滅失鉱業原簿調整等臨時措置法
法律第二百六号(昭二五・五・二六)
(目的)
第一条 この法律は、空襲その他戦災により鉱業原簿等が滅失したため不明確となつた鉱業又は砂鉱業に関する権利関係を確定することを目的とする。
(調製の申請)
第二条 別表第一に掲げる空襲その他戦災により滅失した鉱業原簿(以下「滅失鉱業原簿」という。)に登録されていた鉱業権の鉱業権者、旧重要鉱物増産法(昭和十三年法律第三十五号)附則第三項の規定によりなおその効力を有する同法第十七条ノ二の規定による使用権者若しくは抵当権者又は仮登録名義人は、省令で定める手続に従い、この法律施行の日から六箇月以内までに通商産業局長に鉱業原簿の調製の申請をしなければならない。
2 債権者が民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十三条の規定により債務者に代位して前項の規定による申請をするには、省令で定める手続に従わなければならない。
(登録の嘱託の申立)
第三条 滅失鉱業原簿に裁判所の嘱託に基いて登録されていた事項について鉱業原簿にその登録を受けようとする者は、前条第一項の期間内に当該裁判所にその嘱託をすべきことを申し立てなければならない。別表第一に掲げる鉱業に関する登録の嘱託書による嘱託に基いて登録されるべきであつた事項についても、同様とする。
2 裁判所は、前項の規定による申立を相当と認めるときは、遅滞なくその登録の嘱託をしなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定による申立を相当でないと認めるときは、決定をもつてこれを却下することができる。
4 非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)の規定は、前項の決定に準用する。
5 裁判所は、第一項の期間内は、職権をもつて同項に規定する事項の登録の嘱託をすることができる。
(記載の通知の請求)
第四条 滅失鉱業原簿に鉱業抵当法(明治三十八年法律第五十五号)第三条において準用する工場抵当法(明治三十八年法律第五十四号)の規定による通知に基いて記載されていた事項について鉱業原簿にその記載を受けようとする者は、第二条第一項の期間内に当該通知をした登記所に更にその通知をすべきことを請求しなければならない。別表第一に掲げる鉱業財団に関する通知書による通知に基いて記載されるべきであつた事項についても、同様とする。
2 登記所は、前項の規定による請求があつたときは、遅滞なくその記載の通知をしなければならない。
3 登記所は、第一項の期間内は、職権をもつて同項に規定する事項の記載の通知をすることができる。
(確認の申請)
第五条 別表第一に掲げる鉱業に関する願書又は登録の申請書を提出していた者は、省令で定める手続に従い、第二条第一項の期間内に通商産業局長にその確認を申請しなければならない。
(権利の消滅等)
第六条 第二条第一項の期間内に同条の規定による申請がなかつたとき、又は同条の規定による申請について次条第一項の規定による却下が確定したときは、第二条第一項に規定する権利は、滅失鉱業原簿の滅失の時に消滅したものとみなす。
2 第三条第一項の期間内に同項の規定による申立がなかつたとき(同条第五項の規定による嘱託があつた場合を除く。)、又は同条第三項の規定による却下の決定が確定したときは、滅失鉱業原簿の滅失の時に同条第一項に規定する事項の登録又は登録の嘱託がなかつたものとみなす。
3 第四条第一項の期間内に同項の規定による請求がなかつたとき(同条第三項の規定による通知があつた場合を除く。)は、滅失鉱業原簿の滅失の時に同条第一項に規定する事項の記載又は記載の通知がなかつたものとみなす。
4 前条の期間内に同条の規定による申請がなかつたときは、同条に規定する鉱業に関する願書又は登録の申請書は、提出されなかつたものとみなす。
(却下)
第七条 通商産業局長は、第二条の規定による申請があつた場合において、鉱業権の設定又は変更の際交付された書面及び図画、登録を完了したことを証する書類、鉱業原簿の謄本又は抄本その他登録について実質的な証拠とするに足る書類により登録の事実を確認することができないときは、その申請を却下しなければならない。
2 通商産業局長は、第五条の規定による申請があつた場合において、出願願書の受付を通知した書面、引受時刻証明の取扱をしたことを証する書面その他出願又は申請について実質的な証拠とするに足る書類により出願又は申請の事実を確認することができないときは、その申請を却下しなければならない。
3 通商産業局長は、前二項の規定による却下をするときは、あらかじめ当該申請人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。
4 通商産業局長は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに聴聞の期日及び場所を当該申請人に通知し、且つ、これを公示しなければならない。
5 聴聞に際しては、申請人及び利害関係人に対して、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(資料の提出)
第八条 通商産業局長は、調査のため必要があると認めるときは、申請人その他の関係人に対し資料の提出を求めることができる。
(鉱業原簿の調製)
第九条 通商産業局長は、第二条の規定による申請、第三条第二項若しくは第五項の規定による嘱託、第四条第二項若しくは第三項の規定による通知又は前条の規定により提出された資料に基いて事実を認定し、鉱業原簿を調製しなければならない。
2 通商産業局長は、職権をもつて鉱区図を調製することができる。
(謄本の交付等)
第十条 通商産業局長は、鉱業原簿の調製を完了したときは、鉱業原簿の謄本又は抄本を登録名義人及び第二条第二項の規定による申請をした者に交付し、且つ、鉱業原簿の調製を完了した旨を通商産業大臣に報告しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の規定による報告があつたときは、遅滞なくその旨を告示しなければならない。
(調製の効力)
第十一条 第九条の規定により調製した鉱業原簿は、滅失前の鉱業原簿とみなす。
2 旧鉱区税法(昭和十五年法律第三十一号)、旧地方税法(昭和十五年法律第六十号)又は地方税法(昭和二十三年法律第百十号)の規定により既に納付した鉱区税は、前項の規定にかかわらず、還付しない。
3 第一項の鉱業原簿に表示された鉱区の面積が課税の対象となつていた鉱区の面積をこえる場合においても、そのこえる部分について鉱区税を追徴することができない。
(異議の申立)
第十二条 第七条の規定による却下又は第九条の規定により調製した鉱業原簿に登録され、又は記載された事項について不服のある者は、通商産業大臣に異議の申立をすることができる。
2 前項の規定により異議の申立をしようとする者は、却下については、却下の通知を受けた日、鉱業原簿に登録され、又は記載された事項については、鉱業原簿の謄本又は抄本の交付を受けた者にあつてはその交付を受けた日、その他の者にあつては告示のあつた日から三十日以内に、理由を記載した申立書を当該通商産業局長に提出しなければならない。
3 正当な事由により前項の期間内に異議の申立をすることができなかつたことを疎明したときは、同項の期間の経過後でも、異議の申立をすることができる。
第十三条 通商産業局長は、前条第二項の規定による異議の申立書を受理したときは、その受理の日から十日以内に、これに弁明書を添えて通商産業大臣に送付しなければならない。
第十四条 通商産業局長は、第十二条の規定による異議の申立が鉱業原簿に登録され、又は記載された事項に関するものであるときは、異議の申立があつた旨の仮登録をし、その旨を登録上の利害関係人に通知しなければならない。
2 通商産業局長は、前項の仮登録をした後に異議の申立の取下があつたときは、遅滞なく通商産業大臣にその旨を報告するとともに、その仮登録をまつ消し、前項の規定による通知をした者にその旨を通知しなければならない。
(申立の却下)
第十五条 通商産業大臣は、異議の申立が不適当であると認めるときは、直ちにこれを却下する。
2 前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業大臣は、決定書の正本を当該通商産業局長を経由して、申立人に交付しなければならない。
4 通商産業局長は、却下の決定があつたときは、遅滞なくその仮登録をまつ消し、前条第一項の規定により通知をした者にその旨を通知しなければならない。
(異議の申立と処分の執行)
第十六条 異議の申立は、処分の執行を停止しない。
(聴聞の開始)
第十七条 通商産業大臣は、異議の申立があつたときは、これを受理した日から三十日以内に聴聞を開始しなければならない。
第十八条 通商産業大臣は、聴聞の期日及び場所を定め、異議の申立をした者及び登録上の利害関係人並びに当該通商産業局長に通知しなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の規定による通知をしたときは、異議の申立の要旨並びに聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。
(参加)
第十九条 異議の申立をした者及び登録上の利害関係人の外、聴聞に参加して意見を述べようとする者は、利害関係のある理由及び主張の要旨を記載した文書をもつて、通商産業大臣に利害関係人として参加する旨を申し出て、その許可を受けなければならない。
(証拠の提示等)
第二十条 聴聞に際しては、異議の申立をした者、登録上の利害関係人及び前条の規定により参加した者に対して、当該事案について証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(決定)
第二十一条 通商産業大臣は、聴聞の結果及び第十三条の弁明書に基き決定を行う。
2 前項の決定は、文書をもつて行い、且つ、理由を附さなければならない。
3 通商産業大臣は、決定書の正本を関係通商産業局長を経由して、異議の申立をした者、登録上の利害関係人及び第十九条の規定により参加した者に送付するとともに、決定の要旨を公示しなければならない。
(委任規定)
第二十二条 この法律に規定するものの外、鉱業原簿の調製又は異議の申立について必要な手続は、省令で定める。
(準用)
第二十三条 この法律の規定は、別表第二に掲げる砂鉱原簿並びに砂鉱業に関する登録の申請書、登録の嘱託書及び願書に準用する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律施行前に滅失鉱業原簿調製規則(昭和二十年商工省令第一号)又は滅失したる砂鉱原簿調製に関する件(昭和二十年商工省令第二号)の規定によつてした手続その他の行為は、この法律の規定によつてしたものとみなす。
別表第一
一 昭和二十年六月十九日に旧九州地方鉱山局に備えてあつた鉱業原簿
二 旧九州地方鉱山局(従前のこれに相当する機関を含む。以下同じ。)においは昭和二十年六月十九日までに受理した試掘の願書、採掘の願書、試掘鉱区若しくは採掘鉱区の増区若しくは増減区の願書又は採掘鉱区の訂正の願書であつて、同日までにその出願に対する処分が終らなかつたもの。
三 旧九州地方鉱山局において昭和二十年六月十九日までに受理した鉱業に関する登録の申請書若しくは嘱託書又は鉱業財団に関する通知書であつて、同日までに登録又は記載が終らなかつたもの。
四 旧東北地方鉱山局に備えてあつた鉱業原簿のうち、
(一) 宮城県試掘権登録第三二七五号から第三三七四号まで、第四五四三号から第四六三二号まで及び第五〇五七号から第五〇八〇号までのもの並びに昭和二十年五月二十七日から同年七月九日までに登録を受けたもの。
(二) 青森県試掘権登録第四六六五号から第四七六三号までのもの。
(三) 山形県試掘権登録第七一四五号から第七二四四号まで及び第八一四三号から第八二四一号までのもの。
(四) 福島県採掘権登録第五三号、第一三三号、第一六二号、第一八三号、第二一二号、第二三五号、第二三七号、第二四九号、第二五五号、第二六九号、第二七七号、第二八一号、第三八六号、第四〇七号、第四三〇号、第四三一号及び第四三四号から第四九三号までのもの並びに昭和二十年四月十六日から同年七月九日までに登録を受けたもの。
(五) 鉱区図のうち、
イ 宮城県試掘権登録第三四二九号、第四四九七号、第四五二八号、第四六八四号、第四七〇〇号、第四七一〇号、第四七八六号、第四九五五号及び第四九八八号のもの。
ロ 福島県試掘権登録第七五六三号、第九五四四号、第九六一四号、第九七一五号、第九七五八号、第九七六九号、第九八四七号、第九九二五号、第九九五三号、第一〇二一三号、第一〇三二四号及び第一〇五一六号から第一〇五二三号までのもの。
ハ 岩手県試掘権登録第七八二八号、第七九〇一号、第七九四二号、第七九九〇号、第八四七六号、第九一二五号、第一〇六〇八号、第一〇七二五号、第一一一二九号、第一一二四九号から第一一二六八号まで及び第一一三六二号のもの。
ニ 青森県試掘権登録第五三二一号、第五四〇〇号、第五五八六号、第五六七八号、第五七八一号から第五七九六号まで及び第五八五八号のもの。
ホ 山形県試掘権登録第八六二一号、第九〇二七号、第九二四〇号、第九二四八号から第九二五八号まで、第九三二八号、第九三三一号、第九三三七号及び第九三四一号のもの。
へ 秋田県試掘権登録第一三一九二号、第一五七〇一号から第一五八〇〇号まで、第一五八〇七号、第一五八五九号、第一六三〇八号、第一六四〇三号、第一六七六九号から第一六七八〇号まで及び第一六八六四号のもの。
ト 宮城県採掘権登録第一一九号、第一四一号、第一四九号から第一五一号まで、第一五四号、第一五九号、第一六二号、第二一二号及び第二五七号のもの。
チ 福島県採掘権登録第一二七号、第一九九号、第三九四号、第三九八号、第四〇九号、第四一二号、第四一五号、第四二三号及び第四四二号のもの。
リ 岩手県採掘権登録第三八〇号、第三八五号及び第四一六号のもの。
ヌ 山形県採掘権登録第二六号、第一七三号、第一七五号、第一七七号、第二六五号、第二八四号及び第二九七号のもの。
ル 秋田県採掘権登録第四四九号及び第四五三号のもの。
五 旧東北地方鉱山局(従前のこれに相当する機関を含む。以下同じ。)において昭和二十年七月九日までに受理した試掘の願書、採掘の願書、試掘鉱区若しくは採掘鉱区の増区若しくは増減区の願書又は採掘鉱区の訂正の願書であつて、同日までにその出願に対する処分が終らなかつたもののうち、同日の空襲により滅失したもの。
六 旧東北地方鉱山局において昭和二十年七月九日までに受理した鉱業に関する登録の申請書若しくは嘱託書又は鉱業財団に関する通知書であつて、同日までに登録又は記載が終らなかつたもの。
別表第二
一 昭和二十年六月十九日に旧九州地方鉱山局に備えてあつた砂鉱原簿
二 旧九州地方鉱山局において昭和二十年六月十九日までに受理した砂鉱願書又は砂鉱区の増区若しくは増減区の願書であつて、同日までにその出願に対する処分が終らなかつたもの。
三 旧九州地方鉱山局において昭和二十年六月十九日までに受理した砂鉱業に関する登録の申請書又は嘱託書であつて、同日までに登録が終らなかつたもの。
四 旧東北地方鉱山局に備えてあつた砂鉱原簿の砂鉱区図のうち、
(一) 宮城県砂鉱権登録第二五号から第二七号まで及び第一四五号のもの。
(二) 福島県砂鉱権登録第一五二号から第一五四号までのもの。
(三) 岩手県砂鉱権登録第五一六号のもの。
(四) 青森県砂鉱権登録第三一二号から第三一七号までのもの。
(五) 山形県砂鉱権登録第六〇号のもの。
(六) 秋田県砂鉱権登録第一〇二号及び第一三九号のもの。
五 旧東北地方鉱山局において昭和二十年七月九日までに受理した砂鉱願書又は砂鉱区の増区若しくは増減区の願書であつて、同日までにその出願に対する処分が終らなかつたもののうち、同日の空襲により滅失したもの。
六 旧東北地方鉱山局において昭和二十年七月九日までに受理した砂鉱業に関する登録の申請書又は嘱託書であつて、同日までに登録が終らなかつたもの。
(内閣総理大臣・法務総裁・大蔵・通商産業大臣署名)