収用又は使用に因る損失の補償

 (損失を補償すべき者)

第六十八条 土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければならない。

 (個別払の原則)

第六十九条 損失の補償は、土地所有者及び関係人に、各人別にしなければならない。但し、各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない。

 (損失補償の方法)

第七十条 損失の補償は、金銭をもつてするものとする。但し、替地の提供その他補償の方法について、第八十二条から第八十六条までの規定により収用委員会の裁決があつた場合は、この限りでない。

 (補償額算定の時期)

第七十一条 損失は、収用委員会の収用又は使用の裁決の時の価格によつて算定して補償しなければならない。

 (土地の収用の損失補償)

第七十二条 収用する土地に対しては、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。

 (土地の使用の損失補償)

第七十三条 使用する土地に対しては、その土地及び近傍類地の地代、借賃等を考慮して相当な価格をもつて補償しなければならない。この場合において、使用の方法が土地の形質を変更し、当該土地を原状に復することを困難にするものであるときは、これに因つて生ずる損失をあわせて補償しなければならない。

 (残地補償)

第七十四条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地の価格が減じ、その他残地に関して損失が生ずるときは、その損失を補償しなければならない。

 (工事の費用の補償)

第七十五条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用を補償しなければならない。

 (残地収用の請求権)

第七十六条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用することに因つて、残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、土地所有者は、その全部の収用を請求することができる。

2 前項の規定によつて収用の請求がされた残地又はその上にある物件に関して権利を有する関係人は、収用委員会に対して、起業者の業務の執行に特別の支障がなく、且つ、他の関係人の権利を害しない限りにおいて、従前の権利の存続を請求することができる。

 (移転料の補償)

第七十七条 収用し、又は使用する土地に物件があるときは、その物件の移転料を補償して、これを移転させなければならない。この場合において、物件が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の全部の移転料を請求することができる。

 (移転困難な場合の収用請求権)

第七十八条 前条の場合において、物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することに因つて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の収用を請求することができる。

 (移転料多額の場合の収用請求権)

第七十九条 第七十七条の場合において、移転料が移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格をこえるときは、起業者は、その物件の収用を請求することができる。

 (物件の補償)

第八十条 前二条の規定によつて物件を収用する場合において、収用する物件に対しては、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。

 (土地の使用に代る収用の請求)

第八十一条 土地を使用する場合において、土地の使用が三年以上にわたるとき、土地の使用に因つて土地の形質を変更するとき、又は使用しようとする土地に土地所有者の所有する建物があるときは、土地所有者は、その土地の収用を請求することができる。但し、空間又は地下を使用する場合で、土地の通常の用法を妨げないときは、この限りでない。

2 前項の規定によつて収用の請求がされた土地に関して権利を有する関係人は、収用委員会に対して従前の権利の存続を請求することができる。

3 収用委員会は、前項の規定による請求があつたときは、第四十八条第一項の規定による裁決において、左に掲げる事項について裁決しなければならない。

 一 存続する権利

 二 第四十二条第一項の規定による使用の裁決申請書の添附書類によつて起業者が申し立てた範囲内で、且つ、事業に必要な限度において前号の権利の行使を制限する方法及び期間

 三 関係人が前号の規定による権利の制限に因つて受ける損失の補償

 (替地による補償)

第八十二条 土地所有者又は関係人(質権及び抵当権を有する者を除く。以下この条及び第八十三条において同じ。)は、収用される土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の全部又は一部に代えて土地又は土地に関する所有権以外の権利(以下「替地」と総称する。)をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。

2 土地所有者又は関係人が起業者の所有する特定の土地を指定して前項の規定による要求をした場合において、収用委員会は、その要求が相当であり、且つ、替地の譲渡が起業者の事業又は業務の執行に支障を及ぼさないと認めるときは、替地による損失の補償の裁決をすることができる。

3 土地所有者又は関係人が土地を指定しないで、又は起業者の所有に属しない土地を指定して第一項の規定による要求をした場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、起業者に対して替地の提供を勧告することができる。

4 前項の規定による勧告に基いて起業者が提供しようとする替地について、土地所有者又は関係人が同意したときは、収用委員会は、替地による損失の補償の裁決をすることができる。

5 第三項の規定による勧告があつた場合において、国又は地方公共団体である起業者は、地方公共団体又は国の所有する土地で、公用又は公共用に供し、又は供するものと決定したもの以外のものであつて、且つ、替地として相当と認めるものがあるときは、その譲渡のあつ旋を収用委員会に申請することができる。

6 前項の規定による申請があつた場合において、収用委員会は、その申請を相当と認めるときは、国又は地方公共団体に対し、替地として相当と認めるものの譲渡を勧告することができる。

7 起業者が提供すべき替地は、土地の地目、地積、土性、水利、権利の内容等を総合的に勘案して、従前の土地又は土地に関する所有権以外の権利に照応するものでなければならない。

 (耕地の造成)

第八十三条 土地所有者又は関係人は、前条第一項の規定による要求をする場合において、収用される土地が耕作を目的とするものであるときは、その要求にあわせて、収用される土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金に代る範囲内において、同条第七項の規定の趣旨により、替地となるべき土地について、起業者が耕地の造成を行うことを収用委員会に要求することができる。

2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、工事の内容及び工事を完了すべき時期を定めて、耕地の造成による損失の補償を替地による損失の補償にあわせて裁決することができる。

3 前項の場合において、起業者が国以外の者であるときは、収用委員会は、必要があると認めるときは、同時に起業者が耕地の造成のための担保を提供しなければならない旨の裁決をすることができる。

4 前項の規定による担保は、収用委員会が相当と認める金銭又は有価証券を供託することによつて、提供するものとする。

5 起業者が工事を完了すべき時期までに工事を完了しないときは、土地所有者又は関係人は、収用委員会の確認を得て前項の規定による担保の全部又は一部を取得する。この場合において、起業者は、収用委員会の確認を得て耕地の造成による損失の補償の義務を免かれるものとする。

6 起業者は、工事を完了したときは、収用委員会の確認を得て第四項の規定による担保を取りもどすことができる。

7 前二項の規定による担保の取得及び取りもどしに関する手続は、建設省令で定める。

 (工事の代行による補償)

第八十四条 第七十五条の場合において、起業者、土地所有者又は関係人は、補償金の全部又は一部に代えて、起業者が当該工事を行うことを収用委員会に要求することができる。

2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、工事の内容及び工事を完了すべき時期を定めて、工事の代行による損失の補償の裁決をすることができる。

3 前条第三項から第七項までの規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第三項及び第五項中「耕地の造成」とあるのは、「工事の代行」と読み替えるものとする。

 (移転の代行による補償)

第八十五条 第七十七条に規定する場合において、起業者又は物件の所有者は、移転料の補償に代えて、起業者が当該物件を移転することを収用委員会に要求することができる。

2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、移転の代行による損失の補償の裁決をすることができる。

 (宅地の造成)

第八十六条 第七十七条の規定により建物を移転しようとする場合において、移転先の土地が宅地以外の土地であるときは、土地所有者又は関係人は、第七十二条から第七十四条まで及び第八十八条の規定による損失の補償の一部に代えて、起業者が宅地の造成を行うことを収用委員会に要求することができる。

2 収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、工事の内容を定めて宅地の造成による損失の補償の裁決をすることができる。

 (請求、要求の方法)

第八十七条 第七十六条から第七十九条まで並びに第八十一条第一項及び第二項の規定による請求、第八十二条第一項、第八十三条第一項、第八十四条第一項、第八十五条第一項及び前条第一項の規定による要求は、第四十五条第一項若しくは第六十三条第二項の規定による意見書又は第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつてしなければならない。

 (通常受ける損失の補償)

第八十八条 第七十二条から第七十五条まで、第七十七条及び第八十条に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。

 (損失補償の制限)

第八十九条 土地所有者又は関係人は、第三十三条の規定による土地細目の公告の後において、土地の形質を変更し、工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは大修繕し、又は物件を附加増置したときは、あらかじめこれについて都道府県知事の承認を得た場合を除くの外、これに関する損失の補償を請求することができない。

2 土地の形質の変更、工作物の新築、改築、増築若しくは大修繕又は物件の附加増置がもつぱら補償の増加のみを目的とすると認められるときは、都道府県知事は、前項に規定する承認をしてはならない。

3 土地の形質の変更について、土地所有者又は関係人が第三十四条第一項の規定による許可を受けたときは、第一項の規定による承認があつたものとみなす。

 (起業利益との相殺の禁止)

第九十条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用する場合において、当該土地を収用し、又は使用する事業の施行に因つて残地の価格が増加し、その他残地に利益が生ずることがあつても、その利益を収用又は使用に因つて生ず損失と相殺してはならない。

    第二節 測量、事業の廃止等に因る損失の補償

 (測量、調査等に因る損失の補償)

第九十一条 第十一条第三項、第十四条又は第三十五条第一項の規定により土地又は工作物に立ち入つて測量し、調査し、又は障害物を伐除することに因つて損失を生じたときは、起業者は、損失を受けた者に対して、これを補償しなければならない。

2 前項の規定による損失の補償は、損失があつたことを知つた日から一年を経過した後においては、請求することができない。

 (事業の廃止又は変更等に因る損失の補償)

第九十二条 第三十三条の規定による土地細目の公告があつた後、起業者が事業の全部若しくは一部を廃止し、若しくは変更し、第二十九条の規定に因つて事業の認定が失効し、又は第百条の規定により裁決が失効したことに因つて土地所有者又は関係人が損失を受けたときは、起業者は、これを補償しなければならない。

2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。

 (収用し、又は使用する土地以外の土地に関する損失の補償)

第九十三条 土地を収用し、又は使用(第百二十二条第一項又は第百二十三条第一項の規定によつて使用する場合を含む。)して、その土地を事業の用に供することに因り、当該土地及び残地以外の土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者(以下この条において「損失を受けた者」という。)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。この場合において、起業者又は損失を受けた者は、補償金の全部又は一部に代えて、起業者が当該工事を行うことを要求することができる。

2 前項の規定による損失の補償は、事業に係る工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができない。

 (前三条による損失の補償の裁決手続)

第九十四条 前三条の規定による損失の補償は、起業者と損失を受けた者(前条第一項に規定する工事をすることを必要とする者を含む。以下この条において同じ。)とが協議して定めなければならない。

2 前項の規定による協議が成立しないときは、起業者又は損失を受けた者は、収用委員会の裁決を申請することができる。

3 前項の規定による裁決を申請しようとする者は、建設省令で定める様式に従い、左に掲げる事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければならない。

 一 裁決申請者の氏名及び住所

 二 相手方の氏名及び住所

 三 事業の種類

 四 損失の事実

 五 損失の補償の見積及びその内訳

 六 協議の経過

4 第十九条の規定は、前項の規定による裁決申請者の欠陥の補正について準用する。この場合において、「前条」とあるのは「第九十四条第三項」と、「事業認定申請書」とあるのは「裁決申請書」と、「建設大臣又は都道府県知事」とあるのは「収用委員会」と読み替えるものとする。

5 収用委員会は、第三項の規定による裁決申請書を受理したときは、前項において準用する第十九条第二項の規定により裁決申請書を却下する場合を除くの外、第三項の規定による裁決申請者及び裁決申請書に記載されている相手方にあらかじめ審理の期日及び場所を通知した上で、審理を開始しなければならない。

6 第五十条及び第五章第二節(第六十三条第一項及び第六十七条を除く。)の規定は、収用委員会が前項の規定によつて審理をする場合に準用する。この場合において、第五十条、第六十一条第一項、第六十三条第二項から第四項まで、第六十四条第二項及び第六十六条第三項中「起業者、土地所有者及び関係人」とあり、又は第五十条第二項中「収用し、又は使用しようとする土地の全部又は一部について起業者と土地所有者及び関係人の全員」とあるのは「裁決申請者及びその相手方」と、同条第二項及び第三項中「第四十八条第一項各号に掲げるすべての事項」とあるのは「損失の補償及び補償をすべき時期」と、同条第五項中「第四十八条第一項の規定による収用又は使用の裁決」とあるのは「第九十四条第八項の規定による裁決」と、第六十三条第三項中「第四十二条第一項の規定による裁決申請書の添附書類により、若しくは第四十五条第一項の規定による意見書により申し立てた事項又は前二項」とあるのは「第九十四条第三項の規定による裁決申請書により申し立てた事項又は前項」と、第六十五条第一項第一号中「起業者、土地所有者若しくは関係人」とあるのは「裁決申請者若しくはその相手方」と、第六十六条第一項及び第二項中「裁決及び決定」とあるのは「裁決」と、同条第二項及び第三項中「裁決書及び決定書」とあるのは「裁決書」と読み替えるものとする。

7 収用委員会は、第二項の規定による裁決の申請がこの法律の規定に違反するときは、裁決をもつて申請をを却下しなければならない。

8 収用委員会は、前項の規定によつて申請を却下する場合を除くの外、損失の補償及び補償すべき時期について裁決しなければならない。この場合において、収用委員会は、損失の補償については、裁決申請者及びその相手方が裁決申請書又は第六項において準用する第六十三条第二項の規定による意見書若しくは第六項において準用する第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつて申し立てた範囲をこえて裁決してはならない。

9 前項の規定による裁決に対して不服がある者は、第百三十三条第一項の規定にかかわらず、裁決書の正本の送達を受けた日から三十日以内に、損失があつた土地の所在地の裁判所に対して訴を提起しなければならない。

10 前項の規定による訴の提起がなかつたときは、第八項の規定によつてされた裁決は、強制執行に関しては、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第五百五十九条第三号の規定による債務名義とみなす。

11 前項の規定による債務名義について執行力ある正本は、収用委員会の会長が付与する。

12 前項の規定による執行文付与に関する異議についての裁判及び更に執行文付与についての裁判は、収用委員会の所在地を管轄する地方裁判所においてする。

   第七章 収用又は使用の効果

 (補償の払渡又は供託等)

第九十五条 起業者は、収用又は使用の時期までに、第四十八条第一項の規定による裁決に係る補償金の払渡、替地の譲渡及び引渡、第八十五条第二項の規定に基く物件の移転の代行又は第八十六条第二項の規定に基く宅地の造成をしなければならない。

2 起業者は、左の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、収用又は使用の時期までに補償金を供託することができる。

 一 補償金を受けるべき者がその受領を拒んだとき、又は補償金を受領することができないとき。

 二 起業者が過失がなくて補償金を受けるべき者を確知することができないとき。

 三 起業者が収用委員会の裁決した補償金額に対して不服があるとき。

 四 起業者が差押又は仮差押により補償金の払渡を禁じられたとき。

3 前項第三号の場合において補償金を受けるべき者の請求があるときは、起業者は、自己の見積金額を払い渡し、裁決による補償金額との差額を供託しなければならない。

4 起業者は、左の各号に掲げる場合においては、第一項の規定にかかわらず、収用又は使用の時期までに替地を供託することができる。

 一 替地を受けるべき者がその受領を拒んだとき、又は替地の譲渡若しくは引渡を受けることができないとき。

 二 起業者が差押又は仮差押により替地の譲渡又は引渡を禁じられたとき。

5 起業者は、裁決で定められた工事を完了すべき時期までに、第四十八条第一項の規定による裁決に係る第八十三条第二項の規定に基く耕地の造成又は第八十四条第二項の規定に基く工事の代行をしなければならない。

 (担保の供託)

第九十六条 第四十八条第一項の規定による裁決に係る第八十三条第四項(第八十四条第三項において準用する場合を含む。以下第九十七条及び第百条において同じ。)の規定に基く金銭又は有価証券の供託は、収用又は使用の時期までにしなければならない。

 (供託の方法)

第九十七条 第八十三条第四項並びに第九十五条第二項及び第三項の規定による金銭又は有価証券の供託は、収用し、又は使用しようとする土地の所在地の供託所にしなければならない。

2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百九十五条第二項並びに非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第八十一条及び第八十二条の規定は、第九十五条第四項の規定による替地の供託について準用する。

3 起業者は、前二項に規定する供託をしたときは、遅滞なく、その旨を補償金、替地又は担保を取得すべき者に通知しなければならない。

 (土地若しくは物件の引渡又は物件の移転)

第九十八条 土地所有者及び関係人その他収用し、又は使用しようとする土地又はその土地にある物件に関して権利を有する者は、収用又は使用の時期までに、起業者に土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転しなければならない。

 (土地若しくは物件の引渡又は物件の移転の代行及び代執行)

第九十九条 前条の場合において左の各号の一に該当するときは、市町村長は、起業者の請求により、土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者に代つて、土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転しなければならない。

 一 土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者がその責に帰することができない事由に因りその義務を履行することができないとき。

 二 起業者が過失がなくて土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者を確知することができないとき。

2 前条の場合において、土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者がその義務を履行しないとき、履行しても充分でないとき、又は履行しても収用若しくは使用の時期までに完了する見込がないときは、都道府県知事は、起業者の請求により、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。物件を移転すべき者が、第四十八条第一項の規定による裁決に係る第八十五条第二項の規定に基く移転の代行の提供の受領を拒んだときも、同様とする。

3 前項前段の場合において、都道府県知事は、義務者及び起業者にあらかじめ通知した上で、当該代執行に要した費用に充てるため、その費用の額の範囲内で、義務者が起業者から受けるべき補償金を義務者に代つて受けることができる。

4 起業者が前項の規定に基き補償金の全部又は一部を都道府県知事に支払つた場合においては、この法律の適用については、起業者が都道府県知事に支払つた金額の限度において、起業者が土地所有者又は関係人に補償金を支払つたものとみなす。

5 第二項後段の場合においては、物件の移転に要した費用は、行政代執行法第二条の規定にかかわらず、起業者から徴収するものとし、起業者がその費用を支払つたときは、起業者は、移転の代行による補償をしたものとみなす。

 (収用又は使用の裁決の失効)

第百条 起業者が収用又は使用の時期までに、第四十八条第一項の規定による裁決に係る補償金の払渡若しくは供託、替地の譲渡及び引渡若しくは供託、第八十五条第二項の規定に基く物件の移転の代行の提供、第八十六条第二項の規定に基く宅地の造成の提供又は第八十三条第四項の規定に基く金銭若しくは有価証券の供託をしないときは、第四十八条第一項の規定による収用委員会の裁決は、その効力を失う。

 (権利の取得、消滅及び制限)

第百一条 土地又は物件を収用するときは、起業者は、収用の時期において、当該土地又は物件の所有権を取得し、当該土地又は物件に関するその他の権利は、消滅する。但し、第七十六条第二項の規定に基く請求に係る裁決で存続を認められた権利については、この限りでない。

2 土地を使用するときは、起業者は、使用の時期において、当該土地を使用する権利を取得し、当該土地に関するその他の権利は、使用の期間中は、行使することができない。但し、裁決で認められた方法による当該土地の使用を妨げない権利については、この限りでない。

 (第八十一条第三項の規定による裁決の効果)

第百二条 第八十一条第三項の規定に基く裁決で存続を認められた権利は、前条第一項本文の規定にかかわらず、消滅しない。

2 第八十一条第三項の規定に基く裁決で存続を認められた権利の行使に対する制限の方法及び期間が定められたときは、この法律の適用については、当該権利の使用の裁決があつたものとみなす。

 (危険負担)

第百三条 収用又は使用の裁決があつた後に、収用し、又は使用すべき土地又は物件が土地所有者又は関係人の責に帰することができない事由に因つて滅失し、又はき損したときは、その滅失又はき損に因る損失は、起業者の負担とする。

 (担保物権と補償金又は替地)

第百四条 先取特権、質権若しくは抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合においては、これらの権利は、その目的物の収用又は使用に因つて債務者が受けるべき補償金又は替地に対しても行うことかできる。但し、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。

 (返還及び現状回復の義務)

第百五条 起業者は、土地を使用する場合において、その期間が満了したとき、又は事業の廃止、変更その他の事由に因つて使用する必要がなくなつたときは、遅滞なく、その土地を土地所有者又はその承継人に返還しなけばならない。

2 起業者は、前項の場合において、土地所有者の請求があつたときは、土地を原状に復しなければならない。但し、当該土地が第七十三条後段の規定によつて補償されたものであるときは、この限りでない。

 (買受権)

第百六条 収用の時期から十五年以内に、事業の廃止、変更その他の事由に因つて起業者が収用した土地の全部若しくは一部が不用となつたとき、又は収用の時期から五年を経過しても収用した土地の全部を事業の用に供しなかつたときは、収用の時期に土地所有者であつた者又はその包括承継人(以下「買受権者」と総称する。)は、当該土地が不用となつた時期から五年又は収用の時期から十五年のいずれか遅い時期までに、起業者が不用となつた部分の土地又は事業の用に供しなかつた土地及びその土地に関する所有権以外の権利に対して支払つた補償金に相当する金額を起業者に提供して、その土地を買い受けることができる。但し、第七十六条第一項の規定によつて収用した残地は、その残地とともに収用された土地でその残地に接続する部分が不用となつたときでなければ買い受けることができない。

2 前項の規定は、第八十二条の規定によつて土地所有者が収用された土地の全部又は一部について替地による損失の補償を受けたときは、適用しない。

3 第一項の場合において、土地の価格が収用の時期に比して著しく騰貴したときは、起業者は、訴をもつて同項の金額の増額を請求することができる。

4 第一項の規定による買受権は、不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の定めるところに従つて収用の登記がされたときは、第三者に対して対抗することができる。

 (買受権の消滅)

第百七条 前条第一項に規定する不用となつた土地又は事業の用に供しなかつた土地があるときは、起業者は、遅滞なく、その旨を買受権者に通知しなければならない。但し、起業者が過失がなくて買受権者を確知することができないときは、その土地が存する地方の新聞紙に、通知すべき内容を少くとも一月の期間をおいて三回公告しなければならない。

2 買受権者は、前項の規定による通知を受けた日又は第三回の公告があつた日から六月を経過した後においては、前条第一項の規定にかかわらず、買受権を行使することができない。

   第八章 収用又は使用に関する特別手続

    第一節 収用委員会の調停

 (調停の申立)

第百八条 第四十条の規定によつて協議を開始し、又は第四十一条の規定によつて裁決を申請した後、協議の成立又は第四十八条第一項の規定による裁決があるまでは、起業者は、何時でも、土地の全部又は一部について権利を取得し、又は消滅させるために、すべての土地所有者及び関係人の同意を得て、収用委員会の調停を申し立てることができる。

2 起業者は、前項の規定によつて収用委員会の調停を申し立てようとするときは、調停を申し立てようとする事由を記載した書面及び調停を申し立てることについて土地所有者及び関係人の同意があつたことを証する書面を収用委員会に提出しなければならない。

 (調停委員)

第百九条 収用委員会は、前条の規定によつて調停の申立があつたときは、調停委員をして調停を行わせる。

2 調停委員は、委員三人をもつて組織する。

3 委員は、収用委員会の委員のうちから、収用委員会の会長が命ずる。

4 収用委員会の会長は、必要があるとに認める場合においては、前項の規定にかかわらず、委員のうち二人については収用委員会の委員でない左に掲げる者のうちからそれぞれ一人を命ずることができる。

 一 起業者が推薦する者

 二 土地所有者及び関係人が推薦する者

5 収用委員会の委員のうちから命ぜられる委員のうち収用委員会の会長が指名する者は、調停委員の会議において委員長となる。

6 調停委員の会議は、委員長が招集し、その議事は、調停案を作成する場合を除き、委員の過半数で決する。可否同数の場合は、委員長が決する。

7 調停委員の委員は、非常勤とする。

 (非公開)

第百十条 調停の手続は、公開しない。

 (意見の聴取)

第百十一条 調停委員は、期日を定めて、起業者、土地所有者、関係人又は参考人の出頭を求め、その意見を聞かなければならない。

 (調停案の作成及び勧告)

第百十二条 調停委員は、適当と認める時期に、全委員の一致をもつて調停案を作成し、これを起業者、土地所有者及び関係人に示し、相当と認める期限を附してその受諾を勧告しなければならない。

 (調停案の受諾)

第百十三条 起業者、土地所有者及び関係人は、前条の規定による調停案を受諾したときは、調停書を作成し、署名押印して調停委員に提出しなければならない。

 (調停甲立の却下及び取下)

第百十四条 調停委員は、第百八条の規定によつて調停の申立があつた日から相当な期間を経過しても調停が成立するに至らないとき、又は調停が成立する見込がないときは、調停の申立を却下することができる。

2 起業者は、第百八条の規定によつて調停の申立をした日から二月を経過しても調停が成立しないときは、調停の申立を取り下げることができる。

3 第百十二条の規定による調停案の受諾の勧告があつた場合において、同条の規定によつて調停委員が定めた期限内に、起業者、土地所有者及び関係人が調停案を受諾しないときは、調停の申立を取り下げたものとみなす。

 (調停の効力)

第百十五条 調停委員が第百十三条の規定による調停書を受理したときは、この法律の適用については、第四十条の規定による協議が成立したものとみなす。

    第二節 協議の確認

 (協議の確認の申請)

第百十六条 土地の全部又は一部について起業者と土地所有者及び関係人の全員との間に第四十条の規定による協議が成立したときは、起業者は、第三十三条の規定による土地細目の公告があつた日から一年以内に限り、当該土地所有者及び関係人の同意を得て、当該土地の所在する都道府県の収用委員会に協議の確認を申請することができる。

2 起業者は、前項の規定による申請をしようとするときは、建設省令で定める様式に従い、土地所有者及び関係人の同意を得たことを証する書面を添えて、左に掲げる事項を記載した確認申請書を収用委員会に提出しなければならない。

 一 協議が成立した土地の所在、地番、地目及び面積

 二 前号の土地の土地所有者及び関係人の氏名及び住所

 三 協議によつて取得し、又は消滅させる権利の内容

 四 権利を取得し、又は消滅させる時期

 五 対価

 (確認申請書の欠陥の補正)

第百十七条 第十九条の規定は、前条第二項の規定による確認申請書の欠陥の補正について準用する。この場合において、「前条」とあるのは「第百十六条第二項」と、「事業認定申請書」とあるのは「確認申請書」と、「建設大臣又は都道府県知事」とあるのは「収用委員会」と読み替えるものとする。

 (協議の確認)

第百十八条 収用委員会は、第百十六条第二項の規定による確認申請書を受理したときは、前条において準用する第十九条第二項の規定により確認申請書を却下する場合を除くの外、市町村別に当該市町村に関係のある部分の写を当該市町村長に送付しなければならない。

2 市町村長は、前項の規定による書類を受け取つたときは、直ちに、確認の申請があつた旨を公告し、公告があつた日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。

3 市町村長は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、公告の日を収用委員会に報告しなければならない。

4 第二項の規定による公告があつたときは、利害関係人は、同項の縦覧期間内に、収用委員会に、協議の成立及び内容について、書面により、異議を申し立てることができる。

5 収用委員会は、第百十六条の規定による協議の確認の申請が法令の規定に違反せず、前項の規定による異議の申立がなく、又は異議の申立があつた場合においてその異議の申立が同項の規定に違反し、若しくは理由のないことが明らかであり、且つ、協議の内容が第七章の規定に適合するときは、第百十六条第二項各号に掲げる事項について確認をしなければならない。

 (確認の拒否)

第百十九条 収用委員会は、第百十六条の規定による協議の確認の申請があつた場合において、その申請が前条第五項の規定に該当しないときは、確認を拒否しなければならない。但し、異議の申立が申請に係る土地の一部に関するものであつて、他の部分に影響がないときは、その影響のない部分について、確認をしなけれはならない。

 (確認処分の方式及び確認書の送達)

第百二十条 第六十六条の規定は、第百十八条第五項若しくは前条但書の規定による確認又は前条本文の規定による確認の拒否に準用する。この場合において、「裁決及び決定」とあるのは「確認又は確認の拒否」と、「裁決書及び決定書」とあるのは「確認書及び確認拒否書」と、「起業者、土地所有者及び関係人」とあるのは「起業者、土地所有者、関係人及び第百十八条第四項の規定によつて異議を申し立てた利害関係人」と読み替えるものとする。

 (確認の効果)

第百二十一条 第百十八条第五項又は第百十九条但書の規定による確認があつたときは、この法律の適用については、第四十八条第一項の規定による収用又は使用の裁決があつたものとみなす。この場合において、起業者、土地所有者及び関係人は、協議の成立及び内容を争うことができない。

    第三節 緊急に施行する必要がある事業のため土地の使用

 (非常災害の際の土地の使用)

第百二十二条 非常災害に際し公共の安全を保持するために第三条各号の一に規定する事業を特に緊急に施行する必要がある場合においては、起業者は、事業の種類、使用しようとする土地の区域並びに使用の方法及び期間について市町村長の許可を受け、直ちに、他人の土地を使用することができる。但し、起業者が国であるときは当該事業の施行について権限を有する行政機関又はその地方支分部局の長が、起業者が都道府県であるときは都道府県知事が、事業の種類、使用しようとする土地の区域並びに使用の方法及び期間を市町村長に通知することをもつて足り、許可を受けることを要しない。

2 前項の規定によつて使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間は、公共の安全を保持するために必要且つやむを得ないと認められる範囲をこえてはならない。

3 市町村長は、第一項本文の規定による許可をしたとき、又は同項但書の規定による通知を受けたときは、直ちに、起業者の名称、事業の種類、使用しようとする土地の区域並びに使用の方法及び期間を土地の所有者及び占有者に通知しなければならない。

4 第一項の規定による使用の期間は、許可があつた日(同項但書の場合にあつては、市町村長に通知をした日)から六月をこえることができない。

 (緊急に施行する必要がある事業のための土地の使用)

第百二十三条 収用委員会は、第四十一条の規定による裁決の申請に係る事業を緊急に施行する必要がある場合で、第四十八条第一項の規定による裁決が遅延することによつて事業の施行が遅延し、その結果、災害を防止することが困難となり、その他公共の利益に著しく支障を及ぼす虞があるときは、起業者の申立により、土地の区域及び使用の方法を定め、起業者に担保を提供させた上で、直ちに、当該土地を使用することを許可することができる。

2 前項の規定による使用の期間は、六月とする。使用の許可の期間の更新は、行うことができない。

3 収用委員会は、第一項の規定による許可をしたときは、直ちに、起業者の名称、事業の種類、使用しようとする土地の区域並びに使用の方法及び期間を土地の所有者及び占有者に通知しなければならない。

4 起業者は、第一項の場合において、土地所有者及び関係人の請求があるときは、自己の見積つた損失補償額を払い渡さなければならない。

5 第一項の規定による使用の許可があつた後、第四十八条第一項の規定による裁決があつたときは同条第一項第三号の時期において、第四十七条の規定によつて却下の裁決があつたときはその裁決の時期において、第一項の規定による使用の許可は、第二項の規定にかかわらず、その効力を失う。

6 第八十三条第四項から第七項までの規定は、第一項の規定によつて提供すべき担保並びにその取得及び取りもどしについて準用する。この場合において、同条第四項中「前項」とあるのは「第百二十三条第一項」と、同条第五項及び第六項中「工事を完了」とあるのは「補償の支払を」と、同条第五項中「耕地の造成による損失の補償」とあるのは「損失の補償」と読み替えるものとする。

 (前二条の使用に因る損失の補償)

第百二十四条 起業者は、第百二十二条第一項の規定によつて土地の使用の許可を受けた場合、前条第二項の規定による使用の期間が満了した場合又は同条第五項の規定によつて使用の許可が失効した場合においては、土地を使用することに因つて生ずる損失を第六章第一節(第七十一条、第七十八条、第七十九条及び第八十一条を除く。)の規定によつて補償しなければならない。この場合において、損失の補償は、使用の時期の価格によつて算定しなければならない。

2 第九十四条(第六項を除く。)の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第一項中「前三条」とあるのは「第百二十四条第一項」と、同条第八項中「第六項」とあるのは「第百二十四条第三項において準用する第六項」と読み替えるものとする。

3 第九十四条第六項の規定は、収用委員会が前項において準用する第九十四条第五項の規定によつて審理をする場合に準用する。この場合において「第九十四条」とあるのは、「第百二十四条第二項において準用する第九十四条」と読み替えるものとする。

   第九章 手数料及び費用の負担

 (手数料)

第百二十五条 左の各号の一に掲げる者は、第一号の場合にあつては事業の認定をなすべき者が建設大臣であるときは国に、都道府県知事であるときは都道府県に、第二号から第五号までの場合にあつては都道府県に、一万円をこえない範囲において政令で定める額の手数料を納めなければならない。但し、これらの者が国又は都道府県(政令で定める場合を除く。)であるときは、この限りでない。

 一 第十八条の規定によつて事業の認定を申請する者

 二 第四十一条又は第九十四条第二項(第百二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定によつて収用若しくは使用又は損失の補償の裁決を申請する者

 三 第百八条の規定によつて収用委員会の調停を申し立てる者(裁決申請中の者を除く。)

 四 第百十六条の規定によつて収用委員会の協議の確認を申請する者

 五 他の法律の規定によつて収用委員会の裁決を求める者

 (鑑定人等の旅費及び手当の負担)

第百二十六条 第六十五条第五項(第九十四条第六項又は第百二十四条第三項において準用する第九十四条第六項において準用する場合を含む。)の規定による鑑定人及び参考人の旅費及び手当は、起業者の負担とする。

 (手続費、義務履行費その他の費用の負担、徴収等)

第百二十七条 起業者、土地所有者及び関係人がこの法律又はこの法律に基く命令に規定する手続その他の行為をし、又は義務を履行するために要する費用は、それぞれの者が自ら負担しなければならない。

第百二十八条 市町村長は、第九十九条第一項の規定により市町村長が土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転するに要した費用を、第九十八条の規定により土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者から徴収するものとする。

2 第九十九条第三項及び第四項の規定は、市町村長が前項の規定によつて費用を徴収する場合に準用する。この場合において、同条第三項中「前項前段」とあるのは「第百二十八条第一項」と、「当該代執行に要した費用」とあるのは「第一項の規定により市町村長が土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転するに要した費用」と、同項及び同条第四項中「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と読み替えるものとする。

3 市町村長は、第一項に規定する費用を前項において準用する第九十九条第三項の規定によつて徴収することができないとき、又は徴収することが適当でないと認めるときは、第一項に規定する者に対し、あらかじめ納付すべき金額、納付の期限及び場所を通知して、これを納付させるものとする。

4 市町村長は、前項の規定によつて通知を受けた者が同項の規定によつて通知された期限を経過しても同項の規定により納付すべき金額を完納しないときは、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促しなければならない。

5 前項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに第三項の規定により納付すべき金額を納付しないときは、市町村長は、国税滞納処分の例によつて、これを徴収することができる。この場合における徴収金の先取特権は、市町村の地方税以外の徴収金と同順位とする。

   第十章 訴願及び訴訟

 (訴願)

第百二十九条 都道府県知事がした事業の認定に対して利害関係を有する者が当該事業の認定について不服があるときは、第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から二週間以内に、建設大臣に訴願することができる。

2 収用委員会の裁決に対して不服がある者は、裁決書の正本の送達を受けた日から二週間以内に、建設大臣に訴願することができる。但し、損失の補償(第七十六条第一項、第七十八条及び第八十一条第一項の規定による請求に係る裁決を除く。)に関しては、訴願することができない。

 (訴願の裁決)

第百三十条 前条第一項の規定による訴願があつた場合において、事業の認定が法令の規定に違反し、又は不当であると認めるときは、建設大臣は、事業の認定の全部又は一部を取り消し、又は変更する裁決をすることができる。

2 前条第二項の規定による訴願があつた場合において、収用委員会の裁決が法令の規定に違反し、又は不当であると認めるときは、建設大臣は、原裁決の全部又は一部を取り消し、又は変更する裁決をすることができる。

3 建設大臣は、前二項の規定によつて、事業の認定又は原裁決を取り消した場合において必要があると認めるときは、事件を都道府県知事又は収用委員会に差しもどすことができる。

4 前項の規定によつて事件の差しもどしを受けた場合においては、都道府県知事は再び事業の認定に関する処分を行い、収用委員会は再び審理し、裁決しなければならない。この場合において、事業の認定又は裁決のため既に行つた手続その他の行為は、法令の規定に違反するものとして、事業の認定又は原裁決の取消の理由となつたものを除き、省略することができる。

5 建設大臣は、訴願が理由がないと認めるときは、裁決をもつてこれを却下しなければならない。

6 建設大臣は、前条の規定による訴願があつた場合において、都道府県知事の事業の認定又は収用委員会の裁決に至るまでの手続その他の行為に関して違法があつてもそれが軽微なものであつて、事業の認定又は裁決に影響を及ぼす虞がないと認めるときは、裁決をもつて訴願を却下することができる。

第百三十一条 建設大臣は、第百二十九条の規定による訴願に対して、前条第一項、第二項、第五項又は第六項の規定による裁決をするときは、あらかじめ土地調整委員会の意見を聞かなければならない。

 (訴訟)

第百三十二条 建設大臣の違法の裁決の取消又は変更を求める訴は、裁決書の正本の送達を受けた日から二週間以内に提起しなければならない。

第百三十三条 収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴は、裁決書の正本の送達を受けた日から三月以内に提起しなければならない。

2 前項の規定による訴は、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。

第百三十四条 前条の規定による訴の提起は、事業の進行及び土地の収用又は使用を停止しない。

   第十一章 雑則

 (期間の計算、通知及び書類の送達の方法)

第百三十五条 この法律の規定による期間の計算方法は、訴願及び訴訟の提起の期間の計算方法を除き、民法による。但し、十二月二十九日から三十一日までの日は同法第百四十二条の規定によるその他の休日とみなし、申請書、意見書、調停の申立及び異議の申立を郵便で差し出した場合においては、郵送に要した日数は、期間に算入しない。

2 この法律に規定する通知及び書類の送達の方法に関して必要な事項は、政令で定める。

 (代理人)

第百三十六条 起業者、土地所有者及び関係人は、事業の認定の申請、裁決の申請、意見書の提出等この法律で定める手続その他の行為について弁護士その他適当な者を代理人とすることができる。

2 前項の代理人は、書面をもつて、その権限を証明しなければならない。

 (秘密を守る義務)

第百三十七条 収用委員会の委員、予備委員及び調停委員の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。これらの者が、その職を退いた後も、同様とする。

 (権利、物件及び土石砂れきの収用又は使用に関する準用規定)

第百三十八条 第十条、第三章、第四章、第五章第二節、第六章(第七十六条及び第八十一条を除く。)第七章(第百二条、第百六条及び第百七条を除く。)第八章から第十章まで及び第百三十六条の規定は、第五条に掲げる権利若しくは第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合又は第七条に規定する土石砂れきを収用する場合に準用する。但し、左の各号に掲げる場合においては、第六章及び第七章の規定中それぞれ当該各号に掲げる規定は、準用しない。

 一 第五条第一項第一号に掲げる質権若しくは抵当権、同項第二号若しくは第三号若しくは同条第二項若しくは第三項に掲げる権利又は第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合 第八十二条及び第八十三条

 二 第七条に規定する土地に属する土石砂れきを収用する場合 第七十三条、第八十二条、第八十三条、第九十八条、第九十九条、第百一条及び第百五条

2 前項において準用するこの法律の規定中「土地所有者」とあるのは、第五条に掲げる権利を収用し、又は使用する場合においては「当該権利者」と、第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合においては「当該物件の所有者」と、第七条に規定する土石砂れきを収用する場合においては「当該土石砂れきの属する土地の所有者」と読み替えるものとし、左の各号に掲げる場合においては、当該各号に掲げる前項において準用するこの法律の規定の読替は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 第五条に掲げる権利を収用し、又は使用する場合 第三十四条第一項中「形質の変更」とあり、又は同条第二項中「土地の形質の変更」とあるのは第五条第一項又は第三項に掲げる権利を収用し、又は使用する場合にあつては「当該権利の目的であり、又は当該権利に関係のある土地、河川の敷地又は水の形質の変更」と、同条第二項に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件に関する権利を収用し、又は使用する場合にあつては「当該権利の目的である立木、建物その他土地に定着する物件の損壊又は収去」と、第三十七条第一項(第一号及び第二号を除く。)中「土地」とあるのは「権利」と、同項第一号中「土地」とあるのは「権利の目的であり、又は当該権利に関係のある土地、河川の敷地、水又は立木、建物その他土地に定着する物件」と、同項第二号中「土地の面積」とあるのは「権利の種類及び内容」と、第四十条並びに第百十六条第二項第三号及び第四号中「取得し、又は消滅させる」とあるのは「消滅させ、又は制限する」と、第百一条第一項中「起業者は、収用の時期において、当該土地又は物件の所有権を取得し」とあるのは「収用の時期において、当該権利は、消滅し、起業者は、当該物件の所有権を取得し」と、同条第二項中「起業者は、使用の時期において、当該土地を使用する権利を取得し」とあるのは「使用の時期において、当該権利は、制限され」と、第百三条中「滅失し、又はき損し」とあるのは「消滅し、又は変更し」と、「滅失又はき損」とあるのは「消滅又は変更」と読み替えるものとする。

 二 第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、又は使用する場合 第三十四条中「形質の変更」とあるのは「損壊又は収去」と読み替え、第三十七条第一項第一号から第三号までの規定は、同条第二項第一号から第三号までに規定する字句に読み替えるものとする。

三 第七条に規定する土地に属する土石砂れきを収用する場合 第三十四条中「形質の変更」とあるのは「土石砂れきの属する土地の形質の変更」と、第三十七条第一項(第一号及び第二号を除く。)中「土地」とあるのは「土地に属する土石砂れき」と、同項第一号中「土地」とあるのは「土石砂れきの属する土地」と、同項第二号中「土地の面積」とあるのは「土石砂れきの種類及び数量」と読み替えるものとする。

3 前項に規定するものの外、第一項において準用するこの法律の規定に関して必要な技術的読替は、政令で定める。

 (土石砂れきを収用する場合の効果の特例)

第百三十九条 第七条の規定によつて土石砂れきを収用する場合においては、起業者は、収用の時期において、当該土石砂れきを採取する権利を取得し、当該土石砂れきの属する土地に関するその他の権利は、その採取に支障を及ぼす限度において、行使することができない。

2 前項の場合においては、土石砂れきの属する土地の所有者及び関係人その他当該土地に関して権利を有する者は、収用の時期までに、当該土地を起業者に引き渡さなければならない。

 (特別地方公共団体に関する規定)

第百四十条 この法律(第三条を除く。)の規定中市町村又は市町村長に関する規定は、都の特別区の存する区域にあつては特別区若しくは特別区長に、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項の規定による市にあつては当該市の区若しくは区長に適用する。

2 この法律の規定中町村又は町村長に関する規定は、町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものがある場合においては、当該町村組合又はその管理者に適用する。

   第十二章 罰則

第百四十一条 左の各号の一に該当する場合は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

一 第六十五条第一項第二号(第九十四条第六項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)、第百二十四条第三項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)において準用する第九十四条第六項又は第百三十八条第一項において準用する場合を含む。以下第百四十六条第一号において同じ。)の規定によつて、収用委員会に出頭を命ぜられた鑑定人が虚偽の鑑定をしたとき。

 二 第百三十七条の規定により秘密を守る義務がある者が、職務上知り得た秘密を漏らしたとき。

第百四十二条 第三十四条第一項(第百三十八条第一項において準用する場合(第六条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件を収用し、若しくは使用し、又は第七条に規定する土石砂れきを収用する場合に限る。)を含む。)の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。

第百四十三条 左の各号の一に該当する者は三万円以下の罰金に処する。

 一 第十一条第一項に規定する場合において、都道府県知事の許可を受けないで土地に立ち入り、又は立ち入らせた起業者

 二 第十三条(第三十五条第三項又は第百三十八条第一項において準用する第三十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して第十一条第三項の規定による立入を拒み、又は妨げた者

 三 第十四条第一項に規定する場合において、市町村長の許可を受けないで障害物を伐除した者

 四 第九十八条(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、土地若しくは物件を引き渡さず、又は物件を移転しない者

 五 第百三十九条第二項の規定に違反して土地を引き渡さない者

第百四十四条 第六十五条第一項第三号(第九十四条第六項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)第百二十四条第三項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)において準用する第九十四条第六項又は第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による実地調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の罰金に処する。

第百四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するの外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。

第百四十六条 左の各号の一に該当する場合は、一万円以下の過料に処する。

 一 第六十五条第一項第二号の規定により出頭を命ぜられた鑑定人が、正当の事由がなくて出頭せず、又は鑑定をしないとき。

 二 第六十五条第一項第一号(第九十四条第六項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)、第百二十四条第三項(第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)において準用する第九十四条第六項又は第百三十八条第一項において準用する場合を含む。以下第三号において同じ。)の規定により出項を命ぜられた者が、正当の事由がなくて出頭せず、陳述せず、又は虚偽の陳述をしたとき。

 三 第六十五条第一項第一号の規定により資料の提出を命ぜられた者が、正当の事由がなくて資料を提出せず、又は虚偽の資料を提出したとき。

   附 則

 この法律の施行期日は、公布の日から起算して一年をこえない期間内において、政令で定める。

(内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名) 

法令一覧(年度別)に戻る