精神衛生法
法律第百二十三号(昭二五・五・一)
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第一条 (この法律の目的)
第二条 (国及び地方公共団体の義務)
第三条 (定義)
第二章 施設(第四条―第十二条)
第四条 (都道府県立精神病院)
第五条 (指定病院)
第六条 (国の補助)
第七条 (精神衛生相談所)
第八条 (国の補助)
第九条 (許可)
第十条 (名称の独占)
第十一条 (両罰規定)
第十二条 (省令への委任)
第三章 精神衛生審議会(第十三条―第十七条)
第十三条 (設置)
第十四条 (委員の数、任期及び任命)
第十五条―第十六条 (権限)
第十七条 (省令への委任)
第四章 精神衛生鑑定医(第十八条―第十九条)
第十八条 (精神衛生鑑定医)
第十九条 (実費弁償及び報酬)
第五章 医療及び保護(第二十条―第五十条)
第二十条―第二十二条 (保護義務者)
第二十三条 (診察及び保護の申請)
第二十四条 (警察官の通報等)
第二十五条 (検察官の通報)
第二十六条 (矯正保護施設の長の通報)
第二十七条 (精神衛生鑑定医の診察)
第二十八条 (診察の通知)
第二十九条 (知事による入院措置)
第三十条 (費用の負担及び補助)
第三十一条 (費用の徴収)
第三十二条 (訴願)
第三十三条 (保護義務者の同意による入院)
第三十四条 (仮入院)
第三十五条 (家庭裁判所の許可)
第三十六条 (届出)
第三十七条 (知事の審査)
第三十八条 (行動の制限)
第三十九条 (無断退去者に対する措置)
第四十条 (退院及び仮退院)
第四十一条 (保護義務者の引取義務等)
第四十二条 (訪問指導)
第四十三条 (保護拘束)
第四十四条 (保護拘束の期間)
第四十五条 (指導)
第四十六条 (保護拘束の変更及び廃止)
第四十七条 (行方不明者に対する措置)
第四十八条 (施設以外の収容禁止)
第四十九条 (医療及び保護の費用)
第五十条 (刑又は保護処分の執行との関係)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、精神障害者の医療及び保護を行い、且つ、その発生の予防に努めることによつて、国民の精神的健康の保持及び向上を図ることを目的とする。
(国及び地方公共団体の義務)
第二条 国及び地方公共団体は、医療施設、教育施設その他福祉施設を充実することによつて精神障害者が社会生活に適応することができるように努力するとともに、精神衛生に関する知識の普及を図る等精神障害者の発生を予防する施策を講じなければならない。
(定義)
第三条 この法律で「精神障害者」とは、精神病者(中毒性精神病者を含む。)精神薄弱者及び精神病質者をいう。
第二章 施設
(都道府県立精神病院)
第四条 都道府県は、精神病院を設置しなければならない。但し、第五条の規定による指定病院がある場合においては、厚生大臣の承認を得て、その設置を延期することができる。
2 都道府県が精神病院を設置し、又はその施設を増築し若しくは改築しようとするときは、省令の定めるところにより、設備、構造その他設置計画の概要について厚生大臣の承認を受けなければならない。
3 この法律施行の際、現に存する都道府県の設置している精神病院については、前項の規定による承認があつたものとみなす。
(指定病院)
第五条 都道府県知事は、国及び都道府県以外の者が設置した精神病院又は精神病院以外の病院に設けられている精神病室の全部又は一部を、その設置者の同意を得て、都道府県が設置する精神病院に代る施設(以下「指定病院」という。)として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の指定をしようとするときは、あらかじめ、省令の定めるところにより、厚生大臣の承認を受けなければならない。
3 この法律施行の際、現に精神病院法(大正八年法律第二十五号)第七条の規定により代用されている公私立精神病院については、前二項の規定による指定があつたものとみなす。
(国の補助)
第六条 国は、都道府県が設置する精神病院及び精神病院以外の病院に設ける精神病室の設置及び運営(第三十条の規定による場合を除く。)に要する経費に対して、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
(精神衛生相談所)
第七条 都道府県又は保健所法(昭和二十二年法律第百一号)第一条の規定に基く政令で定める市(以下「指定市」という。)は、厚生大臣の承認を受けて精神衛生相談所を設置することができる。
2 精神衛生相談所は、精神衛生に関する相談及び指導を行い、又、精神衛生に関する知識の普及を図る施設とする。
(国の補助)
第八条 国は、都道府県又は指定市が前条の施設を設置したときは、その設置及び運営に要する経費に対して、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
(許可)
第九条 国、都道府県及び指定市以外の者は、精神衛生相談所を設置しようとするときは、厚生大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の規定に違反した者は、二万円以下の過料に処する。
(名称の独占)
第十条 この法律による精神衛生相談所でなければ、その名称のうちに「精神衛生相談所」という文字又はこれに類似する文字を用いてはならない。
2 前項の規定に違反した者は、五千円以下の過料に処する。
(両罰規定)
第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前二条の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し各本条の過料を科する。
(省令への委任)
第十二条 この法律で定めるものの外、精神衛生相談所に関して必要な事項は、省令で定める。
第三章 精神衛生審議会
(設置)
第十三条 精神衛生に関する事項を調査審議させるため、厚生省の附属機関として精神衛生審議会を置く。
(委員の数、任期及び任命)
第十四条 精神衛生審議会の委員は十五人とし、その任期は三年とする。
2 委員は、精神衛生に関し学識経験ある者及び関係行政機関の公務員のうちから、厚生大臣が任命する。
(権限)
第十五条 精神衛生審議会は、厚生大臣の諮問に答える外、精神障害に関する原因の除去、精神障害者の診察及び治療の方法の改善、精神障害者発生の予防措置その他精神衛生に関する事項に関して関係大臣に意見を具申する。
第十六条 精神衛生審議会は、関係行政機関に対し所属職員の出席、説明及び資料の提出を求めることができる。
(省令への委任)
第十七条 精神衛生審議会の運営に関し必要な事項は、省令で定める。
第四章 精神衛生鑑定医
(精神衛生鑑定医)
第十八条 厚生大臣は、精神障害の診断又は治療に関し少くとも三年以上の経験がある医師のうちから、その同意を得て精神衛生鑑定医を指定する。
2 精神衛生鑑定医は、都道府県知事の監督のもとに、この法律の施行に関し精神障害の有無並びに精神障害者につきその治療及び保護を行う上において入院を必要とするかどうかの判定を行う。
3 精神衛生鑑定医は、前項の職務の執行に関しては法令により公務に従事する職員とみなす。
(実費弁償及び報酬)
第十九条 都道府県知事は、精神衛生鑑定医に対し精神障害に関する診察をさせたときは、条例の定めるところにより、その診察に要した実費を弁償し、且つ、相当額の報酬を支給する。
第五章 医療及び保護
(保護義務者)
第二十条 精神障害者については、その後見人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護義務者となる。但し、左の各号の一に該当する者は保護義務者とならない。
一 行方の知れない者
二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人又は保佐人
四 破産者
五 禁治産者及び準禁治産者
六 未成年者
2 保護義務者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、左の通りとする。但し、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立によりその順位を変更することができる。
一 後見人
二 配偶者
三 親権を行う者
四 前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者
3 前項但書の規定による順位の変更及び同項第四号の規定による選任は家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の適用については、同法第九条第一項甲類に掲げる事項とみなす。
第二十一条 前条第二項各号の保護義務者がないとき又はこれらの保護義務者がその義務を行うことができないときはその精神障害者の居住地を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)、居住地がないか又は明らかでないときはその精神障害者の現在地を管轄する市町村長が保護義務者となる。
第二十二条 保護義務者は、精神障害者に治療を受けさせるとともに、精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し、且つ、精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。
2 保護義務者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。
3 保護義務者は、精神障害者に医療を受けさせるに当つては、医師の指示に従わなければならない。
(診察及び保護の申請)
第二十三条 精神障害者又はその疑のある者を知つた者は、誰でも、その者について精神衛生鑑定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる。
2 前項の申請をするには、左の事項を記載した申請書をもよりの保健所長を経て都道府県知事に提出しなければならない。
一 申請者の住所、氏名及び生年月日
二 本人の現在場所、氏名、性別及び生年月日
三 症状の概要
四 現に本人の保護の任に当つている者があるときはその者の住所及び氏名
3 虚偽の事実を具して第一項の申請をした者は、六月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
(警察官の通報等)
第二十四条 警察官又は警察吏員は、警察官等職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第三条の規定により精神障害者又はその疑のある者を保護した場合においては、直ちに、もよりの保健所長に通報しなければならない。
2 保健所長は、前項の通報を受けたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
(検察官の通報)
第二十五条 検察官は、被疑者又は被告人について精神障害があると認めたときは、当該事件について不起訴処分をし又は裁判(懲役、禁こ又は拘留の刑を言い渡し執行猶予の言渡をしない裁判を除く。)が確定した後、すみやかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
(矯正保護施設の長の通報)
第二十六条 矯正保護施設(拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院及び少年保護鑑別所をいう。以下同じ。)の長は、精神障害者又はその疑のある収容者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめ、左の事項を本人の帰住地(帰住地がない場合は当該矯正保護施設の所在地)の都道府県知事に通報しなければならない。
一 本人の帰住地、氏名、性別及び生年月日
二 症状の概要
三 釈放、退院又は退所の年月日
四 引取人の住所及び氏名
(精神衛生鑑定医の診察)
第二十七条 都道府県知事は、前四条の規定により申請又は通報のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、精神衛生鑑定医をして診察をさせなければならない。
2 都道府県知事は、前項の規定により診察をさせる場合には、当該吏員を立ち合わせなければならない。
3 精神衛生鑑定医及び前項の当該吏員は、前二項の職務を行うに当つて必要な限度においてその者の居住する場所へ立ち入ることができる。
4 前項の規定によつてその者の居住する場所へ立ち入る場合には、精神衛生鑑定医及び当該吏員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときはこれを呈示しなければならない。
5 第一項の規定による診察を拒み、妨げ、若しくは忌避した者又は第三項の規定による立入を拒み若しくは妨げた者は、一万円以下の罰金に処する。
(診察の通知)
第二十八条 都道府県知事は、前条第一項の規定により診察をさせるに当つて現に本人の保護の任に当つている者がある場合には、あらかじめ、診察の日時及び場所をその者に通知しなければならない。
2 後見人、親権を行う者、配偶者その他現に本人の保護の任に当つている者は、前条第一項の診察に立ち会うことができる。
(知事による入院措置)
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、且つ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、本人及び関係者の同意がなくても、その者を国若しくは都道府県の設置した精神病院(精神病院以外の病院に設けられている精神病室を含む。以下同じ。)又は指定病院に入院させることができる。
2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、二人以上の精神衛生鑑定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、且つ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各精神衛生鑑定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。
3 国又は都道府県の設置した精神病院及び指定病院の長は、病床(病院の一部について第五条の指定を受けている指定病院にあつてはその指定にかかる病床)にすでに第一項の規定により入院をさせた者がいるため余裕がない場合の外は、前項の精神障害者を収容しなければならない。
4 この法律施行の際、現に精神病院法第二条の規定によつて入院中の者は、第一項の規定によつて入院したものとみなす。
第三十条 前条の規定により都道府県知事が入院させた精神障害者の入院に要する費用は、政令の定めるところにより、都道府県の負担とする。
2 国は、前項の規定により都道府県が支出する経費に対し、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
(費用の徴収)
第三十一条 都道府県知事は、第二十九条の規定により入院させた精神障害者又はその扶養義務者が入院に要する費用を負担することができると認めたときは、その費用の全部又は一部を徴収することができる。
(訴願)
第三十二条 第二十九条又は前条の規定により都道府県知事のした処分に不服がある者は、訴願法(明治二十三年法律第百五号)の定めるところにより、その処分を受けた日から六十日以内に厚生大臣に対し訴願をすることができる。
(保護義務者の同意による入院)
第三十三条 精神病院の長は、診察の結果精神障害者であると診断した者につき、医療及び保護のため入院の必要があると認める場合において保護義務者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
(仮入院)
第三十四条 精神病院の長は、診察の結果精神障害者の疑があつてその診断に相当の時日を要すると認める者を、その後見人、配偶者、親権を行う者その他の扶養義務者の同意がある場合には、本人の同意がなくても、三週間を超えない期間、仮に精神病院へ入院させることができる。
(家庭裁判所の許可)
第三十五条 前二条の同意者が後見人である場合において前二条の同意をするには、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百五十八条第二項の規定の適用を除外するものではない。
(届出)
第三十六条 精神病院の長は、第三十三条又は第三十四条の規定による措置をとつたときは、十日以内に左の事項を入院について同意を得た者の同意書を添え、もよりの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。
一 本人の住所、氏名、性別及び生年月日
二 診察の年月日
三 病名及び症状の概要
四 同意者の住所、氏名及び続柄
五 入院又は仮入院の年月日
2 前項の規定に違反した者は、五千円以下の過料に処する。
(知事の審査)
第三十七条 都道府県知事は、前条の届出があつた場合において調査の上必要があると認めるときは、第三十三条又は第三十四条の規定により入院又は仮入院をした者について二人以上の精神衛生鑑定医に診察をさせ各精神衛生鑑定医の診察の結果が入院を継続する必要があることに一致しない場合には、当該精神病院の長に対し、その者を退院させることを命ずることができる。
2 前項の命令に違反した者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
(行動の制限)
第三十八条 精神病院の長は、入院中又は仮入院中の者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる。
(無断退去者に対する措置)
第三十九条 精神病院の長は、入院中又は仮入院中の者で自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれのあるものが無断で退去しその行方が不明になつたときは、所轄の警察署長に左の事項を通知してその探索を求めることができる。
一 退去者の住所、氏名、性別及び生年月日
二 退去の年月日及び時刻
三 症状の概要
四 退去者を発見するために参考となるべき人相、服装その他の事項
五 入院年月日
六 保護義務者又はこれに準ずる者の住所及び氏名
(退院及び仮退院)
第四十条 第二十九条の規定により精神障害者を収容した精神病院の長は、その精神障害者の症状に照し入院を継続する必要がなくなつたと認めるときは、都道府県知事の許可を得て退院させることができる。
2 前項の病院長は、入院中の精神障害者の症状に照しその者を一時退院させて経過を見ることが適当であると認めるときは、都道府県知事の許可を得て、六箇月を超えない期間を限り仮に退院させることができる。
(保護義務者の引取義務等)
第四十一条 保護義務者は、前条の規定により退院又は仮退院する者を引き取り、且つ、仮退院した者の保護に当つては当該精神病院の長の指示に従わなければならない。
(訪問指導)
第四十二条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果精神障害者であると診断された者で第二十九条の規定による入院をさせられなかつたもの、及び第四十条の規定による退院者でなお精神障害が続いているものについては、必要に応じ、当該吏員又は都道府県知事が指定した医師をしてその者を訪問し精神衛生に関する適当な指導をさせなければならない。
(保護拘束)
第四十三条 自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれのある精神障害者で入院を要するものがある場合において、直ちにその者を精神病院に収容することができないやむを得ない事情があるときは、精神障害者の保護義務者は、都道府県知事の許可を得て、精神病院に入院させるまでの間、精神病院以外の場所で保護拘束をすることができる。
2 前項の許可を得ようとする者は、左の事項を記載した申請書に医師の診断書を添え、もよりの保健所長を経て都道府県知事に申請しなければならない。
一 本人の住所、氏名、性別及び生年月日
二 保護拘束をした者の住所、氏名及び続柄
三 保護拘束の理由
四 保護拘束開始の年月日及び時刻
五 保護拘束の場所
六 保護拘束の方法
3 都道府県知事は、前項の申請があつたときは、すみやかに、精神衛生鑑定医に診察をさせた上許可するかどうかを決定し、その結果を申請者に通知しなければならない。
4 前項の規定により許可をするには、二人以上の精神衛生鑑定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、且つ、医療及び保護のために入院をさせなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各精神衛生鑑定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。
(保護拘束の期間)
第四十四条 保護拘束の期間は、保護拘束を始めた日から起算して二箇月を超えることができない。
2 都道府県知事は、前項の期間内に、当該精神障害者で引き続き保護拘束の必要があるものについて国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院に収容する措置をとらなければならない。
(指導)
第四十五条 都道府県知事は、保護拘束を行う者に対して当該吏員又は都道府県知事が指定した医師をして保護拘束の場所、施設、方法その他必要な事項について適当な指導をさせなければならない。
2 正当な理由がなくて前項の指導に従わなかつた者は、二万円以下の罰金に処する。
(保護拘束の変更及び廃止)
第四十六条 保護拘束を行う者が保護拘束の場所又は方法を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 保護拘束を行う者が保護拘束を廃止したときは、三日以内に廃止の年月日及び時刻をもよりの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。
3 第一項の規定に違反した者は五万円以下の罰金に処し、第二項の規定に違反した者は五千円以下の過料に処する。
(行方不明者に対する措置)
第四十七条 保護拘束を受けている者が行方不明になつたときは、保護拘束を行つている者は、すみやかに、その旨をもよりの保健所長を経て都道府県知事に届け出るとともに、もよりの警察署長に届け出てその探索を求めなければならない。
2 前項の届書には左の事項を記載しなければならない。
一 本人の住所、氏名、性別及び生年月日
二 症状の概要
三 保護拘束を行つている者の住所及び氏名
四 本人を発見するために参考となるべき人相、服装その他の事項
五 行方不明になつた年月日及び時刻
(施設以外の収容禁止)
第四十八条 第四十三条の規定による保護拘束を行う場合の外は、精神病院又は他の法律により精神障害者を収容することのできる施設以外の場所に精神障害者を収容してはならない。
2 この法律施行の際、現に精神病者監護法(明治三十三年法律第三十八号)第九条の規定により私宅監置をしている者については、精神病院に入院させることができないやむを得ない事情があるときに限り、この法律施行後一年間従前の例によることができる。
(医療及び保護の費用)
第四十九条 保護義務者が精神障害者の医療及び保護のために支出する費用は、当該精神障害者又はその扶養義務者が負担する。
2 第二十一条の規定によつて市町村長が保護義務者となる場合において、その医療及び保護に要する費用について当該精神障害者又はその扶養義務者が負担することができないときは、その保護を行つた市町村(特別区を含む。)を管轄する都道府県がその費用を負担する。
(刑又は保護処分の執行との関係)
第五十条 この章の規定は、刑又は保護処分の執行のため精神障害者又はその疑のある者を矯正保護施設に収容することを妨げるものではない。
2 第二十六条及び第二十七条の規定を除く外、この章の規定は矯正保護施設に収容中の者には適用しない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 精神病者監護法(明治三十三年法律第三十八号)及び精神病院法(大正八年法律第二十五号)は廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条中第二十七号を次のように改める。
二十七 都道府県が精神病院を設置し、増築し、改築し、若しくはその設置を延期しようとする場合又は都道府県知事が精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の指定病院を指定しようとする場合にこれを承認すること。
二十七の二 都道府県又は保健所法(昭和二十二年法律第百一号)第一条の規定に基く政令で定める市(以下「指定市」という。)が精神衛生相談所を設置しようとする場合にこれを承認すること。
二十七の三 国、都道府県及び指定市以外の者が精神衛生相談所を設置しようとする場合にこれを許可すること。
二十七の四 精神衛生法に基き、精神衛生鑑定医を指定すること。
第九条第一項第九号中「精神病」を「精神障害」に改める。
第二十九条第一項の表中中央優生保護審査会の項の次に
「 |
精神衛生審議会 |
厚生大臣の諮問に応じて精神衛生に関する事項を調査審議すること。 |
」 |
を加える。
4 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
第八百五十八条第二項中「、又は私宅に監置す」を削る。
5 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項甲類第十九号中「、監置」を削る。
(内閣総理大臣・法務総裁・大蔵大臣・厚生大臣署名)