社会保険診療報酬支払基金法

法律第百二十九号(昭二三・七・一〇)

第一章 総則

第一条 社会保険診療報酬支払基金(以下基金という。)は、政府若しくは健康保険組合、国民健康保険を行う市町村、国民健康保険組合若しくは国民健康保険を行う社団法人又は法律で組織された共済組合(以下保険者という。)が、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国民健康保険法(昭和十三年法律第六十号)又は共済組合に関する法律の規定に基いてなす療養の給付及びこれに相当する給付の費用について、療養の給付を担当する者又はこれを使用する者(以下診療担当者という。)に対して支払うべき費用(以下診療報酬という。)の迅速適正な支払をなし、あわせて診療担当者より提出された診療報酬請求書の審査を行うことをもつて目的とする。

第二条 基金は、これを法人とする。

第三条 基金は、主たる事務所を東京都に、従たる事務所を各都道府県に置く。

2 基金は、前項に定めるものの外、必要の地に従たる事務所の出張所を置くことができる。

第四条 基金の基本金は、百万円とする。

2 前項の基本金のうち、四十万円は、政府がこれを醵出し、六十万円はその他の保険者が、主務大臣の定めるところにより、これを醵出する。

第五条 基金は、定款をもつて、次の事項を規定しなければならない。

 一 目的

 二 名称

 三 事務所の所在地

 四 基本金及び資産に関する事項

 五 役員に関する事項

 六 業務及びその執行に関する事項

 七 各保険者との契約の締結に関する事項

 八 会計に関する事項

 九 公告の方法

2 定款は、主務大臣の認可を受けて、これを変更することができる。

第六条 基金は、政令の定めるところにより、主たる事務所、従たる事務所及びその出張所の所在地において、その事務所又は出張所を管轄する司法事務局又はその出張所に必要な事項を登記しなければならない。

2 前項の規定によつて登記を必要とする事項は、登記した後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

第七条 基金には、所得税及び法人税を課さない。

   第二章 役員

第八条 基金に役員として、理事長一人、理事八人から十六人まで及び監事四人を置く。

第九条 理事長は、基金を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、定款の定めるところにより、基金を代表し、理事長を補佐して基金の業務を掌理し、理事長に事故があるときには、その職務を代理し、理事長が欠員のときには、その職務を行う。

3 監事は、基金の業務を監査し、財務及び統計に関する報告を徴する。

第十条 理事長は、理事の互選によつて、これを定める。

2 理事は、保険者を代表する者、被保険者を代表する者、診療担当者を代表する者及び公益を代表する者につき、主務大臣が各々同数を委嘱する。

3 前項の委嘱は、保険者を代表する者、被保険者を代表する者及び診療担当者を代表する者については、それぞれの所属団体の推薦によるものとする。

4 主務大臣が前二項の規定により理事を委嘱しようとするときは、一月を下らない期間を定め、その期間内に、保険者を代表する者、被保険者を代表する者及び診療担当者を代表する者につき、各々委嘱すべき理事の少くとも二倍の候補者を推薦することを、それぞれの所属団体に求めるものとする。但し、その期間内に推薦がないときは、前項の規定にかかわらず、主務大臣がこれを委嘱する。

5 前三項の規定は、監事の委嘱についてこれを準用する。

第十一条 基金の従たる事務所に幹事八人、その出張所に幹事四人を置く。

2 幹事は、保険者を代表する者、被保険者を代表する者、診療担当者を代表する者及び公益を代表する者につき、理事長が各々同数を選任する。

3 理事長が、前項の幹事を選任しようとするときは、前条第三項及び第四項の規定を準用する。

第十二条 前条の幹事のうち、一人を幹事長とする。

2 幹事長は、理事長が、これを選任及び解任するものとする。

3 幹事長は、定款の定めるところにより、従たる事務所及びその出張所の業務に関し、一切の裁判上及び裁判外の行為をする権限を有する。

   第三章 業務

第十三条 基金は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。

 一 各保険者から、その保険者が、過去三箇月において最高額の費用を要した月の診療報酬の一箇月分に相当する金額の委託を受けること。

 二 診療担当者の提出する診療報酬請求書に対して、厚生大臣の定めるところにより算定したる金額を支払うこと。

 三 診療報酬請求書を審査するための委員会を設け、診療担当者の提出する診療報酬請求書を審査すること。

 四 前各号の業務に附帯する業務。

2 基金は、前項の業務を行う場合には、定款の定めるところにより、各保険者とそれぞれ契約を締結するものとする。

第十四条 基金は、前条第一項第三号の審査を行うため、従たる事務所及びその出張所ごとに、診療担当者を代表する者及び保険者を代表する者のうちから、審査委員各々五人以下を委嘱しなければならない。

2 診療担当者を代表する者について前項の委嘱をなそうとするときは、所属団体の推薦によらなければならない。

3 審査の方法に関し必要な事項は、命令をもつて、これを定める。

   第四章 会計

第十五条 基金の事業年度は、毎月四月から翌年三月までとする。

第十六条 基金は、毎事業年度末に財産目録及び事業状況報告書を作成し、事業年度経過後二箇月以内に、これを主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 基金は、前項の規定による主務大臣の承認を受けたときは、その財産目録及び事業状況報告書を公告し、且つ、これを定款とともに各事務所に備えて置かなければならない。

第十七条 基金は、起債をすることができない。

第十八条 基金の基本金は、避けることのできない事由によつて、診療報酬の支払に不足を生じたときの外、これを使用することができない。

第十九条 基金は、各保険者に、その事務の執行に要する費用を、その提出する診療報酬請求書の数を基準として負担させるものとする。

   第五章 監督

第二十条 主務大臣は、基金に対して、業務又は財産の状況に関し報告をさせ、又は当該官吏にその業務又は財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させるものとする。

2 主務大臣は、基金の従たる事務所又はその出張所の役員に対する前項の監督権を、その事務所又はその出張所を管轄する都道府県知事に委任することができる。

3 前二項の規定により、当該官吏又は吏員に検査を行わせる場合においては、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯させ、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示させなければならない。

第二十一条 主務大臣は、基金の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、定款の変更その他監督上必要な命令をすることができる。

2 前条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、定款の変更については、この限りでない。

第二十二条 主務大臣は、基金の理事長、理事及び監事が、法令若しくは定款又は前条第一項に規定する命令に違反したときには、これを解嘱することができる。

   第六章 罰則

第二十三条 基金の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、第二十条の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をなし、又は当該官吏吏員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、これを一万円以下の罰金に処する。

2 基金の理事長、理事若しくは監事又はその従たる事務所若しくはその出張所の幹事長若しくは幹事が、第十三条に規定されていない業務を、基金の業務として行つたときもまた同様とする。

第二十四条 基金の理事長、理事若しくは監事又はその従たる事務所若しくはその出張所の幹事長又は幹事が、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反して、登記をすることを怠り、又は不正の登記をしたときは、五千円以下の過料に処する。

   附 則

第二十五条 この法律は、昭和二十三年八月一日から、これを施行する。

第二十六条 政府は、設立委員を命じて、基金の設立に関する事務を処理させる。

第二十七条 設立委員は、定款を作成して、主務大臣の認可を受けなければならない。

2 前項の認可があつたときは、設立委員は、遅滞なく、基本金全額の醵出を請求しなければならない。

第二十八条 基本金の拠出があつたときは、設立委員は、遅滞なく、その事務を基金の理事長に引き継がなければならない。

2 理事長が前項の事務の引継を受けたときは、理事長、理事及び監事の全員は、遅滞なく設立の登記をしなければならない。

3 基金は、設立の登記をすることによつて成立する。

第二十九条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第一条の地方公共団体は、基金の事業に対しては地方税を課することができない。

(大蔵・厚生・内閣総理大臣署名)

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