造幣庁特別会計法
法律第六十三号(昭二五・三・三一)
目次
第一章 総則(第一条―第九条)
第二章 資本及び資産(第十条―第十七条)
第三章 補助貨幣回収準備資金(第十八条―第二十一条)
第四章 運転資金(第二十二条―第二十四条)
第五章 資金計画(第二十五条)
第六章 予算(第二十六条―第二十八条)
第七章 収入及び支出(第二十九条)
第八章 決算(第三十条―第三十五条)
第九章 雑則(第三十六条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(設置)
第一条 造幣庁の事業を企業的に運営し、その健全な発達に資するため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理する。
(事業の範囲)
第二条 この法律において「造幣庁の事業」とは、造幣庁の行う貨幣、章はい、記章、極印、合金及び金属工芸品の製造、貴金属の精製、配給及び品位の証明並びに鉱物の試験その他これらに附帯する業務及び事務をいう。
(管理)
第三条 この会計は、大蔵大臣が、法令の定めるところに従い、管理する。
(計理の区分)
第四条 この会計においては、造幣庁の事業の資産及び資本の増減異動並びに利益又は損失を明らかにするため、資産勘定、資本勘定及び損益勘定を設けて計理するものとする。
2 資産勘定は、資産の増減及び異動並びにその現在高を明らかにする。
3 資本勘定は、資本の増減及び異動並びにその現在高を明らかにする。
4 損益勘定は、収益勘定及び損失勘定に区分し、事業の収益又は損失を明らかにする。
(計理の方法)
第五条 この会計の計理は、現金の収納又は支払の事実にかかわらず、財産の増減及び異動の事実に基いて行う。
2 前項の財産の増減及び異動の事実がいつ発生したか及びその事実がいずれの会計年度に属するかについての計理の基準は、政令で定める。
(原価計算)
第六条 この会計においては、大蔵大臣の定めるところにより、造幣庁の事業に関し必要な原価計算を行うものとする。
(一般会計からの繰入)
第七条 政府は、補助貨幣(貨幣法(明治三十年法律第十六号)第三条に規定する貨幣で金貨幣以外のもの及び臨時通貨法(昭和十三年法律第八十六号)第一条に規定する臨時補助貨幣をいう。以下同じ。)の製造のため、この会計の固定資産の拡張及び改良に充てるに必要な金額並びに補助貨幣の製造に要する経費を、予算の定めるところにより、一般会計から、この会計に繰り入れることができる。
2 前項の規定により、固定資産の拡張及び改良に充てるため一般会計からこの会計に繰り入れた金額は、この会計の固有資本の増加に充てるものとする。
(引換貨幣又は回収貨幣の帰属)
第八条 政府において、引き換え、又は回収した補助貨幣は、この会計の資産に帰属するものとする。
(回収準備資金への繰入)
第九条 この会計において、製造済の補助貨幣で政府の発行に係るものの価額に相当する金額は、第十八条第一項に規定する補助貨幣回収準備資金に編入しなければならない。
第二章 資本及び資産
(資本及びその整理区分)
第十条 この会計の資本は、固有資本、減価償却引当金及び借入資本の三種とする。
2 固有資本は、従前の造幣庁特別会計からこの会計に引き継いだ固定資本及び据置運転資本の額並びに従前の造幣庁特別会計の資金に属する地金(引換貨幣及び回収貨幣を含む。)の価額に相当する金額の合計額とする。
3 減価償却引当金は、この会計に属する資産の減価償却額の累積額(第十四条第三項の規定により繰り戻した金額があるときは、その金額を控除した額)に相当する金額とする。
4 借入資本は、この会計の負担に属する一時借入金、未払金、前受金、保管金その他これらに準ずる負債の額に相当する金額とする。
(資産及びその整理区分)
第十一条 この会計の資産は、固定資産、作業資産及び流動資産に区分する。
2 固定資産は、土地、建物、立木竹、工作物、未完成工事、機械及び標本並びに大蔵大臣の指定する器具及び特許権その他これに準ずる権利とする。
3 作業資産は、生産品、地金(引換貨幣及び回収貨幣を含む。)、原材料、備品及び未成品その他これらに準ずる物品とする。
4 流動資産は、現金、預金、未収金、前払金その他これらに準ずるものとする。
(固定資産の価額)
第十二条 固定資産の価額は、その取得のために要した大蔵大臣の定める直接費及び間接費の合計額による。但し、無償で取得した固定資産の価額は、時価を勘案して定めるものとする。
(減価償却)
第十三条 固定資産のうち、大蔵大臣の定める償却資産については、その定めるところにより、毎会計年度、減価償却を行うものとする。
(固定資産の価額の改定及び削除)
第十四条 固定資産の全部又は一部が滅失したとき、又はこれを譲渡し、撤去し、若しくは廃棄したときは、大蔵大臣の定めるところにより、その滅失、譲渡、撤去又は廃棄の割合に応じてその価額を減額し、又は削除しなければならない。
2 一般物価の変動その他特殊の事由により固定資産の価額が著しく不適当となつたときは、大蔵大臣の定めるところにより、その価額を改定することができる。
3 前二項の規定により価額を減額し、又は削除する資産が償却資産であるときは、大蔵大臣の定めるところにより、当該資産に対する減価償却済額を減価償却引当金から繰り戻すものとする。
(作業資産の価額)
第十五条 作業資産の価額は、購入価額又は製造に要した費額による。
2 前項の規定により価額を定め難い場合又は特殊の事由により前項の規定により価額を定めることが不適当である場合には、時価を勘案して定めるものとする。
3 前二項の規定にかかわらず、引換貨幣及び回収貨幣の価額は、地金の時価による。
(作業資産の価額等の振替)
第十六条 作業資産を事業の用に供したときは、その価格を作業資産から削除し、これを使用する事業の経費の支出として計理するものとする。
2 作業資産の取扱に要する諸費は、大蔵大臣の定めるところにより、前項の経費の支出額に割り掛けるものとする。
3 資産外物品を修理したときは、その修理に要した費用は、大蔵大臣の定めるところにより、当該物品を使用する事業の経費の支出として計理するものとする。
(作業資産の価額の改定及び削除)
第十七条 作業資産がき損し、変質し、若しくは滅失したとき、又は規格の変更によりこれに適合しなくなつたときは、そのき損、変質若しくは滅失の割合又は規格に適合しなくなつた割合に応じて、その価額を減額し、又は削除しなければならない。
2 毎会計年度末に現存する作業資産の価額については、当該作業資産の時価が第十五条の規定による価額以下に低落した場合に限り、時価によりこれを減額しなければならない。
第三章 補助貨幣回収準備資金
(回収準備資金の設置)
第十八条 補助貨幣の回収に充てるため、この会計に補助貨幣回収準備資金(以下「回収準備資金」という。)を置き、従前の造幣庁特別会計の資金に属していた現金、第九条の規定により編入する金額及び第十九条第二項の規定による運用利益金(この会計の歳入に繰り入れる金額を除く。)をもつてこれに充てる。
2 前項に規定する回収準備資金として準備すべき額は、補助貨幣の発行現在高に相当する金額とする。
3 回収準備資金として準備した金額が当該年度末における補助貨幣発行現在高を超過するときは、当該超過額に相当する金額は、この会計の翌年度の歳入に繰り入れるものとする。
(回収準備資金の運用及び運用益の処理)
第十九条 補助貨幣の発行によつて回収準備資金に生じた現金は、大蔵省預金部に預け入れる場合に限り、運用することができる。
2 前項の規定により運用利益金を生じたときは、当該利益金は、回収準備資金の資産の価額が前条第二項に規定する額に達するまでは、回収準備資金に編入するものとし、超過した場合は、当該超過額に相当する金額は、この会計の歳入に繰り入れるものとする。
(回収準備資金の計理方法)
第二十条 回収準備資金の受払は、大蔵大臣の定めるところにより、この会計の歳入歳出外として計理するものとする。
(回収準備資金の経理の委任)
第二十一条 回収準備資金の経理は、大蔵大臣が造幣庁長官に命じて執行させる。但し、他の職員に命じてその一部を執行させることができる。
第四章 運転資金
(一時借入金)
第二十二条 この会計において、支払上現金に不足があるときは、この会計の負担において、一時借入金をすることができる。
2 前項の規定による一時借入金の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。
3 第一項の規定による一時借入金は、当該年度内に償還しなければならない。但し、歳入減少のため償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、一時借入金の借換をすることができる。
4 前項但書の規定により借換をした一時借入金は、その借換をしたときから一年内に償還しなければならない。
(国債整理基金特別会計への繰入)
第二十三条 この会計において、前条の規定により一時借入金をしたときは、その償還金及び利子の支払に要する経費の支出に必要な金額は、その支出を要するときにおいて国債整理基金特別会計に繰り入れなければならない。但し、年度内に償還する一時借入金の償還金については、この限りでない。
(余裕金の運用)
第二十四条 この会計に余裕金があるときは、大蔵省預金部に預け入れることができる。
第五章 資金計画
(資金計画等)
第二十五条 この会計においては、回収準備資金の増減異動を明らかにし、運転資金の資金繰りを円滑にするため、大蔵大臣の定めるところにより、資金計画をたて、且つ、その実績を明らかにしなければならない。
第六章 予算
(歳入歳出予定計算書等の作製)
第二十六条 大蔵大臣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出予定計算書及び国庫債務負担行為要求書を作製しなければならない。
(歳入歳出予算の区分)
第二十七条 この会計の歳入歳出予算は、歳入の性質及び歳出の目的に従つて、款及び項に区分する。
(予算の作成及び提出)
第二十八条 内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならない。
2 前項の予算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出予定計算書及び国庫債務負担行為要求書
二 前前年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書及び第二十五条の規定による実績表
三 前年度及び当該年度の予定貸借対照表、予定損益計算書及び第二十五条の規定による計画表
四 国庫債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末までの支出額及び支出額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについては、その全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書
第七章 収入及び支出
(収入及び支出の委任)
第二十九条 この会計の歳入歳出予算及び国庫債務負担行為は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第三十一条第一項の規定により配賦のあつた後、予備費を除き、大蔵大臣が造幣庁長官に命じて執行させる。但し、他の職員に命じてその一部を執行させることができる。
第八章 決算
(財務諸表の作製)
第三十条 大蔵大臣は、毎会計年度、この会計の財産目録、貸借対照表、損益計算書、資産価額増減表及び資本増減表を作製しなければならない。
(利益の資本金への増加)
第三十一条 この会計において、毎会計年度の決算上利益を生じたときは、その利益のうち当該年度末における固定資産及び作業資産の価額(第七条第一項の規定により増加した固定資産の価額及び第二十二条第三項の規定による一時借入金の借換額に相当する資産の価額並びに当該年度末における引換貨幣及び回収貨幣の残高に相当する価額及び未発行貨幣の価額を除く。)から前年度末における当該資産の価額を控除した金額に相当する金額をこの会計の固有資本の増加に充てることができる。
(利益の一般会計への納付)
第三十二条 この会計において、毎会計年度の決算上の利益の額から、前条の規定によりこの会計の固有資本の増加に充てる金額を控除した残額は、当該利益を生じた年度の一般会計の歳入に納付するものとする。
2 前項の規定によりこの会計の決算上の利益を一般会計へ納付する場合において、この会計に属する現金が納付すべき利益の額に達しないとき、又はその金額の一部をこの会計の運転資金の増加に充てる必要があるときは、大蔵大臣が当該年度の一般会計へ納付すべき金額を決定し、当該金額を納付するものとする。
3 前項の規定により当該年度に納付しなかつた金額は、翌年度以降において、大蔵大臣の定めるところにより、一般会計へ納付しなければならない。
(損失の処理)
第三十三条 この会計において、毎会計年度における決算上損失を生じたときは、損失の繰越として整理するものとする。
(歳入歳出決定計算書の作製)
第三十四条 大蔵大臣は、毎会計年度、歳入歳出予定計算書と同一の区分によるこの会計の歳入歳出決定計算書及びこの会計の債務に関する計算書を作製しなければならない。
(歳入歳出決算の作成及び提出)
第三十五条 内閣は、毎会計年度、この会計の歳入歳出決算を作成し、一般会計の歳入歳出決算とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 前項の歳入歳出決算には、左の書類を添附しなければならない。
一 歳入歳出決定計算書
二 当該年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書、資産価額増減表、資本増減表及び第二十五条の規定による実績表
三 債務に関する計算書
第九章 雑則
(支出未済の繰越)
第三十六条 この会計において、支払義務の生じた歳出金で、当該年度の出納の完結までに支出済とならなかつたものに係る歳出予算は、翌年度に繰り越して使用することができる。
2 前項の規定による繰越については、財政法第四十三条の規定は、適用しない。
3 大蔵大臣は、第一項の規定により繰越をしたときは、会計検査院に通知しなければならない。
4 第一項の規定により繰越をしたときは、その経費については、財政法第三十一条第一項の規定により予算の配賦があつたものとみなす。
(経理規程)
第三十七条 大蔵大臣は、この会計に関し、この法律及びこれに基く政令に定めるものの外、造幣庁の事業の能率的な運営と予算の適正な執行を図るため、経理規程を定めなければならない。
(実施規定)
第三十八条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。
2 造幣庁特別会計法(大正四年法律第九号)(以下「旧特別会計法」という。)は、廃止する。但し、昭和二十四年度の決算に関しては、なお、その効力を有する。
3 旧特別会計法第六条の規定により、従前の造幣庁特別会計の昭和二十四年度の決算における作業上の益金を資金に編入する場合において、作業上の益金と作業に属する現金との差額とこの会計の運転資金に充てるため必要がある場合に大蔵大臣がこの会計の昭和二十五年度の資金計画を勘案して定める金額との合計額に相当する金額は、旧特別会計法第六条の規定にかかわらず、資金に編入することを要しない。
4 前項の規定により資金に編入することを要しない金額については、昭和二十六年度までに、この会計から回収準備資金に編入しなければならない。
5 この法律施行の際従前の造幣庁特別会計に属する資産及び資本並びに資金に属する地金、引換貨幣及び回収貨幣は、この会計に帰属するものとする。
6 この法律施行の際従前の造幣庁特別会計の資金に属する現金は、この会計の回収準備資金に帰属するものとする。
(大蔵・内閣総理大臣署名)