国土総合開発法
法律第二百五号(昭二五・五・二六)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、国土の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、国土を総合的に利用し、開発し、及び保全し、並びに産業立地の適正化を図り、あわせて社会福祉の向上に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「国土総合開発計画」とは、国又は地方公共団体の施策の総合的且つ基本的な計画で、左に掲げる事項に関するものをいう。
一 土地、水その他の天然資源の利用に関する事項
二 水害、風害その他の災害の防除に関する事項
三 都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項
四 産業の適正な立地に関する事項
五 電力、運輸、通信その他の重要な公共的施設の規模及び配置並びに文化、厚生及び観光に関する資源の保護、施設の規模及び配置に関する事項
2 前項の国土総合開発計画(以下「総合開発計画」という。)は、全国総合開発計画、都府県総合開発計画、地方総合開発計画及び特定地域総合開発計画とする。
3 全国総合開発計画とは、国が全国の区域について作成する総合開発計画をいう。
4 都府県総合開発計画とは、都府県がその区域について作成する総合開発計画をいう。
5 地方総合開発計画とは、都府県が二以上の都府県の区域についてその協議によつて作成する総合開発計画をいう。
6 特定地域総合開発計画とは、都府県が内閣総理大臣の指定する区域(以下「特定地域」という。)について作成する総合開発計画をいう。
(国土総合開発審議会の設置)
第三条 第一条の目的を達成するために、総理府に、国土総合開発審議会を置く。
(国土総合開発審議会の所掌事務)
第四条 国土総合開発審議会は、総合開発計画について調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告し、又は勧告する。
2 国土総合開発審議会は、総合開発計画の作成に必要な左に掲げる事項について調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告することができる。
一 総合開発計画の作成の基準となるべき事項
二 特定地域の指定の基準となるべき事項
三 産業の適正な立地の基準となるべき事項
四 総合開発計画に伴うべき資金及び資材に関する事項
3 国土総合開発審議会は、総合開発計画について必要があると認める場合においては、内閣総理大臣を通じて、関係各行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
4 関係各行政機関の長は、その所掌事務に係る基本的な計画で総合開発計画と密接な関係を有するものについて、国土総合開発審議会の意見を聞くことができる。
(都府県に対する勧告又は助言)
第五条 内閣総理大臣は、都府県が作成した総合開発計画について前条第一項の規定による報告又は勧告を受けた場合においては、その報告又は勧告に基いて、当該総合開発計画を作成した都府県に対し、必要な勧告又は助言をしなければならない。
(国土総合開発審議会の組織)
第六条 国土総合開発審議会(以下本条中「審議会」という。)は、委員三十人以内で組織する。
2 委員は、総合開発計画に関し学識経験を有する者及び関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。但し、関係行政機関の職員のうちから任命される委員の数は、委員の総数の二分の一以下でなければならない。
3 委員は、都道府県知事と兼ねることができる。
4 都道府県知事と兼ねる委員並びに関係行政機関の職員のうちから任命される委員を除く他の委員の任期は、四年とする。但し、任期が四年の委員で最初に任命される委員のうち、その半数の者の任期は、二年とする。委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 審議会に、会長を置く。会長は、委員のうちから互選する。会長は、会務を総理し、及び審議会を代表する。会長に事故がある場合においては、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者のうちから、審議会の推薦に基いて、内閣総理大臣が任命する。
7 委員及び専門委員は、非常勤とする。
8 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要事項は、政令で定める。
(都府県総合開発計画)
第七条 都府県は、その区域について、都府県総合開発計画を作成することができる。
2 都府県は、都府県総合開発計画を作成した場合においては、建設大臣を通じて、これを内閣総理大臣に報告しなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の規定による報告を受けた場合においては、これを国土総合開発審議会に諮問するとともに関係各行政機関の長に送付しなければならない。
4 関係各行政機関の長は、前項の規定による送付を受けた場合においては、これに対する意見を経済安定本部総裁に提出し、経済安定本部総裁は、これらの意見をとりまとめて、国土総合開発審議会に提出しなければならない。
(地方総合開発計画)
第八条 自然、経済、社会、文化等において密接な関係を有する地域が二以上の都府県の区域にわたる場合においては、関係都府県は、その協議によつて、当該地域について、地方総合開発計画区域を設定して、地方総合開発計画を作成することができる。
2 前項の規定による関係都府県の協議については、当該都府県の議会の議決を経なければならない。
3 前条第二項から第四項までの規定は、地方総合開発計画に準用する。
4 内閣総理大臣は、必要があると認める場合においては、国土総合開発審議会の音見を聞いて、関係都府県に対し、地方総合開発計画区域の設定について、助言することができる。
(都府県総合開発審議会及び地方総合開発審議会)
第九条 都府県総合開発計画について調査審議するために、都府県は、条例で、都府県総合開発審議会を設置することができる。
2 地方総合開発計画について調査審議するために、関係都府県は、その協議によつて、規約を定め、地方総合開発審議会を設置することができる。
3 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
4 前各項に規定するものを除く外、都府県総合開発審議会及び地方総合開発審議会の設置、組織及び運営に関して必要な事項(地方総合開発審議会については、費用の負担方法を含む。)は、それぞれ条例又は規約で定めなければならない。
(特定地域総合開発計画)
第十条 資源の開発が充分に行われて居ない地域、特に災害の防除を必要とする地域又は郡市及びこれに隣接する地域で特別の建設若しくは整備を必要とするもの等について、経済安定本部総務長官及び建設大臣がその協議によつて特に必要があると認めて要請した場合においては、内閣総理大臣は、国土総合開発審議会に諮問し、その報告に基いて、当該地域を特定地域として指定することができる。
2 前項の規定による要請をしようとする場合においては、経済安定本部総務長官は、関係各行政機関の長の意見を聞き、建設大臣は、関係都府県の同意を得なければならない。
3 前項の規定による都府県の同意については、当該都府県の議会の議決を経なければならない。
4 第一項の規定により特定地域の指定があつた場合においては、関係都府県は、都府県総合開発審議会又は地方総合開発審議会の調査審議を経て、特定地域総合開発計画を作成しなければならない。
5 第七条第二項から第四項までの規定は、特定地域総合開発計画に準用する。
6 国は、地方公共団体が行う特定地域総合開発計画の事業について、国が負担すべき経費の割合に関し、別に法律の定めるところにより特例を設け、又は当該地方公共団体に対して、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第十六条の規定に基く補助金を交付し、その他必要と認める措置を講ずることができる。
(関係各行政機関の長の助言)
第十一条 関係各行政機関の長は、その所掌する事項に関し、関係都府県に対して、都府県総合開発計画、地方総合開発計画又は特定地域総合開発計画の作成上必要な助言をすることができる。
(資料の提出等)
第十二条 関係行政機関の職員は、国土総合開発審議会の求めに応じて、資料の提出、意見の陳述又は説明をしなければならない。
(要旨の公表)
第十三条 国土総合開発審議会は、その調査審議の結果について必要があると認める場合においては、その要旨を公表するものとする。
(北海道総合開発計画との調整)
第十四条 北海道総合開発計画と総合開発計画との調整は、内閣総理大臣が北海道開発庁長官及び国土総合開発審議会の意見を聞いて行うものとする。
附 則
1 この法律は、昭和二十五年六月一日から施行する。
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中中央青少年問題協議会の項の次に国土総合開発審議会の項を次のように加える。
国土総合開発審議会 |
国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。 |
(内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名)