建築士法
法律第二百二号(昭二五・五・二四)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 免許(第四条―第十一条)
第三章 試験(第十二条―第十七条)
第四章 業務(第十八条―第二十二条)
第五章 建築士事務所(第二十三条―第二十七条)
第六章 建築士審議会及び試験委員(第二十八条―第三十四条)
第七章 罰則(第三十五条―第三十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、もつて建築物の質の向上に寄与させることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「建築士」とは、一級建築士及び二級建築士をいう。
2 この法律で「一級建築士」とは、建設大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、設計、工事監理等の業務を行う者をいう。
3 この法律で「二級建築士」とは、都道府県知事の免許を受け、二級建築士の名称を用いて、設計、工事監理等の業務を行う者をいう。
4 この法律で「設計図書」とは、建築物の建築工事実施のために必要な図面(現寸図の類を除く。)及び仕様書を、「設計」とは、設計図書を作成することをいう。
5 この法律で「工事監理」とは、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。
(建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条 建築物で、その用途、構造、規模等により、特に建築物としての質を確保する必要のあるものについては、建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
2 前項の建築物の種類及び範囲については、別に法律で定める。
第二章 免許
(建築士の免許)
第四条 一級建築士になろうとする者は、建設大臣の行う一級建築士試験に合格し、建設大臣の免許を受けなければならない。
2 二級建築士になろうとする者は、都道府県知事の行う二級建築士試験に合格し、その都道府県知事の免許を受けなければならない。
3 外国の建築士免許を受けた者で、建設大臣又は都道府県知事が、それぞれ一級建築士又は二級建築士と同等以上の資格を有すると認めるものは、前二項の試験を受けないで、一級建築士又は二級建築士の免許を受けることができる。
(免許の登録)
第五条 一級建築士又は二級建築士の免許は、それぞれ一級建築士名簿又は二級建築士名簿に登録することによつて行う。
2 建設大臣又は都道府県知事は、一級建築士又は二級建築士の免許を与えたときは、それぞれ一級建築士免許証又は二級建築士免許証を交付する。
3 一級建築士又は二級建築士の免許を受けようとする者は、政令の定めるところにより、一級建築士の免許については三千円以内、二級建築士の免許については二千円以内の免許手数料を、それぞれ国庫又は都道府県に納入しなければならない。
4 一級建築士又は二級建築士は、毎年十二月三十一日現在において、その氏名、住所その他建設省令で定める事項を、翌年一月十五日迄に、一級建築士にあつては、住所地の都道府県知事を経由して建設大臣に、二級建築士にあつては、免許を受けた都道府県知事及び住所地の都道府県知事に届け出なければならない。
(名簿)
第六条 一級建築士名簿は建設省に、二級建築士名簿は都道府県に、これを備える。
(絶対的欠格事由)
第七条 左の各号の一に該当する者には、一級建築士又は二級建築士の免許を与えない。
一 未成年者
二 禁治産者又は準禁治産者
三 第十条第一項の規定によつて、免許取消の処分を受けてから二年を経過しない者
(相対的欠格事由)
第八条 左の各号の一に該当する者には、一級建築士又は二級建築士の免許を与えないことがある。
一 禁こ以上の刑に処せられた者
二 建築物の建築に関し罪を犯し罰金の刑に処せられた者
(免許の取消)
第九条 一級建築士又は二級建築士が虚偽又は不正の事実に基いて免許を受けた者であることが判明したときは、それぞれ建設大臣又は免許を与えた都道府県知事は、免許を取消さなければならない。第七条第二号に該当するに至つたとき、又は本人から免許取消の申請があつたときも同様とする。
(懲戒)
第十条 一級建築士又は二級建築士がその業務に関して不誠実な行為をしたとき、又は第八条の各号の一に該当するに至つたときは、それぞれ建設大臣又は免許を与えた都道府県知事は、戒告を与え、一年以内の期間を定めて業務の停止を命じ、又は免許を取消すことができる。
2 建設大臣又は都道府県知事は、前項の規定により、業務の停止又は免許の取消をしようとするときは、あらかじめ当該一級建築士又は二級建築士について聴問を行い、なお必要があるときは、参考人の意見を聴かなければならない。但し、当該一級建築士又は二級建築士が正当な理由がなくて聴問に応じないときは、聴問を行わないで当該処分をすることができる。
3 建設大臣又は都道府県知事は、第一項の規定により、業務の停止又は免許の取消をしようとするときは、それぞれ中央建築士審議会又は都道府県建築士審議会の同意を得なければならない。
(省令及び都道府県規則への委任)
第十一条 この章に規定するものの外、一級建築士又は二級建築士の免許の申請、登録の訂正及び抹消、免許証の交付、再交付及び返納並びに住所の届出に関して必要な手続は、それぞれ建設省令又は都道府県規則で定める。
第三章 試験
(試験の内容)
第十二条 一級建築士試験及び二級建築士試験は、設計及び工事監理に必要な知識及び技能について行う。
(試験の施行)
第十三条 一級建築士試験又は二級建築士試験は、毎年少くとも一回、それぞれ建設大臣又は都道府県知事が行う。
(一級建築士試験の受験資格)
第十四条 一級建築士試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを受けることができない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学(短期大学を除く。)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して二年以上の実務の経験を有する者
二 学校教育法による短期大学又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して四年以上の実務の経験を有する者
三 二級建築士として四年以上の実務の経験を有する者
四 建設大臣が前各号と同等以上の知識及び技能を有すると認める者
(二級建築士試験の受験資格)
第十五条 二級建築士試験は、左の各号の一に該当する者でなければ、これを受けることができない。
一 学校教育法による大学、旧大学令による大学又は旧専門学校令による専門学校において、正規の建築に関する課程を修めて卒業した者又はこれらの学校において、正規の土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して一年以上の実務の経験を有する者
二 学校教育法による高等学校又は旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による中等学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して三年以上の実務の経験を有する者
三 都道府県知事が前各号と同等以上の知識及び技能を有すると認める者
四 建築に関して七年以上の実務の経験を有する者
(受験手数料)
第十六条 一級建築士試験又は二級建築士試験を受けようとする者は、政令の定めるところにより、それぞれ受験手数料を国庫又は都道府県に納入しなければならない。
(省令及び都道府県規則への委任)
第十七条 この章に規定するものの外、一級建築士試験の科目、受験手続その他一級建築士試験に関して必要な事項及び二級建築士試験の基準は、建設省令で定める。
2 この章に規定するものの外、二級建築士試験の科目、受験手続その他二級建築士試験に関して必要な事項は、都道府県規則で定める。
第四章 業務
(業務執行)
第十八条 建築士は、その業務を誠実に行い、建築物の質の向上に努めなければならない。
2 建築士は、設計を行う場合においては、これを法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない。
3 建築士は、工事監督を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、もし工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。
(設計の変更)
第十九条 一級建築士又は二級建築士は、他の一級建築士又は二級建築士の設計した設計図書の一部を変更しようとするときは、当該一級建築士又は二級建築士の承諾を求めなければならない。但し、承諾を求めることのできない事由があるとき、又は承諾が得られなかつたときは、自己の責任において、その設計図書の一部を変更することができる。
(業務に必要な表示行為)
第二十条 一級建築士又は二級建築士は、設計を行つた場合においては、その設計図書に一級建築士又は二級建築士たる表示をして記名及びなつ印をしなければならない。設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
2 建築士は、工事監理を終了したときは、直ちに、その結果を文書で建築主に報告しなければならない。
(その他の業務)
第二十一条 建築士は、設計及び工事監理を行う外、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査又は鑑定及び建築に関する法令又は条例に基く手続の代理等の業務を行うことができる。
(名称の使用禁止)
第二十二条 建築士でない者は、建築士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
2 二級建築士は、一級建築士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
第五章 建築士事務所
(建築士事務所の届出)
第二十三条 一級建築士又は二級建築士が、他人の求めに応じ報酬を得て設計又は工事監理を行うことを業としようとするときは、事務所(以下「建築士事務所」という。)を定めて、その所在地の都道府県知事に、それぞれ一級建築士事務所又は二級建築士事務所の開設の届出をしなければならない。法人又は人が、一級建築士又は二級建築士を使用して、設計又は工事監理を行うことを業としようとするときも、同様とする。
2 前項に掲げる者が、建築士事務所を移転し、休止し又は廃止したときは、十日以内に、都道府県知事に届出をしなければならない。
(建築士事務所の管理)
第二十四条 一級建築士事務所は、専任の一級建築士が管理し、二級建築士事務所は、専任の二級建築士が管理しなければならない。
(業務の報酬)
第二十五条 建設大臣は、中央建築士審議会の同意を得て、建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準を定め、これを勧告することができる。
(建築士事務所の監督)
第二十六条 都道府県知事は、建築士事務所が左の各号の一に該当する場合においては、一年以内の期間を定めてその建築士事務所の閉鎖を命ずることができる。
一 第二十四条の要件を欠くに至つたとき
二 建築士事務所の管理者が第八条の各号の一に該当するに至つたとき
三 建築士事務所に属する一級建築士又は二級建築士が、その属する建築士事務所の業として行つた行為により、第八条の各号の一に該当するに至つたとき
2 第十条第二項及び第三項の規定は、都道府県知事が前項の処分(第一号に該当する場合を除く。)をする場合に、これを準用する。
(省令への委任)
第二十七条 この章に規定するものの外、建築士事務所の開設、移転、休止及び廃止の届出に関して必要な手続は、建設省令で定める。
第六章 建築士審議会及び試験委員
(建築士審議会)
第二十八条 建設大臣又は都道府県知事の行う処分に対するこの法律に規定する同意についての議決を行わせるとともに、建設大臣又は都道府県知事の諮問に応じ、建築士に関する重要事項を調査審議させるために、建設省に中央建築士審議会を、都道府県に都道府県建築士審議会を置く。
2 中央建築士審議会又は都道府県建築士審議会は、建築士に関する事項について、関係各庁に建議することができる。
(建築士審議会の組織)
第二十九条 中央建築士審議会は、委員十五人以内をもつて、都道府県建築士審議会は、委員十人以内をもつて、組織する。
2 委員は、建築士のうちから、中央建築士審議会にあつては、建設大臣が、都道府県建築士審議会にあつては、都道府県知事が命じ、又は委嘱する。
3 前項の委員を選ぶに当りやむを得ない事由があるときは、学識経験のある者のうちから、これを命じ、又は委嘱することができる。但し、この数は、委員の半数をこえてはならない。
(委員の任期)
第三十条 委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 前項の委員は、再任されることができる。
(会長)
第三十一条 中央建築士審議会及び都道府県建築士審議会にそれぞれ会長を置き、委員の互選によつて定める。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故のあるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者が、その職務を代理する。
(試験委員)
第三十二条 一級建築士試験又は二級建築士試験に関する事務をつかさどらせるため、それぞれ建設省に一級建築士試験委員を、都道府県に二級建築士試験委員を置く。
2 一級建築士試験委員は、建設大臣が、二級建築士試験委員は、都道府県知事が、それぞれ建築士のうちから命じ、又は委嘱する。
3 前項の試験委員を選ぶに当りやむを得ない事由があるときは、学識経験のある者のうちから、これを命じ、又は委嘱することができる。但し、この数は、試験委員の半数をこえてはならない。
(不正行為の禁止)
第三十三条 一級建築士試験委員、二級建築士試験委員、その他一級建築士試験又は二級建築士試験の事務をつかさどる者は、その事務の施行に当つて、厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならない。
(政令への委任)
第三十四条 この章の規定するものの外、中央建築士審議会、都道府県建築士審議会、一級建築士試験委員及び二級建築士試験委員に関して必要な事項は、政令で定める。
第七章 罰則
第三十五条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 一級建築士又は二級建築士の免許を受けないで、その業務を行う目的で一級建築士又は二級建築士の名称を用いた者
二 虚偽又は不正の事実に基いて一級建築士又は二級建築士の免許を受けた者
三 第十条第一項の規定による業務停止命令に違反した者
四 第二十四条の規定に違反した建築士事務所の開設者
五 第二十六条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者
第三十六条 左の各号の一に該当する者は、これを三万円以下の罰金に処する。
一 第二十二条の規定に違反した者
二 第三十三条の規定に違反して、事前に試験問題を漏らし、又は不正の採点をした者
第三十七条 第二十三条の規定に違反した者は、五千円以下の過料に処する。
附 則
1 この法律は、昭和二十五年七月一日から施行する。但し、第二十二条及び第五章の規定は、昭和二十六年七月一日から施行する。
2 昭和二十六年三月三十一日において、左の各号の一に該当する者で、建設大臣の選考を受けて、一級建築士となるにふさわしい知識及び技能を有すると認められたものは、第四条第一項の試験を受けないで、一級建築士の免許を受けることができる。
一 旧大学令による大学において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して三年以上の実務の経験を有する者
二 旧専門学校令による専門学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して六年以上の実務の経験を有する者
三 旧中等学校令による中等学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して十年以上の実務の経験を有する者
四 前各号に掲げる学校と同等以上又はこれに準ずる学校において、建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関してそれぞれ前各号に掲げる年数以上の実務の経験を有する者
五 建築に関して十五年以上の実務の経験を有する者
3 昭和二十六年三月三十一日において、左の各号の一に該当する者で、都道府県知事の選考を受けて、二級建築士となるにふさわしい知識及び技能を有すると認められたものは、第四条第二項の試験を受けないで、二級建築士の免許を受けることができる。
一 旧大学令による大学において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して一年以上の実務の経験を有する者
二 旧専門学校令による専門学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して二年以上の実務の経験を有する者
三 旧中等学校令による中等学校において、正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して五年以上の実務の経験を有する者
四 前各号に掲げる学校と同等以上又はこれに準ずる学校において、建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関してそれぞれ前各号に掲げる年数以上の実務の経験を有する者
五 建築に関して十年以上の実務の経験を有する者
4 前二項の規定により、建設大臣又は都道府県知事の選考を受けようとする者は、建設大臣の定める業務経歴書を添えて、昭和二十六年四月三十日までに、それぞれ建設大臣又は都道府県知事に申請しなければならない。
5 第二項又は第三項の選考の事務をつかさどらせるために、臨時に、建設省に一級建築士選考委員を、都道府県に二級建築士選考委員を置く。
6 一級建築士選考委員は、建設大臣が、二級建築士選考委員は、都道府県知事が、それぞれ関係各庁の職員及び学識経験のある者のうらから命じ、又は委嘱する。
7 一級建築士選考委員又は二級建築士選考委員は、それぞれ第二項又は第三項の選考を行うにあたつて、必要と認める場合においては、考査を行うことができる。
8 第三十三条及び第三十六条第二号の規定は、一級建築士選考委員、二級建築士選考委員その他一級建築士又は二級建築士の選考又は考査の事務をつかどる者に、これを準用する。
9 第二項又は第三項の選考を受けようとする者は、政令の定めるところにより、それぞれ選考手数料を国庫又は都道府県に納入しなければならない。
10 一級建築士選考委員及び二級建築士選考委員に関して必要な事項は、政令で定める。
11 第二項又は第三項の選考及び第七項の考査の基準は、建設大臣が告示する。
12 昭和二十五年においては、第十三条の規定にかかわらず、一級建築士試験及び二級建築士試験は行わない。
13 中央建築士審議会及び都道府県建築士審議会の委員を最初に命じ、又は委嘱する場合において、建築士の免許を受けた者がないときは、第二十九条第二項の規定にかかわらず、関係各庁の職員及び学識経験のある者のうちから、これを命じ、又は委嘱することができる。
14 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第十条の表中測量審議会の項の次に次の二項を加える。
中央建築士審議会 |
建設大臣の諮問に応じて一級建築士及び二級建築士に関する重要事項を調査審議し、当該事項について関係行政庁に建議し、その他建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)に基く権限を行うこと。 |
一級建築士試験委員 |
一級建築士試験に関する事務をつかさどること。 |
(建設・内閣総理大臣署名)