獣医師法

法律第百八十六号(昭二四・六・一)

目次

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 免許(第三条―第九条)

第三章 試験(第十条―第十六条)

第四章 業務(第十七条―第二十三条)

第五章 獣医師免許審議会(第二十四条―第二十六条)

第六章 罰則(第二十七条―第二十九条)

附則

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、獣医師の技能の最高水準とその業務の適正とを確保し、もつて畜産業の発達を図り、あわせて公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。

 (名称禁止)

第二条 獣医師でない者は、獣医師又は、これに紛らわしい名称を用いてはならない。

第二章 免許

 (免許)

第三条 獣医師になろうとする者は、獣医師国家試験に合格し、且つ、千円をこえない範囲内において省令で定める手数料を納めて、農林大臣の免許を受けなければならない。

 (免許を与えない場合)

第四条 左の各号の一に該当する者には、前条の免許を与えない。

一 未成年者

二 禁治産者又は準禁治産者

第五条 左の各号の一に該当する者には、第三条の免許を与えないことがある。

一 精神病者又は麻薬若しくは大麻の中毒者

二 不具の者であつて獣医師としての業務を行うのに支障があるもの

三 罰金以上の刑に処せられた者

四 前号に該当する者を除く外、獣医師道に対する重大な背反行為若しくは獣医事に関する不正の行為があつた者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者

五 第八条第二項第四号に該当して免許を取り消された者

2 前項各号の一に該当する者から免許の申請があつたときは、農林大臣は、獣医師免許審議会の意見をきいて免許を与えるかどうかを決定しなければならない。

 (獣医師名簿)

第六条 農林省に獣医師名簿を備え、獣医師の免許に関する事項を登録する。

 (登録及び免許証)

第七条 第三条の免許は、獣医師名簿に登録することによつて与えられる。

2 農林大臣は、第三条の免許を与えたときは、獣医師免許証を交付する。

 (免許の取消及び業務の停止)

第八条 獣医師が第四条各号の一に該当するとき、又は獣医師から申請があつたときは、農林大臣は、その免許を取り消さなければならない。

2 獣医師が左の各号の一に該当するときは、農林大臣は、獣医師免許審議会の意見をきいて、その免許を取り消し、又は期間を定めて、その業務の停止を命ずることができる。

一 第十九条第一項の規定に違反して診療を拒んだとき。

二 第二十一条の届出をしなかつたとき。

三 前二号の場合の外、第五条第一項第一号から第四号までの一に該当するとき。

四 獣医師としての品位を損ずるような行為をしたとき。

3 前項の規定により意見をきかれたときは、獣医師免許審議会は、当該獣医師に、前項の処分の原因となるべき事由を文書をもつて通知し、当該獣医師又はその代理人が弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。

 (免許の申請手続等)

第九条 前六条に規定するものの外、免許の申請、獣医師名簿の登録、訂正及び抹消並びに免許証の交付、書換交付、再交付及び返納については、省令で定める。

第三章 試験

 (試験の目的)

第十条 獣医師国家試験は、家畜の診療上必要な獣医学並びに獣医師として具有すべき公衆衛生に関する知識及び技能について行う。

 (試験の実施)

第十一条 獣医師免許審議会は、農林大臣の監督のもとに、毎年少くとも一回、獣医師国家試験を行わなければならない。

 (受験資格)

第十二条 左の各号の一に該当する者でなければ、獣医師国家試験を受けることができない。

一 正規の大学において獣医学の四年以上にわたる課程を修めて、これを卒業した者

二 外国の獣医学校を卒業し、又は外国で獣医師の免許を得た者であつて、獣医師免許審議会が前号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定したもの

 (合格者名簿の提出)

第十三条 獣医師免許審議会は、獣医師国家試験に合格した者の名簿を農林大臣に提出しなければならない。

 (不正受験者の処置)

第十四条 獣医師国家試験に関して不正の行為があつたときは、獣医師免許審議会は、当該不正行為に関係がある者について、その受験を停止し、又はその試験を無効とすることができる。この場合においては、なお、その者について、期間を定めて試験を受けることを許さないことができる。

 (受験手数料)

第十五条 獣医師国家試験を受けようとする者は、千円をこえない範囲内において省令で定める手数料を納めなければならない。

 (試験科目等)

第十六条 獣医師免許審議会は、試験期日の四箇月前までに、試験の科目、試験を行う場所及び日時、受験手続その他試験に関する細目を定めて、農林大臣に報告しなければならない。

2 農林大臣は、試験期日の三箇月前までに、前項の試験に関する細目を公告しなければならない。

第四章 業務

 (家畜診療業務の制限)

第十七条 獣医師でなければ、家畜(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫及び鶏をいう。)の診療を業務としてはならない。

 (診断書の交付等)

第十八条 獣医師は、自ら診察しないで診断書を交付し、若しくは劇毒薬若しくは生物学的製剤の投与若しくは処方をし、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案しないで検案書を交付してはならない。但し、診療中死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

 (診療及び診断書等の交付の義務)

第十九条 診療を業務とする獣医師は、診療を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

2 診療し、出産に立ち会い、又は検案をした獣医師は、診断書、出生証明書、死産証明書又は検案書の交付を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

 (診療簿及び検案簿)

第二十条 獣医師は、診療をした場合には、診療に関する事項を診療簿に、検案をした場合には、検案に関する事項を検案簿に、遅滞なく記載しなければならない。

2 獣医師は、前項の診療簿及び検案簿を三年間保存しなければならない。

3 農林大臣又は都道府県知事は、必要と認めるときは、所属の官吏又は吏員に、獣医師について、診療簿及び検案簿を検査させることができる。

4 前項の規定により検査する場合には、当該官吏又は吏員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。

 (届出義務)

第二十一条 獣医師は、毎年十二月三十一日現在におけるその氏名、住所その他省令で定める事項を、翌年一月三十一日までに、その住所地を管轄する都道府県知事を経由して、農林大臣に届け出なければならない。

第二十二条 診療施設を開設した者は、その開設の日から十日以内に、当該施設の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならない。診療施設を休止、若しくは廃止し、又は当該施設の所在地を変更したときもまた同様とする。

 (広告の制限)

第二十三条 獣医師は、その業務に関しては、学位、称号又は専門科名の外は、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。

第五章 獣医師免許審議会

 (設置)

第二十四条 獣医師国家試験に関する事務その他この法律によりその権限に属させられた事項を処理させるため、農林省に獣医師免許審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 (委員)

第二十五条 審議会は、獣医師であつて左の各号の一に該当するものにつき農林大臣が委嘱する二十五人の委員で組織する。

一 獣医師が組織する団体を代表する者

二 学識経験がある者

三 関係行政庁の職員

2 農林大臣は、前項の規定により審議会の委員を委嘱するときは、あらかじめ、省令で定める獣医師が組織する団体の意見をきかなければならない。

第二十六条 審議会の委員の任期、報酬及び旅費その他この法律に規定するものの外審議会に関して必要な事項は、政令で定める。

第六章 罰則

第二十七条 左の各号の一に該当する者は、二年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 第十七条の規定に違反して獣医師でなくて家畜の診療を業務とした者

二 虚偽又は不正の事実に基いて、獣医師の免許を受けた者

第二十八条 第八条第二項の規定による業務の停止の命令に違反した者は、一年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第二十九条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。

一 第二条の規定に違反して獣医師又はこれに紛らわしい名称を用いた者

二 第十八条の規定に違反して診断書、出生証明書、死産証明書若しくは検案書を交付し、又は劇毒薬若しくは生物学的製剤の投与若しくは処方をした者

三 第十九条第二項の規定に違反して診断書、出生証明書、死産証明書又は検案書の交付を拒んだ者

四 第二十条第一項の規定に違反して診療簿又は検案簿の記載を怠つた者

五 第二十条第二項の規定に違反して診療簿又は検案簿を三年間保存しなかつた者

六 第二十条第三項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

七 第二十二条又は附則第三項の規定に違反して診療施設の開設、休止若しくは廃止又はその所在地の変更を届け出なかつた者

八 第二十三条の規定に違反して広告をした者

附 則

1 この法律は、昭和二十四年十月一日から施行する。

2 昭和二十四年においては、第十一条の規定にかかわらず、獣医師国家試験は、行わない。

3 この法律施行の際現に家畜の診療施設を開設している者は、この法律施行の日から三十日以内に、当該施設の所在地を管轄する都道府県知事に、その旨を届け出なければならない。

4 獣医師法(大正十五年法律第五十三号。以下「旧法」という。)、獣医師法等の臨時特例に関する法律(昭和十五年法律第九十二号)及び獣医師法第二条の臨時特例に関する法律(昭和十七年法律第十八号)は、廃止する。

5 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、この法律施行後でも、なお従前の例による。

6 昭和二十五年三月三十一日までに旧法第一条第二項各号の一に該当する資格を得た者は、昭和二十五年六月三十日までは、獣医師国家試験に合格しないでも、この法律の規定に従い、獣医師の免許を受けることができる。

7 前項に規定する者であつて自己の責に帰せられない事由により昭和二十五年六月三十日までに同項の規定により獣医師の免許を受けることができなかつた者は、その期間経過後でも昭和二十八年十二月三十一日までは、同項に準じ獣医師の免許を受けることができる。

8 第五条第二項の規定は、前項に規定する者の免許に準用する。

9 この法律施行の際旧法第一条の規定によつて獣医師の免許を受けている者は、この法律の規定によつて免許を受けた獣医師とみなす。

10 旧法第十二条の規定によつてした獣医師の免許の取消又は業務の停止の処分は、第八条の規定によつてしたものとみなす。

11 この法律施行の際、獣医師法等の臨時特例に関する法律第一条の規定によつて獣医手の免許を受けている者であつて、現に同法第二条の規定によつて業務として家畜の疾病に関する診療を行つているものは、この法律施行の日から一年間を限り、農林大臣の定めるところより、第十七条の規定にかかわらず、その業務(鶏の診療の業務を含む。)を行うことができる。この場合においては、第八条、第九条、第十八条から第二十一条まで、第二十八条及び第二十九条第二号から第六号まで並びに前項の規定は、獣医手に準用する。

12 前項に規定する者は、家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)、麻薬取締法(昭和二十三年法律第百二十三号)及び薬事法(昭和二十三年法律第百九十七号)の適用については、獣医師とみなす。

13 この法律施行の際旧法附則第五項の規定により効力を有する獣医仮免状は、この法律施行後でも、なおその効力を有する。

14 農林大臣は、申請により、仮免状の有効期間を更新することができる。

15 この法律の規定は、第十三項の仮免状を有する者に準用する。

16 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十八条の規定により旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校として存続した学校で審議会が認めたものは、第十二条第一号の大学とみなす。

17 第六項、第七項若しくは、第十八項又は旧法第一条の規定により獣医師の免許を受けた者であつて、四年以上獣医師としての経験があるものは、第十二条の規定にかかわらず、獣医師国家試験を受けることができる。

18 この法律の附則第十一項に規定する者は、この法律の附則第四項の規定にかかわらず、この法律施行の日から一年間を限り、旧法第一条第二項第二号の獣医師試験を受けて合格した時は、この法律の附則第六項の規定にかかわらず、獣医師国家試験に合格しないでも、この法律の規定に従い、獣医師の免許を受けることができる。この場合においては、同条第二項第二号及び第三項の規定は、なおその効力を有する。

19 第六項若しくは第七項の規定により免許を受けた獣医師又は第九項の規定により免許を受けたものとみなされる獣医師は、新制獣医師の称号を用いてはならない。

(農林・内閣総理大臣署名)

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