工業標準化法

法律第百八十五号(昭二四・六・一)

 (法律の目的)

第一条 この法律は、適正且つ合理的な工業標準の制定及び普及により工業標準化を促進することによつて、鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「工業標準化」とは、左に掲げる事項を全国的に統一し、又は単純化することをいい、「工業標準」とは、工業標準化のための基準をいう。

一 鉱工業品(医薬品、農薬、化学肥料、蚕糸及び食料品その他指定農林物資検査法(昭和二十三年法律第二百十号)による指定農林物資を除く。以下同じ。)の種類、型式、形状、寸法、構造、装備、品質、等級、成分、性能、耐久度又は安全度

二 鉱工業品の生産方法、設計方法、製図方法、使用方法若しくは原単位又は鉱工業品の生産に関する作業方法若しくは安全条件

三 鉱工業品の包装の種類、型式、形状、寸法、構造、性能若しくは等級又は包装方法

四 鉱工業品に関する試験、分析、鑑定、検査、検定又は測定の方法

五 鉱工業の技術に関する用語、略語、記号、符号、標準数又は単位

六 建築物その他の構築物の設計、施行方法又は安全条件

 (日本工業標準調査会)

第三条 通商産業省に日本工業標準調査会(以下「調査会」という。)を置く。

2 調査会は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、工業標準化の促進に関し、関係各大臣の諮問に応じて答申し、又は関係各大臣に対し建議することができる。

第四条 調査会は、委員二百五十人以内で組織する。

2 委員は、学識経験のある者及び関係各庁の職員のうちから、関係各大臣の推薦により、通商産業大臣が委嘱する。

3 委員の任期は、二年とする。但し、特別の事由があるときは、任期中これを解任することを妨げない。

第五条 調査会に、委員の互選による会長を置く。

2 会長は、調査会の事務を総理する。

第六条 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。

2 第四条第二項の規定は、臨時委員に準用する。

3 臨時委員は、当該特別の事項の調査審議が終了したときは、退任する。

第七条 調査会に、専門委員を置くことができる。

2 専門委員は、会長の命を受け、専門の事項を調査する。

3 専門委員は、会長の申出により、通商産業大臣が委嘱する。

第八条 調査会の委員、臨時委員及び専門委員は、予算に定める金額の範囲内において、手当及び旅費を受けるものとする。

第九条 調査会の庶務は、工業技術庁において処理する。

第十条 前七条及び国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)に定めるものの外、調査会に関し必要な事項は、省令で定める。

 (工業標準の制定)

第十一条 主務大臣は、工業標準を制定しようとするときは、あらかじめ調査会の議決を経なければならない。

第十二条 利害関係人は、省令の定めるところにより、原案を具して工業標準を制定すべきことを主務大臣に申し出ることができる。

2 主務大臣は、前項の規定による申出を受けた場合において、調査会の意見を徴し、その申出に係る工業標準を制定すべきものと認めるときは、工業標準の案を調査会に附議するものとし、その制定の必要がないと認めるときは、理由を附してその旨を申出人に通知しなければならない。

第十三条 調査会は、省令で定める公正な手続にしたがい、工業標準の案を審議し、その結果を主務大臣に答申しなければならない。

2 主務大臣は、調査会が制定すべきものと答申した工業標準の案がすべての実質的な利害関係を有する者の意向を反映し、且つ、その適用に当つて同様な条件の下にある者に対して不当に差別を附するものでなく、適当であると認めるときは、これを工業標準として制定しなければならない。

 (工業標準の確認、改正及び廃止)

第十四条 前三条の規定は、工業標準の確認、改正又は廃止に準用する。

第十五条 主務大臣は、第十一条の規定により制定した工業標準がなお適正であるかどうかを、その制定の日から少くとも三年を経過するごとに、調査会の審議に附し、これを確認し、又は必要があると認めるときは改正し、若しくは廃止しなければならない。

 (公示)

第十六条 主務大臣は、工業標準を制定し、確認し、改正し、又は廃止したときは、これを公示しなければならない。

 (日本工業規格)

第十七条 第十一条の規定により制定された工業標準は、日本工業規格という。

2 何人も、第十一条の規定により制定された工業標準でないものを日本工業規格と称してはならない。

 (公聴会)

第十八条 主務大臣は、工業標準化のため必要があると認めるときは、公聴会を開いて利害関係人の意見をきくことができる。

2 調査会又は工業標準に実質的な利害関係を有する者は、工業標準がすべての実質的な利害関係を有する者の意向を反映し、又はその適用に当つて同様な条件の下にある者に対して不当に差別を附するものでないかどうかについて、主務大臣に公聴会の開催を請求することができる。

3 主務大臣は、前項の請求があつたときは、公聴会を開かなければならない。

4 主務大臣は、公聴会において明らかにされた事実を検討し、工業標準の改正を必要と認めるときは、工業標準を調査会に附議し、その改正について適切な審議を行わせなければならない。

5 前四項に定めるものの外、公聴会について心要な事項は、省令で定める。

 (表示)

第十九条 主務大臣が特に必要があると認めて調査会の議決を経て鉱工業品の品目を指定したときは、その製造業者は、主務大臣の許可を受けてその製造する当該鉱工業品又はその包装若しくは容器に、当該鉱工業品が日本工業規格に該当するものであることを示す特別な表示を附することができる。

2 主務大臣は、前項の許可をしようとするときは、その製造業者の申請に係る鉱工業品の製造設備、検査設備、検査方法、品質管理方法その他品質保持に必要な技術的生産条件を審査しなければならない。

3 主務大臣は、前項の規定による審査の結果に基き、許可をするかどうかを決定し、その旨を申請人に通知するとともに、許可に係る品目及び許可を受けた製造業者の氏名又は名称を公示しなければならない。

4 第一項の表示に関し必要な事項は、省令で定める。

5 第一項の規定により指定された品目の鉱工業品(以下「指定商品」という。)については、第一項の許可を受けた製造業者でなければ、何人も、その取り扱う指定商品又はその包装若しくは容器に、その指定商品が日本工業規格に該当するものであることを示す表示を附し、又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。

 (手数料)

第二十条 前条の規定による許可を受けようとする者は、政令で定める手数料を納めなければならない。

 (表示についての申出)

第二十一条 第十九条第一項の表示の附してある指定商品がその表示に係る日本工業規格に該当しないと認める者は、主務大臣にその旨を申し出ることができる。

 (検査)

第二十二条 主務大臣は、前条の規定による申出を受けたとき、その他必要があると認めるときは、その職員に第十九条第一項の許可を受けた製造業者の工場、事業場その他必要な場所に立ち入り、指定商品若しくはその原材料又はその製造設備、検査設備、検査方法、品質管理方法その他品質保持に必要な技術的生産条件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。

第二十三条 主務大臣は、前条第一項の規定による検査の結果、表示の附してある指定商品がその表示に係る日本工業規格に該当せず、又は許可を受けた鉱工業品の製造設備、検査設備、検査方法、品質管理方法その他品質保持に必要な技術的生産条件が適正でないと認めるときは、その製造業者に対し、表示の変更若しくは指定商品の販売の停止を命じ、又はその許可を取り消すことができる。

 (聴聞)

第二十四条 主務大臣は、前条の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ当該製造業者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。

2 主務大臣は、前項の聴聞をしようとするときは、その期日の一週間前までに、前条の規定による処分をしようとする理由並びに聴聞の期日及び場所を当該製造業者に通知し、且つ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。

3 聴聞においては、当該製造業者又はその代理人は、自己のために釈明し、且つ、有利な、証拠を提出することができる。

 (罰則)

第二十五条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

一 第十九条第五項の規定に違反した者

二 第二十三条の規定による処分に違反した者

第二十六条 第二十二条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、三万円以下の罰金に処する。

第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

附 則

この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。

(厚生・農林・通商産業・運輸・労働・建設・内閣総理大臣署名)

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